陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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笑う棺 ―――ハンズ・トゥー・ハンズ

推奨BGM:AHIH ASHR AHIH
*1からの推奨BGM:Thrud Walkure


 ―――結界だった。

 弾丸の結界。

 ジューダスの攻撃はそうとしか表現できなかった。

 進もうとすれば弾丸が、退こうとすれば弾丸が、防ごうとすれば防御のできてない場所へ、ありとあらゆる角度、場所を選ばずに跳弾する弾丸は囲んで襲ってくる。それも一斉にではなく、計算されたパターンとタイミングで、ワザと隙や死角を作る様に誘導しながら狙い撃ってくる。

 手も足も出なかった。

 被弾覚悟で正面に出て数発。それだけ。たったそれだけしかできなかった。彼我の実力差は圧倒的で、勝てないことは解っていた。それこそ何もできない程度の実力差はあると解っている。それでも、それでも、


 どうしようもなく悔しい。

「……アス」

 膝をつく大地は硬い土の地面ではなく、柔らかく細かい砂の大地。聞こえてくるのは剣戟の音ではなく静かな波の音。目に映るのは夜の森と死神の姿ではなく、黄昏色の浜辺とぼろぼろのドレスを纏う金髪の魔女の姿。

「何で、何で俺はこんなに弱いんだ……!」

 勝てない。

 誰にも勝てていない。

「俺が強い? ちげぇよ―――俺は強くなりたいとか言っておきながら結局自分より弱いやつしか殺してねぇじゃねぇかよ! たった一度たりとも、自分より強いやつには勝てていないんだよ! 何でだよ、そうじゃねぇだろ!」

 砂浜を叩いても巻き上がるのは砂だけで、後には拳が叩き込まれた跡が残るだけ。

 そうだ、今まで自分より強い存在には一度も勝てたことがない。いつもいつも誰か弱いやつを殺す事しかできない俺は―――卑怯者だ。

「ちょっと力を得たらムカつく奴らを皆殺しにして悦に浸って、俺は強いだ、俺は負けないだ、俺は妖怪様だ恐れろ恐れろって……そうじゃないだろ……」

 復讐だ。

 それを成すためにひたすら力を求めて、頭を下げて、プライドを捨てて、そしてなんだ。結局はこれだ。自分より弱いやつを殺す事しか結局はできていない。自分より少しでも強くなるとほら、こうだ。

ベイにも、マキナにも、シュピーネにも、トバルカインにも、ベアトリスにも、ナハトにも、ジューダスにも、……ラインハルトにも。誰一人として勝てていない。何も成していない。

 犯罪者プレイヤー?

 攻略組プレイヤー?

 こんな非常識なものを体の内に飼っているんだ。勝てて当たり前って話だ。なのにそれを振るってまるで自分の力で成し遂げたかのように自慢げに殺して回って恐れられて。違う。俺が求めたのはこんなことじゃないはずだ。

「アス、ごめんね。私がもっと強ければアスを助けてあげられるのに」

「やめろ、喋るな、言うな、言うんじゃねえ!」

 そんなことを言うな。女に助けられるなんて俺をどれだけ惨めにしたいんだ。利用してやるって決めたのに中途半端に嫌悪したおかげで完全には使おうとせずに、どこまでも半端なままだ。

 こんな、こんな俺を彼女に見せられるか?

         『―――愛している。貴方の勝利を信じてるわサイアス 』

 恥ずかしい。今の自分が恥ずかしい。結局は全て捨てたつもりで力に浸ってただけじゃないか。自分のやっていることに自分で満足している自慰行為だろ。そうじゃない。愛していると言ってくれた彼女に、勝利を信じてくれた彼女に対して俺は何一つできていない。できていないのに―――何なんだこの姿は。

 力を持ってるのに使わず、

 相手に手加減されて、

 その上失望されて、

 それでいて今度は女に守られている。

「く、くくくく……はははははは……」

「アス……」

 力なく砂浜に倒れる俺の体を魔女が抱きしめる。やめろ。抱きしめるな。抱きしめないでくれ。俺はそんな価値のある男じゃないから。また俺が弱くなってしまうから。だから抱きしめないでくれ。その抱擁を受け取るにはもっとふさわしい人物が現れるから。やめてくれ、君は眩しすぎる―――

「―――アス、私ね」

 後ろから抱きしめる魔女がゆっくりと言葉を紡ぐ。

「アスの事大好きだよ」

 止めてくれ。

「いつも辛そうにしていて、ずっとずっとこうやって―――」

「止めろ!」

「っきゃ」

 手で薙ぎ払い、魔女―――マルグリットの抱擁を跳ね除ける。その衝撃で砂浜にマルグリットが尻もちをつく。が、それを気にすることなく立ち上がり、マルグリットと向き合う。

「黙れ、近寄るな、俺に触るな、お前が大っ嫌いなんだよ疫病神!」

 放った言葉を聞いて少し悲しそうだが、マルグリットが笑みを浮かべる。

「いいの。それでいいの。私はどんなに嫌われても―――」

 悲しそうだが、マルグリットはそれを気にしていないと言う。嘘だ。今にも泣きそうな顔をしている。屑が。俺はどうしようもない屑だ。女を泣かすなとあれほど言われたのに。約束一つ守れない駄目な男で―――

『最上君、女の子を泣かすのは最低だよ? ほら、もうこんな馬鹿な事をしないってお姉さんと約束しよっか。あとついでに将来の約束も』

 ……そうだったな。そう言えば泣かしちゃ駄目なんだっけ。

『馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿! 司狼も明広も馬鹿! もう二人とも豆腐の角にでも頭ぶつけて死んじゃえ!』

 だが、どんな糞で屑で生きている価値がなくても、果たすべきことがある。やらなくてはいけないことがある。結局救ってくれるのは昔からの付き合い、その記憶だ。どんなに捨てようとして、不幸によって幸福を忘れようとしてもどうしようもなくなればそれを思い出して浸って……安い男だよ。

『よぉ、どうやら今の俺たち最悪らしいぜ』

 でも、それでも……思い出してしまった。昔を。それに今、少しだけ心が救われて、自分が何をしたか改めて認識して、あぁ、俺って最低だな、と再認識する。小さな約束一つも守れていない、いないけれど、

 あぁ、あったな、そう言えば。安っぽくて小さいプライドが。

「―――だから―――」

 ごめん、少し弱気になってた。ちょっとだけ昔を思い出して救われた。

 そうだ。良く考えていれば最初から悩む必要なんてない。

 折れかけていた意志が再び強固に固まっていくのが解る。生気の抜けていた両目に力が戻っていくのを感じる。四肢に感覚が戻って行く。何でこの程度の事で諦めている。サイアスは―――いや、

 最上明広はこの程度で諦めるような男じゃない。

 何を弱気になっている。約束を何一つ守れてないのなら今から守ればいい。開き直っているようで悪いけど頭はそんなによくないんだ。考えることは苦手だからこうやって開き直る以外にはやり方を知らない。そう、いつまでも過ぎたことを悔やんでいても仕方がない。問題は今と、そしてこれから先なんだ。

 だったら、俺にとっての最善手は―――

「―――私を使って、アス」

「……明広だ」

「え?」

 尻もちをついたマルグリットに手を伸ばす。

 まだこいつを完全に受け入れる事はできない。そこまで優しい人間じゃない。だけどこいつが完全な原因じゃないってのもわかっている。ぶつける相手がいなくて苛々した―――ガキなんだ俺は。そして俺は多分この先もそうだ。決してマルグリットの存在を受け入れるわけじゃなくて、

「最上明広。俺の名前だ。お前が悪くないって事は知ってるけどお前が原因ってこともある。
だから俺はお前を受け入れない。だけど勝ちたい。負けたくない。俺には俺のプライドがあるんだ。だからさ―――」

 マルグリットが嬉しそうな表情を浮かべて手を伸ばす。マルグリットにとっては、初めて差し伸ばされた手だった。

「よろしくアキ」

 笑顔と共にその手をマルグリットは取り、

「あの化け物にだけは負けられない―――行くぜ、マルグリット」

「うん! 勝とう!」


                           ◆

*1


 状況は絶望的だった。ナハトとジューダス、どちらも慢心も油断もする気はなかった。だからトリガーが引かれ、鎖が放たれた瞬間、

 それは俺の死が決定された瞬間だった。

 諦める気はない。だけど、

 遅いなあ……。

 攻撃ではなくて、自分の動きが。防御の姿勢でいるが弾丸は跳弾を利用して防御をすり抜けて迫ってくるし、鎖は無茶な軌道をもって迫ってくる。おそらく今から攻撃に合わせて動いても届かないし、届いたところで武器ごと粉砕される。

 完全に詰んでいた。

 あー、どうしよっかな、これ。

 貧乏くじを引いたという考えが浮かぶが、それは間違いだ。これは自分が選んだ選択肢の結果で、恨む必要はどこにもないけど、

 ……クライン、アスナ……。

 今回の作戦には知り合いが何人か参加している。ここで自分が負けたらこの二人が残りのメンバーを蹂躙する可能性がある。それだけは避けたい。避けたいが、何もできない。どうしようもないもどかしさが胸から込み上げる。だから、唯一できる事をする。

「サイアス……!」

 口を、動かす時間は短くだが、ある。

「人に男の矜持だとか説教しておいて寝てるんじゃねぇ……!」

 クリスマスの、あの時は自分が悪かったかもしれないが、言葉にかなりイラッと来たのは覚えている。だからその時の意趣返しも加えて、

「逆転の一つや二つ決めてみせろよ」

 だってさ、お前もこいつらと一緒なんだろ? でも決してそれを誇ってないしむしろ嫌悪してるみたいだしさ、お前、喜んでチートするようなやつじゃないだろ? だから、それを当たり前のように使うこいつ等が嫌いなんだろ? だったらさ、

「―――サイアス!!」

 叫び終わるのと同時に、死の暴風が、

                「砕けぬ星よ―――閃光となって輝け」

 ―――砕けた。

 それは一瞬だった。まさに刹那の閃光。

 一瞬で現れた姿が暴風を正面から切り砕く。それこそ暴威という言葉を体現するような荒々しさを持って跳弾によって迫ってきていた弾丸、そして命を食いちぎる鎖を砕いた。弾いたのでも裂いたのでもなく、砕く、つまりは粉砕。完全に物質の破壊に成功していた。ソードアート・オンラインでオブジェクトの破壊、粉砕とは最上位に位置する荒業で。意図的に行うのはかなり難しい。それを得意とする俺ではあるが―――あれだけの弾丸をすべて砕くのは無理だ。

「形成―――」
(イェツラー)

 現れた姿は自分の知る男の背中姿だった。ただ、今までとは違うところがある。それは腕だ。左腕には大太刀が握られている。魔剣に分類される大太刀、≪羅刹≫が今までとは全く違う握り、ナハトがそうしているかのように逆手に握られている。そして視線を右腕へと移すと、その右腕が指の先から肩に至るまでが完全に黒く染まっているのが解る。鋼鉄の様な鈍い色が光を反射し、幾何学模様が刻まれている。その腕の先まで視線を持ってゆくと、

 見た事のない得物が握られている。

 それは巨大だ。

 羅刹が全長百七十センチあるのに対してこの得物は確実に二メートルはある。その姿も異様で、見た目からして異常な重さを感じられる。刃は分厚く、幅が広く、西洋剣の様な硬さと無骨さを持ち合わせながら倭刀の様な美しさと反りを持った和洋折衷と言えば少し聞こえはいいが、歪な得物だった。ただ言えることは、それは決して戦闘用の武器ではなく、処刑の為の道具だ。どこまでも首を落とす事だけを求めた、そんな得物だ。浅い反りは刃の鋭さを、分厚い刀身は刃が折れない様に、そして異常な大きさは重さを与えて首を落とせるように。それは”ギロチン”という概念、もしくはそれそのものと呼んでも構わない歪な得物だった。それが、左手に握られている羅刹と同じ様に、逆手で握られていた。

「―――罪姫・正義の柱」
(マルグリット・ボワ・ジュスティス)

 破れて使い物にならなくなった軍服の代わりに再び赤い衣を裸の上半身に着ている剣鬼―――サイアスは誰よりも、何よりも強く、そして美しくこの瞬間に輝いていた。まるで刹那を駆け抜ける閃光の如く輝き、俺の前に立っていた。

「おい、結構好き放題言ってくれたじゃねぇか」

 一瞬だけ、本当に一瞬だけ刃を握ったサイアスに対して恐怖が生まれた事を恥じる。そうだ、こいつは味方で、

「寝てるお前が悪い」

「あぁ、そうだな」

 今、この瞬間は何よりも心強い存在で、

「下がってろキリト……化け物は化け物同士食らいあって消えなきゃいけねぇんだ」

「ばぁーか」

 化け物なんかじゃなくて、たとえ使っている能力がチートや、それに類するものだとしても、こいつを信じることは変わらない。仲間を疑ってちゃ生きていけない事は知ってるから。だから、今、預けるよ。

「お前は化け物じゃなくて≪サイアス≫なんだろ? 俺の命を預けるから絶対勝ってくれよ」

 そう、

「お前を信じてるぜ」

 一瞬驚いたような表情を見せるが、すぐに笑みを深くし、

「任せろォ―――!」

「おや、友情タイムは終わりかい?」

「さあ、俺たちを楽しませて見せろ」

 クリミナル・パーティーの終わりが近い。
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| 断頭の剣鬼 | 08:59 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

キャー! 明広さんが久々に主人公してる!
カッコよす、テラカッコよす。

| ろくぞー | 2012/08/10 10:14 | URL |

マリィ様マジ女神。
やはり少しずつ┌(┌^o^)┐ホモォ…に見えてきた……修正されるべき。
右腕の黒いのを見て、一瞬練炭かと思ったなう。

| 蒼桜 | 2012/08/10 10:23 | URL |

主人公キタ!
次回は勝利回かと思いきや形成じゃまだあの二人には勝てない罠。

| darkrad | 2012/08/10 11:36 | URL | ≫ EDIT

つまりここからアスアスのデレルートが始まるわけか!

| ぜんら | 2012/08/10 12:29 | URL |

めげずに手を取るマリィさんマジ女神ッ!
サイアスさん、ここまできたらもう少しデレてみてもいいじゃないですか?(笑)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/10 18:12 | URL | ≫ EDIT















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