陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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笑う棺 ―――トゥー・ソード

推奨BGM:Thrud Walkure


 一振りで放った斬撃の数は十四。ジューダスが持つ銃からはマシンガンの様に弾丸が吐きだされ、毎秒五十発以上の弾丸が迫りくる。その脅威と比べれば、圧倒的にこちらの手数は少ない。確実に相手は”形成”かそれに近い何かをしている。でなければ銃などというシステム外の武器を使うことはできない。ナハトもそうだ。両手に武器を持つことはシステムで禁止されている。キリトが二刀流でソードスキルを繰り出したが、アレにはエフェクトがついていた。つまりはシステム内の行動だ。だがナハトは違う。システムから外れた理で得物を振っていた。

 だが今更マトモじゃない連中がどんなにマトモじゃないか考えてても仕方がない。

 殺す。


 決意と殺意を胸に溜めず、全力でそれを表しながら振るった斬撃は全て不可視の斬撃だ。見ることはできず、感覚でとらえることもできない。それこそ聖遺物か常識から外れた存在、第六感で”見る”事ができる存在にしか目視できない処刑の斬撃。聖遺物の特性。捉えられるはずのない斬撃を、

「ッハ! この程度で終わりって訳はないよね?」

 ジューダスの銃から放たれる弾丸によって叩き落とされる。マシンガンの様な連射性、ライフルの様な精密性を誇る大口径の化け物銃。発想もそうだが使っている方も十分に頭がおかしい。此方の斬撃を潰してもまだまだ余りある弾丸を向けてくる。それこそナイフとは比較にならない量、そして威力の弾丸だ。もはやライフバーを削るという仕様を完全に捨てて、殺す事にだけに集中したジューダスの弾丸は死の暴風となって迫る。

 が、

「ふぅ―――」

 短く息を吐き出し、大太刀を一旦背中にまで戻してから、軽く握る手を脱力させる。刃に聖遺物に特性を込め、そして―――

「ッシィ―――!」

 再び溜め込んだ殺意を放出するのと同時に居合の要領で大太刀を振りぬき高速で戻す。音速を超過する速度で大太刀が振るわれる度に質量が大気と衝突し、爆発的な衝撃波をシステムが生み出す。それが斬撃と合わさり、点を連続で放つ弾丸の脅威に対して完全な”面”の攻撃を生み出し、正面から弾丸を打ち落としていく。弾丸と斬風がぶつかり合い、互いの間で爆発が連続で発生する。それを理解しながらも、

「首を置いて行けジューダス!」

「やだね。欲しいのなら自分で持って行きなよ」

 互いに攻撃をやめることなく接近し、爆発に正面から突っ込む。それによって俺にもジューダスにも多少の傷ができる。が、そんなことは些細な事でしかなくて、

「死ね!」

「君がね」

 大太刀と銃をぶつけあう。大太刀と比べて明らかに強度で劣る銃という武器は細かいパーツで構成されている得物だ。そしてパーツの多い道具というものは基本的に強度に欠ける。武器としてはあまり使いたくないものだが、この状況では、

 此方の得物から少しだけ、軋む様な音がし、

 体に軽い亀裂が走る。

『うっ……』

「っぐ」

 通しているのが完全な魔女の魂であれば得物が砕け散るはず何てないし傷つくはず何てない。だが通しているのはほんの数パーセントだけで、それと同調している結果、魔女は傷つきやすいし得物は壊れやすいし、そして俺にも傷はつく。つくづく愚かな男だ。だが解っていても―――変えられない。

「おぉ―――!」

 力を込めて大太刀で銃を弾くとジューダスが距離を作ろうと下がる。が、それを逃すわけもない。離れてしまえばジューダスの独壇場となってしまう。ジューダスとの距離が変わらない様にジューダスを追いかけ森の中を駆け抜ける。大太刀を何度も高速で振るい、一撃一撃繰り出す度に自分の戦闘能力が、魂が磨かれていることに気づく。だがこれでもまだ足りない。

 もっと、もっと……!

「足元がお留守だよ」

 ジューダスが大太刀に銃を短くぶつけながらトリガーを引く。その方向はデタラメだが、木の根や地面に当たり、跳弾した弾丸は足首を狙ってくる。

「なっ―――っらあ!」

 足首を狙ってきた弾丸を踏み出すことで潰し、大太刀を振るう速度をさらに加速させ、

 ジューダスの姿を追いかけ森の中を駆ける。


                           ◆


 二刀流は本当に最後の手段だ。

 おそらくユニークスキル―――バレれば多くのプレイヤーの注目と嫉妬を買う事になる。それは嫌だったから今までずっと隠してきた。だが、そんなことができる相手じゃない。油断とか慢心とか、そんなレベルじゃなくて、

 今、この瞬間、常に進化し続けなければ死ぬ。

 死そのものともいえる存在が目の前に立っていた。

「今度はお前が相手か。人間にしては中々強いようだし―――楽しめそうだ」

 そう言うナハトの右手には逆手剣、そして左腕の袖からは銀色の蛇の鎖が垂れている。サイアスとの戦闘を見た分には、どちらを食らっても即死だ。即死のはずなんだが、

 ライフバーは一ミリたりとも削れていない。

 本格的にオカルトに足を踏み入れた―――と思いつつも、ソードアート・オンラインでは”仕様”では説明のできない現象がいくつか起きている。グリセルダの幽霊、殺気、気配、どれもシステムには登録されてない現象だ。だから、目の前の存在もそういうソードアート・オンラインのオカルト的要素の一つだと納得し、今は受け入れる。これが終わって生き残っていたらサイアスにこの現象が何なのかを問い詰めるとしよう。が、まずは、

「お前らは―――なんなんだ?」

 二刀を油断なく、精神を集中させながら構える。何時でも戦えるように、そうしながらも言葉を飛ばす。こいつらは何なんだ。”人間”と言っていることから確実に人間以外のものだろう。いや、その言葉にはサイアスも含まれている。そして俺が知る限り、本当に妖怪にでもなっていなければサイアスは人間のはずだ。

「俺たちか? そうだな―――」

 ナハトが問いに答えてくれるのか、嫌らしい笑みを浮かべてくる。

「俺たちは―――魔人だ」

「……」

 この上なく的を射たような答えだった。魔人。あぁ、確かにこいつらにはそんな言葉が似合う。常識には当てはまらない、人間の範疇を超えた存在者たち―――魔人以外の何と呼べようか。

「会話もここまでだ、ジューダスを楽しませたように俺も楽しませてみろ」

 その一言で、背後から何かが迫るのが理解できた。

 精神が集中してスローに見える視界の中、ナハトの左腕の鎖が何時の間に俺の背後にまで伸びているのが見える。おそらく会話の間に伸ばされたのだろう。魔人とか名乗っておきながらやってる事がセコイ。いや、勝利することに手段を選んでいないだけか。

 ともあれ、

「負けない……!」

「来い。解りやすい死をやろう」

 こんな、デタラメな連中にだけは負けたくない。

 踏み込みつつ、インベントリを開き、再びソードスキルを発動させる。発動させるのは硬直のある上位ではなく、下位ソードスキル。踏込から体をスウィングし、一気に軌道を横に捻じ曲げる。背後から迫っていた鎖を回避しながら、

「二刀流―――≪ダブルサキュラー≫……!」

 口にスキルの名前を出す事は意味がない。それでも、口にするだけで気合というのは結構違ってくる。だから、体を押し出すように突きを繰り出し、一撃目の後にわずかな溜めを作ってから二発目を繰り出す。

「その停止が命取りだ」

 その一瞬の溜めにナハトが再び鎖を振るう。蛇の頭を模した鎖の先端、蛇の口が開き此方の命を抉り取ろうと迫ってくる。

 これが命取りなのは解っている……!

 あえて、鎖を受け止める。

「っぐ!?」

 蛇が首にかみつき、首の一部をちぎる。ちぎられた首を中心に、全身を味わったこともない痛みが駆け抜ける。それこそ全身が燃えているような痛み。アインクラッドではりえないほどにリアルな痛みだ。このまま泣いてしまいたい。だけど、ここで泣いたり屈してしまったら―――


                           ◆


                   「―――Disce libens―――」


                           ◆


 両目を強く開き、剣を強く握る。痛みで沸騰しそうな頭を無理やり落ち着かせ、頭から無理やり痛みを追い出す。ライフバーが一瞬で全損するのが見える。あと数秒もすれば死ぬかもしれない。だがそんな結末は認めない。断じて認めない。だから、

 インベントリの操作と同時に現れたアイテムを口でつかみ、噛み砕きながらダブルサキュラーの二撃目を繰り出す。噛み砕いたアイテムが破片となって散らばるがその効果は発揮される。ダブルサキュラーがナハトの首に突き刺さる。ナハトに傷はつかないしライフバーはやはり1ドットも減らない。だが、

「貴様、なぜまだ生きている」

 それは軽い驚愕と感嘆の声だった。

 そうだ。

 ナハトの一撃を受けて生きていられるはずはない。それこそ魔人でもなければ。受け止められたサイアスも魔人の一人なのだろう。だから俺は確実に死ぬ。そう、死ぬしかない。

 が、

 俺のライフは丁度中間点で完全に動きを停止させている。それは少しだけだが上昇と減少を繰り返してはいるが、中間点で動きを停止させている。

 今度は二刀流ソードスキル≪スター・バースト・ストリーム≫を発動させる。

 超高速の十六連撃は星の閃光の様に煌めき、エフェクトをまき散らしながらナハトの体にすべて命中する。それでさえ減らないナハトのライフ。

「っふん!」

「っが、っくぅ……!」

 翅虫を拂う様に放ったナハトの鎖の一撃に吹き飛ばされる。それで全損するはずの体力は全く減らず―――全身に激痛を与えるだけで終わる。吹き飛ばされ、転がりながらも再び立ち上がる。再び剣を構える。

「なぜ生きている」

 再び同じことを問われたので―――

「―――エリクサー」

 答えた。それに対してナハトが首をかしげる。そうだろう。こいつはシステム外の存在。だからシステム的制約を無視できる分、”システムを利用した”戦い方ができない。俺とサイアスが攻撃を食らわせて吹き飛ばし合ったように、システムの保護を利用した戦いができない。

「とあるクエストで一個だけ手に入る完全回復薬エリクサー。その効果はライフの完全回復」

 だけど、ナハトの攻撃は”強すぎる”。ダメージ限界が999のゲームで99999ダメージを出しているようなものだ。ダメージオーバーフローが発生し、どんなに回復しても追い付くわけがない。

 だがそれも、エリクサー以外の回復方法を使った話でならだ。

 エリクサーの効果は完全回復で、ポリゴンの拡散が始まる前に使用すればまだ助かる。だから、

「ダメージオーバーフローと完全回復処理の途中……!」

 システムのダメージを食らって体力が減っている状態と、完全回復中というシステムと、システム外の行動を利用した”バグ技”だ、これは。システム外の行動をとるナハトには絶対に真似できないし、思いつきもしない方法。

「無敵状態って覚えててもらえばいいよ」

 再び踏込剣を振るう。それをナハトはどこか楽しそうな表情で見つめながら、鎖で二刀を吹き飛ばす。がら空きとなった体に逆手剣によるボディーブローが決まり、体が浮かび上がる。

「あっ、っが……! っらああ!」

 浮かび上がりながらもソードスキルを発動させ、ナハトの顔面に十二連撃を決める。それを食らってもナハトの顔色は変わらないし体力も減らない。ここで起きる変化は俺の体に激痛が走る事だけだが、

「力を示さなきゃ死ぬぞ」

 とたん、ナハトから空間を削り取る殺気が放たれる。一瞬で六感が死ぬことを感知し、動きの読めなくなった鎖が横から脇腹をえぐり取りながら通り過ぎる。エリクサーとダメージオーバーフローを利用した無限回復効果のおかげで抉れた首も脇腹も回復するが、

「はあ、はあ、はあ……!」

 痛みだけは全身を蹂躙する。

 ダメージは通らない。

 一方的に殴られる。

 痛みを感じる。

 これではただのリンチだが、

「負けはしない……!」

 勝つって決めたからには止まれない。

 前に踏み出しながら再びソードスキルを発動させる。硬直と、スーパーアーマー効果のついた鈍くても威力の高いソードスキル。叩き込むのと同時にナハトが鎖、そして逆手剣を振るってくる。

「おおおおぉ―――」

 それを体で受け止めながらも、二刀を止めることなく動かす。閃光の煌めきをまき散らす二刀の攻撃はナハトの体に連続でヒットするが、それを受け止めながらもナハトは後ろへと跳躍し、鎖を振るう。正面から迫る鎖の動きは鈍い。明らかに攻撃が通じないことを利用して嬲りに来ている。その鎖を紙一重で横に回避しつつ再びナハトにソードスキルを放つ。今度は単発重攻撃型のソードスキル。

 だがナハトに傷はつかない。

「どうした! 効かないぞ! ハハハハハ!」

 挑発する声が聞こえるが―――意に介さない。ただひたすら精神を集中させ、たった一つの結果を目標に行動を続ける。無限回復状態も別に永遠に続くわけではない。ソードアート・オンラインのシステム的運営をしている”カーディナル”がこの不可解な現象を見つければ確実に修正される。勝負はそれが見つかるまでの短い時間だ。

 だから、

「ッ、るぁ―――!」

「これも慈悲だ、終わらせやる」

 逆手剣が迫る。それを全力で回避したところで、

「死ね」

 真横から蛇の咢が迫る。軌道からして頭を食いちぎる動きだ。流石に頭を食いちぎられたら生き残る自信がない。だから、

「ここ、だあああ!」

 二刀にソードスキルのエフェクトを持たせ、蛇の咢を真横から―――軌道をズラすように叩く。

「なっ―――」

 軌道のズレた蛇の咢が逆手剣を振るえる至近距離にあったことから、ナハトの体に突き刺さる。

 今度こそ、はっきりと、ナハトの体に傷が生まれるのと、唯一システムに従っているらしいライフバーが減るのが見えた。

「おおおおおおお―――!!!」

 すかさず≪スター・バースト・ストリーム≫を発動させ、ナハトの体にできた傷にソードスキルを叩きこむ。ほんの少し、数ミリだけだが、”自傷”から生まれた傷跡に攻撃が叩き込まれる度にナハトのライフが削れる。そして最後の一撃と共に、

「らあああ!」

 大きくナハト、そして自分がはじけ飛ぶ。ギリギリ、何とか着地しながら自分のライフを見る。今、ライフが完全回復しているところを見ると、今のを受ければ確実に死んでいた。軽い冷や汗が背中を流れるのを感じながら荒い息を吐いていると、

「ふ、ははは、ハハハハハハハハハハァ―――!!」

 周りの木を粉砕しながらナハトが立ち上がる。殺意はより濃厚に、気配はより圧倒的に。

「まさかアイツ以外に戦える奴がいるとは―――いい、実にいい。お前悪くないぞ」

「大人げないのにも程があるだろ」

 ここは健闘を称えて生かしておいてやる……ってのが定番だと思うんだけど。

「俺が今の状態で持てる本気で貴様を殺してやる。覚悟しろ」

 ナハトのいる空間が陽炎のように揺らめき始めた瞬間、森の奥から何かが高速で飛んでくる。地面に何度も衝突しながら転がり、木にぶつかってやっと動きを止めたのは、

「サイアス!」

 サイアスだった。それも軍服の上半身はもはやボロ切れと言える惨状になっており、見える体には銃痕が大量にできている。倒れたサイアスの頭上のライフバーはまだ満タンだが、先ほどの痛みを感じる戦闘の事を考えると、致命傷と言われてもおかしくない傷だ。

「やれやれ、とんだ期待外れだったよ」

 森の奥、サイアスが吹き飛んできた方向からジューダスが現れる。ジューダスも全身に傷はあるが、それほどひどいレベルではない。どこか落胆した表情で、

「もう少しやれると思っていたよ? 君の方は―――あぁ、いいよ。そのリアクションを見ればわかる。ずいぶん楽しそうだね」

「クククク、コイツはいいぞ。いい道化だ」

「楽しそうでそれは何より。でも、ま」

 ジューダスが銃を向けてくる。ナハトが鎖を構える。

 駄目だ。

 生き残るイメージが湧かない。

「ここでゲームオーバーだ。パーティーも終わりの時間だよ」

「っく!」

 サイアスの前で、剣を交差させるように十字に構え、防御の姿勢を取る。多分無意味なんだろうけど、やらないよりは……!

「さらばだエル・キホーテ。お前は中々楽しめたぞ」

「レスト・イン・ピース」

 逃れられぬ必滅が放たれた。
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| 断頭の剣鬼 | 11:20 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

キャー絶体絶命のピンチ!
キリトさん頑張って! 超頑張って!
続きが楽しみですなぁ! というか敵の強さパネェ!!

| ろくぞー | 2012/08/09 11:30 | URL |

これなんていじめ……?
そしてキリトさんマジ人外。

| 蒼桜 | 2012/08/09 11:49 | URL |

うわぁ、キリキリさんマジ人外w

さて、妖怪殿とキリキリさんはどうなるのか!?

| 尚識 | 2012/08/09 12:14 | URL | ≫ EDIT

恒例の誤字ほーこくだよひゃっはー!

此方の得から物少しだけ、軋む様な音がし、

得物から

| くれいく | 2012/08/09 14:55 | URL |

キリキリがまともだと発言したけど、いや、キリキリ人外の領域に片足出すどころか踏み込んでるよコレ。
そして水銀、今回はいい仕事してるけど、ほどほどに自重してください(笑)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/09 18:39 | URL | ≫ EDIT

お久しぶりです。
なんか人外化が凄い速度で進んでませんか?

いや、これもすべて水銀の仕業か!

| 断章の接合者 | 2012/08/10 04:49 | URL | ≫ EDIT















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