陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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笑う棺 ―――クリミナル・パーティー

*1推奨BGM:Holocaust


 夜、アインクラッドのとある階層にその集団は集まっていた。各自に事前の準備は済ませ、必要な覚悟もつける。そうやって挑むのはこのアインクラッドでも禁忌とも呼べる存在、

 ≪ラフィン・コフィン≫だ。

 ラフィン・コフィンがほかのギルドと違い危険視されるのは異常なまでの死への執着だ。犯罪の中でもPKに特化したギルドと言えば解りやすいだろう。現在使われているシステムの穴をついたPK手法、そのほとんどがラフィン・コフィンから流れてきたものだと言えばその脅威が改めて理解できる。

 ラフィン・コフィンの始まりは一人のカリスマ的レッドプレイヤーにある。


 ≪Poh≫、ふざけた名前とは裏腹に圧倒的な”悪”のカリスマというべきものをもった存在だった。その言葉、雰囲気、オーラで多くの人間の精神的タガを外し、犯罪者の道へと引きずり込み、そしてラフィン・コフィン何てふざけたギルドを作り上げた張本人。

 その捕縛が最重要目標である。

 だが≪Poh≫も馬鹿ではない。信用のできる幹部を数人常に自分の横に置いていたはずだ。だから、この作戦の行方はどうやって幹部を制圧するかにかかっていると言ってもいい。だから、ここは―――

「何してるんだ?」

 消灯設定でホロウィンドウを弄る俺に対して近くのプレイヤーが声をかけてくる。正直こんな自分に対して恐怖が湧かないかどうか聞きたいこともあるが、

「報告。名代で来てるのだから報告は必須」

 簡潔的に答える。それを聞いてうへぇ、と声を漏らしながら真面目だと言われる。マジメでもなんでも、やるべき事はやらなくてはならないのだ。報告のメールを終わらせてホロウィンドウを消す。パーティーウィンドウの中に表示されているキリトの名前を確認し、その下の自分のライフバーも確認する。知り合いの少ない者同士パーティーが組めるのはいいことだ。ぼっちよりはマシだ。

 隠密スキルを発動させながら圏外の、ラフィン・コフィンのアジトへ向かうというのに先ほどのプレイヤーが後ろからついてくる。

「何かようか?」

「いや、妖怪さんと一緒なら生存率上がるかなあ……って」

『アスといた方が危ないよ? えーと……シボウフラグ?』

「……」

 最近魔女の知識の発達に何も言えない自分がいる。魔女と自分の間にできている穴から流出するのが自分の知識だから余計に何も言えなくなる。

「できたらパーティーにいれてくれたらなあ、なんて」

 そう頼んでくるものだから、溜息を吐きだしながら男のプレイヤーをパーティーに加える。得物は斧で、防具は革鎧。珍しくあまり見ない装備だ。パーティーメニューに名前が追加されるのを見る。キリトには黙って加えてしまったが、そこまで問題はないだろう。確認できる名前は―――

「俺コタロウ、よろしく!」

 パーティーウィンドウに≪kotarou≫と出ている。

 キリトの方を見るが、特に問題ないと手で示してくる。

「名前なんだけど本当は大盛ワカメと迷ったんだよねー。やっぱマジメ路線でやってて良かったと思うよ。いや、マジで。暗黒神のロソっていう名前でやってるやつが知り合いにいるけど強制ソロルートだから。俺には毎日”やあ暗黒神ロソさん! 今日も布教活動ですか?”とか言われる覚悟はないから」

 会話が聞こえてたのかキリトが笑いをかみ殺すのが解る。戦闘の前で、若干ささくれ立っていた心が落ち着くのが解る。それ以上は効果はないが。

「よろしく」

 短くそう告げると隠密スキルを発動させたまま、目的地であるラフィン・コフィンのアジトへ向かう。


                           ◆


 ラフィン・コフィンのアジトはそう遠く離れた位置にはなかった。歩いて一時間、その程度の距離の場所にあった。森の中に続く林道、その奥に洞窟はあり、森の木々をカバーに使いながらスキルで接近する。作戦の成功は奇襲の部分にかかっている。なるべく音も気配も殺し、洞窟を囲むように陣取る。

「……、……。……」

 ハンドサインでリーダーの男がスカウト役のプレイヤーに指示を送る。まずは中の偵察を隠密スキルとその補正が一番高いプレイヤーに任せ、そして中を確認できたら火炎瓶で炙り出し一斉に確保、それが基本的な作戦となっている。出てきたところを一網打尽、なるほど、理にかなっている。

 だが、何か嫌な予感がする。

 それは首の裏がチリチリするような、誰かに殺意を当てられているような感覚だ。それ自体は既に常日頃から感じるためあまり気にならない。だがいつも感じとは若干違う。この状況における致命的な何かを忘れている―――

「ッ! 見張りがいない……!」

 そうだ、ラフィン・コフィン程優秀な犯罪者ギルドがアジトの前に一人も見張りを置かないのはおかしい。事前に使った索敵スキルでは隠密状態のプレイヤーも見つかっていない。そして、≪Poh≫が簡単にアジトの侵入を許すはずがない。

 最悪な状況を思い浮かべるのと同時に、

 強い殺意の塊に体が反応する。そして、誰かが叫ぶのが解る。

「罠だァ―――!!」

 言葉が耳に届くよりも早く、すぐ後ろにいたコタロウを蹴り飛ばす。

「っちょ!?」

 衝撃で吹き飛ぶコタロウを無視し、彼のいた背後の空間に手刀を両腕で三回繰り出す。確かな感触と共に、手刀を繰り出した空間に首を落とすプレイヤーの姿が現れる。

「お、おお! やっぱパーティー組んで正解だった!」

「呆けてねぇでとっとと構えろ」

「アイサー」

 肩から背負う得物を鞘から一息で抜くのと同時に、周りの状況を素早く確認する。

 奇襲したのは此方ではなく、相手だった。此方が囲むはずだったのに対して今、包囲しているのは相手だ。完全に作戦が読まれていた。裏切り者? 情報が漏れた? いや、それはPohの手口ではない。Pohの手口からすれば―――そう、最初からこの予定だった。ワザとアジトの情報をリークして、此方が戦いに来るのを待つ。Pohなら絶対にそうする。殺しを快楽にするあの男だったら迷いなくできる。

 状況は最悪に近い。

 攻略組プレイヤーといえども人だ。奇襲には弱い上、犯罪者プレイヤーは毒を使うことが多い。事前に耐毒ポーションを飲んできたとはいえ、それを上回るような毒を使われ、状態異常を起こしているプレイヤーがちらほら見えている。このまま戦えばこっちが勝つだろうが、犠牲が多い。

「よおサイアスさーん! 入団しねぇかー?」

「ボスはお前を歓迎するらしいぜ」

「馬鹿かよお前ら。そのボスの首を貰いに来たんだよ」

 一閃。

 それだけで話しかけてきた敵の首を跳ね飛ばす。

「サイアス!」

 少し離れた場所から軽い跳躍で近づいてきたキリトが合流する。コタロウもふざけた名前とは裏腹に、それなりに戦えるようで犯罪者プレイヤーを地面に叩きつけた上で、足で踏んで動きを抑え込んでいる。

「おとなしく投降してくれ」

 コタロウがそういうが、返答の代わりにラフィン・コフィンのプレイヤーが懐からあるアイテムを取り出す。

「っひっひっひ」

「ッ!」

 アイテムを起動させるよりも早く倒れた男の首を跳ね飛ばす。瞬間的に手足とのリンクが断たれた男はアイテムを使えないが、

「俺たちが、死を怖がるとでも……?」

 そう告げて砕け散る。その言葉でこの状況が更なる地獄に叩き落されることが確定した。

 ここにいる多くのプレイヤーは、人を殺せない。

 横の二人が得物を強く握るのが解る。論ずる暇はない。そして聖人君主であるつもりはない。ただ。

「お前らは下がってろ」

 ただ、

「俺が殺る」

「待て、俺も―――」

「ガキは下がってろ。ここから先はR-18だ」

 もう知り合った人が目の前で死ぬのは嫌なだけだ。

 何時にもない、幾分かの余裕を心に持って大太刀を振り上げ、一気に加速する。


                           ◆


 撥ねる。跳ばす。落とす。砕く。

 どれも慣れた動作だ。

 一瞬の踏込から大太刀を振りぬいて首を飛ばす。体とのリンクが切れて助けが来ない限りはそのまま死んでしまう首の部位欠損はシステムが与えられる欠損の中でも最も発動が難しく、そして与える効果が惨い。なぜなら首を落とされた者は何もできずに減って行く自分のライフバーを見なくてはならないのだ。手足を動かす事すらできない。

 だから、ここで俺が一撃一撃、確実に相手の首を跳ね飛ばすのは異常の極みとしか取れないのだろう。

「てめぇらの首を置いて行け」

 大太刀を振りぬいた瞬間に目の前のポリゴンが砕かれ、拡散するのが見える。振りぬいた体勢から得物を肩に乗せる。

「そんなに死に急ぎたいのなら俺が遊んでやる」

 言葉を聞いたラフィン・コフィンの構成員達が一斉に襲ってくる。その数は約五人。

 少ない。

 少なすぎる。

 飛び込んでくる様にソードスキルを放ってくる一人目をリーチの外から首を跳ね飛ばし、避けた瞬間を狙っていた二人目の攻撃を避けてから足で踏みつけて首を踏みちぎる。三人目を顔面でとらえて大太刀の柄で首を殴り砕き、四人目の首を返しの刃で跳ね飛ばす。五人目にはポリゴンの拡散しきっていない二人目の体を蹴り上げて叩きつけ、硬直した一瞬に首を跳ね飛ばす。

 ほぼ同時に襲いかかった五人を殺す。拡散するポリゴンはアインクラッドでの死ではなく、現実世界での死を示している。

「到底足りないなぁ」

 これを慢心や油断と呼ぶ人もいるだろうが、それは断じて違う。俺は、

「見下しているんだ」

 首を撥ねてまた一人ラフィン・コフィンの構成員を殺す。砕け散る頭が満足そうな顔で消えて行く。腹立たしい事だがこいつらはどうしようもないキリングジャンキーどもで、自分が死ぬことすら楽しんでいるイカレた連中だ。

 この刹那に輝く事は大いに結構。それ自体文句はない。

 ただ、相手が悪い。

 さらに三人ほど接近してくる。一番近くにいた相手に一瞬で接近し、首に得物を突き刺す。その状態のまま二人目の首に大太刀を突き刺し、

「死ねッ―――!」

 三人目の首を二つの首もろとも切り飛ばす。何もできないまま砕けて行くポリゴンが夜の闇のおかげではっきりと見える。

「っく、死ねるかよぉ!」

 攻略組のうちの一人が敵を殺した。いい流れだ。一人がやればその流れで今度は俺、次に、また数人、と増える。このまま少し狩り続ければ問題なく全滅させることができそうだ。大太刀を二、三回ほど振ってから肩の上に乗せる。

 すこし離れた位置でクラインがローテーションを組んで戦っているのが見える。一人倒したら数人で抑え、そして縛って無力化している。別の場所ではリーダーをしている男が一人、切り殺したのが見える。目元から涙を流しているあたり、やりきれないところがあるのだろう。

 そして、振り返る。

 キリトがラフィン・コフィンの構成員を一人切り殺すのと、コタロウが一人切り倒すのが見えた。この分には幹部が出でもしない限り問題ないだろうと判断した瞬間、

                     「レスト・イン・ピース」

 コタロウとキリトが吹き飛ばされた。一瞬で、コタロウの体には何十本ものナイフが突き刺さって、キリトの体には殴られたような衝撃が見える。

「……あっ」

 吹き飛ばされただけではなく、それを最後の言葉にコタロウのライフバーは全損し、ポリゴンが砕け散った。キリトも体力が七割ほど今の一撃で持っていかれ、地面を何度も転げまわってから倒れる。

「やぁ兄弟。元気にしてるかな? 今日のパーティーはどうだい? 月もいい感じに輝いていて今夜は結構いい夜だと思うんだけど君はそこら辺どう思うかな?」

 倒れたキリトが立ち上がり、素早く距離を取る。その顔は苦々しく、手の中にはポーションが握られている。減った体力を回復しながら、合流する。あぁ、しかしまた一人減ってしまった。馬鹿が。最後ぐらいもう少し気のきいたセリフを言うべきなんじゃないのか?

「おい、少しはこっちに反応してくれよ。せっかく登場を派手に演出したんだからリアクションを見せてくれなきゃ困るぜ?」

 ここで初めて侵入者を見る。

 吐き気を覚える。

 一言で言えば”アイツ”に似ている。声も、顔も、そしてチンピラなファッションセンスも。その横に現れた男は全身黒で、見慣れない得物を握っている。まるでナイフを逆手に握っているような姿だが、普通のナイフよりももっと大きめのサイズだ。

「おいおい、ここまでノーリアクションだとちょっと詰まらないぜ? もう少し殺して演出するか?」

「やめておけジューダス―――その必要はなさそうだ」

 キリトも回復してきたところで―――前に踏み出す。一撃で殺すつもりで刃を振るう。上段から、全ての力、殺意、技術、文字通り全身全霊の一撃を持って殺す。踏込から到達までは一秒もかからない。武器を持ち上げる事すら許さない。何もできずに死ね。

 全力の刃は全身黒に阻まれる。右手に握られる逆手の刃はどこか処刑用の道具を思わせる。ギロチンではなく、こっちは死神の鎌。あえて言うのであれば―――そう、デスサイズだ。

 受け止めた刃はきしむことも揺れることもない。圧倒的な力で抑えつけられているように不動だった。文字通り全身全霊の一撃だった。それが全く意味をなさない。

「サイアス!」

 背後でキリトが構えるのが解る。たぶん、本能的に、殺そうとしなければ”戦えない”相手であると判断したのだろう。だが今はそれがどうでもよくて、

「ありがとう! 久しぶりにクソの様な気分だ……! 俺のささやかな幸せを台無しにしてくれてありがとう、本当に感謝しているよ! だから死ね。今すぐ死ね。息をするな。息も止めるな。何もするな。生きることをやめる以外のことをするな。死ね」

「ははは、いい感じに出来上がってんじゃねえか。おい、ナハト」

「あぁ―――死ぬのは構わないが―――俺を殺せるようになってから言え」

「っがぁ」

 片腕の動作で吹き飛ばされる。衝撃に抗えず吹き飛んだ体を背後でキリトが抱き止める。そのままの体勢で耳に、キリトが口を寄せてくる。

「勝てるか?」

「無理」

 死ぬ。確実に。目の前の存在は俺やキリトを完全に超越した場所に立っている。それは見ただけでも解る。それこそ、キリトにだって解る。明らかに人間じゃない領域の存在だ。このまま戦えば確実に死ぬ。だけど、

「なら逃げるか?」

「もちろんごめんだ」

 それは互いに同意だ。

「―――こんな所でまだ死ねないんだ」

 そう言うキリトの瞳は生気が溢れていた。美しく、力強く、未来を見る瞳だ。正直その輝きが羨ましい。そんな風に輝けたら、と思う。

『アス……』

 無理だ。進んでいるようで過去しか見てない俺には無理だ。だから、自滅の道しかない。

 立ち上がり、大太刀を両手で握って正眼の構えを持ってナハト、そしてジューダスと呼ばれる存在に向き合う。

「コタロウの弔い合戦だ」

「応、負けられねぇな」

 最初から退く事は選択肢に含まれていないのだ。周りの状況が援軍を許さないため俺達だけで、この二人を絶対に殺す必要がある―――俺たちの為、死者を弔うために。だから、

「聖槍十三騎士団黒円卓、サイアス」

「ナハト」

「ジューダス、ジューダス・ストライフ」

「ソロ、キリト」

 これは一種のルールみたいなものだ。本気で殺し合うときの、決闘の流儀。何となく西部劇のガンマンを思い出す一幕だが、儀式を通して―――

「―――レッツ・ダンスマカブル」

 死の踊りが始まる。
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| 断頭の剣鬼 | 11:10 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

大盛ワカメww
コタロウで、よかったね……。

戦いはじまる前の名乗りってカッコいいですよね。

| ろくぞー | 2012/08/07 11:25 | URL |

あー……うん。あるよね、そういうイタい名前考える時期が、ネトゲとか特に(苦笑

おお、戦の作法!
やっばいアツいッス!
あの人の名言的シーン、アニキは出ない、んだろうけど、次回のパーティータイムに期待大です
(>∀<ゝ

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/07 14:02 | URL | ≫ EDIT

コタロォォォォウッ!?
コタロウ君のご冥福をお祈りします………

さて、次回は派手な戦いになりそうですねw
次を楽しみにしていますね~~!!

| 尚識 | 2012/08/07 19:07 | URL | ≫ EDIT

サイアスとキリトが┌(┌^o^)┐ホモォ…に見えた件。
……私の脳修正されて!!

| 蒼桜 | 2012/08/08 11:38 | URL |















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