陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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赤鼻のトナカイ ―――クライ・イン・ハート

基本推奨BGM:Holocaust
*1推奨BGM:AHIH ASHR AHIH


 一番最初に現れたのはスカウト風の男だった。その男がいいぞ、というとマップの入り口が連続で光りだす。その光はプレイヤーの侵入を告げる光。光った後には鎧を着るプレイヤーの姿が現れる。キリトを殴るために振り上げていた拳を引込め、首の斬首痕を隠すためのマフラーが若干ズレているためそれを整える。キリトも振り上げていた拳を引込める。

 そうする間にも入り口付近は連続で光る。そして、新たなプレイヤーの侵入を知らせる。クライン率いる≪風林火山≫のメンバーも流石に入り口から離れ、此方に近寄る。新たな侵入者の服装には見覚えがある。多くのメンバーが鎧をベースとした防具に身を包み、そこに龍のエンブレムを施しているギルドは―――

「―――お、おい、≪聖竜連合≫の攻略部隊だよ。こいつらレアアイテムの為ならオレンジになることも辞さない連中だぞ」

「……へぇ」


 となると自力でここまでたどり着いたか? いや、多分だが、

「お前つけられたなクライン」

「クソ!」

 クラインの動きが見張られていたのだろう。ここまで侵入が遅くなったのはおそらく≪聞き耳≫スキルか≪覗き見≫スキルで俺とキリトがつぶれあうのを待って漁夫の利を得るためだろう。汚くはない。正直睡眠PKや麻痺PKの方が幾分か汚く感じるし、これはまだまだ常識の範疇だ。だが、

「俺とキリトの喧嘩に水を差したのは許しがたい」

 ともかく、侵入者のおかげでキリトとの喧嘩に邪魔が入ってしまった。魔女はこの結果、お互いに死ななかった事が何よりも安心したようで、ほっとした感情が伝わってくる。改めてこいつが女だという事を認識させられる。溜息を吐きながら投げ捨てた得物を回収し、インベントリからポーションを取り出して回復する。横で、キリトも同じように武器の回収と回復をしているのが見える。

 そこで入り口の発光が終わる。一際高級だと解る防具に身を包んだプレイヤーが前に出てくる。装備品からして≪軍≫とは違う、攻略レベルプレイヤーの集団だ。それを統率する人間となればかなりの高レベルだろう。普通ならこの数の強敵を前に心が躍るのだろうが、今はキリトとの戦いに水を差された、邪魔をされたという苛立ちで胸が満たしていた。公平であるために全力を出す事はできなかったが、それでも本気で殺し合って拮抗できる存在は稀だ。キリトの様に殺し合える存在を強くなるために欲していた。

「で? 君たちはそこで何をしているんだ?」

 リーダー格の男が前に出てきて、語りかけてくる。

「我々はこれから≪背教者ニコラス≫を相手にしなければならないのだ。邪魔だから退いてもらえないか」

「こいついけしゃあしゃあと……!」

 此方が全部で八人ほどであるのに対して、相手は三十近いプレイヤーの集団だ。数こそが力であるという言葉がある様に、数とは絶対的差で、埋められない差である。だからここでは圧倒的数を用意できる≪聖竜連合≫が優位に立っている。一番厄介なキリトと俺が精神的に疲労するまで待っていたというのも抜け目がなくて素晴らしい。

 結果、印象としては死刑。

『それ、印象なの……?』

 とりあえず、この状況は―――

「―――あ? なんか塵屑が喋ってきてるんですけど? お前らアイツが言った事聞こえた? 俺糞語理解できないから軽く意味不明なんだけど。おい、キリト、クライン、お前らには理解できたかよ」

 アホみたいな挑発に相手は口を開け、この状況で挑発したことにクラインが頭を抱える。

「あぁ、そういやあお前ってこんな奴だったよな……」

 悩む時点で馬鹿馬鹿しい。気に入らなきゃ殺せばいい。綺麗さっぱり消え去るまで殺せば問題ない。正直今回の件、キリトと戦えただけで満足だ。ニコラスにはもう興味はない。

「ところで、俺はキリトに行かせようと思うんだが」

「……」

「おい! ……いや、それしかねぇか……」

 クラインも諦めの溜息を吐き出し、刀を抜く。俺も、大太刀を肩に担ぐ。

「行けキリト! 死ぬんじゃねぇぞ! 絶対死ぬんじゃねぇぞ! 死んだら絶対許さねぇからな!」

 やはり、クラインはいいやつだ。どこまでも友の事を心配している。正直羨ましい。俺も誰かに心配されていたが、それらを全部無視した。救いの手を叩いた。一人になるために切りかかることもあってもう誰も近寄らない。近寄ってきたとしてもアルゴみたいな利害関係を結んでいる奴だけだ。黒円卓なんて利用し、利用されているだけの関係だ。到底友情と呼べるようなものを俺は一切感じてはいない。

 だから、

「苦しめキリト」

 剣を握るキリトの手がわずかに強張るのが解る。

「ニコラスを倒して蘇生アイテムを手に入れて絶望しろ。そしてくだらない幻想を捨てろ。死者は帰ってこないし帰ってくるべきじゃないんだ。それは死者への冒涜で、その人の価値を貶める行為だ」

 だからこそ、

「俺たちはこの刹那に輝かなきゃいけないんだ」

「……」

 無言のまま、キリトが奥のマップへ進む。おそらく、いや、絶対にキリトはニコラスに勝利するだろう。それはキリトを信じているという事もあるが、

 ―――あの詐欺師がこんな所でキリトを殺すはずがない。


                           ◆


「―――然り、流石■■■■■■■■―――」


                           ◆


 軽いノイズが頭の中を走る。それと共に脳内に軽いイメージと言葉が見えた。吐き気のするイメージは総てがすべて理解できたわけじゃない。だがどうしようもなく操られ、そして掌の上で踊らされていることだけが理解できる。おそらく、十手先まで見透かされ、誘導されている―――そんな気がする。これからは逃げられない。

 だとしても、進むしかないのだ。立ち止まることは自分の為にも許されない。

 彼女の為にも許されない。

「最終警告だ。そこを退け」

 高圧的な態度で≪聖竜連合≫の部隊を率いる隊長が最終警告といって武器を引き抜いてくる。最初からこいつは抵抗する事を望んでいる。此方を殺す理由を探している。おそらく退いても何かと理由をつけて挑発してくるだろう。だったら、遠慮する必要はない。

「悪い。最近耳が遠くてよく聞こえないんだわ。人語で喋ってくれ」

 挑発に相手が笑みを深める。クラインは呆れたような、やりきれないような表情を浮かべる。

 ……だろうな。

 クラインは優しすぎる。相手が犯罪者プレイヤーだとしても、こいつは殺す事ができないだろう。俺みたいに平気に人を殺せる奴の頭がおかしいんだ。たぶん、そこらへんは最初から―――司狼と一緒に馬鹿やってる頃から少しずつズレてきてたのかもしれない。だから、クラインの感性が”正しすぎる”のだ。でも、それはこの狂った世界ではとても貴重なもので、

「≪風林火山≫は下がってろ」

 得物を片手で握り、右肩に乗せる様にして前に踏み出す。武器を構えたクラインが此方の背中を見つめている。

「サイアスおめぇ―――」

「勘違いするな。元々≪聖竜連合≫を何人か俺は殺ってる。だから今更何人増えようが恨まれることに変わりはない。殺して恨まれて刺客が増えて俺の餌になる。それだけだ」

『アスは優しいね』

 優しいわけじゃない。ただのエゴイズムだ。

 クラインが刀を下げる。

「俺は、俺が、情けねぇ……! キリトも止められずおめぇにも守られている……!」

「馬鹿野郎」

 そのままのお前だからキリトが今まで一線を越えなかったんだろ?

「殺せ」

「殺―――」

 前へ素早く跳ぶ。踏込ではなく、軽い跳躍。前へと進むような跳躍。大太刀は一瞬で腰の位置まで持って行き、跳躍の状態から接近した瞬間に横なぎに一閃。

「―――した」

 素早い斬撃と共に先頭へと飛び出した者の首を三つ一閃で弾き飛ばし宣言した様に殺した。軽い跳躍から着地した時には既に体はポリゴンとなって弾けている。一撃で三人殺した光景を見つめ、相手は茫然としている。

「なんだ、不思議か? 別に驚く事じゃないだろ。俺もキリトもアインクラッドの中ではレベル最上位クラスのプレイヤーだぞ。そしてレベル制MMOはレベルとステータスが全てだ。レベルの差が開けば開くほど圧倒的差がついて倒せなくなる。常識だ。何よりさっきキリトと一戦交えてよ、エンジンかかってるんだわ」

 大太刀を両手で握る、構える。

 こいつらなら遠慮はいらない。一方的に斬殺しても笑ったままでいられる。相手は自分と同じ他人を殺しても平気でいられる屑の様なやつらだ。昼間、友の敵を取ろうとした少しでも人間らしいやつではない。

 なのに、

「クソ!」

「よくも殺してくれたな!」

「カタキを取らせてもらうぞ」

「おいおい、なんだよそりゃあ」

 今更友情ごっこだなんてなんて事をしてくれるんだ。自分の存在以上に怖気が走る。

 ソードスキルで切りかかってきた相手に対して一切のリアクションを見せずに攻撃を体で受け止める。素早く、正確で、そして連携が取れている訓練された動きだ。モンスター相手ではなくプレイヤー相手を考慮して作られた動きだという事が”無駄な”複雑さから解る。モンスターのAIアルゴリズムを崩すだけならそんな複雑さは必要ないからだ。

 攻撃によって本当に数ミリだけ体力が削れる。攻撃が終わって硬直した瞬間を狙って首を跳ね飛ばす。

 その姿に相手は激怒する。

 よくも仲間を。

 よくもやってくれたな。

 許さない。

 許さないぞ。

「何だそれは? 今更友情ごっこか? ……あぁ、もういい。俺と同じ人間の屑なのに一人前に友情なんか。好きなだけ嘆けよ。そういうのが好きなんだろ?」

 クラインの様な人間ならまだ問題ないが、こいつらがやっている姿は吐き気を催す。

 だから、

「あっ」

「かっ」

「っがぁ」

 首を跳ね飛ばす。一瞬の踏み込みから大太刀を振る動きを流れる様に、よどみなく行う。その際に体に受けるダメージは気にしない。ただ首を跳ね飛ばす。名前も、顔も覚えることはない。ただ障害物として邪魔だと認識し、首を跳ね飛ばす。

「っひ、ま―――」

 誰かが恐怖し、逃げ出そうとする。が、出口に先回りし、そいつの首を跳ね飛ばす。首を飛ばす、その一個だけに特化した俺は処刑人としてここに降臨している。

「逃げ場なんてない―――さあ、クソらしく無様に呻いて死ぬか、最後は人間らしく立ち向かって死ぬかを選べ」

 死という結末に変わりはない。


                           ◆


*1

 ―――奥からキリトが現れる。

 何もできずただ立ち尽くすだけのクラインと≪風林火山≫、そして全てを殺して木に背中を預ける俺の前で、キリトの動きが止まる。その手の中には丸い石が一つ握られている。おそらくそれがキリトが求めていた死者蘇生のアイテム。それが残っているという事は―――

「キリト!」

 クラインが駆け付ける。

「キリト! 無事だったんだな!? それで手に入れられたか!?」

 心配するクラインの前で、キリトは手に握っていた石をクラインの方へ投げる。受け取ったクラインはその効果を素早く確認する、そして驚愕する。

「……死んでから十秒以内……?」

「ま、そんな所だろうよ」

 この世界を現実にすることを望んだ茅場晶彦が、死者蘇生なんて都合のいいアイテムを残すわけがない。課金アイテムだって三層に届く頃は修正されていた。そう考えるとアイテムが残されていただけでも奇跡だ。いや、あるいは”脚本家”による筋書きの一つかもしれない。が、答える人間はいない。いつも疑問に対して答えてくれるような、都合のいい人間はいない。結局のところは自分が真実と決めた事を信じて、進む以外にはありえないのだ。

「……次、誰かが死にかけたときはそれ使って助けてくれ」

 そう言ってキリトがクラインから離れる。そしてクラインが崩れ落ちる。だが崩れ落ちる前にキリトのコートの裾を掴み、

「負けるなよ、おまえぇだけは負けんなよキリト、死んでいいって思うんじゃねぇぞ、なあ、キリト、負けるんじゃねえぞ……」

 泣きながらクラインはキリトを励ましていた。だがそれを無視してキリトは出口へと向かう。

「キリト」

 入り口近く、目の前を通るキリトを呼び止める。

「……」

 特に何かを言う必要はないだろう。言いたいことは全部クラインが言ってくれるし、俺のキャラでもない。それに切りあった時に伝えたいことは全部言った。だから、

「フローエ・ヴァイナハテン―――メリークリスマス」

「……」

 それを伝えるとキリトが迷いの森から去っていく。あとに残されたのは≪風林火山≫と俺だけで、≪聖竜連合≫の人間は一人も残されていなかった。

 これだけランカーギルドを殺したのだ、近いうちに全面戦争があり得るかもしれない。

『アスは優しいね』

 黙れ。

『厳しい言葉を送ったり怒ったりするのは、本当に許せないからか―――』

 黙れそれ以上言うな。

『―――誰かに知って欲しいから』

「黙れ魔女がっ!」

 思わず叫んだ言葉に注目が集まる。

「……ッチ」

 もうここには用がない。この先≪風林火山≫がどうなるかは解らない。が、今は、

 全力で魔女の言った事を忘れたかった。
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| 断頭の剣鬼 | 11:31 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ふぅ……アスたんマジ容赦ねぇ…でもそこが素敵。
あとニートうぜぇ。異論は認めない。
キリトさん元気だして、未来の嫁仕事しろ。

| ろくぞー | 2012/08/04 13:33 | URL |

うん。キリキリはこうして修羅道から外れ……まあ、予想とは違ったけど、アスたんの殺戮祭が見れただけで満足です!(オイ
ニート、うん。このうざさはもはやうっとしいレベルを超えて、いっそ清々しい領域を更に超えてやっぱり病的にUzeeee……もはや真理だな(笑)
そして、決してめげない女神は今日もマジ女神。
最後に、あえて言おう。
金.髪.巨.乳!
あ、できたw

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/04 18:14 | URL | ≫ EDIT

うわぁ……サイアスはやっぱり容赦無いですね。
そして一文だけとはいえ、ニートがウザい。
でもこれだけ攻略組所属のプレイヤーを殺したとなると、次のラフコフ編で連中と纏めて討伐対象に挙げられそうな気が…

| reficul | 2012/08/05 00:44 | URL | ≫ EDIT















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