陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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五話



 車椅子を押されながら進んだ道は確実に日本だが、どこかヨーロッパぽさを感じるようなレンガ造りの道路が特徴的だった。清掃が行き届いていて、清潔に保たれている。住むにはいい場所かもしれないというのが素直な感想だ。日も高く上がっていて、まだその日は続くことを示している。おそらく起きた時間は早朝か何かだったのだろうか、結構の疲労を感じる。

 とりあえず、見た事のない風景であることは確実だ。麻帆良という地名も聞いたことがない。本格的に別世界に迷い込んだような気がする。改めて考えることができるようになってくると、最初みたいには集中できることがあれば話は別だが、改めてゆっくりと考えられる状況になると―――怖い。やはり恐怖がこの状況に対して湧いてくる。少しだけ、わけのわからない状況に体を震わせる。

「大丈夫かマルグリット」

 エヴァンジェリンが心配してくれている。つまり、この体の持ち主はエヴァンジェリンにとっては大事な誰かだったのだろう。そう思うと申し訳なくなってくる。だから、思わず口から漏らしてしまった。

「……ごめんなさい」

 その事にエヴァンジェリンが一瞬だけ呆気にとられ、

「気にするな。なくなってしまったものはもう戻らない。私はそれほど気にしない」

 それほど、ということはやっぱり気にはしているのだろう。いきなりこうなってしまった事に思うこともあるが、この体の持ち主の未来を、そしてすぐ横の少女の過去を奪ってしまった事に俯くしかなかった。こんな状況で書ける言葉を自分は知らない。

 麻帆良と呼ばれる場所の街並みを抜けると、木々に囲まれた林道に入る。その奥にエヴァンジェリンは住んでいるのだろうか、迷うことなく進んでいる。

 謝罪してから数分、重くのしかかる雰囲気の中、エヴァンジェリンが口を開く。

「マルグリット」

「はい?」

「お前、風呂に最後に入ったのは何時だ」

「え、えっと」

 それは―――もちろん六年前? 定期的に看護師が体を吹いているだろうから汚れてはいないが、清潔かどうかを問われれば確実に清潔ではないと答えられる。少なくとも”俺”は清潔好きで毎日風呂に入っていた。

「よし、決めたぞ」

 エヴァンジェリンが笑顔を浮かべる。

「まずはお前を風呂に叩き込むぞ。私がお前を洗ってやる」

「え?」

 これから起こりうる事態に一気に赤面し、更に深く俯く。

 ちょ、ちょっと待て。

 それはつまり一緒に風呂に入るということなのだろう? 看護師による羞恥プレイにより若干体勢が付いたとはいえ、いきなり自分のだが完全裸、そして幼女体型の裸を見るとかどう見てもハードルとかそんな次元じゃない。ウサギをガントリークレーンの前において飛び越えろと言っているようなものだ。無理な事を言ってっも無理だ。

「ひ、一人、で……!」

「何が一人で、だ」

 あきれた様子のエヴァンジェリンがいる。

「お前は一人では何もできないだろう」

 確かに体は不自由でリハビリは必要だ。だからといって異性と一緒に入ったら色々と問題だ。いや、中身の問題だ。自分の体で慣れてから、それが理想なのに。

「遠慮する事はないんだぞ」

 すごく優しくしてもらっているところは悪いが、その好意が今、ここにいる俺を全力で窮地へと叩き落としています。なのでなるべくそれをやんわりとお断りします。だけど言い方はどう選べばいいのだろうか……!

「数年ぶりに退院したんだ。たまには面倒を見させろ」

 すごいお姉さん風を吹かせていますがこれで姿は九歳ぐらいです。えぇ、凄い大人びた幼女です。どうにかならないのかこの状況。だがやっぱり、正直に言うしか逃げ道はなくて、

「は、は」

「は?」

「恥ずかしい……」

 そう言うとエヴァンジェリンが軽く笑いだす。あ、やっぱりこんなリアクションになってしまったと思う。

「何を言ってるんだ。私たちは女同士だぞ。気にすることは何一つないだろ」

 いいえ、私は悩み事であふれています。

 確定かされたエヴァンジェリンの暴挙の前に、俺はドナドナを心の中で歌い続ける事しか抗う術を知らなかった。ついでに今のうちに覚悟を硬く決めておく。なぜ、なぜこんなことになってしまったんだろう……。
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