陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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一話



 眩しい。

 いつも通り目を開けようとしてまず最初に感じたことがそれだった。とにかく眩しい。開けようとした目をすぐに閉じて何も見えない様にする。頭の位置からしてダイレクトに日の光が顔に当たることはないから、眩しいはずはないんだけどと、そう思うけど事実としては眩しいから仕方がない。先に体を動かそうとして、

「……」

 体が全く動かない。いや、正確には少しだけ動く。だけどまるで全身が石になったように動かない。ついでに声も出ない。え、マジでこれどうしたの? っという感じに言葉を出したいのだが声がでない。マジで何かがおかしい。現在進行形で何かがおかしい。というよりも少し待て。

 体全体がおかしい。

 まるでサイズの合わない服を着ているような、無駄にアンバランスな恰好でいるような、そんな感じがする。仰向けになっているのに胸のあたりが重くなっていて、何か汗を感じる。何かすごいいやな予感がする。だがとりあえずは体だ。体を動かさないことには何も始まりはしない。

 とりあえず体を動かす涙ぐましい努力を始める。

 体を動かそうとしてもピクリとも動かないから、まずは指の先に力を入れる。反応はないが、全神経を集中して指を動かすことだけに労力を費やす。

 するとだんだんと、少しずつだが指の先に感覚がついてくる。指の先からベッドシーツの柔らかい感触が伝わってくる。指の第一関節と第二関節を何度も折り曲げて、それがスムーズにできるようになったらその範囲を手首へと伸ばす。

 それを十分も続けていると、手首も動き始める。そしてそれが肘にまで達した所で、

「……」

 疲れる。マジ疲れる。いやいやいや、俺いったい何をやってるの。いや、体を動かそうとしてるんだけど。

 まるで寝起きの、血が止まっていた体を動かすような感覚だ。しばらくは血が通ってなくて動かない腕も、何度か揉んだり動かしたりして動ける用意した、あの感覚に似ている。ともかく、それを続けるしかない。開かなかった目も声を出す練習と一緒にして続ける。本当に涙ぐましい努力をしてると思う。誰も応援してくれないのがすっごい残念。心が折れる前に誰か手伝って。

 が、そんな祈りは届くはずもなく、地味な努力は続いて。

「あ……ぁ……あ……い、う、……ぇ、お」

 目が眩しさに慣れて、声も出るようになってきた。ここで、やっと動かせない首で見える光景を把握した。

「し……てん……じょだ」

 ネタの一発でもかまそうと思ったが声が出なかった。そこまで言葉を出すことができない。というよりも、明らかに自分の声じゃない。自分の知っている声の数十倍可愛い。何この声可愛い恋しちゃいそう。そして天井は俺の知っている天井よりも高いし。明らかに違う部屋だし。というかこれってまさかの、伝説の、

 性転換!?

 ……んなわけないか。

 そんな非現実的な現象が起きてたまるか。

 それはそうと、いよいよ両腕が動くようになった。完全に動くようになった両腕でまずはベッドに触れる。柔らかく、滑らかで、いい素材を使っていることがわかる。俺が学生寮で使っている様な安物のベッドシーツとは違う。うーむ、柔らかい。

 さて、いい加減確かめるか。

 懸念を確かめるためにも、

 動く両手を―――胸の重みに触れる。

 柔らかい。それが第一の感想だった。腕に収まりきらない大きさを持って、柔らかく、それでいてハリと弾力のあるそれは熱を受けてか若干汗ばんでた。服の下、先端の突起を軽く触れて―ちょっとつまんでみる。

「んぁ、ん……!」

 背中をちょっとぞくぞくっとした感触が駆け抜けた。艶やかな声が漏れたのは悪くないと思う。そして、恐る恐る手を下半身のほうに持って行き、本来そこにあるはずのものを確認する。が、

 そこにあるはずの器官は存在せず、代わりに女性器があった。

 ある。ない。声可愛い。なんだこの状況。

 さっきの感覚が功を奏したのか体全体が動く様になる。ゆっくりと、それこそ亀ほどの速さだが、体を起き上がらせる事に成功する。そして起き上がらせた体を見下ろす。そこには男のロマンともいえる大きな山が二つ、そして象徴的なアレが消えているのが嫌でも目に入る。服装も寝る前に来ていたトランクスとシャツじゃなく、病人が着るような青い服だ。肩にかかってベッドまでに届く長い金髪も美しい。

 そこで顔を横に動かして、ベッドサイドテーブルを見つける。鉄の表面から反射してる顔は―――どう見ても美少女のそれだ。

「……え? な、に、こ……れ?」

 俺じゃない。明らかに俺ではない。性転換なんてたとえを出したが、これはどちらかといえば―――。

 部屋の扉が開く。

「マルグリットさん、今日のお掃除を始めますよ」

 入ってきたのは若い女性だった。それもナース服の。これでこのカーテンを閉め切った空間が病室だという事が確定したわけだが。

「……!」

 そのナースが此方を見て驚愕の表情を浮かべる。そして、ダッシュで部屋から出る。

「先生! 先生―――!! マルグリットさんが起きてます! 先生―――! 早く来いよオラァ―――!!」

 最後の乙女らしからぬ咆哮は無視するとして、マルグリット。それがこの体の持ち主の名前。

 動く両腕で服をつかみ、その中に視線を向ける。

 うむ。ある。ない。

 どうやら夢でもなんでもなく、ガチ美少女に憑依したらしい。なんだこの展開。
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