陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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第三話 来客



 玖楼が異世界に流れ着いてから約半年が経過した。その間にも玖楼はもう殆どこの世界の常識について学び、そして住人と化していた。まだまだ小さなことで常識の違い等が見えるが、それは些細なことである。

 目の前の状況と比べれば。

「セギホノセギホノアヴェスタアヴェスタ!」

 ずどどどん!

 轟音を立てて水が爆発するように吹き飛び、宙を待った水が雨のように降り注ぐ。ありえない姿をした生物がまるで意味のわからない言葉を継げながら、その軟体のような体を動かし攻撃してくる。

 それを玖楼は……戦いもせず死者の門のある部屋の隅で体育座りしていた。その横にはリタとナベリウス以外に普段はここに居ないもう一人の姿が見えた。

「す、すすすすごい光景ですね」

「そうね」

 必要以上に噛んでいる玖楼の言葉に相槌が打たれる。

 玖楼と女性の目線の先には覇気を漲らせたリッチがステッキをバトンの様に回しながら魔法を撃つ光景、人型軟体生物が玖楼の目では追いつけない速さで攻撃している姿、そしてリッチを応援するリタとナベリウスの姿が座る二人の横ある。

 リッチも軟体人間に負けず劣らず、あらゆる場所から大量のアンデッドを召還し、それを盾にしたり自爆特攻させたりと、様々な方法で攻撃する。

「フハハハハハ! 此処へ流れ着いて数十年! 私と同格のものと出会えるとはな! この出会いに感謝するぞアラン・マクレガー! さぁ、全力を持ってかかってくるが良い!」

「セギホノセギホノアヴェスタアヴェスタァァァァァァァァ!!!!!!」

ずどーん。
ががががーん。
ずしーん。
ばばーん。
どかーん。

 ラメ入りペ○シマンは傷つくような姿を見せず、リッチは命のストックが万単位であるため死なない。

 今度はやや落ち着いた感じに、

「え、えっと……すごい光景っすね!」

「そうね」

 激しくテンパってる玖楼にはそれしか言えず、未だ中々状況が飲み込めない赤髪の女性もそれしか返事ができなかった。

 事の発端は時間をさかのぼり、約数日前の話である。


                   ●


「本当に行くのかい? やめておいた方がいいと思うけどね……。結構距離があるし女性には辛いと思うよ?」

「ありがとう。でも、見れるものはすべて見て回りたいから。それに、いざとなれば飛翔の首飾りで脱出できるし、ね」

 飛翔の首飾りとは多少値が張るも、冒険者の間では重宝されている道具である。見た目は宝石の付いた首飾りではあるが、それでも使用すれば即座にその場から使用者を飛ばし、ダンジョンの中にいる場合は即座にダンジョンから脱出させてくれる優れものだ。平原や街道の場合は最後に立ち寄った村まで返してくれる高性能なものもある。

「そうかい……それでは無事をバリハルト様にお祈りしてるよ」

「ありがとう」

 長い、赤い髪の女性が両腕を天に向けて、体を伸ばしながら宿から出てくる。青緑と白のツートーンに統一された服を着用しながら頭をすっぽり隠す帽子を被り、その姿はまさに美女と呼べる美貌の持ち主である。優しい風が彼女の髪を軽く揺らし、燃えるように赤い髪をさらに魅せる。

「うん、分かってる。無茶はしないわ」

 彼女の前には誰もいないが、それでも彼女には何かが見えるかのように虚空へと向けて声を投げかける。返事の変わりに新たに風が彼女の髪を揺らす。両手を下げて歩き出そうとすると、彼女の姿を見つけたのか村の子供達が彼女へと寄ってくる。ここ数日の滞在で彼女が遊び相手をしたり話し相手になったりした、小さな村の少ない子供達だ。

「おねーちゃん!」

 大声を上げながら少年を先頭に数人の子供がやってくる。それを笑みを浮かべながら迎えると膝を折り目線を合わせるようにする。駆けつけた子供達が、彼女が腰にポーチをつけてたりと普段は見ない装備をつけているのを見て、

「おねーちゃん……もう村を出てっちゃうの?」

 リーダー格の少年が声を漏らすと不安が伝染したのか周りの居る数人の子供達も、不安そうな顔で彼女を見上げる。だがそれでも彼女は笑みを崩さず片手を少年の頭に乗せ、優しく硬めの髪をなでる。

「大丈夫。少し遠出をするだけでまたすぐに帰ってくるから。少なくとも今月にはね」

「本当に?」

「えぇ、本当よ」

 我が子を見るような慈母の笑みを浮かばせ、子供達を安心させると立ち上がり、手を振りながらも村の外へと目指して歩き始める。一度だけ止まり、後ろへと振り返り、

「いい子にしてるのよ?」

「またねサティアおねーちゃん!」

 赤髪のの女、サティアは北華鏡の集落をでた。


                   ●


 冥き途と言う場所は基本的には知られてはいない。それもその存在自体はとても神聖ではあるが内部が危険であり、死者に介入することはどの神々をもが止めているからだ。

 死者は死んでいるべきであるとは自明の理であり、必要以上の干渉を受けないように極僅かな書物と存在を除いてその存在が隠蔽、もしくは忘れ去られているのは当たり前である。

 だが、例外とは何時の世にも存在する。

 北華鏡の集落がその例外とも言える。口伝としてだが昔から場所自体は伝わっているが同時に絶対近寄ってはいけない等と、その危険性を訴える内容でもあった。旅を続け多くの知識を取り込んできたサティアにとって口伝の内容は十分すぎるヒントであった。

 世界を見回り、人の世の流れを見る。

 そのために多くのモノを見てきた彼女だが、それでもまだ冥き途へ行った事はなかった。

 冥き途とは死者の通り道、来世への入り口。冥き途を通り死者の門をくぐって次の世へと移り行く前に確実に死者たちは冥き途を通る。この世界の死者たちは確実にそこに集まるのだ。

 故に、サティアは見たかったのだ。

 今の世の、死んだ人たちの心を。

 サティアは聞きたかったのだ。

 今の世の、死んだ人たちの声を。

 それが可能であるかどうかは別の問題として冥き途自体は大いに好奇心と、そして知識欲をくすぐる場所である。そこに門番として存在するソロモンの魔神も悠久のときを生きているはず。ならば多くの事を知っているはず。少し話をしてみるのも悪くはない。そういう考えだ。

 だがその考えは入り口に立って少しなりを潜めた。

「……これは……」

 北華鏡の集落のから歩いて数日、森の中にあった旧時代の転送装置。その上に乗って外部の者用の入り口から冥き途へと入ると、まず感じられたのは思念だった。何十何百何千と言う人の思いと想いが集まり辺りに渦巻いていた。それだけではなく、気配を感じてみれば、

「不死者まで居るのね……」

 生きることを諦め切れなかったもの、外法に手を染めたもの。そういう者が辿る末路、不死者。その死に塗れた不浄の気配が入り口からはヒシヒシと感じられた。

 サティアの頬を新しい、此処にある空気とはまた別の風がなでる。

「大丈夫よ。この程度なら平気」

 村でやっていたように虚空へとそう言うと風は弱まるが、それでも心配そうに纏わり付く。自分の『同行者』の過保護っぷりに若干呆れを覚えるが、悪いことだとは思わないために、それを煩わしくは思わない。足を進める。

 足音の反響から広い空間で出来ているという事は分かる。なるべく足音を立てないように歩きながら暗い洞窟のような空間の中を進んでゆく。転送装置の少し先を進んだ先に水の流れを見つける。若干ボロボロだが、橋もその上にはかかっている。どこまでも透き通るような透明な川。底の白い砂まで見えてくるほどに透明だが、北華鏡の集落にあった川のように決して飲もうとは思えない。どこか寒気を覚える川である。

「ん……」

 橋を渉ろうと橋の上に乗ると、古くはあるがどこか真新しい修繕箇所が見える。特に中央に関しては材質が新しくなっている。劣化防止の魔術も使用されている。と言うことは極最近誰かが此処へ来て修復したと言うことだ。

「これは管理人がしたのかしら?」

 そう口に出してみるがその言葉に現実味はない。聞いた話だが冥き途の門番は基本的に不干渉で興味を持たない、自己完結タイプの人らしい。そのため、修理なんて面倒なことはしないだろう。と言うことは門番以外にも誰かが居る、と言うわけだ。

 橋を渉り切り、再び砂地のような大地に足を下ろす。砂地を歩くたびに足元で砂が擦れジャリジャリ音を鳴らすが橋を渉ってからサティアは違うことを心配しだしている。

 ……なにもこない?

 そう、何もこないことだった。

 大人しく死ぬことを選ばず体は腐ったまま、もしくは魂だけになっても抗う者、不死者としてはいかいしてたりしてもおかしくない気配であり、普段はそうであるはずなのだ。生きていることに嫉妬する彼らはサティアの気配を感じればすぐさまやってくるはずだが、なのに此処へ来て以来気配は感じれども、何もやってこない。

 そのことを怪訝に思いながらも武器である『戦意喪失の投石紐』を手に取る。投石紐とは相手に傷をつけることが目的ではなく、戦意を強制的に奪う武器である。どんな相手でも戦意だけは鍛えることができないため、肉体が強い相手でも良く効き、相手を撤退に追いやることのできる優れた武器である。

 その代わりに、一部の存在にはまったくと言っていいほど通用しない武器でもある。だが、殺生を嫌うサティアとしては一番頼りになる武器である。

 その武器を握りながら歩き進むと暗闇の中に階段が見えてくる。見たところ上と下へと行くことができるが、死者の門は地中不覚に存在すると聞いた。そのために迷わず下へと、階段を下り始める。

 ……が、それは長く続かなかった。

 タタタタタタ……足音がする。それも歩くようではなく、階段を駆け上がるような速度で。今まで現れなかったのが今かと思い、投石紐を構える。だが、それは期待していたものではなく、

 必死の形相で階段を駆け上がる人間の男だった。

 黒髪黒目の青年で、服装は見たこともないようなものを着ている。髪の毛を伸ばしているのか、目にかかる程度に髪が伸びて癖毛が小さく跳ねている。だがその青年は、階段を駆け上がりながら此方を見つけた瞬間必死に手を動かし、此処から立ち去るように示している。邪悪な気配も不浄の気配もない、魔力すら感じられない普通の人間。此処にいるのは到底正気とは思えないが、それでも此処にいると言うことはそれなりの理由があるのだろう。話の通ずる相手だと思い声をかけてみようとするが、

「あの、すみま「○×кゝ!!」……?」

 初めて聞く言語で言葉を遮られた。遮られたこと事態に嫌悪感を感じるほど人が小さいつもりはないが、それでも物凄く焦っているところを見るとどこか不安に思える。体を止めているその一瞬にも青年は近寄ってくる。焦ったような、必死な表情を浮かべ此方へと走ってくる。

「○!×!к!!!」

 やはり、言葉が分からない。聴いたことのない言葉だが、なんとなくニュアンスから分かる。

「逃……げろ?」

 ブンブンと頭が取れそうなほどの勢いで青年が頭を振るう。それを確認した瞬間、

ずがーん!

 冥き途全体に響くような爆発音が鳴り響く。それだけではなく、青年が駆け上がる階段、その後方から炎の波が吹き上がる。

 さすがのサティアも何から逃げるべきかこの時点で理解できた。

 青年の少し後ろで炎の進撃は止まり、なりを潜める。その事に安堵した表情を見せた青年が足を止めようとするが、冥き途の底から声が響く。

「―――デスサイズ」

「キャッ!」

 次の瞬間、青年が上からサティアを押し倒していた。


                   ●


 ヴゥン。

 そんな音だけを残して先ほどまでサティアの胴があった位置を黒い線が抜けた。階段には鋭利な刃物で割断されたような痕が残り、明らかにその場に居たら大事になった、それを表す痕だけが残されていた。

「あ、危ねぇ……!」

 リッチはテンションが上がると偶に周りが見えなくなるときがある。それをどうにかして欲しいと思う。

「ん……助かった……の?」

 下敷きにしている女性から声が漏れる。冥き途に来る外の人間で始めての人間だが、リッチの使った通訳の魔法はまだ効いている。なんとか彼女の言葉が分かる。体を起き上がらせようと指と腕に力を込め、

 自分の手が何処にあるかを見る。

 がっちり女性の胸を鷲掴みしてた。

「ぎゃあああ! すすすすすすすいません! ごごごご、ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」

 へたれ。
 童貞。
 過去に作った彼女の数0。

 玖楼にはいろんな意味で刺激が強すぎた。バックへ飛びながら土下座の体勢のまま土下座へと移行……まさに無駄のない謝罪の完璧な形。しかし決して頭は上に上げず、ひたすら許しを請うようにごめんなさいを言い続ける。

「え、あの……気にしてないわよ?えーと……どうしよう。話し通じてるのかしら……」

 ……もしかして言葉通じてない?

 そこはとなく会話がなってないことをリアクションから認識する。そういえばリッチのまあ方は自分が聞こえる分を通訳するだけだと言っていた。つまりは日本語では会話が通じない、と。

 そこで軽くだが習ったこっちの言葉を話してみる。

「えっと、す、すみません……ごめんなさい?」

 なぜか疑問符が付いているのは置いておいて、今度はちゃんと言葉が通じたのか手を振ってを見せて、

「いえ、危ないとこを助けてくれたから大丈夫よ」

 村で子供達に見せていたような、同じような笑みを玖楼へと向ける。

 ここであえて言い直そう。

 へたれ。
 童貞。
 過去に作った彼女の数0。

 一発で魅せられてしまった。

 玖楼が、自分の顔が急に赤く、熱くなっていくのを自覚する。いわゆる一目惚れ状態だと気づいても何とかできず、視線を即座にサティアから逸らす。その行動に心配したのか、

「あの……なにか不快なことでもしましたか?」

 即座に視線をサティアへと戻す。頭を超高速でブンブン振り、

「ち、違います! 違いますよ! 何でもありません! えぇ、何でもありません! 決して恥ずかしくて顔が見れないとかそんなことじゃありませんからね! 違いますからね!」

 自分で暴露してしまうほどには焦っていた。そんな違う意味での必死な玖楼の形相を見ていると、不意にサティアが小さくくすくすと笑い出す。玖楼の様が面白かったのだろう。その行動に玖楼が困惑しだすがサティアが手を前に出し、

「ごめんなさい。焦ってる姿が面白くてね。始めまして、私はサティアと言うの」

「あ、はは、はい! く、黒川玖楼って言います! 知り合いにはクロウとかクロって呼ばれてます! さ、さささ、サティアさん!」

すぱぁんっ!

「流石にどもりすぎです。しかも私と対応が違いすぎて若干ムカつきます」

 ハリセン装備リタが現れる。

「……リタっつぁん無防備すぎるし? 初登場がアレだしっつーか今にでもベッドにやってくるし、そしてなによりも一番にやっぱり胸が残ね―――」

 すぱぁんすぱぁんっ! すぱぱぱぱぱぱぁんっ!

「何か言いましたか」

「イエ。ナニモイッテナイデス。リタサンハスバラシイデス」

「それだけ素直ならいいです。ナベリウスが結界を張ったからもう降りてきても大丈夫ですよ。少なくとも被害はこっちまで来ないでしょう」

 そう言って現れたときのようにリタが階段を抜けるように透過して下層へと戻ってゆく。唐突の登場にサティアは驚いてたのか、驚愕の表情を浮かべてた。

「今のは……」

「あ、今のですか? ここの門番の片割れでリタなんとかってやつですよ。何か既に死んでるらしいですけどそこらの人間よりは元気そうですよね」

「いえ、そういうことじゃなくて……」

「あ、それでは下へ向かいましょうか。家が無事かどうかは分かりませんけど、お茶ぐらいは出しますよ」

「い、家?」

「あ、自分ここに住んでるんですよ」

 たぶんだが、これこそがサティアが一番驚愕した事なのだろう。


                   ●


 そして冒頭に戻る。最下層でハッスルする骸骨と暴走する軟体生物を眺める四人。砂地の上に座りながらもその手の中には紅茶の入ったカップが握られている。

 それを飲んでやっと落ち着いたのか、サティアが口を開く。

「……ここ、冥き途よね?」

 サティアの知っている冥き途は静かで死者を除けば門番しか存在せず、決して槍を持った幽霊が片手にハリセンを構えてたり、高笑いする骸骨が魔法を乱射しながらラメ入りペ○シマンとハイレベルな戦いを見せる、そんなカオスな場所ではない。ついでに言えば人間が普通に平気に暮らしていることにも疑問が思える。

 人間なら良くて発狂、最悪、喰われるかもしれない環境なのに、横に座っている青年は平気そうに存在するどころか家さえ建てて暮らしている。あまりに非常識だ。

「ティルワンの闇界よ!」

「オァァァァァァァァァァァァァァ! オァ! オァ!オアァァァァァァァァァ!!!!」

 非常識だ。

 混乱から脱するためにも、横の青年に、クロウに声をかけてみる。発音的に東方の訛が聞こえたから、たぶん東方の出身者なのだろう。

「クロウ?ちょっといいかしら」

「は、はい! ななな、なんでせうかサティアさん!」

「私のことはさん付けでなくともいいわよ? 敬語も止めてくれると嬉しいんだけど……」

「ははは、はい!」

 青年に対して物凄く可哀想なものを見るような視線が青年の横の二人、リタ・セミフとナベリウス……冥き途の門番の二人から注がれるが、サティアはその意味を理解できず、頭に疑問符を浮かべながらきっと玖楼が緊張しているのを呆れていると、解釈する。

「…………クロウ……がんばれ」

「おぉ……ナベリウスが応援しましたよ!」

「相手は分かってもいない……流石に…………哀れ」

「無駄に緊張のし過ぎですよね」

 その言葉に玖楼が横へと振り返りギロリと目を光らすが、リタとナベリウスは我存ぜぬと視線を思いっきり逸らしリッチの戦いに集中している振りをする。

「クロウさん?」

「あ、自分も玖楼でいいよ」

「あ、はい」

 先ほどの二人との会話の成果か、若干緊張がほぐれた様子の玖楼が今度はまともに話す。今度こそちゃんとコミュニケーションが取れると思い、

「ここって冥き途よね?」

「そうだよ。ここ以外にあるのならまた話は別なのかも知れないんだろうけど」

 つまり、自分の探していた場所は此処であり、入り口で感じていたいろいろなものは一体なんだったんだろうとさえ感じてくるが、暗くなるよりは明るくあったほうがまだ言いと思い話を続ける。

「クロウはここに住んでいるの?」

「あぁ。約半年前に此処に流れ着いてね。気がついたら部屋の物と一緒に此処にいたんだ。ナベリウスによれば元の世界に通じる『門』が見つからないからここに住めだって。
リッチ(ステッキを振り回しながら炎を振りまく骸骨を指差す)が魔法で家とか作ってくれた」

「異世界人?」

 そこで玖楼の着ている見たこともない服装にやっと見当が付く。彼が着ている服はおそらく彼の世界のものなのだろう。そう思うと彼の世界に興味を持ち始める。

「ちなみにあそこで戦っているアラン・マクレガー少尉も異世界人だって」

「彼も?」

「そう。今朝、死者を通すために死者の門を開けたら水に流されながら向こう側から流れ着いたんだ。最初のうちは混乱してたけどしばらくすると落ち着いてね。これがまた、いい人でさ、国のために人体改造を受けた軍人だって分かって、楽しく談笑してたんだけど……」

「してたけど?」

「軽く頭を叩いたら奇声を上げながら暴れ始めた」

「……」

 死者の門前の戦いを見る。ナベリウスが張ったとされる結界の中でリッチがマシンガンの如く魔法を乱射してゆく中、銀色の体、アラン・マクレガーと呼ばれる機械化兵が両腕を見えない速度で振るい魔法を殴ると同時に、体に絡み付く亡者の波を薙ぎ払う。アレだけの戦闘力を見て余裕ということは止める方法がなんらかあるのだろう。

 だから気にしないことにする。気にしてはいけない。ともかく、落ち着くまでアレは放置するとして、

「クロウ」

「なんだい?」

「もっと、貴方のこと知りたいなぁ」

「なっ///」

「(あれ、脈あり?)」

「(…………それはそれで、……つまらない)」

 もっと青年について知りたいと思った。異世界と言うのはどんな世界なのか。どんな風に人は暮らしているのか。どんなことをしているのか。毎朝、朝食にはどんなものを食べて、晩御飯には何を食べるのか。そこには此処のようにいろんな種類の種族が住んでいるのか。どういう神々が存在するのか。

 短い時間だが、隣の青年が、玖楼の存在が悪いとは思わない。アイドスは見つからず世が乱れ始めるのを僅かに感じ始めるが、それでもこの出会いは悪くはない。

 そう思ったところでそれは始まった。

「―――ならば、私も全力で答えよう……!」

 今まで結界の中で一進一退の戦闘を繰り広げていたリッチがステッキで高速で魔陣を描くと、完成直後にリッチのステッキに大量の炎が集まりつつ有る。

「私も玖楼の訓練相手でただ召還しているわけではない! 私も魔法、実力共にちゃんと腕を磨いていたのだよ。喰らいたまえ、今できる最高の一撃を……!」

 リッチのステッキに集まりだす炎は今までの使っていた魔法の比ではなく、結界越しにその熱を感じられるほどの威力をともしている。それに対して動きが止まったアラン・マクレガーも目のない顔でリッチを見ると、背中を大きく逸らして天井へと向けて叫びだす。

「リッチィィィィィィィィィィィィィィ!!! セギホノセギホノアヴェスタアヴェスタ!」

 言語は完全に理解不能だがやる気だけは漲っている事が分かる。その様子を見てナベリウスが言葉をポツリと漏らす。

「無理」

「ひょ?」

「結界………………得意じゃないから……無理」

「おいぃぃぃぃぃ?! 俺ならともかく今はサティアまでいるんだぞ?!」

「死んだらお仲間入りですね」

「お仲間以前に即昇天だよ!」

「あ、魔剣がないから定着できないんですね」

「そういう問題じゃねぇよ!」

 右往左往する玖楼に対してサティアが手を握る。その行動に玖楼が驚き、顔を赤くする。それを気にせずサティアが胸元の首飾りを取り出す。

「安心して下さい。この飛翔の首飾りを使えばダンジョンならば何処からでも脱出できますから」

「え、あ、ぁ、はい。そんじゃ、俺とサティアで先に「駄目」……え?」

 今までにない真剣な声でナベリウスが玖楼の言葉をさえぎる。同時に射抜くような視線をサティアへと向けて、まるで余計なことをするなとばかりの気配をだす。ナベリウスが今まで見せた事のない剣呑な気配に玖楼も驚きが隠せない。

「いや、ナベリウス?俺達ちょいと避難を「クロウはでちゃ駄目」……」

 ピシリと、譲らない強さでそれをナベリウスが言い放つ。

「ごめんなさいねクロウ。悪いけどクロウは此処から出せないの」

「……いやまぁ、前々から外に出してもらえないからなんか理由があるんだと思うけど、
それでも今回は……」

 ばつが悪そうな顔をして玖楼が話す。サティアもナベリウスの気配に押され、飛翔の首飾りから手を放している。玖楼の姿を見るに、ナベリウスが今までこんな態度をとったことがなくて驚いているのは分かるが、それでも何故此処まで外に出すのを嫌がるかを分からない。

「でも俺死にたくな「止めるから大丈夫」……そっすか」

 ナベリウスが小さな体を立たせると、広間の隅で座っていた魔獣がやってきてナベリウスがその背に乗る。何処からともなくも小型の杖を取り出すとそれをリッチとアランに向け、

「二人とも…………そろそろ…………仕事の邪魔」

 そういった後に警告なく魔法を放った。

「滅びの暗礁壁」

 リッチとアランのいた存在そのものが暗闇に包み込まれて、うねる。大量の魔力と共に発せられた魔法が容赦なくアランとリッチの体を襲うが、それを気にせずにナベリウスが追撃をかける。

「審判の轟雷、メルカーナの轟炎、死愛の魔槍」

 どれもAランク以上の超高等魔法を詠唱もそこそこの時間で連続を放つ姿には驚愕を隠せえなかった。両者が戦っていたとき張られた決壊は既に一撃目で破壊されており、こちら側に被害が来ないように計算されて放たれているものでもあった。

 何度も何度も軍隊を一つ滅ぼすには余すほどの大魔法を連続で放ち、まるで塵も残さないように殲滅魔法を放つ。

「まて!待つんだナベリウス!もうリッチもアランもライフは0だ明らかにオーバーキルだ!」

 玖楼が魔法の轟音に負けぬように必死にナベリウスに声を投げかけるが、ナベリウスは振り返りながら親指を立てながら、

「手加減の…………指輪してるから…………大丈夫。……………………たぶん。ティルワンの死磔」

 視線をリッチとアランの方向へと戻す。そしてトドメとばかりにさらに魔法を放つ。闇が辺りの水を根こそぎ消滅させながら消えるとその場に残ったのは地面に突っ伏すリッチと、体が漫画のように平べったくなったアランであった。

 二人に動く気配はない。それを確認したリタが額の汗を拭う様な仕草を取り、

「いい…………仕事した」

「明らかにやりすぎだよ!」

 納得せざるを得なかった。


                   ●


 リッチとアランを潰し終わってからしばらくしてサティアはすぐに帰ってしまった。冥き途には時計がないから分からないが時刻は既に夜に入るところであり、サティアも今日一日で全て見たり聞いたりできるとは思ってなかったとの言。冥き途に一番近い『北華鏡の集落』と言う村をしばらくは拠点にしているからまた来るとの話。

 そう、また逢えるのだ。

 うん。また逢えるんだ……。

「青春だなぁ……いや、これも若さか……羨ましいものだ」

「ジジクサイよ少尉……」

 ついでに冥き途に住み着く人外もさらに一人増えた。もちろんアラン・マクレガー少尉。行き場所はないので結局は玖楼と一緒に冥き途へ住み着くことに決定した。実はあの攻撃を喰らっても正気に戻らなかったアランだが、玖楼の『機械は叩けば直る』発言でリタが槍でアランを串刺しにして動きを止めているうちに、ナベリウスがひたすらアランの頭を蹴り続けることで直ってしまった。

「はぁ……サティア……」

 そして玖楼はどツボにはまるくらいにサティアにべた惚れだった。

「若さ故か……」

「私が妻と初めて出逢った頃も感じだった。あれは何時だったか……」

 リッチもトリップ突入。それをアランは若さだといいながら、リタとナベリウスが呆れる。

 冥き途での生活は続く。物語に新たな役者を加え物語は続く。舞台の上に現れる役者もいれば一時的にいなくなる役者もいる。玖楼の物語は時がつれるにして段々とその規模を大きなものとして役者を増やしてゆく。


                   ●


「うふうふ。くすくす。みぃーつけた」

 どの役者がLOWかCHAOS、どちらかに傾いてようが、それでも『玖楼』と言う名の物語は続いて行き、段々と規模を大きくしてゆくのだった。


名前:サティア・セイルーン
レベル:59
称号:放浪の探求者
主武器:戦意喪失の投石紐
予備1:なし
予備2:なし
防具:麻の衣服
装備:なし
戦闘スキル:
魔術・戦意―――RankA
魔術・強化―――RankC
魔術・治癒―――RankA
魔術・召還―――RankB

HP:380/420
MP:120/120
TP:50/50
FS:40/80
攻撃力:73
攻撃回数:1
防御力:53
防御回数:10
魔法攻撃:114
魔法防御:71
肉体速度:10
精神速度:15
攻撃属性:万能
防御属性:万能

発動スキル:
MP再生Ⅰ―――戦闘時は一定フレーム毎に、移動時は一定歩数毎にMPが回復する。
賢者の魔力Ⅰ―――消費MPが10%軽減。習得レベルで軽減量が高くなる。
神力遮断Ⅲ―――神の力が遮られ、能力全般が25%低下。


名前:アラン・マクレガー
レベル:149
称号:異世界の機械化兵
主武器:なし
予備1:なし
予備2:なし
防具:コア
装備:なし
戦闘スキル:
必殺・連撃―――RankA

HP:3170/3170
MP:100/100
TP:350/350
FS:50/100
攻撃力:390
攻撃回数:30
防御力:213
防御回数:15
魔法攻撃:40
魔法防御:154
肉体速度:20
精神速度:9
攻撃属性:万能
防御属性:万能

発動スキル:
HP再生Ⅹ―――戦闘時は一定フレーム毎に、移動時は一定歩数毎にHPが回復する。
俊足転移Ⅱ―――戦闘開始時に確率で発動。『肉速5』『精速5』が付加される。
壊れやすい―――不安定なせいか軽い衝撃で偶に暴走を始める。


名前:ナベリウス
レベル:439
称号:刹那の冥門侯
主武器:クァルディニア
予備1:なし
予備2:なし
防具: 冥界の戦衣
装備:手加減の指輪
戦闘スキル:
魔術・雷撃―――RankS
魔術・火炎―――RankS
魔術・暗黒―――RankM

HP:4110/4110
MP:1820/1820
TP:100/100
FS:50/100
攻撃力:753
攻撃回数:74
防御力:551
防御回数:88
魔法攻撃:1474
魔法防御:896
肉体速度:59
精神速度:82
攻撃属性:冷却
防御属性:魔神

発動スキル:
MP再生Ⅳ―――戦闘時は一定フレーム毎に、移動時は一定歩数毎にMPが回復する。
賢者の魔力Ⅲ―――消費MPが30%軽減。習得レベルで軽減量が高くなる。
オーバーキル―――攻撃時に常に発動し、ダメージMAX桁が一桁上昇。
リタが大好き―――戦闘メンバーに『リタ』がいる場合、攻撃力と防御力が10%上昇する。
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