陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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赤鼻のトナカイ ―――ロング・ナイト

 木に背中を預けながら見る銀景色は美しい。現実であれば相当田舎にでも行かなければ見れない景色だ。音がなく、生物はなく、ここにあるのは木々と降り積もる雪だけだ。美しい、久しぶりに文句なくそう言える光景だ。

『いつもは戦ってるだけだもんね』

「……」

 結局のところ日付の変わる零時よりも四時間ほど早く迷いの森の最深部、一歩手前のマップにまで到着してしまった。もう少し時間がかかるものかと思っていたのだが別段迷うことなく到着できてしまったため、当初予定していたよりも暇となってしまった。ここで何か暇をつぶすためのスキルか道具を用意していれば良かったのだろう。だが生憎とスキルスロットに一切遊びはなく、全て戦闘関係と戦闘補助のスキルとなっている。それは俺のSAOにおける余裕のなさを象徴している。


 雪が深々と降り続ける光景をいつまでも見ているのも悪くはない。が、さすがにそれを見ているだけで満たされるような真っ当な人格者のつもりはない。やはり何かの首を跳ね飛ばしている時の方が何倍も自分らしくいられる気がする。とは言え、今からここから離れてどこかの狩場へと向かえば確実に今の居場所を取られることとなる。この情報を持っているのが自分だけなわけがない。アルゴは情報を売っているだろうし、前々から情報を集めていたプレイヤーだっているはずだ。そういうプレイヤーが現れた場合、基本的には先着順で挑戦権を持つが、場所の取り合いとなる場合もある。

 実際、MMORPGで時間湧きのボスモンスターのいる場所で一日中座って待機しているというのはよくある事だ。それだけボスのドロップアイテムは魅力的だし価値がある。一般的なモンスターのドロップよりも強力なアイテムが出る分、それを欲しがる人は決して少なくない。

 だからここで座って入り口を見張るのがベストの選択肢なのだろう。それは解っている。解ってはいるのだが、暇だ。昔からこういう手持無沙汰の時間はどうにも苦手だ。インベントリを開いて何か暇つぶしとなりそうなものがないかを調べてみる。

「装備に……食料……寝袋……キャンプセット……携帯料理セット……」

 見事なまでにサバイバル特化となっている。食料は基本的に街で購入できるものではなくフィールドで採取できるものやモンスターからのドロップが二桁単位でストックされている。アルゴには料理スキルを取ってないと言ったが、それは嘘だ。実際には低いながらも料理スキルは取っている。他の全てが戦闘用、戦闘補助で高い熟練度を誇っていながら、料理スキルはダンジョンの中で腹を空かせたときに作る程度でしか使わな為に熟練度が低い。最近ではラインハルトが長持ちする食料を持たせるのでさらに使用頻度は低い。そろそろ料理スキルを削除し、また別のスキルを習得するべきかどうか悩む。

「ポーション……砥石……本……ロープにランタンか」

 ロープとランタンは冒険の必需品だ。ランタンは暗いエリアを進むときに必要だし、上へと目指すための迷宮区にはないが、普通のダンジョンには道の途切れた場所や崩れた場所がある。ロープとランタンはそういった場所を進むうえでは必須アイテムなのだ。砥石は武器のメンテナンス用アイテムで、本来は鍛冶系スキル持ちに使わせて武器を研がせたほうがいい。スキルもちではない人間との効率の差は歴然だ。ここに来るまでに多少使った事を思い出し、

 横に突き刺してある≪羅刹≫を手に取る。

 刀身を横にするように寝かして、その上で滑るように砥石を動かす。スキル持ちであれば数十回で済むだろうが、そうでないプレイヤーがやるのであれば百数回この腕の動作を続けなければならない。現実とは違って全く疲労を感じないが、それでも同じ動作を繰り返すのは地味に面倒だったりする。

 だからといって止めるわけもなく、無音の世界に剣を研ぐ音を響かせる。

 紅い。

 まるで血を浴びたかのように刃は紅い。特定の武器は強化改造をするたびに武器の性能だけではなくグラフィックも変わるらしいが、この≪羅刹≫もそういった武器の一種だろう。しかし、使えば使い込むほど血色に染まる刀身は≪羅刹≫という刀の使い手を皮肉っているようで、どこか詐欺師の嘲笑が聞こえてくる。この得物自体あの男の情報で手に入れたのだ。そういう意図があったとしても別に驚きはしない。

 アレは真面目な顔をしていて、自分が信じること以外の全てを見下しているように思える。

 得物を研ぐためにも手を動かし続けるが、あの男の事を考えただけで憎しみが湧き上がってくる。

『カリオストロはそこまで酷くないよ?』

「……ッハ」

『あ、笑った』

 不可抗力だ。この世であの詐欺師が悪くないと言える存在がいる事に対する。感情の流入と学習により少しはマシになったのかと思いきや、未だにあの詐欺師を善人だと思っているのか―――滑稽だな。これはいい機会だ。

「いい機会だから教えてやる”マルグリット”」

 あえて名前の方で呼ぶ。どんな状況であれ、名前で呼ばれたことを喜んで魔女は耳を傾けてくる。

「俺はお前が嫌いだ」

 悲しみの感情が伝わってくる。

「もう一度言う、俺はお前が嫌いだ。あの男はお前と俺につながりを作るために邪魔なものを排除している」

 そう、そうだ。俺の魂を、性質を、それを限りなくこの魔女と同調しやすくしている。俺から陽だまりを奪ったことも、この武器を与えたことも、先に魔女とギロチンを植えたことも全ては調整にしか過ぎない。そのすべてはトウカの死というトリガーによって発動し、俺の体を内側から塗り替えた。決定的な出来事はラインハルトとの対峙だ。ラインハルトと出会い、次元の違う、底の見えない魂の持ち主を目撃し、対峙してしまった事でもう戻れないレベルで体の中身は変質してしまった。中身でいえば完全に人間という生物を超越してしまっている。

「お前が殺したんだ」

 いや、実際には戦場に女を連れ込んだ俺が悪いのだ。女が戦場に来るものではないのだ。戦場は男の場所であり、散るべきは馬鹿な男たちなのだ。そう、あそこで散るべきだったのは俺だ。なぜ死ねない。なぜ死ねなかった。恥を晒してまで勝利しないといけなくなってしまった。

 俺も聖人ではない。正直に言えば、少しだけトウカを恨んでいる。

 なぜ、あの時―――恨み言の一つでも言ってくれなかったんだ。あの時、恨み言の一つでも言ってくれれば、言ってくれさえすれば、それだけで俺は自分を畜生以下の糞だと卑下できた。生きる価値のない汚物だと思えた。なのに、なのに勝利を信じていると言われてしまった。死ぬ間際でも信じていると言われてしまった。だったらその信にこたえられる輝きでいたい。なぜ楽な道を選ばせてくれなかったのだ。

『アス……』

 言葉は通じないが、感情は伝わる。戸惑い、悲しみ、怒り、狂気。狂気、そう、狂気だ。間違いなく俺はくるっている。愛に狂っている。この世界、一秒後には失うかもしれないのに誰かを愛するというのは狂気以外の何物でもない。だから、俺は愛に狂っていた。現実が見えなくなる程度には。今更どういっても変わるわけではないが、あぁ、憎いよ。こうやって憎しみに染まっているのは楽でいいよ。何も考えずに済む。復讐はいい燃料だと誰かが言ってた。その通りだ。爆発的なモチベーションを生み出してくれる。

 ただ、爆発した後には何も残らないが。

 破滅の道に真っ直ぐと突っ込んでいても、それでもこの瞬間の俺は輝いている。何にも負けず、折れず、成すべき事のために輝いている。復讐を成すその日までは絶対にこの輝きを失わない。

『私の、せいなの……? 私が生まれたから?』

「……あぁ、そうだ。お前が生まれなきゃよかったんだ」

 どの口で言っているんだ。彼女に気持ちを伝えずにずるずると引きずってた俺が悪かったんだろう。女にそれを押し付けて―――俺は最低だな。

「いや、今更か」

 そう、今更だ。既に両手の指では数え切れないぐらいの人を殺している。確実に三桁は殺している。もう殺人者でも殺人鬼でもなく、これでは殺戮者だ。顔も多くの人間におぼえられている。SAOが終われば、俺を捕まえるように通報する人間が出てくるに違いない。

 だがそこまで生き延びるつもりはない。茅場晶彦を殺すその日まで生き延びればいい。奴がSAOに課したルールを超越しているのであれば―――現実で殺す。

 もう、それしか解らない。

「あぁ、吐き気がするな」

 この状況にではなく、自分自身に。考えていることに納得している自分に。この状況を受け入れている自分に。どうしようもなく邪悪だと自分の事を断言できる。間違いなく自分は世界に不要な生き物だ。そう認識できることが今の自分にとっての幸いだ。

 と、そこで、

「……は」

 マップの入り口が光る。それはマップに誰か入り込んだということの証に他ならない。ちょうど研ぎ終わった得物を再び地面に突き刺し、光った方角を見ると、この銀世界には似合わない色の持ち主が現れたのが見える。全身が黒一色の剣士、キリトだ。マップに入ってきて、数歩歩いたところでこっちの存在に気づく。

「……サイアス」

 キリトの表情は暗く、そして”重い”。何か重荷を背負っているように感じられる。キリトが口を開けて、何かを言おうとしたところでキリトの背後が光る。今度は一回ではなく数回の光り、出てくるのは東洋チックなデザインに身を揃えた集団だった。キリトがそちらへと振り返り、集団のリーダーに声をかける。

「俺をつけたのか……クライン」

「悪ぃキリト。俺はお前のゲームのセンスっていうのか、そういうのはマジすげぇと思ってんだわ。あの≪血盟騎士団≫のヒースクリフよりも」

 いきなりの侵入者だが両者の間の空気は重い。キリトは何か切羽詰っていて、クラインはそのキリトを深刻そうな表情で心配している。両者の問題であれば別に口を出す事ではないので、隠蔽スキルを発動させもう少し黙ってみている。

「なあ、ソロ何てあきらめろよキリト。俺たちとパーティーを組め! ドロップはランダムで手に入れたやつで恨みっこなしって事にしようぜ」

 あ、ちょっと待て。

「……一人じゃなきゃ……意味がないんだよ」

 目の前の二人はヒートアップし、一番最初に到着して挑戦権を持っている俺の事を忘れている。もうこのまま放置して勝手に奥へ進もうかとも考え始めるが、

「蘇生なんか諦めろ! 俺たちも仲間を一人失っているが、大事なのは生き返らせられるかどうかじゃなくてどうやって前へ進むかだろ!?」

「違う、サチは死んでいない! きっと、きっと蘇生ゾーンか何かで生きている」

「―――ッハ」

「ッ、サイアス、おめぇいたのかよ……」

 思わずキリトの言った言葉に失笑が漏れる。あぁ、何だこいつ。

 死者が生き返るとでも思ってんの?

『アス……また傷つくよ?』

「いやいや、悪いね。お前らヒートアップしていい空気する分には別に興味ないしかまわねぇよ。俺が一番最初にここに到着して挑戦権持ってる事を無視されてもこっそりぶっ殺しちまおうとか思ってたりしてな? まあオホモダチはオホモダチ同士仲良くすればいいってわけだよ」

「おい」

 キリトは挑発を受けながらも返答はしない。だが、その手は確実に背中の剣へと伸ばされているのが見える。

 理解できる。

 キリトは俺だ。

 全く同じ状況の俺だ。

 ただ、考えが違うだけだ。俺は幻想を見ない年齢になったが、キリトは幻想にすがらなくては生きていけない子供だ。

「乳臭ぇんだよキリト。なにお前」

 そういえば、ニコラスは死者蘇生アイテムをドロップするとアルゴが言っていた。状況を見るにキリトが狙っているのはそれだろう。それでなんだ、こいつソロで倒して蘇生させることが罪滅ぼしだとでも思ってるのか?

 ガキがいい気になるなよ。

「なんだよお前、俺が殺したから俺が一人で蘇生させなきゃ俺は許されないとか思ってんの?」

「ッ」

「おい、サイアス!」

 クラインが声を出すが、

「黙れクライン」

「おい、サイアスおめぇ……」

 殺気が籠った声でクラインを押しとどめる。データとしては存在しない”殺気”の概念を信じるプレイヤーは多い。実際、その六感に救われることは少なくないから。だから、クラインもこれで俺が本気だということを知る。

 立ち上がる。

 嘲笑を持ってキリトを見る。

「で、何だ。ごめんなさい、ごめんなさい、殺してすみませんでした―――私が今から蘇らすのでどうかお許しを? 舐めた事いってんじゃねぇぞクソガキ。死んだんだよ。終わったんだよ。死人は蘇らないんだよアホが。そんな常識も解らないのか? お前の愛しい愛しいサチとやらは今、リアルでは頭を―――」

「黙れぇえええ―――!!」

 キリトの声が雪原に響く。これもまたよく響く、殺意のこもった声だった。剣の柄を握るキリトはクラインから、明確な敵である俺に対象を絞っていた。

「違う、サチは―――」

「―――そう信じたいだけだろ?」

「違う、そんなはずはないんだ……!」

 キリトは今、死なずに生きているという事を事実に精神を持たせているのだ。それも隙をつついて破たんさせてしまえばもう二度と修復不可能なレベルで脆い。見ていて危なっかしいとはこういう事だろう。同情はしない。俺も同情はいらない。

 だが目の前のクソガキは死者を蘇らすことができるとか妄想してやがる。

 ≪羅刹≫を引き抜く。

 キリトが刃を抜く。

「サイアス、キリト、止めろ!」

「黙ってろクライン」

「それに関しては同意だ。少しおとなしくしてろクライン」

 キリトが刃を構え、俺は改めてキリトへと向き直り、刃を地面に刺す。このガキの願望は妄想だ。受け入れられない。他の事ならどうでもいい。ニコラスを譲っても別に問題はない。他のモンスターでも殺せばいい。だけど死者を蘇らすなどとクソの様な事を漏らすこいつだけは許せない。

 こいつは、サチという存在だけではなく、トウカの事まで侮辱している。許せない。それだけは許せない。

 何よりもこいつを俺は仲間だと思っている。

 手を差し伸べないし、差し伸ばしてもらおうとは思わない。だが、それでもこいつは一層の、あの日の出来事を共に乗り越えた友だ。それがここまで堕落しているのは見るに堪えない。だからこそ、教えなくてはならない。

 死とは唯一無二だから―――。

 もし、見込みがなければ俺はこいつを……殺すだろう。

「こい、キリト―――お前を教育してやる」

「邪魔だサイアス。退けよ」

 剣鬼と黒の剣士による死闘が目前であることは明白だった。その事実に、クラインは泣きそうになるのを抑えるほかない。ここで、この二人を止めるものは―――


                           ◆


「―――居らぬよ。この戦い、筋書きはありがちながら役者が良い。見ているかねマルグリット。これもまた友情の形だ。覚えたまえ、魂が至っているだけではどうしようもないのだよ。あぁ、これを貴女に捧げる物語としよう。存分と楽しんでほしい―――はは、ははは、ふははははははは―――」
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| 断頭の剣鬼 | 10:32 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

更新乙
改訂されてからサイアスとキリトの殺伐さにストレスがマッハなクライン哀れ

そしてニートuzeeeeeeeeeeee

| とろつき | 2012/08/03 10:50 | URL |

ニートuzeeeeeeeeeeeeW

| とっつき | 2012/08/03 12:22 | URL |

まずは……
ニートUuzzeeeee……―
サイアスとキリキリの激突は水銀の毒に汚染されますたorz
でもそうだ! 次こそは戦闘回であるからして期待に胸膨らむ展開ですなぁ。
で、あるからして……空気の読めない第4者が登場しやがったら、どうしてくれよう?
あ、ニートいるから第5か。
予想は空気+αのフルボッコ、おめぇら全員首置いてけよコースで(笑)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/08/03 12:45 | URL | ≫ EDIT

全てはこの一言に尽きる。
ニートuzeeeeeeeeeeeee!

| 御前 | 2012/08/03 15:26 | URL | ≫ EDIT

サイアスさんが何故かやたらと上から目線で正直気持ち悪いです。

あと小物臭が凄い。

| | 2012/08/03 19:32 | URL |

やはりニートUZEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!

| NONAME | 2012/08/03 23:56 | URL |















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