陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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黄金 ―――トゥルー・フィアー

*1からの推奨BGM:L∴D∴O


 食事が終わった時には、魔女自分の中で完全に意識を覚醒させていた。何時もと変わらない憤怒と憎しみを纏って内側にいる魔女と対峙する。大丈夫だ。今日も俺はこの魔女と向き合っていられる。まだ憎しみは深い。今日も頑張っていられる。

 それを確認したところで、頭上のカーソルを確認する。

「何日経ったか、それまでは教えてくれなかったと」

 頭上で輝くカーソルマークはオレンジ色から緑色に変わっていた。基本的に犯罪者を示すカラーカーソルは数日大人しくしていれば元の色に戻る。そして俺の色が戻っているという事は数日間眠らされていたのか、もしくは何かしらの方法でカーソルの色を変えられたという事になるが、確率を考えれば前者だろう。流石の超人集団だとしても、カーソルの色まで操作出来たらもう何でもありだ。今すぐ空を飛んで百層へ向かえると言われても疑わない。


『どうするの?』

 魔女が語りかけてくる。魔女の問いかけなど無視したいが、癪なことに実際問題としてどうするかは重要だ。このまま奥へ行ってシュピーネに話を聞きたい気もするが、なるべくこの集団に深く関わってはいけない気がするのもまた事実だ。

 直感的な判断だが、この集団は危ない。関わってしまったらそのまま引き込まれてしまうような……そんな危機感を覚える。そしてあの戦闘力もそうだが、シュピーネやカインみたいに中身が”人間味”で溢れていると嫉妬すら感じる。こっちは地獄にまで落ちてやっと手に入れた力を、当たり前の様にのほほんと振るっている姿には軽い殺意を覚える。

 ともあれ、

「アイツらにはあっても俺には用事がない」

 魔女を使うつもりもない。だから知るべき事はない。一生俺に殺されるべき標的でいろ。ここでさよならだ。

 立ち上がり、礼拝堂の奥ではなく、入り口へ向かう。迷う事無く扉に手をかけ、それを両手で押し開ける。開けた扉から強い日差しが差し込み、それに目が眩む。が、一瞬で光に慣れた目が教会の前にあるものを捉える。

「お姉ちゃんお姉ちゃん!」

「遊ぼうよー!」

「お話の続きをしてー!

「あぁ、ちょっと待っててください。うわ、そこ大人しく―――ちょ、ちょっと髪を引っ張らないでくださいよー! 何で私ってこんなに年下に好かれるんですかー! 戒ー! 助けてー!」

「はははは。いいじゃないかベアトリス。そう言っているけど中々楽しそうだよ」

「戒の鬼! 鬼畜! オーガ!」

「……それ、内容的には全部一緒のようなものだよね?」

 教会の前にはなにやら子供にじゃれ付かれる一人の女の姿と、拉致に来たメンバーの一人がいた。流石に教会の扉を開けて気付かれないということはない。即座に見つかる。また子供達を怖がらせるのもよくないため、フードをさらに深く被る。

「おはよう御座います、ですが礼拝堂の奥とはこっちではありませんよ」

 早速釘を刺された。が、

「興味ない。俺に関わるな」

 拒絶したところでインベントリから転移結晶を素早く取り出す。屋内では使用出来ないアイテムでも屋外に出れば使える。この場から消える為にも発動させようとしたが、口が次の言葉を語る前に、

「とおっ!」

 電光石火の動きで接近してきた金髪ポニーテールの女にそれを叩き落された。

 しかも、子供に纏わりつかれたままなのに、だ。

「お姉ちゃんー」

「遊んでー」

「すいみませんね、今はちょっと無理だからサーシャさんのところへ行ってくれるとお姉ちゃん嬉しいかなあ何て思っちゃうんだけど」

「えー!」

 子供達が声を揃えて大合唱する。流石に苦笑していたカインも入ってくる。

「ほらほら、これからお兄さん達は大事な話をしなきゃならないんだ。あまり困らせないで、ね?」

「はーい」

 妙に慣れたカインが子供達を集め、そのまま教会の中、おそらくサーシャと呼ばれた女性の下へ連れて行く。要領がいいというか、この手のタイプの人間は総じて苦労する事が多い。が、それよりも、

「せっかく来たんですから、もうちょいゆっくりしてみたらどうです?」

 ―――これは絶対に抜けない。

 ベアトリスと呼ばれたこの女を抜いて逃げる事は不可能だ。表面上はおどけていて、ふざけた様子を見せる女だが中身は全く違う。この人物があのマキナと同じ、軍の人間だと理解するべきだった。たとえどんな奇策に打って出ようとも、その全てを無力化し、確実に捕まえてくる。

 逃げられない。

 この集団のボスはどうしても俺に会いたがっている。

 そして……俺はそいつに会うのが―――。

「そんじゃ中に戻りましょうねー」

「ッチ」

 押されるように教会の中へと戻される。結局の所、逃げる事なんて初めから出来なかったのだ。それを理解するべきだったのだ。

「まあ、そんなに悲観する必要はないと思いますよ」

 俺を教会に押し込んでから、ベアトリスが後ろで扉を閉める。

「そこまで悪い上司ではありませんし、得るものも少なくないですよ?」

 なにやら年下の子供に言い聞かせるようで少しだけイラつく……年上の人間とはどうしてこうも先輩風を吹かせたがるのだろうか。

「とは言え、全ては貴方の態度と対応次第ですから、頑張ってください。無責任なようですが応援だけはしてますよ。えぇ、応援だけは。あ、私は死んでも絡まれたくないので、どうぞ喧嘩するなら私のいないところで。私はそれを遠くから眺めて少佐と話すネタにするので」

 少しはマシな人間だと思った俺が馬鹿だった。

 逃げる事ももう叶わず、礼拝堂の奥へ続く扉を開ける。ベアトリスはついて来る気が無いようで、教会の入り口に番犬の如く立って手を振っている。簡単にまとめるとウザイ。特に楽しそうにしてるのが何よりもウザイ。

「はぁ……」

 礼拝堂の奥へ続く扉を潜りながら、今日はペースを狂わされっぱなしだと思う。シュピーネ然り、ベアトリス然り、明らかにカタギの人間ではないのだろうが、雰囲気がそう思わせなくて、昔を思い出しそうになって、調子が狂う。

 一刻も早くここから抜け出したい。そう思いつつ前に進んだところで、

「ごめんね」

 カインが待っていた。改めてみると体と顔のバランスが上手く出来上がっていて、女うけしそうな男だと思う。これなら恋人の一人や二人作るのも簡単そうだな、とどこか違う事を考える。

「本当は交渉して客人として連れてくるつもりだったんだけど、僕達も職業軍人として上官の命令は絶対なんだ。だから悪く思わないで欲しい」

 それはつまり最初から逃亡は見透かされ、そして逃げた場合は気絶させてでも連れて来いと命令されていた、というわけだ。何故そこまでして呼び出すかは朧げにだが見当がつく。が、憶測だけでものを語っても仕方がない。一本道で奥へと続く通路を、カインの横で歩く。

「僕達の上司は凄い有能なだけに、基本的に興味を持てるものが少ないんだ」

 カインが語る。

「だからこうやってまで誰かを連れてくるという事は初めてだし、異常事態だとも言える。あの方は君に何かを期待しているようだけど……正直君には迷惑だろう」

「あぁ、正直に言って凄い迷惑だ。今すぐここから消えて最前線に戻りたいね」

 嫌味に対してカインは苦笑する。

「マキナ卿の様な大隊長なら、上司が何故君にここまでの興味を持っているか解るかもしれないけど、僕にその情報は来ないし判断する材料は少なさ過ぎる。だから」

 礼拝堂奥の通路、その先に到着する。そこにあるのは扉だ。ソードアート・オンラインらしい木の扉だ。そしてその扉で姿こそ隠されているが、向こう側に存在する気配は微塵も隠れていない。

 この先には化け物がいる。

 どうしようもなく、隠しようもない、そんな化け物が形を持った存在している。扉の向こう側から濃厚な気配が感じられ―――それが自分を誘っているものだと半ば直感的に理解する。カインの顔が此方へと向く。

「僕から一つだけアドバイスをあげる」

 それは、

「―――気を強く持って」

 それだけを伝えて、扉をカインが開けた。


                           ◆


*1

 あけた扉の向こうにまず見えたのは黄金だった。目を奪う黄金。装飾や金品ではなく、獅子の鬣のような黄金の髪。黄金率の美しさを持って存在。軍服姿は確実にその存在がカイン達の主である事を示していた。それが部屋の奥、その威風にはそぐわぬほど普通で安い木の椅子に座っていた。だが安い椅子に座っているくらいでは、決して黄金の美しさは損なわれない。むしろ泥の中でこそ輝かんとばかりに黄金は輝いていた。発する威圧感、美しさ、そして本能的に理解する。これは存在としてより上位の存在―――黄金の獣。そんな言葉が脳に浮かぶ。

 そして、

『なに……これ……?』

 体の奥深く、白痴の魔女が初めて感じる”モノ”に戸惑いを得る。

 あぁ、それをお前は知らないのだろう。ざまぁみろ。俺も全く同じもの感じているけどな―――精々それを理解しようとして苦しめ。

 恐怖。

 本能的な恐怖。

 カインの言葉が冗談や偽りではなく、”気を強く持たなければそれだけで意識が飛びかねない”存在なのだ。だからカインの忠告はこの場で何よりものアドバイスだった。おそらく普通の人間がこれだけの覇気に晒されれば一瞬で気絶するか、もしくは息苦しさに倒れるだろう。それだけの威圧感をこの黄金は持っている。

「ご苦労トバルカイン。卿は下がっていろ」

「ヤヴォール」

 頬杖をついたポーズでカインの退出を命令するとカインがドイツ語で返答を返し、一礼の後に部屋から出る。

 残されたのは俺と黄金だけだった。

 ……意識を、強く持て……!

 今、この瞬間も精神を蝕む恐怖を押さえつける。本能的な恐怖であるが故に押さえつけ難い。が、憤怒と憎しみをさらに深いものとして纏う。それだけで恐怖への防御となる。黄金の威圧へと少し余裕を持って対応できるとなったところで、

「初めまして、と言うべきだろう、≪Longinus Dreizehn Orden≫、卿ら日本人のことばで言えば≪聖槍十三騎士団黒円卓≫、その首領のラインハルト・トリスタンオイゲン・ハイドリヒだ」

 ―――ラインハルト。

 何故気付かなかったのか。

 この男を前、テレビで見た事があるのを思い出す。

 いわく、金髪の獣の生まれ変わり。

 いわく、生まれる時代を間違えた英雄。

 いわく、今世紀最大の天才。

 その名を欲しいままにするドイツ軍大将。

 アインクラッド解放軍の様なお遊びの軍人ではなく、有事に備えて本物の兵器の扱いを学び、そして戦う事のできる本物の軍人だ。俺の受けた印象は間違っていなかった。ならば聖槍十三騎士団黒円卓とは第二次世界大戦時のSS高官のお遊びでしかなかったオカルト集団の―――。

「まぁ、そこで立っているのも辛かろう。座りたまえ」

 何が愉快なのかわからないが、楽しそうに話しかけてくるラインハルトは目の前、テーブルを挟んでラインハルトと相対するように置かれている席に視線を送る。が、

「必要ねぇ」

 俺を拉致した指示した張本人の言いなりになる―――それはあまり面白くない想像だ。だがその反応が面白かったのか、ラインハルトは軽く笑う。

「そうか。ならば好きにすると良い」

 声も美声であると判断できる。そういえば、朝食をこの男が用意したとシュピーネが言っていたような気もするが、到底信じられないしおそらく冗談か何かだろう。ともかく、

 俺の神経が恐怖で塗りつぶされない内にさっさと話し終えて最前線へ戻りたい。

『アス、何なの……これ?』

 魔女の声を無視する。

「用件があるのならさっさと言え。お前の顔を見るだけでも不愉快なんだよ」

「カールの事を思い出すからか? あぁ、そういえば卿はカールに魔名を授けられていたのだな。たしか≪シャヘル≫と言っていたか。旧約聖書に通ずるウガリット神話の曙の神であり、黄昏の神と対を成す存在か。なるほど、自身が触れられぬからこそ触れられる存在を宛がう、共感は出来ないが理解はできる」

 黄昏とは間違いなくサン・マロの宝石と呼ばれたマルグリット・ブルイユの事だろう。

 あぁ、つまりなんだ。番え? 対を成せ? 交われ? 子を成せとでも言いたいのか? ふざけるなよ塵屑が。カール、なるほどカールか。この男がラインハルトと名乗り、あの詐欺師がカールと呼ばれるのなら、いいところあの男はカール・クラフトとでも名乗っているのだろう。なるほど、詐欺師らしい真似だ。

「くくく」

「何が面白い」

 笑われた事に不快感が湧く。が、ラインハルトはこの瞬間を何よりも楽しんでいる様で、それがさらに癪に障る。

「いや、なに。卿の気にする事ではない。それよりも本題へ移ろう。元々そのために今日は卿を呼んだのだから」

「っは、拉致の間違いじゃねぇのか」

「だが結果として私の前に現れた。卿は力を得る事ができ、私も卿に会えた。問題はなかろう?」

 力を得る事ができた。それはつまり―――

「―――てめぇ、俺をワザと追い込んだな……!」

 怒りが湧く。ラインハルトは肯定するように、あぁ、と答える。その優雅な態度が気に入らない。いや、存在自体が気に入らない。いや、それも間違っている。

 この男は生まれた事自体が間違いだ。

 こんな存在は、生まれてきてはならないのだ。

 俺も、あの詐欺師も、ラインハルトも、生まれたのが間違いだ。

 だから、

「殺す」

 肩から下げる鞘から、刃を抜く。それにラインハルトは、

「やはりこうなるか」

 これを待っていたとばかりに言葉を出す。その態度が余計に苛々させる。こいつは自分が死ぬとは微塵に思っていない。いや、死ねないと確信しているのだ。自分が圧倒的強者で、他の存在全てが弱者―――それを事実として認識しているのだ。

 だからこそ、余計に苛々する。

『アス……私……この人が……』

「魔女―――黙って俺に従え。」

 刃に覚えたばかりの、システムを超越する死を込める。システムの壁を切り裂き魂を抉り取る外道の業。本来なら使おうと考えるだけで吐き気がするのだが、そんなことを考える余裕はない。奴は慢心している。だから確実に当たる初撃に、すべてを込める。

 と、

「一撃」

 ラインハルトが言う。

「卿の攻撃を許そう」

 言い終わる前に踏み込み、刃を振るう。
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| 断頭の剣鬼 | 10:48 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

有事に備えて本物の兵器の扱いを並び
並びではなく学びかな?と

| くれいく | 2012/07/29 11:20 | URL |

この人が裸エプロンどうのこうのの人・・・ッ!?

解せぬ!解せぬぅッ!!

| | 2012/07/29 18:43 | URL |

安物の椅子に座るラインハルト卿……。

絶対体のサイズに合っていないはずなのに座りこなしている獣殿の様子が目に浮かぶようだ……!

| | 2012/07/29 19:19 | URL | ≫ EDIT















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