陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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黄金 ―――ニグレド

推奨BGM:Einherjar Nigredo


 一瞬の加速と肉薄。

 百七十を超える大太刀が要求するSTR値は凄まじい。それこそ現段階でもSTR値を多めに振っているダメージディーラーにしか振るう事はできないほどに。最大、最高の威力を叩き出すために両手で握った大太刀を下から切り上げるように、ソードスキルを使用し首を狙い振るう。

「狙いは悪くない」

 首はSAOのプレイヤーが一番防御し難い場所だ。フルプレートアーマー等の完全防御型の装備でもなければ、首に防具を着ける事はほぼない。そして設定されている肉質も、首は一番柔らかい部分となっている。だから首への攻撃は非常に優秀な手段だ。

「だが相手を見極める必要がある」

「なっ……―――」


 ≪羅刹≫の刃が首に触れたところで動きが完全に停止した。それには流石に驚愕するほかなかった。勝てない相手だと本能は警報を鳴らしている。理解している。だからこそノーガードは余裕の表れだと判断し、一撃の必殺で殺す事を決めた。両手で握った大太刀の一撃は重いと判断できる。

 だが、結果は一目瞭然。

 薄皮一枚切り裂けていない。

 正直に言おう。

 興奮してきた。

「ォ―――!」

 動きを止めた大太刀をそのまま押し込むようにしつつ全力で手前に引く。まるで鋼鉄の塊を切るような感覚と共に火花が散り、マキナの頭上のライフバーが僅かに削れる。そして、

「っふん」

 鋼鉄の一撃が腹に突き刺さる。

「っがあぁあ!」

『アス!』

 全身を衝撃が貫く。現実と遜色のない痛みが体を蹂躙する。ありえない。そんな現象はありえないのだ。SAOに痛みを生成する機能は存在しない。だから痛みなど発生しない。部位欠損も、斬撃によるダメージも、衝撃は発生しても絶対に痛みは発生しないはずなのだ。

 だから一瞬で理解できる。

 こいつらは同じだ。あの詐欺師と、魔女と、同じように”法則”を超越した存在なのだ。頭上のライフバーは何故か調整されたかのように残り一割のところで動きを止める。

「ぐ、っかぁあ!」

 回復結晶を取り出して即座に体力を回復させる。連続で結晶を消費し、一気に最大値まで回復したところで再び鋼鉄を思わせる男へと視線を向ける。

 僅かに削れていたライフバーは戦闘回復のスキルによって修復されていた。

 理不尽だ。あまりにも理不尽だ。

 だがそれは俺が殺した犯罪者ギルド達も考えた事だろう。あんなやつらとは同じになりたくない。最後になって逃げ惑うのは醜悪で、そんな無様な姿を曝すのは嫌だ。

「殺す……!」

 生きている間は全力で生き抜く。それが、俺に残された全てだ。

「そのあり方は潔いとも取れるが―――」

 ほぼノーモーションのパンチ。事前に察知が不可能な拳撃は迫ってから初めて反応できる。拳撃の一撃一撃が全て無拍子、芸術の域とも取れる一種の極地に反応できたのは単純に運が良かったのと、そしてマキナが手加減してくれているだけに過ぎない。

「っぐぅ―――」

 避けない。そして手加減されている事を認める。あぁ、俺は弱い。お前らの様な存在と比べれば圧倒的に弱いだろうが、それから目をそらして逃げる弱さだけは、

「いらないんだよぉ―――!」

 拳撃と体の間に大太刀を無理やり挟み込む。間一髪間に合った防御行動は大太刀にみしり、と嫌な音をたてさせる。柄を通して衝撃が腕に伝わるが、今はそれよりも、

「ぉおおお!」

 ソードスキルによりエフェクト光を纏った拳をマキナに突き出す。攻撃力で大太刀の一撃に大幅に劣るそれではマキナのライフバーに欠片の欠損すら与える事はできない。そうであっても、止って絶望するよりはまだ何倍もマシだ。

 ―――諦めたらそこで”自分”が死んでしまう。

 打撃がマキナの体に突き刺さる。心臓を狙ったクリティカルの一撃、派手なエフェクトと共に繰り出されたソードスキルは≪バーストインパクト≫、クリティカル時に防御力を無視しダメージを与えるソードスキルだ。

 設定されている人体急所へ攻撃が命中するも、マキナの体力はドット単位でしか減らない。

「解せんな」

 蝿を振り払うような一撃が振るわれ、それだけで耐え切れずに体が吹き飛ぶ。吹き飛びながらも既に用意していた結晶を即座に発動させ、体力を確かめるまでもなく回復させる。欠損した体力を回復しながら大太刀を握り、体勢を整えて着地する。

 ……痛ぇ。

 痛い。はっきり言って物凄く痛い。これだけ痛い思いをしたのは馬鹿と二人でヤクザに突貫した時以来だ。あの時は二人でボコボコになりながらも帰ってきたんだったっけ。柄にもなく昔の事に一瞬だけだが浸ってしまった。司狼と共に退屈な毎日の”攻略法”を探してた頃の話だ。そういえばあいつ、SAOには興味がなかったけど、今頃悔しがっているんだろうな。

 走馬灯の様なものなのだろうか。今まで考えもしなかった昔の事を、戦闘中にもかかわらず考えてしまうのは。

 だから、

『アス』

「……」

『私を使って』

 尚更水を差した彼女の存在が許せない。

『カリオストロは、アスが誰よりも私を上手く使えるって言ってたよ』

 あの詐欺師が言うのならそうなのかもしれない。だけどな―――

 マキナの攻撃を喰らって耐久値が大幅に減った大太刀を構える。次に攻撃を防御すれば確実に折れる。その確信が自分にはある。相手が手加減しているという事実すら、生き延びる事へと全く結びつかないこの絶望的な状況。

「うるせぇ、黙れ」

 凶暴性があふれ出るのを自覚し、認める。魔女の言葉に耳を傾ける事無くマキナへと向けて一気に加速する。

「魔女風情が俺の戦いに口を挟むな!」

 一気に加速し放つ刃の一撃にソードスキルの光は宿らない。ソードスキルとは高いダメージを繰り出すのと同時に明確な硬直を生み出す。モンスター相手ならともかく、この男には致命的なまでの隙となる。

 乾坤一擲。

 全てを詰め込んで放った斬撃をマキナは軽いスウェーで回避し、

「解せんな」

 再び同じ言葉を口にする。だがその意味を問う事無く攻撃を続ける。速度を微塵も落とさず自分の持つ技術の限界に挑戦し、超越し続ける。放つ連撃の全てが前の動きと連動し、速度の落ちないトップスピードの連撃をマキナに繰り出す。しかし、それをマキナは体に一撃たりとも当たらせる事無く、紙一重で完全に見切って回避する。

「何故使わない」

 言葉は短い。が、意味は伝わる。

 ―――何故マルグリットを使って戦わない。

「貴様には出来るはずだ」

 斬撃を避けられる。最初からその気になれば一撃も受ける事はなかったはずだ。このマキナという男は武芸に関してある種の才能を持っている。いや、これは才能ではなく異常経験だ。対峙して受けられる印象は百戦錬磨の猛者だ。何百、何千回と戦闘を繰り替えしてきた結果、あらゆる行動に精通し、そしてそれを達人を超えた域で披露する怪物となっている。現代社会でどうやったらここまでの怪物を生み出せるかは解らない。が、

「使え? 使えと?」

 百戦錬磨だが何だが知らんが、

「舐めるなよ」

 俺が、

「俺が魔女を使ってたまるかよ……!」

 あぁ、そうだ。

「憎んでいるんだよ。殺したいんだよ。消し去りたいんだよ。いらない。こんなものはいらない。今すぐ体を引きちぎってでも抜き去りたい。重いんだよ! 俺の戦場に白痴の木偶風情が出てくるんじゃんねぇ―――!!」

 そこで、快音と共にマキナの体に刃が当たる。それはおそらくマキナの温情だろう。攻撃を受け止める姿も避ける姿もない。ただ語った言葉に対して、

「成程。男の戦場に女は不要―――」

 理解するよりも早くレバーブローを受けて体が浮かび上がる。今までにないほどの衝撃が体を突き抜ける。だというのに、何故かライフバーは一ミリたりとも削れていない。浮かび上がった体にマキナの追撃が入る。

「っぐっがぁああ!!」

「だが悪手だ。実力のない言葉は妄言だ」

 断定したところでマキナの拳が体に突き刺さり、壁に衝突するまでに吹き飛ばされる。

『アス! 私を使って!』

「だま、れ……!」

 誰が使うものか。

「勝利万歳(ジーク・ハイル)。それを言うだけで勝てるのなら安いものだ」

 壁に衝突した体にマキナの追撃が入る。逃げ場のない体では攻撃の瞬間に力を入れて集中するほかに防御する方法が存在しない。だがそれすら空しい努力だ。マキナの攻撃は防御を易々と打ち破り、プレイヤーアバターに設定されているライフバーではなく、”それを越えた先”を一方的に殴り殺している。

「貴様の正しい選択は使うのではなく利用する事だ。道具として割り切れ」

「がはぁっ」

 マキナの一撃で寿命が削られるのを感じる。全身に走る激痛はリアルの世界で一度入院レベルの怪我をしていなければ即座に気絶してしまいそうなほどの痛みだ。だが、それでも目を開けてマキナを捉える。

「おぉ!」

 壁に殴りつけながらも片手で大太刀を振るう。眼球めがけて放ったそれは瞼で受け止められた。

「出鱈目な野郎……!」

「もう終わりか」

 未だかつてない衝撃が全身を貫いて広がる。打点を中心に抉り取られるのを錯覚する様な痛みを受ける。直接的な打撃とはまた違う。中身だけを狙って殴るようなその感覚に苦痛の声が漏れる。どう足掻いても勝てない。絶対に勝てない。

 存在としての次元が違いすぎるのだ。

『アス……』

 黙ってろ。

『私の事はキライでもいいから』

 頼むから黙っててくれ。

「使わなければ終わるだけだぞ」

 解ってるんだよ……!

『今は死なない為に……』

「終わりだ」

 明確な絶望が形を作って迫ってくる。目で拳の動きを追う事ができる。その程度には加減してくれているのだろうが、その中に秘めた必殺性は隠しきれていない。間違いなく必殺の一撃だ。その本来の必殺性の百分の一も発揮されていないが、それでも受けたらライフバーは一撃で全損し、俺は仮想でも現実でも死ぬだろう。そのことを直感的に理解し、疑う余地もなく受け入れた。

 全ての動きがスローに見える。

 マキナの踏み込み、腕の動き、筋肉の使い方、巻き上がる埃、揺れるランタンの光。明確な死の前に意識が引き伸ばされる。そして、

 死ねない……!

 少し前までは戦って死ねたら重畳と取れた。

 が、こんな死に方は嫌だ。

 こんな理不尽で意味不明な力で殺されるのだけは嫌だ。そんなそんなことは到底許せない。

 だからこそ、考えるよりも先に体が動く。反射的に自分の”中身”を欠片だけ理解し、必殺の一撃の前に腕を伸ばす。

 当たる寸前、ほぼ無意識に言葉を呟く。

「―――活動」

 不可視の斬撃が走る。これもまたシステムには登録されていないあの詐欺師の業の一つ。内側にいる魔女とつながりを得たことで使用可能となる神秘の一つ。茅場晶彦の創造した仕様、それを超越した能力。

 特性が引き出され、生み出された斬撃。

 正面から叩き込まれる必殺と衝突し、互いの間に衝撃を生む。

「ほう」

 その一瞬でマキナの必殺が動きを止める。時間で言えばほんの刹那の出来事。しかし、いつでも動けるようにしていた体は素直で、逃げる隙が出来た瞬間に体を抜け出させ、必殺の一撃を回避する。

 怒りが湧き上がる。

「俺に……使わせたな……!」

 クソが。クソがクソがクソが!

「俺に、使わせたな!!」

 特性を引き出してしまった事で自分が一歩、システムの外側の領域へ踏み出してしまった事を直感的に理解する。理解できてしまう。体の中身が書き換わる感覚をどうしようもなく理解してしまう。今、自分は目の前の怪物と似たような存在、その初期段階へと変貌してしまったのだ。

 半ば、人間から逸脱してしまった。

「ふざけんじゃねぇぞ……!」

 殺す。こいつは絶対に殺す。俺に魔女を使わせた事もあるが、こんなものにしてくれた礼もしなくてはならない。

「ぶっ殺す!」

 抜け出した先で再び大太刀を構えると、マキナも拳を構える。前よりも洗練され、そして堂に入った構え。前よりも威力、速さ、全ての能力を引き上げて対峙してくる。同じ武器を得た今、隙をつけば殺れる。その確信を持って―――

「―――そこまでだマキナ」

「少々待ってください」

 傍観に徹していた二人が動き出す。
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| 断頭の剣鬼 | 09:15 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

マッキーさんが初っ端から終焉過ぎてヤバイ件
スッゴく……一撃必殺です(笑)
兄貴'sの出番にも期待ッス

| 女神はは至高、金髪少女は至宝 | 2012/07/26 12:29 | URL | ≫ EDIT

マリィを魔女呼ばわりしてるのがすごい……なんというか、GGO編とかと比べると…うん、差異がすごいですねw

アスアス超頑張って。

| ろくぞー | 2012/07/27 10:39 | URL |

誤字誤字

「だだ悪手だ」

ただ悪手だ、じゃないのかカメラード

| 通りすがりの土下座 | 2012/07/27 11:30 | URL |

結局使うとか、ガッカリもいいとこ。
使わないって決めたなら死んでも使うなよ……
萎えるわぁ。

| | 2012/09/23 18:32 | URL |

マッキー!笑って!ゲッツして!

| | 2012/10/08 10:48 | URL |

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このコメントは管理者の承認待ちです

| | 2016/03/23 16:35 | |















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