陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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柊 ―――オープン・セサミ

 そこからレイドパーティーのメンバーが全員揃うのにそう時間は掛からなかった。ボスの攻略で重宝される壁の役割を果たすプレイヤー達と言葉を交わしボスの攻略法を話し合っていると、一番最後に隊列を組んで鎧と制服の集団、つまりは≪アインクラッド解放軍≫のメンバーたちが到着する。攻略において一番多くのプレイヤーを提供しているだけに、そのメンバー数は全体のほぼ半数に届く。

 隊列を組んだまま休憩エリア最奥にまで到着すると、そこで休んでよしと声を出しついてきたプレイヤーを休ませる。


「おうおう、≪軍≫様は重役出勤ですか」

「前回の攻略ではライフが残りライフバー半分ってところで戦闘プレイヤーを≪軍≫で独占して、LA(ラストアタック)を狙ってたわよね。かなりいやらしい手段よね」

 クラインも一攻略ギルドのマスターだ。少し前に離れて他のギルマスとの情報交換に入っている。自分やトウカのようなソロプレイヤーはギルドと違ってスイッチのときに殴って下がる、その程度の連携しか期待されてないのでそれ以上の活躍もしない。だからそこまで話をあわせる必要もないのだ。

 視線の先で軍のリーダー格の男が前に出てくる。周りを見渡すと大きく、広場全体のプレイヤーに声が届くように、声を上げる。

「私は≪アインクラッド解放軍≫のレイナルド少尉だ! 今回はよく二十五層の攻略に参加してくれた。今回のボスはかなりの強敵であることが予想されている! そのため、今日は諸君らの獅子奮迅の活躍を期待するものとして、一気に攻略したいと思う! 本日は本当によく集まってくれた!」

 演説のように言葉を放ったあとに休憩に入っていたプレイヤーを立たせ、先に待機していた≪軍≫のプレイヤーも隊列に加える。その光景を見ているだけではなく、ぞろぞろと他のプレイヤーや攻略ギルドも立ち上がり、迷宮区の最奥に存在するボス部屋へと向けて動きを始める。それに倣うように自分も落ち着けてた腰を持ち上げ、トウカと一緒にのろのろと歩き始める。

「聞いた?」

「聞いた」

 立ち上がり歩き始めた傍、背後から聞き覚えのある声がし、誰かとあたりをつける前にその人物が前に回りこんでくる。面積の少ない踊り子風の衣装に大剣、そして輝く様な金色の髪の持ち主を自分はひとりしか知らない。かなりの神出鬼没である彼女だが、もはやこういう突然の登場にはある程度慣れてしまった。

「というかお前≪忍び足≫(スニーキング)使ったな……」

「これドッキリとかファンから逃げるのに便利なのよねー。ってそうじゃないよ! アスたんアスたん、さっきの話聞いた? ≪軍≫も結構態度大きくなってきたわよねー」

 金髪の狂人、リリーが何時に無く普通の話題を振ってくる。

「今の、アレは表向けに"皆の活躍を期待している"と言っている一方で完全に牽制よねぇ。"獅子奮迅の活躍を期待する"って事は死にもの狂いで戦えって事にも取れるし、"本当によく集まってくれた"って事は完全に自分を主催者としてはっきり主張してるわよね? 一気にこの場のリーダーかトップとしての立場を取ろうとしてるわね。おそらく、あたしの見立てだと自分の立場を明確にしてレアドロップの取得交渉を有利に立たせようとしてるよ。ほら、アレも」

 そう言ってトウカが先頭の≪軍≫のメンバーたちを視線だけで指し示す。

「あの人数ももちろん攻略のためだけど、実際は参加しなかった攻略組プレイヤーのほうが戦闘力としては上よ? それを押しのけてまで人数をそろえたんだから、もちろんこちらの威圧か、アイテム確保の要員よ。装備は統一されてるけど、≪鑑定≫スキルでちょいと調べれば少し質が低いってわかるんじゃないかしら」

 質が低いということはレベルの低いプレイヤーでも装備ができるということだ。その意見に、うんうんとリリーが頷きくるくるっとその場で回転するように踊ると、

「トウカちゃんするどーい。何か≪軍≫の方針が若干変わったって噂だったのは本当っぽいねー」

「噂?」

「そそ。何か今まで以上にボス戦に対して力を入れるつもりみたいよ。まぁ、ぶっちゃけ何処からどー見ても力不足で火力不足。タンクそろえてるのは良いけど、毒とか麻痺へのレジストが低いからアレ、状態異常に掛かったりしたらバタバタ死ぬわよ」

 リリーも決して人が死ねばいいと思っていっている性格破綻者ではない。純粋に装備とレベルを見て、そして的確な判断を出しているだけだ。だが俺もトウカもリリーも結局はタンクビルドではなく、アタッカーと踊り子としてのビルドだからタンクの意見が欲しい。

「そこらへんメイン盾としてはどーよ、ブロンドさん」

「こっちに話を振るとはよく出来てるな。ジュースを奢ってやろう」

「ブロンドさんとか結構古いネタをガチでやる人、私好きよ。結構! ヘイ! ブロブロ~」

「このクソアマ前歯ロストにされてえのか」

 背後を歩いている黒髪のプレイヤーに声をかける。一昔前に有名になったキャラクターを気に入り、そのロールをプレイしているプレイヤーで、VIT極で完全なタンクビルドだ。ユリウスの様にソロで戦えるようにSTRを上げておらず、パーティー用のビルドで、タンクに関してのプロフェッショナルのコースだ。

 マゾとも言える。

「で、ブロンドさん、個人的な意見は?」

「……金属装備だということは評価できるな。でもよぉ、明らかにレジスト足りない。レジスト足りない→状態異常に掛かる→前線支えられずにパーティー崩壊→いくえふめい。≪軍≫のパーティーではこのルートが見えてる」

「貴重な意見をありがとう。ポーションをどうぞ」

「九本でいい」

「謙虚だなぁー憧れちゃうなぁー」

「お約束のネタはいいから」

 ブロンドと一緒にこのネタのロマンを理解しないトウカを睨む。だが、アレを見てない人間や、楽しさを理解できない人間にこのネタは通じにくいだけなのかもしれない。

「そんなわけで、もっと解りやすく喋ってね☆」

「おいィ?」

「もっと解りやすく喋ってね☆」

「……おいィ!?」

「……もっと解りやすく喋ろつってんだよ。あぁ? 聞こえないの?」

「すいまえんでしたー!」

 前方へとジャンプしながら見事な土下座を決めるが、ダンジョン最奥へと向けながら行進中なので、必然的に土下座をしているブロンドさんはその体勢のまま置いてかれる。三人で顔を見回し、そして一回ブロンドさんが土下座している方向を見つめる。

「うん。まぁ、とりあえずアイツ堅いし問題ないか。あたししーらない!」

「ここで出るモンスター相手なら土下座してても多分壁の役割は果たせるわよね、ブロブロ」

 どんだけ堅いだアイツ。

 とりあえずブロンドを土下座のまま放置して進むことが決定した。多分追いつくだろう。後で。だが、今は、それよりも今まで考えていたことを口にしようと思う。

「トウカ」

「え、なに? まさかのお誘い!?」

「ヒュー! ヒュー!」

「正気に戻れバカ。黙れ狂人」

 そう言いつつも、トウカの腕を引っ張り隊列から少しはみ出た位置に、会話を聞かれ難い場所へと移る。

「どうしたのよ?」

 何時にも無く、若干言い辛そうにしている自分を見てか、流石にトウカが気遣う。

 ……ま、付き合いも長いんだし。

 悪くはない、と思っている自分がいる。いや、違うだろ。

「トウカ、俺さ」

「どうしたのよ? やっぱり愛の告白?」

 そう

「ばぁーか」

 俺がそんな恥ずかしいことをする訳ないだろう。そういうキャラじゃない。ただ、お前のおかげで俺は少なからずこの毎日が楽しく思えたんだ。この既知感のある日常が楽しいんだ。だけど、やっぱりこのままじゃ駄目なんだ。何時までも”前世”なんてあやふやなものを持ち歩いていちゃ前には進めない。それにこだわっている間は、俺は死人なんだ。

 お前のおかげでそう思えるようになった。

 だから、

「トウカ」

「だから何よ」

 呆れた表情をするお前の顔も悪くは無い。だけどやっぱり、

「ありがとう―――俺、未来に進もうと思うよ」

 過去(既知感)を捨ててもう少し前へ、未来(未知)へ進もうと思う。そう思えるのは確実にお前のおかげで、あのバカにも出来なかったことだから、ありがとう。告白はガラじゃないから言う機会は多分ない。だからほら、それは今の言葉で察してくれ。それ以上は不器用で無理なんだ。

「え、ちょ、ま、待って!」

「待たない」

 恥ずかしくて、顔を見られないように隊列の先頭へダッシュで逃げる。

「え、待って! 今ガチでデレた!? 私の時代キター!? アスー!? 私のアスアスー!!」

 今日ばかりは少しだけ、バカを許そうと思う。


                           ◆


 本日の攻略に多少の不安要素は存在するが、それでも迷宮区の最奥へと到達する。二十五層に入ってから今までの層より迷宮区の内部構造が若干綺麗になり、見た目的には砕けた壁があったりしたのが無くなり少しぼろい遺跡になった、というイメージだ。

 ボス部屋の前にレイナルド少尉が立ち、そして扉に手をかける。

 そこで一旦全員を見渡す。既に準備の大部分は休憩エリアで完了しているために、あとは実際の突入だけだ。それさえ完了すればあとはもう事前の打ち合わせどおりタンクが前に出て防御し、スイッチで交代してダメージを増やすという何時も通りのパターンだ。レイナルドも慎重に周りを見渡すと、

「行くぞ! 私に続け!」

「英雄気取り……ひどい厨二を見た」

「お静かに」

 あまりに可哀想なので流石にトウカをたしなめると同時にレイナルドを先頭にプレイヤーが広間へと流れ込む。自分も遅れないように左手で腰に差してある≪脇差+6≫の鞘を掴むと右手で柄を握り、そして敏捷力に任せて一気にボスの広間へと侵入する。

 広い空間は既に広間の隅にある数個の松灯によって全体を照らされていた。広間の奥、そこには事前の情報通りに巨大な体に双頭を持ち、そしてその体格に合う戦斧を握ったフロアボスが存在していた。

 ≪The Twin Ogre≫、頭上に現れたボスの名前はその双頭を現すような名前、≪ザ・ツイン・オーガ≫と名づけられていた。

 すぐさま前線でギルドの指揮を取るギルドマスター達の指示が飛ぶ。

「タンクは前に! 斧の攻撃は数人で押さえろ!!」

「スイッチは大降りの攻撃を吹き飛ばした後だけだ!」

「数人で囲んで攻撃を抑えるんだ! 雑魚がいない分積極的にローテーション回して隙を作るぞ!!」

 まず最初に≪軍≫と別のギルドのメンバーが入り混じったタンク部隊が前に出る。大盾と片手剣を標準装備されたタンク部隊は迫ってくる巨大な陰からの斧の攻撃に対して盾を突き出し、その攻撃に耐えることから攻撃を始める。

 風を裂く音が鳴る。

 ツイン・オーガが咆哮を上げながら侵入者達へと巨大な戦斧を振るう。かなりの重量があるはずのそれを片手で握り、思いっきり振るわれたそれが一番前にいたタンク数人の盾に次々と衝突する。その一撃でタンクの一団が後ろへと弾かれる。だがローテーションが組まれているタンクの部隊は、次の攻撃に備えて背後で待機していた盾持ちのタンクと場所を交代し、すぐさま戻ってきた斧を体を弾かれながら防御する。

 盾の防御とツイン・オーガの攻防がしばらく続く。

 ツイン・オーガの攻撃は強烈で、そして予想外に攻撃の返しが早かった。そのために中々スイッチの隙を作れずにタンクのローテーションだけが回っていく。

そこにやっとチャンスが生まれる。

「3、2、1、……ってぁあ!」

 タンクが数人で斧による攻撃を受けたところでその斧を他のタンクが数人、ソードスキルで打ち上げる。ツイン・オーガが戦闘を開始して初めてその武器である戦斧を大きく後ろへと弾き飛ばされる。この瞬間こそが攻撃の最大チャンスだ。

「スイッチ!!」

「削れ!」

 タンクの一団が一気にその場から退き、その代わりに突進技を構えていたアタッカーが一気に接近する。

 そして、もちろん自分も後れたりはしない。

「一撃目は、貰ったぁ!」

 抜刀系スキルで初速が最速であるスキル、≪ハヤテ≫を使って一気にがら空きとなった懐に飛び込み、脇差による一撃でツイン・オーガの体力を削る。火力のないタンクによる攻撃よりも多く体力が削れる。そこで突進技を使って攻撃を食らわせながらアタッカーたちが到着する。一斉に一番威力の高いソードスキルを繰り出しながら体勢の崩れている巨体に素早く攻撃を加えていく。自分も負けじと、一撃目のあとに納刀せず、抜刀した状態から連続で≪カタナ≫のソードスキルを放つ。流石に一撃で殺すことが出来ないボスは居合いで戦うよりは初撃以外は抜刀したままの方が早い。

 五秒ほどたっぷり攻撃を加えるとそこで一つ目のライフバーが50%ほど削れたツイン・オーガが復帰する。

 瞬間、大きく振り上げられた斧が振り下ろされる前にアタッカーが蜘蛛の子を散らすように退避する。

「いいぞ! タンク前へ! 小振りの素早いヤツなら弾かれずに受け止められる! それ以外は確実に防御して堅実にライフを削っていくぞ!!」

 おお、と声が上がる。士気は高い。戦場を見れば誰もが負ける気がないことを理解できる。とはいえ、それだけで終わるはずが無い。ライフの低下による追加攻撃パターンが解らない以上、絶対に後で何らかの混乱が発生するはずだ。。それが確実に発生すると解っているぐらいに≪軍≫の信用はない。だから、

「ボスの追加攻撃パターンがどんなものか、だな……」

 二十五層フロアボス戦、開戦。
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| 断頭の剣鬼 | 22:05 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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