陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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刀巡り ―――ディフィート・ザ・エネミー

推奨BGM:Thrud Walkure


 その後≪ダウナ鉱山≫の廃坑区画、その攻略は順調に進んだ。突進系のスキルを使って敵を纏めつつ、それを範囲の広いソードスキルで一気に殲滅する。倒せなくてもAIアルゴリズムの単調なモンスターであれば、対人戦では乱用の出来ない突進系のソードスキルを多用でき、それでモンスターを吹き飛ばしながら坑道を進むことが出来る。その過程でレベルアップもしたり、見たことのないドロップも出たりした。やはり未踏破のダンジョンは色々と美味しいことを確認する。だがその廃坑ダンジョンも残す部屋は一つだけとなった。

 全てのダンジョンに共通して存在する休憩エリア。そこはモンスターが湧くことがなく、そして進入することもない文字通りの休憩するためだけのエリアだ。迷宮区やダンジョンに篭るプレイヤーは主にここを利用し、敵が来ないことに安堵しながら眠るのだが……最近では少しずつだが治安が悪化し、オレンジプレイヤー―――つまりは犯罪者プレイヤーが増えてきたので、ダンジョンで眠ってたら休憩エリア圏外まで引っ張られモンスターに殺された、何て話も噂程度には聞く。


 しかし未攻略ダンジョンでその話はまったく関係ない。

 既に休憩エリアの先へと進みその奥にある広間を入り口から覗いてみて、その中で待機していた存在を目視した。いわゆる偵察は終了している。その姿から予想できる攻撃パターンを話し合い、必要に応じて装備を変える。アインクラッドのボス攻略では既に常識だ。と言うよりも慎重すぎなければ死んでしまうのがこの世界の難しさだ。

 休憩エリア、そこで五人で円陣を組みながら固い地面の上に座っている。

 その姿だが、先ほどの雑魚モンスターとの戦闘時とは違う姿をしている者がいる。ユリウスには変更はないがその代わりにミナトが装備していた盾を取り扱い辛い、さらに大きい盾に変更させている。自分は普段は重量が気になるので装備しないが、生存率を高めるためにも軽いバックラーを左腕に装備した。そして一番の変化はトウカだろう―――革装備だったグローブとブーツを脱ぎ、その両方が金属製の装備へと変更されている。それと同時にジャケットの下には肌着のように鎖帷子が装備されているのがチラチラと見える。STRとAGIを上昇させるタイプではあまりやりたくない、VITとSTRのダメージディーラーが取る少し重めの装備だ。カグヤの装備には依然変更はなくその存在が今回の戦闘ではさほど頼れるものではない事は全員承知済みだった。

「とりあえず軽く覗いた感じ、カエルだったッスねー」

「あぁ、何処からどう見てもカエルだった―――ただし二メートルほどの大きさを持ったな」

 それが自分とミナトの意見だった。アレは何処からどう見てもカエルだった。個人的にはゴーレムなどを期待していたが、どうやらこのダンジョンはカエルの巣だったようだ。カエルは個人的にはあまり好かないので思いっきり戦えるのはいい。そこで、予想できる攻撃パターンについて話し合う。

「今の所普通の≪ロックトード≫から確認できた攻撃は舌による突き、体当たり、そして口からゲロよね」

「最後のだけは全力で回避したいな。ああ言うゲロ系って確実に腐食か状態異常付与されてるし。何よりゲロまみれって姿が色々とアレすぎる」

「だったらゲロゲロ言うのやめましょうよ」

「カエルがゲロゲロ言うことの何が悪い!」

「それ、ゲコゲコじゃないっすか?」

「……Sigh……」

「うわ、英語での溜息を、露骨見せ付けられるように吐かれたッス!?」

「解説ありがとう。だからお前は弄られパシリなんだよ」

「酷いッス……酷いッスよ!」

「あとで女紹介してやっから元気出せよ」

「不肖、このミナト!全力で壁の役割を果たさせていただくッス!」

「あぁ、うん。頑張れ」

 超頑張れ。女つっても自称"女"のマッスル軍団の中でも一番マッスルなやつを紹介するつもりだけどな。初めてあった時はゲームのバグか何かと思ってGMへ連絡できないか必死に探ったものだ……。アレは間違いない。見た目だけで敵も味方も混乱へと突き落とす何らかのユニークスキルだ。絶対そうに違いない。しかも同じ人種が集まる辺り感染でもするんだろうか……。苦しめ、パシリ。

 くだらない事を頭の片隅で考えつつも、それでも話は進む。基本的にボス相手への戦闘方法は確立されている。まずは最初に壁を任せる耐久ビルドプレイヤーに前線を任せ、何とかボスの攻撃に耐えてブレイクポイントを作成、積極的にスイッチで交代しダメージを増やすしかない。とは言えあまりに欲張りすぎると死んでしまうために一回で十のダメージを狙って死ぬのではなく、皆生き残る為に三回の攻撃で十一のダメージを狙うのだ。ボス攻略の心得としてはこれが正しい。何故ならボスの攻撃は基本的に回避が難しい。どんなに防御してもどんなに早く動いて回避しても、その余波をほぼ必ず受けてしまい、体力は減少する。だが基本的にSAOのボスは良く作戦を練って、考えて行動すれば危険を回避して倒せるように設定されている。それが最初からの設計か茅場晶彦の介入による変更かはわからないが、なるほど。この世界は本当に良く出来ていると思う。

「んじゃ、ま、おさらいしましょうか?」

 と、トウカが進行を務める。

「まずユリウスとパシリ君が壁で、まずはスイッチせず耐えてパターンの把握。その間に私とサイアスで軽く弱点が見つからないかどうかを遠距離からチマチマ攻撃してリアクションを探って、カグヤはパーティーに何時でも回復結晶を渡せるように待機」

 基本的にアイテムの使用はインベントリを開く、指で操作する、アイテムを実体化、そしてそれを使用する。そのプロセスを経て使用にまで至るのだ。そのために無駄な操作が致命的になる戦闘では些か面倒なところがある。そこで思いついたのが戦闘に参加してない第三者、もしくは手の開いた人間が既に実体化した回復結晶を渡すことだ。とは言えこれもこれで結構面倒な準備が必要だったりする。

「弱点見つけたらガンガン攻める感じ? 見つからなかったら普通にスイッチで交代しながらチマチマ削りましょう。基本的なボス攻略とは変わらないけど、無理そうだったら遠慮せずに逃走……でいいわよね?」

「了解しました」

「了解ッス」

「把握」

「ま、人数少ないしそんなところだろう」

 予想としてここのモンスターの大体の強さが十九層ほどの強さだ。だからあの中ボスともいえるカエルは十九層のネームドモンスター程度の強さ、大体は二十二~二十五レベルを予想としてもいいと思う。最前線で戦うものとして、ソロプレイヤーとしての安全マージンは現在いる層のレベルに十を足すことだ。今現在自分のレベルは二十八、そして十九層の雑魚モンスターのレベルが十九だとして、いけるにはいけると思う。カグヤを抜けば残りの三人も似たようなレベルのはずだ。だから十九レベルが七人パーティーを組むよりは火力も耐久も高いはず。何よりソロとしての安全マージンには結構近い。

「よし、行くかぁ!」

 元気良く立ち上がり体を伸ばす。追随するように立ち上がる皆とくだらないことで盛り上がりながら、少し先にある最奥の広間まで真っ直ぐ向かう。


                           ◆


 途中ロックトードの一団と遭遇するが、特に損耗らしい損耗をせずに最奥に到着する。インベントリの中と装備の耐久値をチェックすると、金網のような扉を開け放ちその中へと足を踏み入れる。全体的に暗い鉱山系のダンジョンだがやはり密閉された空間で完全に闇包まれていた。だがランプを持ったカグヤが足を踏み入れそのランプを中へと持ち込んだ瞬間景色が激変する。ランプによって照らされた空間の壁には水晶のような宝石のような鉱物が埋まっており、ランプの光を吸収、それを反射しながら輝く。周囲しか照らせないはずのランプでその部屋全体を明るく照らす。ユリウスとミナトが得物を構えながら前へと進み、自分とトウカも何時でも戦えるように得物を構える。カグヤは事前の計画通りにランプを入り口のすぐ横に置き、そこで待機する。

 進入して数瞬、その巨躯が見え始める。

 最初に全体の輪郭が形成され、段々とディテールが増えていく。最初はただの黒いポリゴンの塊が、段々とそのポリゴンについている情報が増えて肌や顔などと言う特徴が増えていく。数秒かかって完成されたその巨大なカエルは黒い肌の、鉄を思わせるような色合いを持った姿をしており、それはこちらを完全に把握していた。頭の上には黄色のカーソルに≪Metal Eater≫、メタルイーターなどという名前と共にライフバーが表示される。ダメージが数値が表示されないSAOでは目で見えるその一次情報が全てだ。そして、たった五人と言う少人数のパーティーに怒りを覚えたのかこちらを見るカエルが大きく吼える。

「息が臭ぇんだよ」

 実際はここまで匂いなんて届いてないのだが。

 バックラーのついた腕でナイフを握ると同時にユリウスとミナトの体が前に出る。ユリウスはパリィとブロッキングの準備を完了し、ミナトは大盾を前に出すように進んでいる。ここで最初に自分達が攻撃してしまえばヘイト……つまりは敵からの攻撃優先順位がこちらへと向いてしまう。そうしない為にもまずはユリウスとミナトに前線を任せる。

 最初に攻撃を放ったのは巨大なカエルの方だった。

 ユリウスとミナトがある程度の距離まで近づいてくるとその巨体を活かしてのしかかりの様な体当たりを仕掛ける。それをミナトが大盾で防ぎ、ユリウスも両手剣の平を盾の様に突き出し体を後ろへと押されながらも防御に成功する。その一撃で両者のライフバーが僅かに削れる。防御してあの削り具合であるなら直撃はまずい、と判断する。前線での壁の役割を果たすためにミナトとユリウスが攻撃を開始する。

「っはぁ!」

「ッス!」

 その掛け声は何かがおかしい。絶対におかしい。

 そんな思いとは別に二人が動く。槍と両手剣が敏捷力と筋力パラメーターの補正を受けて素早く衝突しエフェクトを撒き散らす。エフェクトを纏わないその攻撃はソードスキルと比べると威力ははるかに落ちるが壁の役目はダメージを与えることではなく、ターゲットを受けることだ。ユリウスとミナトの連続攻撃が体当たりから復帰するまでのカエルに僅かながらダメージを与え、そのターゲットを定めさせる。復帰したカエルが水掻きのついた前足でユリウスやミナトを襲う辺りそのターゲットは今の所固定されたと見る。

 ならば、今が好機。

 左手で握ったナイフ五本を≪マルチスロウ≫で同時に投擲する。この技の一つの特徴として、同時に敵一体の複数箇所を攻撃できる効果がある。一箇所に固めて投げた方が威力は高いのだが。僅かに刺さるタイミングがずれたナイフが次々とカエルの巨躯に突き刺さる。だがその一撃一撃全てをまるでなかったかのように意に介さず、壁として頑張っているユリウスとミナトへの引っかきと体当たりは続く。トウカもスローイングピックを横へと回り込み投擲するが、それでひるむ様子もライフが多めに減る様子も見えない。一通り目立った体の部位へと攻撃は突き刺さったが、それによって弱点が見える様子はない。ならばプランBだ。

「弱点が見当たらないわね」

「ならばスイッチの準備いくッスよ!」

 スイッチは単純にブレイクポイントを作って交代することで相手に対する攻撃のチャンスを生むだけではなく、それは前線で壁の役割を果たしていたプレイヤーの回復チャンスでもあるのだ。この短い時間に頭上のHPを示すバーが三割減っているのが見える。カエルが放つ引っかきをしっかり武器と盾で防いでからユリウスとミナトの武器にエフェクトが宿る。

「スイッチ!」

 大上段の攻撃が放たれるのと同時に技後硬直で動けなかったカエルが僅かに怯む。どんなに巨大なボスであろうとも、技後硬直中に一定以上の衝撃を受けるとある程度は怯むように設計されているのは一種の親切心なのだろうか。解らないが、それがチャンスだという事には変わりがない。トウカと共に重突進系ソードスキルを発動させカエルの体に刃を突き立てる。エフェクトを纏いカエルの体へとつき込まれた刃から感じる感触はまるでPvPでプレイヤーの鎧に攻撃を当てたときのような、金属を殴るような感触に似ていた。確実にダメージを与えつつも弾かれたカトラスを握る手の力を更に強くしながら戦闘で現在一番信用している五連撃のソードスキル≪ダンスマカブル≫を放つ。斬り付ける度にカエルの皮膚の表面に裂傷が刻まれては消え、そしてカトラスが弾かれるような感触を受けながらも攻撃を続ける。完全に復帰したカエルが攻撃を加えたこっちを睨むようにしてみているが、ここでスイッチしてしまえば攻撃は完全に壁の役割を持つ二人へと届いてしまう。故にまだ居場所は入れ替えずにこの一撃を防ぎ、そしてスイッチするだけの隙を作る。それが目的だ。

 すぐにそれが叶った

 体当たりを放ってくるカエルに対して一度大きくバックステップをとりながらその攻撃を回避する。トウカは回避せずに武器での防御スキルを発動させることで耐え抜くが、自分は耐久ビルドではなく攻撃特化のビルドだ。バックラーはあくまでも避けられない時の最終手段だ。攻撃を回避したところから硬直の大きい突進のスキルを放つ。それに合わせトウカも硬直の大きい大振りな一撃を繰り出すとそれがカエルの体にクリーンヒットし体を僅かに後ろへと押し込む。

 チャンスだ。

「スイッチ!」

 背後で回復し、待機していたユリウスとミナトが即座に前に出る。後ろへと戻りながら彼らのライフを確認するとそれが完全に回復していることを確認する。トウカのライフは先ほどの攻撃を受けたことで約1割ほど減っている。それはつまり死に1割だけ近づいているということだ。回復結晶のようにすぐには回復しないが数秒かけて回復するポーションをトウカが飲むのを横目で確認しつつナイフを取り出す。自分が投擲スキルの中でナイフを愛用しピックを選ばないのは、それがヘイトの上昇のし難い得物だからだ。ピックの様な貫通ダメージや武器破壊を持つ投擲武器と比べると些か威力は劣るが、複数回攻撃や複数同時攻撃のメリットでそれは埋められる。何よりヘイトの稼ぎが低いということは壁として戦っているプレイヤーの援護が可能と言うことだ。

 だからこそ、躊躇無く投げる。

 再びマルチスロウを起動させてカエルの体にナイフを突き刺す。その怒りは前で刃を振るい、攻撃を防ぐ二人に注がれている。今の所露見しているパターンは体当たりと引っ掻きのみだが、体力が減ってきたらどう変化するかわからない。そのため素早く相手のライフを全損させるべく、援護をする。ナイフと壁の二人が放った攻撃が皮膚に食い込み、ついにカエルの最初のライフバーをゼロにする。

 それはつまり、まだ次のHPバーが存在するということ。

 事前の情報がないからどれほどのHPを誇るかはわからないが、基本的にボス系モンスターは、ライフバーが減っても次のバーが用意されている。第一層のフロアボス、≪イルファング・ザ・コボルドロード≫でさえ、そのライフバーは全部で四本存在していた。

 少なくともこのカエルもそれぐらいの体力を保持しているはずだ。

 ライフを減らされたのが癪にさわったのか、後方へと大きく飛び退くと、天井を見上げて大きく叫ぶ。頭に響くような不快な叫び声を上げて数瞬、ユリウスとミナトが得物を構えて突撃しようとした瞬間、自分の≪追跡≫スキルによりその背後から現れる姿をいち早く認識する。

 それは、子分とも取れる数体のロックトードだった。

 うわぁ、と内心では嫌な汗が流れつつあるのを無視しながらバックラーとカトラスを構えなおす。狙うのは新たに現れたロックトード。あの巨大なカエルにはHPが自然回復する様子は見て取れない。多少は時間をかけてもロックトードの殲滅を優先すべきだろう。その思考と共に口を開く。

「いらっしゃいませー」

「団体さんご案な~い」

「余裕ッスねぇ……」

「こちらでコレを抑えるので、殲滅お願いします」

「出番キタコレ」

「カグヤちゃんは引っ込んでようねー」

 軽口を交わしあいながらも、戦闘は続く。
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| 断頭の剣鬼 | 21:32 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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刀巡り ―――ディフィート・ザ・エネミー

その掛け声は何かがおかしい。絶対におかしい。
そんな重いとは別に…
と、ありますが…<重い>では無く<思い>ですか?
変換ミスでしょうか?確認をお願いします。

| 式神 | 2012/07/24 01:56 | URL |















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