陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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第一話 流れ着いた先で



 ―――ジュゥ……と広い空間に焼くような音が響く。同時に肉を焼くような匂いと脂肪が焼かれ蒸発する音もなる。

 早い話、肉が焼かれているのだ。

「……ワクワク……」

 石を積み上げ枯れ木を燃やし、その上には若干不恰好なフライパンを乗せてある。その上でじゅぅじゅぅ音を鳴らし肉が焼け、脂肪が溶ける。

「まだかなぁー」

 食事は日々の楽しみであり、俺の趣味でもある。故にどんな状況でもそれは欠かさない。

「グルルルルゥ」

 巨大な犬の様な怪物がフライパンの上で焼かれる肉を見つめ涎を垂らす。普通の精神なら卒倒モノの光景だが、この生活になれた自分としては不思議と可愛く見えるから問題ない。

 問題ないといったら問題ないのだ。

 そして肉も既にバラバラになった状態で犬(?)に持ち込まれたため、実は何の肉だか分からない。だが気にしてはいけない。

気にしだしたら色々と終わらないからである。

「ふむ、中々いい匂いがしてきたな」

 そういうのは紳士服姿の骸骨。しゃれこうべとも言う。葉巻を銜えている姿が良く目撃されるが骸骨なのに意味があるのだろうか。

 肉の様子を見ながら周りを見る。

 暗い。

 何か透明な白い影がいっぱい。

 なんか『死にたくない……』とか『やっと逝ける……』とか良く聞こえる。

 あの世に通じてるらしい。

 金髪の無口系幼女がいる。

 ふわふわ浮かぶ白髪の槍少女がいる。

 紳士系骸骨もいる。

 巨大系番犬もいる。

 拝啓お父様、お母様。不肖の息子はどうやらあの世の一歩前にいるようです。どうしてこうなった。どうしてこうなった。

 最後に、どうしてこうなった。

 あ、肉が焼けた。

「いただきまーす」

「ん……いただきます」

「ガウガウガウガフガフガフ」

「は、は、は。涎がこちらまで飛んでいるから少し落ち着きなさい」

 母さん、息子はあの世に最も近いところでがんばってます。帰るのはたぶんムリです。


                   ●


 ―――1週間ほど前。始まりは簡単である。

 それはとある日の晩、高校を卒業して数日後、友達と祝うために適当に飲んで帰ってきた晩。

 疲れたためにろくに着替えも靴もせずにただ倒れこむように、親に無理を言って一人で暮らしている小さいボロアパートの、自分のベッドに倒れる。

 酔った頭では深く考えることはせずうつ伏せに倒れて寝る。

 ただそれだけであったはず。

 次の日になって、朝日が昇れば飲みすぎたことを後悔しながらも、なんで靴を脱がなかったんだと自分に愚痴る。

 そのはずだった。

 だが自分の朝を知らしめたのは決して隣の部屋に住む元気な爺さんの声ではなく、ましてや隣に住むフーリーターのお姉さんの優しい声でもなく、

 流れるような水の音であった。

 今時風呂は共通と言う古臭いボロアパートに住んでいる身分ではあるが、流石に風呂場の水の音が伝わってくるほどまでにぼろくはなかったはずだ。

 いや、そう信じたい。

 耳を済ませれば静かに流れる水の音がするほかにも、広い空間に風が流れる音がする。

 ……風? 隙間風だよな? あ、でも隙間風ならこんなビュービューしねぇよな?そうか。ついに壁に大穴が空いたか。いつかはなると思っていたが、ついにその日が来たのか。また大家に金を毟り取られるのか。

 ……よし、そろそろ現実逃避をやめよう。

 分かってはいるのだ。自分の状態が明らかにおかしいと。水の音は増したから聞こえるし、こんな大きな音を立てる隙間風などない。春なのに若干寒さを感じるこの温度、

 絶対自分の部屋ではない。

 目を開ける前にいくつかの可能性を思考してみる。

 A.友人が合鍵を使って自分を部屋から運び出した。
 B.大家さんがついに狂って部屋の外へと投げ捨てられた。
 C.俺は伝説の勇者で異世界に召還された。

 よし!何でCが思いついたか知らんがいい加減に起きろ俺の頭!

 状況を理解して受け入れるためにも体を起き上がらせる。

 うつ伏せになった体を起き上がらせながら今までかたくなに閉じていた目を開ける。周りは夜なのかかなり薄暗く、周りが良く見えない。何回か目をぱちぱちしながら目を闇に慣らし声のする方向へと頭を向ける。

「いやぁ、すいませんねぇ、たぶん誰かの悪戯なんでしょうけ……ど……」

 視線を向けた先、その先には骸骨がいた。白い骨に紳士服、葉巻を銜えてステッキを握った骸骨である。スケルトンともいえる。そしてその横に巨大なライオンとも言える肌色が青の猛獣がいる。しかもその背には黄色い髪の幼女が座っている。

 訳が解らん。

 そしてこの二人+α、どこかで見たことがある気がする。

 そして、そこまでが自分の意識を保てた限界でもある。再びベッドの上に倒れる瞬間に聞こえた骸骨の男の声、

「―――●×▲л!/Ш××、―――●◇?」

どこですかここぉーっ!言葉が通じませんよぉーっ!

 意識を失う前に考えられた、最後のことである。


                   ●


「ふむ、眠ったか」

 正確には眠ったではなく眠らせた、である。正気を保たせるための応急処置とは言え若干乱暴だったかもしれない……とは思わない。

 骸骨の男がカタカタと骨を鳴らして声を出す。どういう原理でそれが成されているかは永遠の不思議ではあろうが、それは今その場にいる者達にとってはどうでもいいこと。

 骸骨の男の前には安物だと分かるベッドにうつ伏せに倒れる青年がおり、黄泉の門近くの浅い水の上に鎮座している。その周りにはその青年の所持品なのか様々な道具が錯乱しており、どれもこれも見たことがないようなものばかりである。

 青年は悪戯と言われたが、悪戯程度でこれるような場所でもあるまい。

 骸骨の男は軽くステッキに体を預けながら少し思案するようにそぶりを取り、

「放っておくかね?」

 そう言って魔獣の上に座る幼女へと視線を向ける。表情のない顔で青年を見つめて数秒、結論に達したのか頭を横へとふり、

「…………またされたら……………………迷惑」

 どちらも、青年の存在自体はどうでもいいことなのだろう。珍しい服装と道具にはいささか興味があるが、それでも必要と言うわけではない。この暗く深く霊の集まる世界では道具などほぼ何も要らず、必要なのは己のみを守る術のみぐらいである。

 だから、青年自身にはまったくの興味も価値もない。

 だが、何故此処にいるかというのはまた別の問題ではある。気づいたらここに居た。知らないうちに進入された。
 片方はこの『場』の管理者であり門番とも言える存在。完全とは言わないが、ここ、『冥き途』をかなりの精度で把握している。

 なのに、進入を気づけなかった。それが問題である。

「起こすかね」

 青年を起こすのに時間は要らない。ステッキで殴ったりすればそれで済む。

「記憶を読む」

 その方が圧倒的に早いと、そう結論付ける。寝てる間に実行されたのであればだれが犯人かは分からないが様子からしてどうだったか、もしくは原因がなんだったかぐらいは分かるかもしれない。これでもダメだったら捨て置けばいい。たったそれだけの認識。

 だが、此処こそが始まりであった。

「では始めるぞ、ナベリウス殿」

「ん………………やって………………リッチ……」

 ゆっくりとした幼い声でナベリウスと呼ばれた少女がゴーサインんを出す。それを受けてリッチと呼ばれた骸骨がステッキを振ると、ベッドを囲むように魔法陣が描かれる。

 それが完成してステッキをもう一度振るう。リッチがスッテキを掲げた状態で動きを停止し、ナベリウスがが瞳を閉じた状態で停止する。少しだが、ナベリウスに驚愕の表情が生まれ、リッチの体の動きも停止する。

 あたりを静寂が包む。
 
 ナベリウスが騎乗している魔獣も空気を読んでいるのか静かにしており、あたりを『何かが』漂う中あただただ時間がすぎてゆく。

 真剣な顔をしてリッチとナベリウスが互いを見合う。今の行動によって二人の仲での青年に対する興味、そして警戒度は上がっていた。彼自身にはまったくの価値はないが、

 彼の有する知識は世界を滅ぼす毒にもなりえるものだった。

「これは……どうしたものかね」

「…………危険?」

「それには違いないが、ふむ」

 双方共に考えに耽る。使い方によっては確実な毒になり、それは確実に不幸しか呼ばないものだとはっきり二人には分かる。

「かの視姦魔人に見つかることは?」

「ない…………はず……………………ここにいるうちは、平気」

「かと言ってそのままにしておくのも危険ではあるな」

 人類が滅ぼうとどうということはない。自分の命にもそこまで大きな価値を感じるようなものでもないが、それでも迷惑は嫌だ。世界に対する価値観はそれだけだが青年の脳内の情報は、そういう世界観を僅かにだが変える。

 ほんの少しだけ、世界に興味と希望を与えるようなものであった。だからこそ、このままにしては置けない。

「記憶を消すかね。もしくは封ずるとしよう」

「封じるほうが最善だと…………思う。全部じゃなくて…………」

「流石にまっさらにするのは酷だろう。『物語』に関する部分は消すとしよう」

「ん………………それがいいと、思う」

 完全に消し去って捨てるのは簡単だが、それでも『物語』と完全には合致しない世界の現状。もし、それがシナリオどおりの世界であるのなら、遠い未来にその知識は必要とされるかもしれない。

 それはただの可能性。だが無視は出来ない可能性。

 頷いたリッチがステッキを振り回し魔法陣を新たに宙に描き始める。それに魔導力を……魔力を通して効果を発動させる。

 10秒。たったそれだけの時間でリッチの施した術は完了した。

「あとは少年の処遇だが……」

「面白……そう」

「なるほど。手元においておく、と言う事か」

 何がなるほどかは常人には理解しがたいが、ナベリウスの一言で大体を把握したのかそれだけでリッチは理解する。

つまりは、壮大な暇つぶし。

 未来に起きうる壮大な物語を、それを先にネタバレされた感覚。だが、それ自体は問題ではない。その物語に自分がいなかったり自分がいたりするのではなく、それに巻き込まれ、そして被害をこうむると言うことがわかっていると言うことが、問題である。

 ならば、回避は不要であり無用。

 退屈こそ魔人やそれに類する者達を殺す毒であるのだ。

 そんな風に真剣な雰囲気の中、一人の少女がふよふよ浮かびながらやってくる。赤い槍をもった白髪黒い若干ゴシックな服装、眠そうに瞼を擦りながらナベリウスとリッチの傍によると、

「あれ……お客さん?あ……ベッドだぁ……おやすみー……」

 青年がその上で失神していることを無視してその横に眠り始める。リッチが一瞬止めようとするが、既に寝息を立てる幽霊の少女の姿を見て諦め、

「……これでいいか」

「………………うん」

 リッチもナベリウスも二人を放置して去って行く。


 だが、これこそが始まりだったと言うしかない。間違った『物語』。存在しないはずの『登場人物』。交わることのなかった『世界』。この青年の存在は、やがて、世界を動かす毒か、もしくは浄化する薬となりえる。

 気まぐれと暇つぶしに生かされた青年の存在は未来を変えうる。今はまだわからないことだが、

「zzzz……」

「すぅすぅ……」

 交わることのなかった二つの世界、そこから生まれる物語。青年の物語は、人の生が終わる場所から始まる。


                   ●


 目を覚ましたら横に美少女が寝てました。槍を持って。

「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!『俺は気絶してベッドに倒れて起きたと思ったら、いつの間にか横に美少女が寝てた』な……何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった……頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえもっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」

起きて早々意味がわからないのでポルナレフに走る。とりあえずネタに走ってみれば若干心の余裕ができる。考えるだけの余裕が生まれる。それをもって現状を再認識する。

気絶する前に見たこと感じたこと、そして現在の状況を整理する。

まず、自分は酔ったまま家へ帰ってきて着替えず靴を脱がずアメリカンスタイルにベッドに倒れ、そのまま眠ったはずである。二日酔いの成果頭が若干痛く、ジンジンするがそこまでひどくはない。

で……寝て起きてみれば奇想天外な生き物が目の前にいて、意識がブラックアウト。

どんな生物を見たか思い出し、嫌な汗が背中を流れそうになるが持ち直す。気絶する前の状況は何とか把握した。だからって何故ここにいるかは分からない。先ほど一瞬だけ喋ったが、言語を理解することさえできなかったのはわかった。

とりあえず、周りを再び見渡す。

ベッドの足元には浅く水が流れており、流れる水の音が絶え間なく聞こえてくる。それと同時に広い空間を風が流れるのも感じ、薄暗い世界を不気味さをかもしだしている。

ぶっちゃけ場所がホラーっぽかった。

一瞬自分が死んであの世へきたのかと思ったが、それでも足は透けてないし、まだ生きている感触はする。

……頬を抓ってみれば痛かった。

つまりこれは現実で夢ではない。もっと注意深く周りを見る。浅く、広い……湖にも見える中に、自分のベッド以外にも色々とおちているものが見える。靴下や下着、雑誌やカバン。どれもが足首程度の浅さの湖に没している。

だとしたら、自分とこのベッドもその一部なんだろう。

湖を良く見てみればすぐ近くに陸地があり、それとは逆側に大きな門がある。よく歩道に設置されている公衆電話……といって携帯電話の復旧で大分なくなったが、それの二倍ほどの高さを持ち、大型トラックを横に置いたような大きさの門。

その前にどこかで見かけた姿が現れた。

青い猛獣の上に表現のし辛い服装の金髪の幼女、紳士服にステッキの骸骨。

自分が気絶した原因でもある組み合わせだ。

流石に精神的に余裕ができたのか、今回は何とか意識を失わずに済む。ノソノソと幼女を乗せた猛獣とカタカタ音を鳴らせて近づいてくる。

さすがファンタジー、近づかれても現実味がない。まるでまだ夢を見ているようだ。

「とりあえず、雰囲気を察するに危害を加える様子はなさそうだ……」

小さく自分に呟くと同時に、大きな問題に気がついた。

ベッドから立ち上がり背筋をピッシリ伸ばす。相手に悪い印象を与えるわけにはいかない。目を真っ直ぐ相手に合わせるのが礼儀なのだろうが、猛獣は怖い、骸骨は目玉がない、故に必然的に一番小さい幼女……少女に視線を合わせる。

「ぇ、え……ーと、始めまして?」

「……дг………………×」

返事にと金髪の少女が言葉を出すが、やはりその言葉は理解できない。

「○□г☆кб。は、は、は!」

カタカタ音を立てながら骸骨の男が声を上げる。最後のは笑い声だと言うのはわかった。笑い声だけは万国共通……たとえ異国だろうと、相手が笑っているのは分かるのはどこか安心できる。

ただし猛獣のこちらを見る視線が依然として怖い。初心者の日本人にはあのデカサは怖いです。

言語が通じないのなら、とりあえず通じそうなことをしてみる。自分を指差し、ゆっくりとだが発音をする。

「く、ろ、か、わ、く、ろ、う。黒川玖楼です。えーと、名前です。……分かります……?」

自分を指差し何回か、ゆっくりと自分の名前を発音する。ちなみにだが黒川と言う姓は割と多いほうだが、こんな変な名前を付けてくれた親には心底言いたい。どうしてこんな名前をつけたのだと。小学校では名前を書くのに苦労し、中学では厨二ネームで有名になり、高校では黒歴史だとひたすら頭を悩めた。

一生続く黒歴史である。親め、この恨みは絶対何時か晴らさせてもらう。

そのためにも、意思疎通を図る。

3回目あたりで意図に気づいたのか、骸骨がステッキをこちらへと向け、カタカタ鳴らす口を動かしながら発音する。

「кд、ク、ロウ」

「そうっす……です、玖楼です。名前がそうです」

「ク、ロウ……クロウ……クロウ……кд」

自分の予想を遥かに越える速さで名前を覚えられた。外国の言葉、特に名前は発音するのは難しいとよく言われるが、とりあえずこの骸骨はまるで初めから知っていたかのように流暢に名前を発音している。

若干ニュアンスが違うような気もするが。

今度は逆に骸骨がステッキを自分に向け、ゆっくりとだが声を出す。その発音はこちらの知っている言葉に近く、

「リッチ」

綺麗に、はっきりとその名前が聞こえた。まさかここまで対応が早いとなるとは。そう思うのもつかの間、ステッキを横の少女と猛獣へと向け、

「ナベリウスлケルベロス」

「あ、ナベリウスさんとケルベロスさんこんちわっす」

めっちゃくちゃ地獄の番犬じゃねぇかと、声を上げて叫びたかったが、余計に状況を拗らせたくない一心でそれを押さえ込み、何とかギクシャクした笑みを浮かべる。

「………………よろしく」

「普通に喋られたんかい!!!」

流石にムリだった。

「ねぇ何?俺が今まで道とのコンタクトをしようとしてがんばってた苦労って何? 必死に名前から始める事で少しずつ相互理解を深めようとしてた俺って何? しってるか? 言葉の通じない外国の軍事基地で絵を使ってコミュニケーションを取って、言葉が通じないのに心を通じたと言うイイ話を再現しようとした俺の夢を返せぇぇぇぇ!!!」

「うる…………さい?」

「すいませんでした」

若干疑問系だったが、ケルベロスと言われる猛獣を従えられるほどの少女、そんな生き物にとてもだが敵う気はしない。素直に謝ると、よこでカタカタ音を鳴らしながら骸骨が笑い始める。

「は、は、は。悪気はないんだ、すまないね。今のやり取りで言語の違いや共通を認識して通訳用の術を作り上げてたのだよ。改めて名乗らせてもらおう。私の名前はリッチ、しがない骸骨紳士だよ」

骸骨に紳士も種類もあるのか。本日幾度目かの驚愕。頭をステッキでコツンと叩かれる。いきなりの衝撃に混乱しかけるが、

「すまないね、言語変換の術を打っただけだ。これで君の出す言葉は我々には我々の言葉に聞こえ、我々の話す言葉は全て君の国の言葉に聞こえる。まだ完璧ではないから、難しい言葉が偶に変換できないかもしれないが許したまえ」

若干えらそうな骸骨だが、いい骸骨らしい。イイヒト(?)デヨカッタナァー。

「そして此方が」

ステッキを再び少女のほうへと向ける。

「ここ、『冥き途』の門番をしているソロモン72柱の一柱、『魔神』ナベリウスで、ここの管理人のような方だ。そしてその下にいるのはペットのケルベロス」

ペットだったんですかそれ。

そう思うと可愛く見えてくる不思議。人間の認識する力は恐ろしい。そして一番背の小さな少女がソロモンの魔神と言う事実に戦慄する。

ソロモンの中のナベリウスと言えば、ケルベロスとも言われる悪魔であり、19の悪魔軍団を率いる侯爵。その姿は黒い鶴か雄鶏などと言われており、人の姿を取ると三つ首だったり、鳥っぽい雰囲気を出す生き物らしいが、眼前のナベリウスを見る。

何処からどう見ても鳥には見えない。ケルベロスはその下にいるし。

「そんなに彼女を見てどうしたのかね?」

ジ、っとナベリウスを見る視線に疑問を感じたのかリッチが声をかける。

「いや……俺の知っているナベリウスより遥かにかわいいから、なんだかなぁーと」

「ほう、出会ったすぐに口説くとは中々だな」

ナベリウスがケルベロスの背の上で両手を頬に当て、いやんと、横を向く、まったく無表情なのがアレだが、素直な気持ちで見れば可愛く見える。

「……ぽっ」

「いやいやいやいや、まってくれリッチ!俺はロリコンじゃない!」

「アレは30年……いや、40年前……私も彼女にあったときはまさに一目ぼれだったよ。、寂れた村ではあったが彼女は村一の美女でな。私も少年だった頃に彼女であって、
まさに幸運とも言えるのだが……」

「誰が思い出を語れと言った!」

「アレは私が20歳だった頃、私は……」

「止まらないのかよこれ」

「…………無理」

リッチは放置する方向で落ち着いた。

閑話休題

 リッチを放置したところで、ベッドを占拠したいた姿がやっと起き上がる。ふわぁ、と短く欠伸を出して起き上がるとナベリウスを見つけ、手を振りながらナベリウスへと向かう。ふよふよと浮かびながら。

 流石に生きている骸骨にケルベロスとスーパー幼女を見るともう驚かない。

「ナベリウスおはようー」

「…もう、そんな時間じゃない」

 物静かなナベリウスではあるが、起きたばかりの少女に対応するときだけ、僅かばかりだが言葉をしっかりとつなげて喋っているような印象を受ける。たぶんだが、何らかの絆で結ばれている二人なのだろう。

 そこで白髪の少女が視線を此方へと向ける。ジーっと此方へと視線を向けると、

「お客さん?」

「あ、お邪魔してます。黒川九郎っていいます」

「始めまして、リタ・セミフです」

「いい槍っすね」

「そうでしょう?」

そして会話が死んだ。

 自慢ではないが自分はそこまで社交的な正確だとは思わない。どちらかと言えば色々と溜め込んで最終的には爆発してしまうようなタイプだろう。先ほどのツッコミ劇も溜まった分を吐き出したような感じではあった。

 だから、会話を続けるとかそういうのは得意ではない。

 見たところ、リッチ以外はそういうタイプの人……間……? なのだろう。

 とりあえず、

「自分は……帰れるのか?」

 期待を込めてナベリウスにその言葉を投げかける。だが、ナベリウスは求めていた返事をくれなかった。すこしだけ悲しそうな顔をして、頭を横へ振ると、今まで脳内トリップしていたリッチも復帰し、

「すまないがね、私たちでも君が急に現れたなんて表現しかできないのだよ。術も魔力も検知なし。故に原因不明。まさにお手上げだよ」

「そう……っすか……」

 半ば、それは感じていた。と言うより覚悟はしていた。何せいきなり変な場所に飛ばされてわけもわからない状況で、でもなんとなく雰囲気から分かる。

 あぁ、もう戻れないんだろうなぁ、と。

 それは居場所ではなく、昔の自分に。やけに冷静になれるのもたぶんそれがストンと来たのも、基本的に自分が人生で置いて受身に生きてきたから……なのだろう。

 でも、まぁ、悲観ばかり……してられないよな?

 同時にそうとも思う。もし生きることを許されるのなら生きるために何かをしなくてはならない。基本的に人間が生きるためには食事、睡眠、そして住居が必要である。幸いにもベッドがなぜかこっちにあるためにベッドをどうにかすればよし。

 あ。

「あ、あのぅ……ナベリウスさん……?」

「さんは……いらない…………何?」

 さんがいらないとかなんて謙虚なんだろう。だったら言っちゃおう。

「俺、どこでどう暮らせばいいんすか」

「ここで……暮らせばいい」

「マジすか」

「まじ」

「死んだら仲間入りですね」

「やっぱりお前も死んでたんだな! てか人型の死人率50%ってなんだよここ」

 これが青年、黒川玖楼がこの世界に現れた日の会話であり、そして約1週間前の会話である。


                   ●


 ―――生活において、自分が暮らす場所はかなり困難な場所だったと此処に報告しておこう。

 一、風呂がない。
 二、トイレがない。
 三、食べ物なんてない。
 四、周りに幽霊がいっぱい。

 むしろ何故此処を提供したとさえ言いたくなった。そして何故此処にすんでいられるのかとも疑問に思った。

 幽霊と骸骨は人間的な生活が必要ない上、ナベリウスは食事をしないためにトイレも必要ないらしい。

 なにここ怖い。

 オブラートに包んだ俺の心の叫びだった。

 とりわけ、この中での一番の問題は四であった。なぜならそれ以外の問題はすぐに解決できたからだ。まず風呂に関しては完全な趣味だが、リッチに話をしてみたところ、土から五右衛門風呂の様な大釜を作ってくれた。大魔導師を名乗るだけはあった。

 それでもナベリウスの魔法には余裕で勝てないらしい。さすが魔神さま。

 二つ目のトイレも結構簡単に問題が解決された。昔懐かしいつぼの中に捨てると言う方法があり、見られるのは恥ずかしいからこれも、リッチが陸地の端っこに土を練成して小部屋を作ってくれた。さすが骸骨紳士。格が違った。

 そして食料に関してが一番不安だったのだが、ナベリウスがケルベロスの背から降りて視線だけを向けると、それを理解してかケルベロスが真っ直ぐに『冥き途』の外へと走って行き、数分で口の中に熊や猪や、分けの分からない生物の肉を加えてくる。

 やっぱり牙は鋭そうだった。

 そしてあまりの対応の仕方に最初から最後まで驚愕の一言だった。

 それにしてもリッチの使う魔法が万能すぎて感謝が止まらない。料理するときにつける火も、風呂に入るときの水も、『冥き途』の端っこの自分の居住スペースも全てリッチの魔法である。

 魔法万能説。

 優しすぎて逆に怪しくなってくるが、いきなりガブリと食われることもないだろう。

 そして一番の問題である四、ご近所さんの幽霊であったが、当初は強そうな死人(言われるまでもなくリタ&リッチ)の傍にいれば平気だと思っていたが、ナベリウスが言うにはそうではないらしい。

「私はここを…………管理してるだけ」

「別に死者の面倒を見ているわけじゃないんですよ。実際は死者の門を通って次の生へと移る人たちが安全に渡れるように見たり、案内するお仕事なんですよね」

「だから、生きてる事に嫉妬する」

「私達もよく襲われますよ」

 との事。つまりご近所付き合いは仲良くないらしい。

 そんなわけで―――

「魔法を教えて下さいリッチ先生!」

「無理だ」

「早い?!1秒も掛からなかったぞ?」

「あぁ、言い方が悪かったかもしれない。魔法を覚えても君には使えないと私は言いたいのだよ」

 魔法が使えない。それはつまり先天的な問題だとみえる。

「君には魔導力を……魔力を欠片も感じない。故に魔法を使用としても、魔法の燃料である魔力がないから発動しない」

「……って事は魔法はつかえないんっすか……俺の生存ルートがまた一歩遠のいた……!」

 その場で蹲って地面にのの字を描き始める。何時の時代も落ち込んだらこの体勢で『の』を地面に描くのが慣わし。

「ふむ……方法はないではないがな」

「マジすか!」

「……行動の移りが速いね」

「受身がモットーなので」

 蹲っていた地面から立ち上がりリッチのほうを期待を込めてみる。リッチがそれに喉を整えるような仕草(骨しかない喉)をとり、そして口を開く。

「具体的に言えば私が知る限り方法は……二つある。一つは使徒となることだ」

「使徒?」

「うむ。主に忠誠を尽くし主の為に生きる。主に尽くす代わりにその力の一部を借りたり、主の力の一部を行使できるようになるのだ」

「おぉ!」

「その代わりに年を取らなくなったりするがな。使徒を取れるのは高位の魔人や魔神、神と言った存在だろう。ここではナベリウスのみが可能あらろう。リタもただの幽霊で魔人でもなんでもないからな」

「え、リッチ先生無理なの。意外なんだが」

「こう見えて私はまだ日が浅いのでね。まぁ、使徒になりたければナベリウスに頼むといい。基本的に方法は性行為を通してになるが、問題ないだろう」

「はい却下で。まだ社会的に死にたくないです」

 俺はロリコンじゃないし、そんな称号を背負う気もない。どっかの旧神みたいにロリペド野郎になる気はないんだ! 名前は似てても趣味は逆なんだよ! 俺はどちらかと言えばおっぱい星人です!

 ……最近、頭が若干アッパー入るな……俺……。

 余談だが、まだこの時代にはロリコンと言う概念はなかったらしい。

 リッチが二、と指を二本上げる。二つ目の方法を示すためなのだろう。ステッキに半身を預けるようにしながら、

「二つ目の方法だが、これは直接体に魔導力を生めることだ。強くなる上に魔力も手に入る。ただこれは……そう、話で聞いただけのことだから、私に同じようなことが出来るとは分からないし、成功率は多く見積もっても1割程度だろう」

「まだお仲間にはなりたくないです!はい!」

 ははは、とリッチが苦笑を漏らす。だろうな、と言いながら指を下げる。何処からともなく葉巻を取り出すとステッキの先端に炎が灯り、銜えた葉巻に火をともすとスパーと、吸い込み……吐き出す。

「結局のところ君にある選択肢とはかなり少ないのだよ。生き残る上でできることと言えば体を鍛えることぐらいだろう。そして私は魔導師だからそれを教えることはできない」

 なんだそれ。つまりは独学で学べということなのか。

 内心を読まれたのかリッチは違うと言って、頭を横に振る。骸骨スマイルを浮かべながらステッキを別の方向へと、死者の門の前にいる二人のうち片方へと向ける。

「こう見えてリタは私の何倍も長く生きている上に、槍術の達人でもあるのだよ。抜けているようでもかなり強くてね、私の二倍以上の強さを有しているのだよ」

 幽霊系魔槍美少女は強かった。

「具体的に言えばリッチさんどれくらいの強さ?」

「私かね?私は二人と比べればまだまだだよ。大体……レベル130ぐらいかね」

 100を越えている時点で異常だと知って欲しい。そしてリタがそれの二倍以上と言うことはつまり……最低でも260か、それ以上だということである。

 そこでふと思いつきで聞いてみる。

「ちなみにナベリウスさんのレベルは?」

「400らしい」

 ぅゎょぅじょっょぃ。つかここまで来ると現実味がなくなるなぁ……



名前:黒川玖楼
レベル:1
称号:流れ着いた異世界人?
武器:なし
防具:ドレスシャツ(魔導皮膜処置)、ダメージジーンズ(魔導皮膜処置)、スニーカー(魔導皮膜処置)
スキル:なし

HP:100/100
MP:0/0
TP:10/10
攻撃力:5
攻撃回数:1
防御力:30
防御回数:5
魔法攻撃:0
魔法防御:50
防御属性:物理
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