陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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はじまりの日 ―――マイ・ウェイ

『―――プレイヤー諸君、私の世界へようこそ』

その一言で世界は激変した。

 それは法則、それはルール、それは絶対、それは概念。どの言葉も意味は変わらず、その全てが指し示すことは一つ。

 茅場晶彦は、この世界においては神に等しい存在であるということだ。


 その存在の絶対性は≪ソードアート・オンライン≫のロジックを支配していることで一目瞭然だった。ナーヴギアのキャリブレーションと、各々がナーヴギアを通しての顔のデータのスキャンなどと、実に面倒なことであるが、茅場晶彦はこの世界に示したのだ。彼は何でもできると。そして、その発言に間違いはないと。実際、茅場は上手くやったと思っている。NERDLESの開発にかかわったあたりからたぶんこれは計画されていたのだろうと思う。それはソードアート・オンラインと言う世界ではなくともよかったのだろうと思う。ただ単にこの世界が一般向けに最初に完成された民生用NERDLES型のゲームであり、茅場晶彦の目的はこの世界を、この状況を作り上げること。

 そう、茅場晶彦が望んだのは金でも名誉でもなく、このデスゲームと言う状況だった。明らかに人としては狂っている思考であっても、それが間違いであっても、それに異を唱えたところでどうにかなるわけでもなく、茅場晶彦と言う世紀の天才が支配された世界は続く。

 茅場晶彦が空に映り、そして言ったことは簡単だった。この世界は、≪浮遊城アインクラッド≫からはログアウトできず、ここからリアルへと帰還するのならアインクラッドの攻略を完了しなければならないと。

 そして、この世界での死は現実の死と同義である、と。

 森の中、敵の消滅を示すポリゴンが消えて行く中で、サイアスは一人荒い息を整えながら右手に握ったカトラスを覗く。その銅色の刃は綺麗に磨かれていて、鏡の役目を果たせるほどに風景を反射していた。そこには自分がログインするときに作ったいかにも≪勇者≫、と言う言葉が似合うような姿の男ではなく、

 中性的な顔立ち、童顔とも言える顔の青年が映っていた。

「……まぁ、俺だよなぁ……ま、悩んでても仕方がないけどさ……」

 小さく呟くと再び≪ブロンズカトラス≫を構える。このデスゲームははじまったばかりだ。VRMMORPGと言うゲームのジャンルが自分の知っているMMORPGとまったく変わらないものであるのならば、いずれ今いる場所も危うい。故に、

 ―――必要なのは力だ。


                           ◆


 あの時、アインクラッド第一層≪はじまりの街≫で茅場晶彦の幻影が現れ、そして特殊なアイテム≪鏡≫を使用して全てのプレイヤーの体型と顔をリアルと同じものに揃えられてから、そこから自分の取った行動は実に単純明快なものであった。

 それは、狩場の確保であった。

 MMORPGと言うジャンルのゲームはパーティープレイを推奨しながらもその実、プレイヤースキルが発達しているのであればパーティを組むよりは狩場を一人で独占し回復アイテムなどを大量用意して、一人で延々と戦い続けるのが効率的な部分もある。即ち、MMORPGの大部分はゲームの供給するリソースの奪い合いであり、効率的に動き回りながら自分にとって一番必要なものを確保しておく。それが一番大事なのである。

 この場合であれば、リトルネペントが存在していた森だ。

 目の前に現れた”花つき”のリトルネペントを真正面から見据え、カトラスをエフェクトを伴い走らせる。索敵スキルを使い相手の知覚範囲外から敏捷のパラメータを限界まで使用した奇襲は相手に把握されぬまま一撃を食らわし頭上のHPバーを半分にまで削らせる。それはただ単にサイアスが奇襲に成功した結果だけではなく、この狩場の適正レベルの後半代……つまり”卒業”とも言えるレベルに近づいた結果である。そのまま振りぬいた刃を返すように、単発曲刀用スキル≪リーバー≫を発動させる。完全に振り返る前に弱点である茎が両断され、HPバーが空になった花つきのリトルネペントが空中で静止してからポリゴンへと変換されてゆく。

「花つきのリトルネペントじゃないとそろそろ入りが悪いな」

 ステータスウィンドウを開き確認する。そこに映し出されている経験値バーはまだ完全には埋まっておらず、バーの下に小さく出てきたパーセンテージを確認する。その上昇量は上昇前の数値と比べると0.5%上昇したとでており、このままあの花つきのリトルネペントが出てきた場合でも百体以上倒す必要があることがわかる。

「索敵≪サーチング≫と隠蔽≪ハイディング≫とって少しは効率を上げたけど……やっぱ、一層目じゃ意味もなし、か」

 ステータスウィンドウには一時間ほど前にはなかったスキルスロットの空きと追加されたスキルが存在していた。本来ならばもっと高いレベルへと到達してから発生する出来事ではあるが、なんてことはない。サイアスには周りとは違いこれを可能にする方法があった。新たなウィンドウを開き確かめると、そこには九万五千と、数字で書かれていた。

「流石に一層目から経験値バフを購入するのもアレだしな。レベルは上がれば上がるほど経験値キツくなるし、やっぱりそれまでにとって置きたいよな……いや、茅場晶彦に修正ってか削除される可能性もあるから現物に変えておいたほうがいいか?」

 なんてことはない、それは課金と、リアルマネーでのみ購入できる特殊アイテムを使用し、レベルの上昇と共に解放されるはずのスキルスロットを一回限りの特殊アイテムを使用し解除したのだ。と言っても残った数字からわかるようにその代償は登録した金額十万円のうち、五千円と言う破格の値段ではあった。

 ……だけど、俺じゃなくてもやるよな。これぐらいは。

 金に困るような苦学生はともかく、自分のような廃人側の人間だったらこの程度の金額を課金し、そしてこの状況になれば生存のためにも索敵と隠蔽をβテスターの人間なら間違いなくとるだろう。生産系のスキルをとるにしても、最低限素材を手に入れるための腕前か金、それにスキルスロットは必要であり、そのために戦闘をする必要はでてくる。だからこそ、生き残るための第一の策としてのサイアスの行動がスキルスロットの確保であり、つまりは索敵と隠蔽の確保である。

 と、考えることは多いが結局第一層で出来ることは経験値稼ぎ、つまりはレベル上げだ。

 自分の記憶が正しければ第一層のボスはソロでも攻略でき、それに必要なレベルは最低で十だ。パーティーを組んで楽に倒すという方法もあるがそれでは報酬のアイテムの分配などを考える必要がでてくる。それは面倒だしいきなり組んだパーティーで何処まで連携が取れるかも解らない。だが考えてみる―――確実にβ時代とは違う仕様になっている可能性がある。ボスもβ時代より強化されている可能性が高い。そうだとしたらソロは自殺行為だ。やはり、レイドパーティーを編成するのが生存率の意味では一番いいかもしれない。そうなるとパーティーを組むべきは確実にβテスターだけになるだろう。βテスターならばマナーやルール確認は省けていいと、そう自分の記憶や行動を確認していたときに、索敵スキルで拡大されている知覚が新たな存在の到来を告げる。近くにリトルネペントがいないことを確認しつつカトラスを構えたまま、後ろへと振り向く。

「!」

「うぉ!」

 背後に振り向くと、やや女顔とも言える、青年と言うにはまだ幼い少年ともいえる男がいた。服装は自分の今の服装とまったく同じ、つまりは初期装備のチュニックとパンツに≪ホルンカ≫で購入できるハーフジャケットだ。少年は自分より先にここに来ている存在に驚いている。つまりはこの少年は自分と同じ存在、βテスターという可能性が一番高い。

「あー、悪いな」

 そう言って構えているカトラスを下ろす。

「い、いや。こんな状況だし誰だって過敏になってるというか……俺も、もう既に誰かがいるとは思わなかった」

「あははは……俺は開始直後ここに来て、あれも鏡見た後すぐ走ってきたしな」

「すぐ?」

「あぁ、だって最速ルートでレベル上げるならネペント狩りがベストだし」

 それを告げると少年の顔が若干思案に陰る。ほんの刹那の表情の変化だが、それを見届けた後、
 少年が顔を上げる。

「……≪森の秘薬≫クエはしないの?」

 あ、と自分の中で合点がいく。この少年は俺が≪アニールブレード≫欲しさにネペント狩りをしてるものだと思っているのだろう。いや、ほらと、そういいながら自分の得物であるブロンズカトラスを少年に見せる。それは第一層で購入できる一番強い曲刀装備である。もちろん、その性能は森の秘薬と言うクエストで手に入る報酬、アニールブレードに比べると劣るのではあるが、

「いや、ほら、中世ファンタジーつったらさ、主に長剣とか大剣とかばかりじゃん?」

「まぁ、一番使いやすいし、手に入る装備が恵まれてるからな」

「だから海賊刀だよ。二層目に行けばクエ品で貰えて、アレはメンテさえすれば四層のボスまでは持つし。
ま、長剣はβ中使ってたけど、なんだか曲刀の方がしっくり来てな」

 納得はされてないようだが、これで納得してもらいたい。色んなネットゲームを渡り歩いてきて、
廃人といわれるまでに活動をしてきた自分ではあるが、こうやって一番使いやすい装備や王道に手を出さないのは、一重にそれが"つまらない"と感じてしまうからだ。王道、充実した装備、それは効率的なレベリングへと通ずるが、だがその他大勢と同じままではつまらない、と自分は思う。

 これはいわば自分が感じてきた既知感、デジャヴに通ずるような考えでもある。

 自分がこのアインクラッドと言う世界でダメージディーラとして軽装の攻撃特化の武器を取るのは理解できる。鎧を着て防御を固めるのなんて明らかに自分のキャラではない。だが、だからと言ってその他大勢に埋まるような装備は嫌だ。リアルでは思いっきり地味に生きてきた分、この仮想と言う名の現実ではそれこそ違う自分を、他人に注目されて楽しめるような自分でいたいと思う。生憎顔は忌々しいリアルのままではあるが、ここでは地味な高校生最上明広ではなく、海賊刀使いの廃人、サイアスでいられるのだ。その内海賊刀を捨て、新たな武器をへと変わるときも来るだろう。だが、そのときには自分にしかない"何か"を見つけてるだろう。だから、それまではマイナーでありつつ、ある程度効率的に進める装備を選ぼうとは思う。

 自分に言い聞かせるような理屈を押しのけ片手を差し出す。まず、これはマナーであり常識だ。

「俺の名前はサイアス。海賊刀使いのナイスな男」

 ウィンクと共に手を差し出していると、その言葉で笑顔を作るだけの余裕が出来たのか、笑顔で手を握ってくる。意趣返しにか、

「俺の名前はキリト。片手剣使いのナイスな男だ」

「いや、どっからどうみても女顔な少年だろ。尻には気をつけろ」

「そこでそれを言うか!? しかもその顔で」

 そういわれ自分の容姿を思い出す。女顔なのは忌々しいリアルの自分と代わりはないが、その髪形までは流石の茅場晶彦でもデータがムリだったらしく製作したアバターの物と同じもの、つまり髪色は深い青で髪の長さは肩にかかる程度で、そして同じぐらいの長さのポニーテールがあると、服装を整えれば女に見えなくもない。自分としては将来育ったらかっこいいダンディを目指してるいるため、本当に忌々しい容姿である。

「明らかに俺が年上だからいいの。あと次顔に関して言ったら俺はオレンジになることも辞さない」

 と、交流を喜ぶように握手する。握手してこのまま雑談を続けたいところではあるが、流石にそんな余裕は今はない。手を放すとすぐに本題へと移る。

「それで、森の秘薬クエだっけ」

「あ、あぁ」

「んー、花つきネペント、倒したばっかだから湧くまでもうしばらくかかるかもなぁ」

「え、マジか……」

 キリトが項垂れるのを横に改めて自分のステータスウィンドウを覗く。そこにはレベル4と、数字で現れているほかに、経験値や残りライフなどが現されている。今現在一人で戦闘した場合の経験値獲得量と、キリトとパーティーを組んだ場合の旨味を計算する。相手が欲しいのは花つきのリトルネペントから手に入る、≪リトルネペントの胚珠≫。これさえ手に入れば問題がないはずだ。そして花つきのリトルネペントは、花のない普通のリトルネペントを倒せば倒すほど出現率が上昇するはず。ならば、

「パーティー組むか?」

「え?」

「いや、俺とお前でだよ。ここまで一直線で来たってことはβテスターだろ? 基本的なパーティーでの戦い方を知ってるよな?」

「うん、まぁ、一応」

「胚珠、俺は要らないから好きに持ってけ。ドロップアイテムとコルは半々で分配。俺はレベル上げにしか今は興味なし。しいて言うならば早めに一層のボスを攻略して、ボスドロップが欲しい程度だ。―――どうだ? 悪い話じゃないぜ」

 その言葉に一度俯いて、キリトが考え始める。やはり、出会ったばかりの人間……しかもあんな事件が起きたすぐ後では何かと信用しにくいのだろう。こうやって話しかけている自分も、実際は本日のノルマである六レベルまでは一人では難しそうなのと、もし襲われた場合は隠蔽を使って即座に離脱することを考えていることからできる話だ。だから断られても仕方がない、そう思い年上であるこちらから断りを出そうと思ったとき、

「よろしく、サイアス」

 自分の考えがいい意味で裏切られたな、とパーティーへの招待を送りながら考え、

「あぁ、短い間かもしれないがよろしくなキリト」

 これが、俺がソードアート・オンラインで初めて結成したパーティーであり、この世界での初の友人だった。
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| 断頭の剣鬼 | 13:41 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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