陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第27話 不良騎士の暴走

「―――カリムがお見合いとは、大きくなりましたね……」

 シャッハはしみじみと時の流れと周りの成長を感じ、またその変化速度に驚かされていた。ヴェロッサとカリムはシャッハが教育係として担当していた子供二人だ。当時から作法や人の接し方、魔法の使い方や教会の騎士として必要な知識。そうやって社会に出る上で恥ずかしくないよう二人を育ててきた自信がシャッハにはある。


 そして今日、両親からの勧めもあってカリムはお見合いを行う事が決定している。カリムも今年でもう二十一となる。働き始める年齢が低い次元世界としては、早めに結婚させたい考えがある。特に良家等のお嬢様に関しては戦わせ教会や管理局に貢献するよりは結婚して家で家事に専念させたい考えがある。
とはいえ、統計的に見ると結婚しても共働きの傾向の方が多い。

 カリムは二十一だ。次元世界で言えばもう結婚していても十分におかしくない年齢だ。神殿騎士団等という何時死んでもおかしくない仕事についている以上、カリムの御両親も早く孫の顔が見たいのだろう、とシャッハは思う。そしてその思いと先方の強い願いからカリムは断れずに今回のお見合いを受けた事もシャッハは知っている。

「全く、面倒な事になりました」

 シャッハが溜息を吐き出しながらお見合い会場となるホテルのレストランへと向かう。地上十二階に存在する高級レストランは完全予約制で一ヶ月ほど前から予約しなければ入店の出来ない高級レストランだ。それが入っているホテルもまた、高給なホテルだ。シャッハは自分の人生には縁遠い場所だがまさか来る機会があったとは、などと思いながらホテル内を散策する。

 基本的にシャッハの仕事はカリムの秘書であり、護衛だ。教会にいる間はカリムの政務を手伝い、傍にいることでそれがなされる。教会にいる間は認めたくない事実ではあるがウィルフレッドが存在する為、おそらくこの世で一番安全な場所かもしれない。テロは察知不可能という言葉が存在するが、ウィルフレッドは教会に入ってくる人間全てを記憶し、全員見分ける事ができる。その上"空気"でその人物が害をなすかどうか判断できるので、存在がどこか空想めいてすらいる。それ以外にも電子系統から第四位が見張っている為、基本的に同じクラスの化け物でも来ない限り教会に害が成されることはない。だからシャッハは安心してカリムの秘書をしている。

 しかし、ウィルフレッドも災難だったろう、とシャッハは思う。

 ウィルフレッドもカリムも傍から見て解るほどに互いに依存しあっている。昔の話は聞いたし、ある程度関わりもした。だからある程度の納得はしているし理解も示している。だからこんな事態でウィルフレッドが動き出さないわけがない、という事もシャッハは解っている。

「カリムも、もう少し素直になってウィルフレッドへ甘えればそれで済む話なのですが……。いえ、多分節操なく女遊びを繰り返すウィルフレッドの方にも大きな問題はあるのでしょう」

 シャッハの見解ではどこからどう見てもあの二人は相思相愛、たがいを好いているようにしか見えないし、たぶんそうだろう。なのにカリムは頑ななまでにウィルフレッドを受け入れないし、ウィルフレッドも積極的に見えて何処か本気ではない。二人の間の"何か"が二人を一緒にすることを妨げているのは解るが、それがなんなのかはどうにも解らない。こればかりは本人に聞かなければ解らない所だが、あまり心に踏み込みすぎるのも個人的にはどうかと思うため、シャッハとしては大いに頭を悩ませる問題だった。

「いえ、しかし……」

 カリムに見合い話が来ている以上、カリムもウィルフレッドもそろそろ恋愛ごっこを止めるべきではないかと思う。見ている分には夫婦漫才のようで中々面白いものだが、一切の進展がないと解るとどこかやきもきする所がある。特に二人の関係や過去を知っているとなおさらの事やきもきさせられる。

 ヴェロッサは何処か二人の関係について踏み込んだところを知っているようだし、聞いてみるか協力を仰ぐのも悪くないかもしれないとシャッハは思う。こうやってカリムの親が結婚を望んでいるということは、ここがカリムの独身生活としてのタイムリミットとも取れる。そろそろ二人にも進展して欲しい、そう思った時にシャッハは知った顔をホテルの中で見る。

 オールバックの髪形はそのまま、服装こそいつもと異なりスーツを着ているが、その人物は教会でよく見る顔だ。今年度の見習い騎士の中でも最も騎士に近いと言われている青年、ルシオだ。

「ルシオ見習い。こんなところで何をしているのですか」

 聖王教会が存在する第一管理世界とはまた別の管理世界が今のシャッハの居場所である。しかもここは高級ホテル。騎士見習いが到底やってこれるような場所ではない。だがルシオは一切顔色を変える事無くシャッハに頭を下げる。

「こんにちわシスターシャッハ。本日は急遽私用で呼び出されまして」

「私用ですか?」

「はい」

 口数の少ない青年で普段は極力喋らないでいるが、流石に目上の人間に対して同じことは出来ない。

「エンハルト家がこのホテルの出資者なので」

「あぁ、そういえばそうでした」

 ルシオ・エンハルト。その正体は何故聖王教会にやってきたか解らない大富豪の家の一人息子だ。若い頃から帝王学やらなにやら叩き込まれてきたそうだが、それよりも剣を振るっている方が楽だと親を説得して聖王教会の門を叩いてきた青年だ。だが親との約束でこういう風に偶にパーティーに参加しなくてはならないそうだ。

「貴方も色々大変そうですね」

「いえ、貴女の苦労と比べられましても。私は一介の見習いですし」

 確かに見習いの苦労と正式な騎士で秘書や訓練を担当しているシャッハの苦労を比較しているのは間違っているだろう。だがシャッハの疲れはいわば肉体的なそれで、ルシオがここで感じるのは精神的な疲れだろう。

 と、そこでルシオが口を開く。

「つきましてはシスターシャッハにはお願いが」

「なんでしょうか?」

 珍しい子がお願いをしてくるものだ、と思いつつルシオの言葉を待っていると。

「―――少々眠っててくれませんか」

「な―――」

 その言葉に対して何らかの返答をしようとしたシャッハの首筋に背後から衝撃が与えられる。急に与えられた衝撃に急速に意識を失いつつあるシャッハはどこかうんざりとしたルシオの顔を見て即座に確信した。

「ウィルフレッド―――!!!」

「はぁーい! おっれでぇーす!」

 非常にイラつく馬鹿な声と共にシャッハは気を失った。


                   ◆


「諸君―――私はカリムが好きだ。諸君、私はカリムが好きだ。もう一度言おう。私はカリムが好きだ」

「うん。知ってます」

「もう一度言おう。私はカリムが好きだ」

「うん。もう解りましたから」

「タカヤ、お前後で泣かす」

「え」

 高級ホテルの一室、そこには複数の影があった。誰もが違和感のないスーツ姿に身を包んでおり、この日ばかりはウィルフレッドもスーツをちゃんと着ていた。ルシオを初めとする見習い四人は本当にうんざりとした顔をしており、ウィルフレッドの横のヴェロッサは楽しそうな笑顔を浮かべている。ベッドに腰をかけるウィルフレッドの後ろにはデバイスを外され、魔力を使えないように限定的なAMF発生器の力場に放り込まれた、簀巻き状態のシャッハがいた。ウィルフレッドの作戦にとっての第一障害であるはずのシャッハはウィルフレッドが警戒し、誰よりも早く排除された。

「同志ロッサ、ルシオ」

「警備員は僕達で説得済みだよ」

「今日一日俺達が何をしようが全て"なかった"事になるぞ。おい、それよりも」

「あぁ、解っている。教会に戻ったら稽古をつけてやる」

 ウィルフレッドの目は明らかに正気の色をしていなかった。だがその様子をヴェロッサは見て、楽しんでいた。
見習い四人はこの先の展開に段々と不安を持ち始める。

 というよりもこの男についていったとしても大丈夫だとは全く思えないというのが見習い達の総意だった。ウィルフレッドのカリムへの思いが暴走しているようにしか見えない、と言うよりも実際暴走しているのだろう。そして仕事をサボってまでやってきたヴェロッサは明らかにこの状況を楽しんでいる。

 状況は最悪を超えて絶望的な何かに突入していた。

 しかも真面目に稽古をつけてくれるという餌に修練ジャンキールシオが引っかかってしまったために残りの三人に逃げ場はない。いつもならやる気のエリックでさえ本気の証拠にデバイスまで持って来たウィルフレッドの存在に圧されていた。

 そこでいいか、とウィルフレッドが口を開く。

「俺とカリムはな、十年以上の付き合いなんだ。あいつに一番最初にほれたのは俺だ。魅力に気づいたのも俺だ。
そして俺はヒモになるためにも絶対にカリムを他人に奪われるわけにはいかねぇんだ」

「最初は少しだけ正気かなと思ったら最後の方で何時もどおりで安心した」

「いいか。俺はカリムを愛している。積極的にアタックを繰り返している。そして気づいた―――カリムは恥ずかしがっていると」

「頭に蛆でも湧いてるんじゃないんですか」

「だから俺はカリムに近づく虫を全てジェノサイドしようと思う。というかそうしてきた」

「知りたくない告白だった……」

 そこでウィルフレッドは巨大なデバイス、ティルフィングを持ち上げてそれを床に落とし、それを持って注目を集める。

「だが、だが……悲しい事に……もう既にお見合いの場はシャッハの手腕により完成されてしまった……! 相手が誰であるか、どこでやるか、それを直前まで伏せられていた為に開始前に始末することは出来なかった……!」

「始末って言葉はヤバイからもう少し違う言葉を選ぼうか、ウィル?」

「最大の障害である裏切り者、シスターヒャッハは排除した。残りは物理的に排除したいと思う。狙撃か拉致して拷問にかけるとか。そこらへんが常識だと思う」

「はい!」

「はい、そこ、同志エリック」

「せんせー! それじゃあ百パー騎士カリムにバレると思いまーす!」

「大変遺憾ながらそうだろう……」

 強く拳を握るウィルフレッドの手からは血が流れ出ていた。今まで数々の縁談話を握りつぶし、シャッハにもカリムにも届かないように邪魔していた人間としては失態だ。そして物理的排除ができない今、ウィルフレッドは最大の危機を感じている。

 なぜなら本人には自分が最低であるという自覚はあるからだ。

「故に、まず最初は流れを監視する事からはじめようと思う。そのためにお前らにはレストランの各所に紛れ込んでもらい、そして全体を見守ってもらう。そして必要とあらば事故に見せかけて殺れ」

「ここまで暴走して収拾つくのかなぁ……」

 呟くマーシュの言葉を無視してホロウィンドウをウィルフレッドが一枚出現させる。

「タカヤはコック見習いとして厨房に、マーシュはウェイターとして、エリックは受付、俺とロッサはここから監視カメラを使って確認している。ここから念話を使ってお前らに妨害や暗殺の指令を与える。最終手段として俺はホテルの爆破も辞さない。故に、ここは全てお前らにかかってるぞ……!」

「……ん? あれ? これ普通にヤバクね?」

 真剣な顔を浮かべるウィルフレッドの横で、ロッサは笑顔のまま手を振っていた。

「頑張ってね。失敗したら多分僕でもウィルを止められないから」

 唯一ウィルフレッドを止められそうな人物が真っ先に無理だと宣言した瞬間、見習い四人の背中を冷たい汗が流れていた。
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| 不良騎士道 | 14:52 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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