陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第26話 不良騎士と聖王の器

「いいか、良く見てろよ……?」

「う、うん」

 中庭、ヘテロクロミアの幼女ヴィヴィオの前には芝生で倒れているウサギの人形の姿がある。人形としてはそこそこの大きさを持ったそれはヴィヴィオが目を覚ました時、一人では寂しいと手配された物だ。そして、実際にヴィヴィオはその可愛らしい兎の人形を気に入ってどこへ行くにも持ち歩いている。

 そんな兎の人形が倒れている。


「兎さん兎さん、朝ですよ、早く起きた方がいいんじゃないかな?」

 ウィルフレッドが少し幼い子供へと向けるような口調で兎へと話しかけると、兎の人形がピクリ、と動く。その事にヴィヴィオが少し驚くが、興味深そうに人形を見つめ続ける。

「兎さん兎さん、寝すぎるとヴィヴィオちゃんに嫌われちゃいますよ?」

 丁寧に、優しく言うウィルフレッドの言葉に反応する様にヴィヴィオの視界の中で、兎の人形が小さな手を動かし目を擦ると上半身を持ち上げる。

「わっ」

 その事に再度、ヴィヴィオが驚くが、兎は眠そうなポーズを取りながらよいしょ、と声が聞こえてきそうな動きを持って起き上がる。そして目を輝かせるヴィヴィオへと向かってペコリと頭を下げる。

「ほら、ヴィヴィオちゃん"おはよう"だって」

「あ、おはよう」

 既に時刻は朝を過ぎ昼に入りそうな頃だが、ヴィヴィオはそれを知らぬか気にする様子を見せない。頭を下げた兎が頭を上げるとてくてくと短い足を使いヴィヴィオのほうへと近づく。その様子をドキドキしながらヴィヴィオが眺めていると兎はジャンプし、芝生の上に座り込んでいたヴィヴィオの膝の上に音もなく飛び乗る。

「うわ!」

 そのまま回転したり、軽いダンスを踊りながら兎の人形はヴィヴィオの肩や膝といった所を飛んだり跳ねたりし、ヴィヴィオを大いに楽しませてからその手の中で倒れる。

「凄い!」

「どうもお粗末さまでした」

 ヴィヴィオの笑顔にウィルフレッドも笑みを浮かべる中、ウィルフレッドの背後にいるシャッハが呟いた。

「ウィルフレッドがまともな芸を? 信じられません……これは何らかの天変地異の前触れではないのでしょうか」

「そうだな。私も目の前の光景に些か驚愕を隠せん。意外と子供に対しては普通な人間なのかもしれないな」

「おい、人がいい感じに芸を披露してたのにお前らのその評価は何だよ。俺の評価って全くブレねぇなぁおい」

「ウィルさんは日頃の行いが悪すぎるんじゃないかな?」

 昼に入りかけている病院の中庭、聖王のクローン"ヴィヴィオ"を前に、一同は穏やかな時間を過ごしていた。


                   ◆


「本当、何でウィルさんそんなに気に入られてるのかな?」

「滲み出るイケメンオーラを隠しきれてなかったか……よぅヴィヴィっ子。楽しいかぁ?」

「うん!」

「ははは、うい奴めー!」

「あははは!」

 ヴィヴィオは兎の人形を抱き、ウィルフレッドの肩に乗って高所からの光景を眺めていた。ヴィヴィオを乗せてそのままゆっくりと中庭を歩くが、外面上ヴィヴィオと遊んでいるように見えて実際は違った。なのはとシグナム、シャハとウィルフレッド。立場の違う二組は念話を使ってヴィヴィオに知らせないように会話をしていた。

『それで、聖王教会としてはどういった方針になってるの?』

『はやてにも言ったから喋りたくない』

『言わないのであれば……』

『あぁ、はいはい、いいますよ! 言うともさ!』

「お兄さんアレはなぁに?」

 ヴィヴィオが指差していたのは中庭の木になっている果実だった。おそらく病院が何らかのプロジェクトで育てる事になった果樹だろう。その名前や豆知識を解りやすく子供でもわかるように説明しつつも念話による会議は続行する。

『今この場にいる連中、機動六課、そして医者以外にヴィヴィっ子の正体を知る奴はいねぇよ。それに医者の方も薬でも使わない限り情報を吐かないだろう。だから聖王だって情報は漏れねぇ』

『と、言うと?』

『俺達からはノータッチだ』

「ウィルフレッド!」

 念話ではなく声に出して叫んでしまったシャッハが自分の行動を後悔する。叫んだ瞬間、ヴィヴィオが僅かながら怖がる様子を見せたからだ。それをウィルフレッドは肩に乗せたままヴィヴィオをくすぐり笑わすと、

「おぉ、あんな怖いお姉さんと関わってるだけ人生の時間が無駄だぜ?」

「無駄?」

「そうそう。脳筋だから直ぐに武器を取り出すし言葉よりも先に手が出るんだぜ? 怖いだろ―――シスターヒャッハって言うんだぜあれ」

「シスターシャッハです! シャッハ! いい加減に新人や見習いに私の名前を間違って教えるのを止めて下さい! 本気にした人が初めて私に会うと必ず"こんにちわシスターヒャッハ"とか言ってきて、その度に貴方の顔面を殴りたくなるんですよ……!」

 ウィルフレッドはそのまま顔を上へと向けてヴィヴィオと視線を合わせる。

「よく怒鳴ったりして怖いでしょ?」

「うん」

「アレ、頭の病気だから気にするな」

「うん」

「ウィールーフーレーッドー!」

『完全にウィルさんの独壇場になっちゃってるなぁ……』

『口論で勝とうとする事自体が間違っている』

 シャッハのリアクションにウィルフレッドは中庭を軽く駆ける様に動き回り、ヴィヴィオの気を紛らわす。

『シャッハ。聖王の確保は大事だが教会に持っていっても御輿か政治の道具にされるだけで終わるんだよ。あ、どっちも結果的には一緒か。つまり、今連れ込んでも混乱が酷くなるだけだ。ウチらの方で保護するのは諦めるのが最善だ。むやみに刺激したくない』

『……こういう時だけ真剣になられても……』

『おい』

『違和感ばりばりだね』

『お前ら俺に対して容赦ねぇよな。ま、いっけどよ』

 ヴィヴィオをなのは前で降ろす。

「そろそろお兄さんは体力的に限界だからそこのなのはちゃんと一緒に遊んでくれ」

 ヴィヴィオがなのはへと向かい、なのはがヴィヴィオと兎の人形を使い、遊び始める。ヴィヴィオの表情はウィルフレッドと遊んでいた時よりも明るい物となっている。それを見てやれやれと呟き、懐のタバコに手を出そうとし……代わりにポケットからガムを取り出す。

『子供の前じゃタバコ吸えない……』

『それだけの良識は残っていたか』

『シグナム、お前って何か俺に恨みでもあるのか? なんか言葉がめっちゃ突き刺さるんだけど。あ、もしかして負けたことを根に思ってる? 騎士なのに引きずってんの? 無様に負けちゃって忘れられないの? やだ、シグナムちゃんかーわーいーいー!』

 静かに青筋を浮かべるシグナムの様子を楽しみながらヴィヴィオとなのはの姿を眺める。ヴィヴィオが笑みで顔をいっぱいにしてなのはに接する様子は、本当に楽しそうに見える。その光景をガムを噛みながら見て、内心これで決定したな、と呟く。

『なのはちゃん』

『なにかな?』

『どうやらお前に一番懐いてるようだし、その子のこと頼むわ。名義が必要なら俺のを好きに使っちゃってくれ。少将の名前があれば少しスムーズに色々運ぶだろう』

 ウィルフレッドがそのまま背を向けて中庭から出て行こうとする。その背中を止めるように念話による声が放たれる。

『貴方はどうするのです?』

『情報封鎖はしてるけどどこから漏れるか解らんからな。ガキ共に釘を刺したりデコイ流したりする。とりあえず帰ってカリムの胸に顔を埋めたい』

『寝言は寝て言え』

「こいつら会うたびに言葉が辛辣になって行くなぁ……」

 そんな事をしみじみと呟きつつウィルフレッドは一人、病院の中庭から去って行った。


                   ◆


 聖王教会へ続く道を一台の大型バイクが走る。聖王教会へと唯一繋がる道であるために車の通りはそれなりに存在する。最近は緊急事態があってよく全速力で通過しがちなこの道だが、道の左右には自然が見えてそれなりに美しい光景となっている。とは言え、それをウィルフレッドが気にしているかといえば否だ。ウィルフレッドには風景を楽しむような情緒はそこまでない。風景が綺麗、それを理解しても口説くこと以外にその存在を気にする人間ではないのだ。

 そんなウィルフレッドがバイクを走らせて十分ほど。

 病院からそう遠くない場所に位置する聖王教会にあっさりと到着する。門に近づいた所でバイクのスピードを落としながら門を通過する。時間的に昼頃なのだが、それでもまだ多くの巡礼者の姿が見える。バイクに乗って入ってきたウィルフレッドの姿を見て"あぁ、アイツか"と様々な視線が投げかけられる。それらを特に気にする事なく教会の裏まで行くと専用のパーキングスペースにバイクを停め、ロックする。その後に近くに置いてあるカバーを拾い、それをバイクにかぶせて体を伸ばす。

「んっんー! よっと」

「っは! 避けられた!」

 体を伸ばした所から後ろへ一歩下がった瞬間、ウィルフレッドのいた位置を白い影が通り過ぎる。確認せずともそれがクゥーニャだという事を理解しているウィルフレッドは溜息を吐くと頭を横に振り、

「殴るぞ」

「私は暴力を愛として受け入れる準備が出来ている」

「う、っぐぅ……」

 握り締めた拳をプルプル震わせて降ろす。

「さぁ、諦めて私と子作りしよう」

「お前はもうちょっと言葉を選べよな? 俺だってそこまでストレートに言わねぇぞ!?」

「まどろっこしい方法は時間がかかりすぎて嫌いだ。何故世の中の女共は無駄にもじもじしたり遠まわしに好感度を上げようとする。無駄ではないか。男など九割方下半身の生き物ではないか。告白して、返事を待たずに押し倒して既成事実。それで妊娠すれば逃げられない。これで済む話であるというのに、何故あそこまで面倒な事になる」

「お前が特殊すぎるんだよ!」

 ウィルフレッドの言葉にクゥーニャはふむ、と声を漏らして腕を組む。そのまま数秒考えてから結論に達する。

「やはり面倒だ。さぁ、続けよう」

「駄目だこいつ。色んな意味で俺以上に駄目だ」

 溜息を吐きここ二日で一番の疲れをウィルフレッドが感じているとクゥーニャがウィルフレッドの首に後ろから抱きつく。もはや何も言うことはなく、クゥーニャを後ろにぶら下げたまま聖王教会の中へウィルフレッドが進入する。大聖堂の裏手に存在するパーキングから大聖堂へは向かわず、その横を抜ける様にして中庭へと向かう。

 基本的に中庭からは聖王教会のどこへでも行けるのだ。

「どこへ行くのだ?」

「メシ」

 完結的に述べられた事実に対してクゥーニャは頷く。

「ならば今日の昼は私が作るか」

「いや、カリムに作ってもらう」

「カリムなら出かけていないぞ」

 クゥーニャのその言葉にウィルフレッドが凍り、クゥーニャの頭を掴むとそれを目の前へ持って来る。

「なん……だと……?」

「実家の方でお見合いの話が来たとかで―――」

 ウィルフレッドは即座にクゥーニャをぶん投げ捨てた。

「カリムが……お見合い……だと……? お、おみ、おみあ……お見合い……だと……?」

「一週間後にあるらしいが、それまで実家で寝泊りするそうだ」

「おみ、おみみ、お見合い……」

「おい、ウィル。聞こえるか?」

「カリムが……お見合い……お見合い……」

 予想を超えた事態を前にウィルフレッドはこれ以上なく絶望の淵に立たされていた。
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| 不良騎士道 | 14:46 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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