陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第25話 不良騎士と茶番

 青い狼……ザフィーラが機動六課の本部、その廊下を独りで歩く。時間的には局員は既に活動して働いている時間だが、昨日のガジェット襲撃事件の出動を受け、ほぼ全員が疲弊している。疲弊といってもそこまで酷いものではないのだが、それでも新人たちは予想外の出来事にかなり疲弊していた。だがそれを抜けば機動六課は通常通りだった。新人たちは何時もより少しばかりの休息を得て、隊長陣は昨日の後始末を遂行する。

 そんな状況の中、ザフィーラは基本的に暇だ。


 "八神はやての個人戦力"それがザフィーラに対する評価。もっと上のほうに行けば"八神はやての道具"と言う評価になる。隊長ですらなく一部からはペット扱いされるザフィーラははやての魔力消費を考え、基本的に狼の姿を取っている。そのせいで女性に撫でられたりたまにドッグフードを与えられたりするのは結構日常的な行動で止めてもらいたいと思っている。だが唐突に話し出して夢を壊すのも如何なものかと思ってしまう辺り、ザフィーラの気質が表れて見えているのだろう。

 そんな基本的に暇なザフィーラだが、その日は何時ものように食堂の日当たりのいい一角で昼寝をせずに行動していた。昨日はザフィーラもガジェットの対処に出動していたのだがそこまで疲労のないおかげで簡単に行動できるザフィーラは機動六課の本部、取調室へと向かっていた。

 ウィルフレッド・カーストが拘束された。

 と言っても任意同行でジェイル・スカリエッティの発言が本当かどうかを確認する、というだけだ。少将の位にあるとはいえ、管理局としては"こいつは人殺しだ"と言われた人物をハイ、そーですか、と、ろくに取り調べもせず放置するわけにはいかない。

 最低でも、何らかの行動をとらないと管理局としての面子が立たないのだ。

 故にウィルフレッドには聖王教会への確認とデバイスの使用記録を調べるために一晩機動六課で過ごしてもらい、朝から取調室ではやてと相対している。エレベーターから降りて到着する階、狼の姿から人の姿へと体を変貌させてからザフィーラがドアを二回ノックする。

「誰や」

「私です」

「おー、ザフィーラか、入りー」

 では、と言葉を置いてからザフィーラが取調室のドアを開けて進入し―――固まる。

 そこには床に倒れるウィルフレッドと、恍惚の笑みでそれを踏みつけるはやての姿があった。

「それそれそれそれ! どうや! 立場逆転やなあ、今までポンポコポンポコ言うてた娘に足蹴にされるんはどういう気持ちや! えぇ? あぁ? どうや、素直に言うてみいや!」

「女王様! もっと! もっとお願いします!」

 軽いSMプレイ中だった。

「……部屋を間違えたか。すまん」

 ザフィーラは入ろうとした部屋の扉を静かに閉めた。

 扉が閉まるのと同時に今の状況を改めて考え直す。今の二人は一体誰だったのだろう。友人と主と全く同じ姿をしていたが、自分の知っている二人はそんな特殊な性癖がない健全な人間達だったはずだ。片方はどっか若干ぶっ飛んでる所もあるがあそこまでぶっ飛んでいる男じゃなかったはずだ。だとしたら不審者か。そうに違いないと、軽く現実逃避をしながら再び部屋の中に進入する。そこではパイプ椅子に座ったウィルフレッドとはやてが向かい合っていた。

「おい、滑ったぞポンポコ」

「相手が悪かったんや。これがザフィーラやなくてヴィータ辺りなら素晴らしいリアクションが見れたはずや」

「おいおい、オーディエンスを選ぶことは出来ないんだぜ? そこは誰にでも通じるネタを選ぶ必要があるだろうが」

「そやけど私スッキリしたかったんよ」

「完全に趣味じゃねーか」

 テーブルに肩肘をついて脱力している姿はどこからどう見てもザフィーラの友人のウィルフレッド・カーストだ。会話からして、先ほどまでのSMプレイは入ってきた人間を驚かす為の演技だったらしい。ザフィーラは軽く溜息を吐き出しながら口を開く。

「裏付けが取れた。もう出てもいいぞ」


                   ◆


 結局の所、ウィルフレッドのデバイスから取り出せた使用記録はガジェットに対してのみだった。そしてスカリエッティの発言を肯定するにはあまりに証拠が少なすぎる。第一に、ウィルフレッドの姿はほぼずっと聖王教会にあることが確認されているのだ。聖王教会から外に出たとしても必ず何処かのバーか本屋にいることがミッドチルダの監視カメラに映されている。ウィルフレッドのアリバイは完璧なのだ。

 実際、聖王教会からミッドチルダまで一直線にバイクで向かってくる姿も確認されている。

 故にスカリエッティの言葉は嘘としてしかみなされない。

「あぁ、やっぱりメシってのはこう、味が濃くねーとダメだな」

「いや、朝からそれは流石にどうかと思うんよ」

 取調室から出て真っ先にウィルフレッドが向かったのは食堂だった。取調室には朝一番から入っていたので朝食をとってなかったウィルフレッドは同じく朝食をとってなかったはやてと共に機動六課の食堂にて朝食をとっていた。朝食というには少し重いミートソースのスパゲティを大盛りで注文したウィルフレッドはそれを食べながら味に満足する。ザフィーラもはやての足元で丸まり、会話に耳を傾ける。

「いやいや、教会のメシって基本的にかなり質素だからな? 味付けちょい薄め。俺としてはもっとスパイスを効かせたもんとかさ、少し味が濃い目のもんのほうが好みとしてはストライクなんだよ」

「あれ、でもウィルさんのご飯って基本的にカリムが担当してるんやなかったっけ?」

「お前、勘違いしてるけど俺は基本的に金があるうちはちゃんと食堂で金を払ってメシを食ってるぞ。ただ金欠になると食費分が圧倒的に足りないからカリムにタカってるだけで。あー、何であそこでアタリが出てくれなかったんだ……確変大当たりさえ出てくれればなぁ……」

「今自分が人間の底辺的な発言したのに気づいとるんか?」

 ザフィーラが呆れた様な溜息を発す。

「……サイフに金が入ってないだけで口座には腐るほど金があるだろう」

「え? マジ?」

 ザフィーラの言葉にはやてが目を丸くしウィルフレッドに視線を向けるが、ウィルフレッド本人は明後日の方向へと顔を向けながら口笛を吹いている。ジト目で数秒ウィルフレッドを睨みつけるが全く進展がないので、諦めてはやては食べているフレンチトーストにフォークを突き刺す。

「それで、今日はどうするん?」

「ま、やるこたぁ一つしかねぇわな」

「聖王か」

「おう」

 聖王。スカリエッティが残した爆弾は凄まじい物だ。昨日の戦闘の最後にスカリエッティが残した発言にはウィルフレッドが殺人を犯したという言葉の他に、保護した幼女が聖王のクローンだという事実まであった。ベルカ自治領にある聖王教会関係の病院にクローンの少女はすぐさま連れて行かれ、検査と治療を受けた。その結果少女は聖王のクローンだと発覚した。それを調べたのは機動六課の人間であり、外部の人間は知らない。

 つまり聖王のクローンの存在は、スカリエッティを抜けばウィルフレッドと機動六課以外に知るものはいないのだ。データも機密扱いとして隔離しているので漏れる心配もない。

 だが、それが逆にはやてに疑心を抱かせていた。

「ウィルさんはどういうつもりなん?」

 それは病院にいるクローンの事を言っているのだとウィルフレッドは理解できる。

「そんで、聖王教会としてはどんな感じなん?」

「そうだな、俺の見立てとしては……欲しい40%、厄介40%、使える20%って所かね」

「うわ、聞くんじゃなかったわぁ」

 ククク、と低く笑ってからウィルフレッドが口にスパゲッティを一気に運び、食べる。

「ま、欲しいと使えるって考えるのは"急進派"の連中だな。基本的にベルカ自治領の解放を一番に考える連中だ。クローンといえども聖王がいれば旗頭にできるしある程度の正当性も訴えられる……とか考えてると思うぜ。で、厄介って風に感じるのは俺達"原典派"だ。無理なくゆっくりと進めたいから聖王が来たら混乱するだけ混乱して"急進派"を力づけるって考えだ」

「だから殺したん?」

「殺してねぇよ。まるで俺が殺人鬼みたいじゃないかー」

「っちぇ。カマかけても無駄かぁ」

 更に盛られたミートソーススパゲティを一気に食べ終わらせるとフォークとスプーンを皿の上に置く。ナプキンで口の周りを拭き、まだ熱いコーヒーに手を伸ばす。

「まぁ、少しぶっちゃけ話をしようか」

「ふむ?」

「正直存在自体が迷惑だ。機動六課で預かっててくれ」

「ほう?」

 ウィルフレッドの、聖王教会からとも言える言葉にはやてが軽い驚きを見せて紅茶に手を伸ばす。一口それを飲みながらウィルフレッドを見る目は先を促すようにも見える。

「可哀想な話だが聖王教会に来ても政治の道具に使われて終わりだ。あの子の幸せを考えるのだったらそっちで引き取ってくれ。そっちの誰かに懐けばいいんだが、とりあえず俺が教会の方を押さえ込んでいるうちに保護者申請でもして親権を獲得してくれ。クローンにも人権が存在する時代になったからな。保護者か親権を獲得すれば手に入れる手段として9割がた封じ込める。あとはそうだな、洗脳とか拉致とかそこらへんに気をつければ特に問題ないと思うぜ」

「そか。ならあの子はウチらの方で面倒を見させてもらうけど……そんな判断でええの?」

「あ?」

「上司に怒られへんの?」

 あぁ、とウィルフレッドが言葉をもらして苦笑する。ウィルフレッドの上司とは神殿騎士の一位だ。おそらくウィルフレッドが知っている中で最強の人物。

「確かに怒られるかもしれないけど」

「けど?」

「あのロリコン、教会と幼女の笑顔を選ぶのなら絶対幼女の笑顔を選ぶから、適当に写真数枚とって封殺しておく」

「これがトップなんやから聖王教会ってよう解らんなあ……」

「大体確保を命じた理由の9割が幼女の姿してるからだろ、総長としては。っと、さて」

 コーヒーを飲み終えたウィルフレッドが立ち上がる。ポケットから財布を取り出すとテーブルの上に硬貨を数枚置く。片手を挙げ、ひらひらと別れの挨拶を告げる。

「写真撮りに行ってくる」

「幼女の写真を撮って上司のご機嫌とりをする職場か……ええなあ」

「……主?」

 ザフィーラに一株の不安を抱かせながらウィルフレッドはデバイスとバイクの回収へと向かう。


                   ◆


「よ、よ、幼女の笑顔は~国~の~たか~ら~もの~。うーん、総長も変な歌を作るよなあ。また管理局に捕まらないかねえ。あの時は誰も助けなかったから捕まったんだっけ。人望ねぇなあ」

 キャラの濃さでは決して劣る事のないウィルフレッドがベルカ自治領内、聖王教会直属の病院に到着する。豪華な門を抜けて裏口から進入すると裏のパーキングエリアにバイクを停めて、降りる。その背中には紐でぶら下げられ、布に包まれた巨大なデバイス、ティルフィングが隠されている。待機状態にすることが出来ない以上、こうやって持ち歩く以外の選択肢がウィルフレッドには存在しない。

 降りたバイクに電子ロックと鍵によるロックで、二重に施錠したところで裏の方から病院内部へと進入する。ノリウム床を踏むたびに足音が響くが、病院としては盛況なのかそこそこの人の姿を見ることができる。そのまま受付まで歩き、受付にいるのが男性だという事に軽く絶望しつつもウィルフレッドが昨夜搬送された幼女について聞く。

「あぁ、その子でしたら先ほど他の方々と中庭の方へと向かいましたよ」

「おう、悪いな」

 片手を上げて感謝の意を示しながら受付から離れると、病院の内部を歩き始める。車椅子に乗ったり、普通の見舞いの人間など様々な人間が歩く中、偶に通りかかる人がウィルフレッドへと向かって頭を下げる。そういった人物達へと軽く手を振りながら廊下を抜け、病院の中庭へと通じる扉を開く。開いた扉から暖かい風が流れ込んでくるのと同時にそこにいる人物たちの姿が見える。

「あ」

 ウィルフレッドの視界の中で、幼女が一人倒れるのが見える。その奥にはなのはとシグナムの姿が見え、倒れた幼女を励ましているのが見える。特にウィルフレッドの事を気づいている様子もないので、ウィルフレッドはそのまま気配を殺して近づくと、地面に倒れて泣きそうだった幼女を持ち上げて肩に乗せる。

「ぁっ」

 そんな軽い声と共に持ち上がった幼女の下の存在を、なのはたちがやっと認識する。

「おいおい、子供相手に何やってんだか」

「いや、貴方こそ何をしてるのですかウィルフレッド」

 良く見ればその後ろにシャッハの姿まで見える。

「ぁ……ひ、ひぁ……」

「おぉ、っと?」

 持ち上げた幼女が肩の上で泣きそうになるので軽く揺らしながらなのは達の下へと向かう。

「どーだい、高いだろ。俺ほど背の高いやつは結構珍しいんだぜー」

「ぁ……あ! わぁ!」

 少しぐずるような様子を見せるが、その表情が笑顔に変わって行く。ウィルフレッドが幼女を肩に乗せ、遊ばせる姿には慣れが感じられる。

「ほーれ、高いぜー。おぉ、これぐらいの子供ってのは無垢で可愛いよなあ」

「貴方のストライクゾーンは底なしですか」

「おい、俺を総長と同じ生物にしないでくれ……ほらよ」

 片膝をついて肩の上に乗せた幼女をなのはの前に降ろすと、幼女がなのはに抱きつく。

 と―――これが"聖王"ヴィヴィオと、ウィルフレッドの意識を持った初の接触だった。
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| 不良騎士道 | 14:39 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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