陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第24話 不良騎士と無限の欲望

 倒したはずのガジェットがまた起き上がり、戦闘態勢に入っていた。

 ある意味、それが機械として欲される一番の能力だろう。たとえどんな負傷を得ても絶対に破壊されるまで動き続ける。主人には傷が行かず、破壊し続けることが出来る。破壊兵器としての利点はそこに行くだろう。故に機能停止したかのように思えて再び動き出した所で驚愕は生まれるが―――そこまでの動揺はない。


 既にガジェットが使い捨ての兵器だと言う知識は存在するからだ。

 だが、その後が問題だった。

 床一面に転送用の魔法陣がいくつも出現する。即座にその場から離れるように、分かれた二グループが合流し武器を構える。だが魔法陣から出現するのは明らかにその集団が倒せる量を遥かに超える量のガジェット。

「……えーと……エリック?」

「そ、そんな目で見るな! 一番やりそうなキャラだけど死亡フラグだけは回避してる! いや、マジで! 死亡フラグダメ! 絶対!」

 全員が数歩下がりながら見る光景の中、ケンタウロス型のガジェットとケルベロス型のガジェットが合計で四体出現する。二体倒すのにかなりの力を要したのに、それが全部で四体現れたとなると、

「……どうしよう」

 そうとしか言葉が出なかった。

「……こうなったら」

「おい」

 そこでマーシュが前に出る。構えながら全員の一歩前に出ると魔力で体の強化を始める。その動きを見たルシオが言葉でマーシュを制そうとするが、マーシュは前に出たところで動かなくなる。

「この中で一番戦力にならないのは俺だから……時間を稼ぐ」

「待ちなさい、ここで自己犠牲なんて事をやらせたら私達がまるで無能みたいじゃない。そんな馬鹿な事をやらないで逃げる方法を見つけるわよ!」

「美少女の言うとおりだマーシュ。俺っちとしてもそれは賢い選択だとは思えない」

 それを無視してマーシュはもう一歩踏み出す。既に彼の中では自己犠牲に対する覚悟は完了していた。状況を考えるにどう考えても無傷で突破するのは難しい。それは誰もが理解できる事だ。故に、ここは誰か一人を残して囮にし、その間に突破するのがベストだと思える。それがマーシュの判断だった。

 故に言葉は要らず、前に踏み出す。

「早く―――」

 逃げろ、そう言おうとした所で壁が吹き飛ぶ。

       「ウィルさん、教育の仕方を考えた方がいいよ?」

       「俺ぁ元々教官じゃねぇから文句はレイドに言え」

 壁が吹き飛び、その中から現れたのは白と黒の二色だった。白はその姿をミッドチルダで知らないものは存在しない。白のバリアジャケットに栗色の髪、愛機"レイジングハート"と共に幾多の戦いを潜り抜けてきた魔導師。そして着崩した黒のスーツに黒のサングラスを愛着する赤毛、巨大な鉄塊にも見える複合兵器を担ぐ騎士。

「殺るか冥王」

「それをもう一回呼んだらSLBぶち込むの」

「お前も大分容赦なくなったなぁ」

「前回で学習したの」

「そりゃあいい、お前はもうちょっと"欲望のままに生きる"方が良いぜ」

 管理局最強の"エースオブエース"高町なのは、そして神殿騎士最悪の"不良"ウィルフレッド・カーストの同時到着だった。


                   ◆


 まず最初に動き出したのはウィルフレッドだった。

「さぁて、久しぶりの狩りだ。存分に食うぞティルフィング」

『Jawohl』

 巨大な鉄塊に見えるそれは質量、魔力、その両方を扱う事ができる超大型超重量のウィルフレッド専用のアームドデバイス。質量兵器としての機能もある上に、魔法発動をサポートするためのデバイスとしての能力も詰め込みすぎた為に待機状態にすることが出来ず、その結果重さにして百数キロを誇る事となった兵器。複合兵器とも呼べるそれはその後部をウィルフレッドの右肩に当て、前半分を左手で支えられ、グリップは右手で握られている。

「Byte」

 前へ駆け出すのと同時に引き金が引かれ魔力弾が発射される。

 ただ、その弾幕量が異常だ。

 フルオートで吐き出され続ける魔力の弾丸は一発一発がヴァリアブルシュート同様魔力によるコーティングがなされており、AMFを貫通する。その弾丸の量は並のアサルトライフルを超え、ミニガンの量にまで達する。弾丸を吐き出し続けるティルフィングの機体からは消費されて空となったカートリッジが排出され、床に落ちて行く。一番近く、正面にいたケンタウロス型のガジェットがその銃撃をまともに受けて一瞬で蜂の巣になる。並の攻撃では傷つきすらしないはずの装甲はティルフィングの性能と湯水の如く使用されるカートリッジ弾によってあっさりと突破される。

 真の脅威が侵入者二人だと認識した所で全てのガジェットがウィルフレッドとなのはへと向く。だがそれに気づいたとしても既に遅い。ウィルフレッドが引き金を引いた瞬間、レイジングハートをエクセリオンモードA.C.Sへと変形させたなのはが魔力を込めた状態でウィルフレッドを超えて接近する。AMFに突入しようとも、その体に滾る魔力は大きくAMFの許容量を超えているため、なのはを止める事ができない。ケンタウロス型がそれでも攻撃を防ごうと多重にシールドを張る。A.C.Sはその姿は槍に似ており、貫通力という点でも大きく似ている。

 故に、レイジングハートはシールド全てを易々と貫きケンタウロス型に突き刺さる。そして、そのままなのはの魔法が発動する。

「A.C.Sエクセリオンバスター」

『Excellion Buster Accelerate Charge System』

 レイジングハートが突き刺さったまま、エクセリオンバスターが発射される。発射された魔力の砲撃はケンタウロスの装甲を、内部を、そしてその背後にいたケルベロスを一瞬で飲み込み消し去る。その一撃はホテル・アグスタで見せたディバインバスターのような弱さは一切なく、容赦なく敵を消し去るだけの砲撃だった。その理由は前回の戦いにおいて高町なのはが使用しなかった物理破壊設定に存在する。周りの建築物や創造物へと凶悪な破壊を起こしてしまうなのは魔法は、基本的に物理的破壊を生まないように接触から精神的ダメージを通すようにしている。これはガジェットに相対する場合でも周りへの被害を考慮して基本的に切られている。

 が、それを使用した。

 即ち、本来の高町なのはの一撃は金属を蒸発させるだけの威力を持つのだ。物理破壊設定をつけたことによって本来の物理法則を行使しているに過ぎない。

 そのなのはの体に二体のケルベロス型ガジェットが襲い掛かる。片方が新しく現れたモノで三つ首で噛み付こうとし、もう一機が半壊した方で、前足でなのはを引き裂こうとする。だがその二つがなのはへと到達する前に、なのはと背中合わせにウィルフレッドが出現する。その足元には三角形の魔法陣が展開されている。

「ティルフィング―――ブレード展開」

『Jawohl』

 長方形の兵器の下部、そこに収納されていた分厚いブレードが展開される。それに一切の飾りは存在せず、ただ魔力を通すことが出来る。それ以外の要素を排除したブレードはウィルフレッドが普段使うカモフラージュ用のアームドデバイスを超える強度を持つ。それを展開した状態、後部を右肩に押し付けたまま敵が近づいた瞬間完全に片手で持ち上げ―――

 ―――ニ閃。

 魔力で強化した分厚いブレードでケルベロス型を二機共内部の生態コンピューターも合わせて両断する。ブレードを収納する金属音と共に両断されたケルベロス型が二つに分かれ、そこから爆発する。再び肩にティルフィングを担ぎなおしたウィルフレッドとレイジングハートをA.C.Sモードで握るなのはが最後の半壊したケンタウロス型に視線を向ける。

 両腕の欠損したケンタウロスを見ながら、宣言する。

「真・ラスボス参上」

 ふざけたその言葉に対してなのはは呆れた溜息を吐き出すが、それ以外は誰もどんな事も言えない。

 その光景はあまりにも異常だった。

 一体倒すのにかなりの力を要した相手が一撃二撃、まるで紙を破るかの様に簡単になされてしまった。AMFは勿論、強固であるはずの装甲に関してもその一切が意味をなしていなかった。意味がない。届かない。次元が違う。そういった表現が似合い、そしてそれに見合うだけの実力を持っている存在だった。故に尊敬と恐怖、その二つを混ぜたような思いを抱いて、若いエース達は自分達の上司を見ていた。

「やりすぎたか?」

「うーん、少しだけそうかも」

 これだけやらかして少し、と表現するのだから違う。根本的にどこか"ズレている"のだ。

 だが、ウィルフレッドはその"ズレ"を楽しむように笑顔を形作る。

「さぁて残り一匹となったけど、おい、どうすんだよ」

「勿論片付けてここから脱出しないと」

「そうだな」

 なのはの周りにアクセルチューターが数個出現し、ウィルフレッドがティルフィングをケンタウロスへと向ける。トリガーを引き、魔力弾が発射されれば先ほどのガジェットの様に蜂の巣になって破壊される運命しか存在しないだろう。そしてそれ以外の運命をこの二人は許すつもりはない。

 と、そこでケンタウロスが予想外の動きを作る。

『―――』

 それはキィーンと、マイクなどで音を流す時に発生するハウリング音。魔法による会話ができる今、電波などに頼る通信手段がかなり減ったため、滅多な事では使われることがなくなって聞かなくなった音。明らかに魔力による通信であるのに、ハウリング音に似せた音がケンタウロスから発せられた。

『テステス、あー。あー。やぁ、聞こえるかい? 聞こえるのなら何らかの返事が欲しいのだけど』

 ケンタウロスからその場の戦意や緊張を一気に拡散させるような声が聞こえてくる。男の声だ。その声には緊張感というものは存在せず、どこか緩い、リラックスしているような感じを受ける声だった。

「聞こえるぞー」

 それにウィルフレッドが何時も通りの緊張感のない声で答えた。すぐさまケンタウロスから声が返ってくる。

『おぉ、まさか本当に返事が返ってくるとは思わなかった。一度テンプレ的応答と言うのを聞かされたけど、これはこれで中々楽しいな。うむ、満足だ』

 ケンタウロスから発せられる声の主はその応答に満足したようで、声を放っている位置から頷くような姿さえ幻視できる。だが、なのははこの声の主が誰かすぐさま気づき、反応する。

「ジェイル・スカリエッティ!」

『呼んだかい高町なのは君?』

 まるで旧友を迎えるようにジェイル・スカリエッティは声を放っていた。


                   ◆


 一連のレリックに関する事件の犯人、ジェイル・スカリエッティがいきなり通信を繋いできたことにほぼ誰もが口を閉ざした。聞こえてくる声はどうしても凶悪な犯罪者のそれには聞こえない。むしろ穏やかな気質の青年とさえ聞こえる。それに対して若干の衝撃を隠せないままなのはは口を開こうとし―――

「よぅ外道」

『やぁ外道』

 ―――ウィルフレッドに先に越された。ウィルフレッドもウィルフレッドでまるで友人を迎えるような軽い口調で話しかける。決して大量の破壊や殺人を犯し、そして人体実験を繰り返す外道への言葉ではない。

 そんな犯罪者へはありえない対応の中、スカリエッティは言葉を放つ。

『初めましてと言うべきかな、私の名前はジェイル・スカリエッティと言うんだ』

「これはご丁寧にどうも。ウィルフレッド・カーストって言うんだ」

「ちょっと、ウィルさん!」

 ひらひらと手を振るウィルフレッドの姿を見て呆れた溜息を吐き出すが、会話からして自分よりも相性がいいと判断したなのはが黙る。その事にウィルフレッドは小さく感謝の言葉を呟き、スカリエッティの言葉を待つ。

 たっぷり数秒溜めて、スカリエッティが言葉を吐き出す。

『私は―――銀髪巨乳が好きだ』

「ほう」

 その言葉に反応できたのはウィルフレッドだけで、それ以外のものは全員ただ呆然とするのみだった。なのはでさえ予想を超える展開で口を開きっぱなしだった。

「だがな、俺は金髪巨乳党なんだ。まぁ、他のジャンルにもある程度の理解は示しているがな。ジャンルが価値の全てではないし」

『そうか。残念だ。好みのタイプが分かれるのは実に悲しい事だと思う。私も"ナンバーズ"と名付けた娘達がいるのだがこれがまた好みジャンルが中々生まれなくてね……。今のところ成功に一番近いのが一番目のウーノなんだ。とりあえず体のラインが良く見えるボディスーツを戦闘服にさせてるが、悪くはないね』

「羨ましいぞコイツ……!」

「……次元犯罪者? 性犯罪者じゃなくて?」

「シッ」

 なにやら背後で起きる未熟者達の会話を無視しながら、スカリエッティとウィルフレッドは語り合い続ける、

『ちなみにだが私は肉派。歯ごたえのあるほうよりは柔らかい肉が口の中で溶けるあの感覚がたまらないね。とはいえ健康の事を考えると毎食肉だけにするわけにはいかないのが残念だね』

「おぉ、肉はやっぱり柔らかくないとな。昔は歯ごたえのあるタイプのほうが人気だったし俺もそうだったけど、今では柔らかい方が好きだわ」

『そうだろうそうだろう。うむ。君とは実に意見が合うよ。最近の管理局の人間は駄目だな。余裕と言う物がない。人生短いのだ。何事も楽しまなくては生きている意味がない。そうとは思わないかね?』

「俺もそう思う。教義で酒禁止女漁り禁止。まったく聖王教会は地獄だぜ」

 そこでウィルフレッドもスカリエッティも笑いあう。そして、スカリエッティが語る。

『―――私は、欲望に忠実に生きる』

 静かにだが、力強く語られた言葉だった。

『人間の三大欲求とは性欲、食欲、睡眠欲だ。とりあえず無限の欲望と言う名前だけは貰っているからね。その三つに忠実に生きてることにしてるよ。女に対する性欲は我慢しないし、食事は毎回豪勢にすると決めている。睡眠だって毎日七時間確保している。おかげで風邪を引いたことはないよ。欲望に従って生きる。簡単のように聞こえてそれなりに難しい事だよね?』

「ま、立場があるからな」

『あぁ、そうだ。我々には立場がある。私には研究者と次元犯罪者としての。そしてウィルフレッド、君には騎士としての。だから、"立場"を排除さえすれば私達はとても近しい存在だと思ってるんだ』

 その言葉になのはは思い当たる。

 ウィルフレッドはただ従順なのだ。

 自らの欲望に対して。

「ま、俺は抑圧して生きるなんて事まっぴら御免だからなぁ? 抱きたい時に女抱いて飲みたいときに酒を飲む。立場に縛られる事もあるけど概ね欲望どおりに生きてるな」

『そうだろう』

 どこかスカリエッティの声は嬉しそうな物だった。

『故に友人、と呼びたいところだけど立場的には無理なのだろう。君も私を見たら真っ先に殺すのだろう』

「百パー殺すぜ。まぁ、管理局にバレないように全部隠滅する準備が出来てからだが」

「ちょっと!」

「すいません、今の発言は少し見過ごせませんね」

 ティアナとギンガが"殺す"と言う言葉に敏感に反応する。管理局において殺しはご法度だ。全てのデバイスには非殺傷設定が設けられており、殺人を回避するように出来ている。

 が、ウィルフレッドはその言葉を一切気にしない。スカリエッティも気にしない。

『ははは、本来ならまだ声も晒したくはなかったのだけど、君とは話しておきたかったのだよ。済まないね。街中にガジェットを放したりして。君が教える子供がいるって話を聞いて少し好奇心が湧いてしまったよ』

「どいつもこいつも弱い上に頭が悪くてつまらなかっただろう」

『あぁ。ただの凡夫だったね』

 全てが凡夫、そう言い切ったスカリエッティと全員が弱くつまらないと、そう言い切ったウィルフレッド。

 傲慢さと欲望にどれだけ忠実か。それで言えばこの二者は間違いなく一緒だった。

 とは言え、お互い持つべき信念と立場が違う。そこが敵か味方、どちら側に付くかを決定的に変えさせた。

『ふふふ、今日は話に付き合ってくれて有り難う。短い時間だったけど話せてよかったよ』

「巨乳美女になったらまた話し合いに応じてやるよ」

『ふむ、今度は変わりに娘達に話させてみるよ。っと、あぁ、そうだった』

 忘れていた、と言わんばかりにスカリエッティが発言する。

『そこの聖王のクローンにはそこまでの興味はない。好きにするといいよ』

「そうかい」

『―――今までどおり、他のクローン達みたいに研究員ごと殺すのも教会か管理局で保護するのも好きにす―――』

 銃声と共にケンタウロス型ガジェットが完全に破壊され、爆破される。だが直前、スカリエッティが放った言葉はしっかりとなのは達の脳とデバイスに記録として刻み込まれていた。その視線は見習いたちの背後にいる聖王のクローンと言われた少女と、

「ウィルさん、少し本部の方で少し話を聞かせてもらうけど……いいかな?」

 なのはの怖い笑みと共に、その手がウィルフレッドの肩に置かれていた。
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