陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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修剣士 ―――ゴーン・バイ・ナイト

推奨BGM:Unusmundus
*1推奨BGM:Einherjar Rubedo


 目の前で何かがドサリ、と音を立てて倒れる。それがしばらくの間、何かを求めて動いているような気もした。だがそれは別にどうでもよかった。それよりも自分自身が今、何をしたかが問題だった。手を震わせながら剣を手放せば硬く、いつも以上に重く感じる刃が零れ、床へと突き刺さる。そこにはたっぷりと赤い液体が塗られており―――そして自分の体にも大量の血がかかっていた。もはや疑う事は出来ない。殺した。僕、ユージオは、禁忌目録を破って、人を―――禁忌を犯した。

「―――ぁ」

 アレだけ破れそうになかった禁忌もこうなってしまえばものすごく軽く感じてしまう。校則も、禁忌も、まるで初めから存在していなかったかのように感じる程の軽さだ。これが、キリトが感じていた自由さなのかもしれない。だが、それにしてはあまりにも重く、そして痛い。これが自由、そして、これが自由の代償。目の前で息を求めてから得られず、そして倒れて動かなくなった男だったものを見る。

 死んでいる。


 首への一撃、即死とは行かないが間違いなく致命傷だ。これが自由の代償だとすれば、何とも重いのだろうか。アリスは、そしてキリトは、こんな重いものを代償に自由を得られたのであれば、アリスも、キリトも禁忌目録の縛りから抜ける為にはこんな思いをしなければならなかったのだろうか。こんな、痛みを受けていたのだろうか。

「ひ、人、人、人殺し―――!」

 ……あぁ、そういえば残ってたんだっけ。

 ロニエとティーゼは恐怖で蹲っている。彼女たちはもう対象ではない。もう、嬲られたりいじめられたりすることはないだろうが―――心配なのは自分という不出来な先輩を持ってしまった故に、これから付きまとう汚名だ。心の中でごめん、と二人へ謝る。一度転がりだしたのであれば止まる事は出来ない。もしもこれが運命だというのであれば、

「僕は幾らでもこの両手を血で染める。それがアリス、君へと通じるものだと思うから」

 刃を拾い上げる。血に濡れた身らしく、刃も血に濡れている。今の自分には相応しい得物だと思う。もはや選抜された剣士としてセントラルカセドラルへと向かうのは不可能になってしまっている。だとすれば後は方法は一つしかない―――即ちアリスと同様、禁忌目録を破ったものとして罪人として連れて行かれる事。それしか方法はない。だとすれば整合騎士に解るように盛大に暴れなくてはならない。

「ごめんねロニエ、ティーゼ。たぶんもう二度と会う事もないだろう」

「ユージオ……殿……?」

 そこで二人はやっと状況を理解し始めて、見える状況に震え始める。それでも声を漏らさないのはずいぶんとよくやる、と思う。こういう後輩が持てて幸せだったのではなかろうか、自分は。まぁ、それももうほとんど意味を持たない。

「ごめんねキリト、約束守れそうにないや」

「―――いや、むしろ叩き斬ってなきゃ逆に見損なうところだったぜ」

 一瞬の閃光。それと共に窓の内側にはキリトが現れた。その体がかすかに光ってからキリトの姿を形作ったあたり、何らかの心意を使ってここへと一瞬でやって来たに違いない。その登場に自分を含めた全ての人物が軽く驚いていると、キリトが片手で握っている刃―――黒い、ギガスシダーの剣を振るう。

 それは一動作で残った腰ぎんちゃくの首を刎ね飛ばした。容赦も、考える暇も、そして迷う事なくキリトは簡単に二人を殺した。その首が短く宙を舞うと切断された首から凄まじい量の血が溢れ、一気に部屋を赤く染める。その血を全身で受け止め、体を真っ赤に染め上げながらキリトは此方へと何かを投げ寄越してくる。

 前よりもほんの少しだけ軽く感じるようになったそれを掴む。

 青薔薇の剣だった。

「しっかりもっとけよ。今からそれがお前の命だ」

「キリト……僕は」

「言いたい事は解るけど、それも後だ。まずは動くぞ。経験上やつらの動きは早い。此方が追いつめられる前にさっさと動いておかないとヤバイ気配がプンプンする」

「キリト?」

 キリトが窓を蹴り開けると、嵐の様な大雨が部屋の中へと入りこんでくる。キリトの体にべったりと付着した血を洗い流しながらキリトはそれを受け入れ、振り返りロニエとティーゼを見る。

「俺達の事は忘れておけ。たぶん……それが一番幸せだろうから」

「……」

 以前、二人は恐怖か、ショックなのか、それで口を開く事は出来ない。ただ無意味に口をパクパクとうごかし、体を震わせるだけだ。その様子を一瞬だけ見てから、普通に剣を捨てて青薔薇の剣を握る。磨いていた時よりもほんの少しだけ、軽く感じるこの刃―――これが軽く感じられるのは人を殺したからだろうか。

 キリトが窓枠に足をかけ、飛び降りる。ここは数階あるというのに、まるで重力や高さを感じさせない動きに感服せざるを得ないが、キリトが扉を使わないのはおそらく、此方にもそれができると信じているからだろう。だから再び、一瞬だけロニエとティーゼを見て、

「……さよなら、僕の青春」

 返事を聞くまでもなく窓枠に足をかけ、そして飛び降りる。一瞬の浮遊感、そして落下。地面に向かって引っ張られる体を捻り、回転させ、そして地面へと当たるのと同時に受け身を取る。体に発生する衝撃を受け流しながらなんとか着地に成功し、立ち上がる。激しく降り注ぐ豪雨が地を洗い流してくれるが、それがつぶれた目にも当たって痛い。軽く、目を抑える。

「ユージオ、目がつぶれてるのか……?」

「うん。禁忌目録を破って切ろうとした時痛くなって、無視したらそのまま破裂しちゃった」

「……システム側のプロテクションか? いや、この世界の法則、ルールか。心意でどうにかできるならしたい所だけど良く解らないしなぁ……ッチ、このままか」

 何かを呟き納得したキリトは刃を出したまま、それを闇に向ける。

「あっちへ進む」

 そうは言うが、片目だけの自分にはその方向に何があるかは良く見えない。ただキリトは確信したように言う。

「あっちには森がある。森をカバーにしながら身を隠して素早く進む。雨が降っている間は臭いも足跡も残らない筈だから、この雨を利用して一気に登るぞ」

「まさか―――」

「―――あぁ、セントラルカセドラルへと登る。俺もお前の殺人を犯して罪人としてなら進入できるだろうけど、その場合は武器は取り上げられちまうし、本当にアリスに逢えるかどうか怪しいからな。だからここはこの雨を逆に利用して忍び込むぜ」

「君は……」

 何て無鉄砲だ、と口にしたいが、そもそもこの状況も元はと言えばこの状況を生み出してしまった責任は自分にある。中途半端に論破したり、あの時感情に任せて相手を殺したり、そうしなければこうもなる事はなかった。ここはキリトの提案に乗る以外に方法はない。正面からいけない事に対する負い目は少しだけある―――が、結局の所自分を作り上げているのはコンプレックスとアリスへの執着だ。それが自分にとってのほぼすべてに違いない。

「いや―――これでいい。うん。決めたよキリト。僕も、行く」

「その言葉を待っていたぜ相棒。見えないなら俺の服の裾を掴んでいてくれ。俺は視力を強化しているから結構遠くまで見えるしな」

「うん、解った」

 片目が不自由な今、素直にキリトに従った方がはるかに賢い。否定する理由もなくキリトの服の裾を掴み、そして歩き出すキリトに従って動き出す。自分の位置と、そして歩く方角を考えると、確かに此方の方角は森の方だったと思う。しかし不思議だ、

「キリト、君は何で僕の状況が解ったんだい?」

「んー、勘、かなぁ?」

「勘って……」

「あんまし勘を馬鹿にしちゃいけないぜ? 何せ”真実になる勘”ってのが世の中には存在するんだからな、ほら、今も全力で警報流しまくりだし。この手の勘って俺、外したことないんだよなぁ」

 そう言って呟くキリトは前方、闇の中に浮かび上がり始めた森を見ている。

「―――あの時もそうだった。こっちは力をつけているはずだったのに、前よりも強くなっているはずなのに脳内では全力で警報が鳴り響いていた。勝てるわけがないって会う前から確信していたんだ。そもそも立っている次元が違うって、それを本能的に理解していたんだ」

 森がある程度まで近づいてきたところでキリトは足を止める。そして剣を握っていない片手で顔を覆い、此方へと話しかけてくる。今は一瞬でも遠くへ移動するべき時なのに、キリトは完全に足を止めて動こうとしていなかった。

「ユージオ、お前だけ逃げろ」

「え?」

「いいから逃げろ。たぶん俺は無理だ」

 キリトが分けの解らない事を言い始める。彼は一体何を言っているのだ、それを問いただそうとした瞬間―――爆音が響いた。まるで大地そのものを揺らすかのような爆音。そうして闇に包まれていたはずの世界は一瞬で光を得る。そうして光を生み出していたのは、森だった。前方、逃げ込むはずだった森はもはや闇の領域ではなく、炎が燃える地獄と化していた。もはやそこは逃げ込める場所ではなく、完全に目印だった。燃え盛る炎の中をキリトは平気で歩けるかもしれないが、僕には到底無理だ。

 業火を散らす森の中から出てくるのは一人の女性だった。

*1

「―――貴様ら、一体どこへ行こうというのだ」

 出てきたのは葉巻を咥えた赤髪の女性だ。服装はこの学院の教職員が着る様なもので、そこに違和感はない。彼女がこの学院の関係者であることは一目でわかる。だが彼女のしたこと、それは間違いなく普通の人間が行える範疇を軽く逸脱している。キリトと同じ、超常の力―――心意か、それに類する能力を発揮している様にしか思えない。

「キリト!」

「は、はは、―――なんでアンタがそこにいるんだ」

「私がこの学院の学院長だから」

「学院長!?」

 決して公に姿を現さない人物で、本当は存在しないのではないかとすら噂される人物が目の前で敵対するように存在していた。いや、待て。それにしたってキリトの言葉は少々おかしい。まるで目の前の人物を前々から知っていたような発言だ。

「エレオノーレさん」

「少佐、もしくは学院長とつけろ」

「じゃあ……!」

 一瞬キリトは喜びで顔を満たすが、それを学院長と名乗った女は一瞬でへし折る。彼女が手にしたのは葉巻だった。―――それはこの豪雨の中でも火を消すことなく煙を吐き続ける不思議なものだと今頃気づいた。それを手に取った彼女は、まるで灰を散らすかのように軽く葉巻を振る。その動作で生まれる火の粉が一瞬でばらまかれ、広がり、

 そして炎の檻を生み出した。

 この場にいる自分とキリトと、そしてエレオノーレ、その三人を囲み、逃がさない炎の檻。その中でキリトは刃を握り、そして構える。目の前の女性が明確に敵意を示したところで、目の前の存在が敵だと認識したのだ。キリトが纏い始める明確な敵意と殺意に数歩後ろへと下がる。だがそれ以上は炎に阻まれ下がる事が出来ない。

「少佐……!」

「―――阿呆が。貴様、そもそも戦いになるとでも思っているのか」

「がっ―――!?」

 キリトが戦闘態勢に入ったその瞬間、赤髪の女、エレオノーレは既にキリトの射程範囲内にへと入り込み、腹に一撃を叩き込んでいた。そして此方が瞬きをした次の瞬間、既にキリトの体は大地へと叩きつけられ、そしてエレオノーレによって踏みつけられていた。その刹那の動作は自分が知覚できる範囲外で行われていた。彼女に傷はないし、乱れた様子もない。ただ息を荒げる事もなく、一瞬でキリトを無力化したという事実だけがあった。

「貴様も今は眠れ」

 次の瞬間、意識はあまりにもからだから遠のく感覚を得ていた。

 ただただ、何もできない状況に胸に渦巻くのは、

 ―――力への渇望だけだった。




 かませ乙。赤騎士さんの真意とはなんぞや。

 色々とひっぱりつつ、次週、アリシ編の本番開始ですなぁ。
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