陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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修剣士 ―――アイ・キャント・シー

推奨BGM:Burlesqu


「それじゃあ始めようか?」

 学園の敷地は広大だ。校舎の外へ出れば腐るほど土地は余っており、そこで自由に訓練する事を許されている。とはいえ、普段、というかほとんどの生とは修練場を利用している。そこには訓練に必要な道具の全てが揃っているからだ。だから態々外で体を動かそうとする酔狂なやつなんて中々いない。それを個人的にはもったいないと思う。確かに道具を引っ張ってきたりと面倒な部分があるが、それぐらいの労働を面倒がってどうするのだ。自分がルーリッドにいた頃なんて凄まじく苦労をしたものだ。何せキリトがいう”装備レベルが足りない”ものを毎日握って振るって、そして汗を流したものだ。

「はい!」


 だからこうやって外へついてくるティーゼは良い子だなぁ、と感心する。学という姿勢に対して意欲的なだけではなく、疑問を持ってくれる。そしてその疑問を口に出してくれる。煩わしいと多くの人間は判断するだろうが、それは違うのだ。疑問があるという事は何も疑っているというわけではなく、知識を得たいという行動でもあるのだ。理解を得る、それは効率を上昇させるためには必須の行動だ。理解をするという事は情報を自分の中へと取り入れ、そして一部へと変える作業。だから、疑問はいいものだと思う。もちろん疑問をする相手は選ばなくてはならない。だがそういう遠慮をせずにできる相手であればどんどんするべきだと個人的に思う。何せ、自分もそうやって多くの疑問を得て、前に進んできたのだ。だから疑問はいい―――程度はあるのだろうけど。

「うん、やっぱりここは良いね」

「故郷を思い出すんでしたっけ?」

「うん。僕の故郷……ルーリッドの方がはるかに田舎で、もっと木々は生茂ってたけど、大体こんな感じののどかさだったね。まあ、そこにキリトが登場したおかげでのどかな日常が阿鼻叫喚の地獄に変わったんだけどね。主に筋肉痛の方向で」

「き、筋肉痛……」

 今一瞬ティーゼが何らかの単語に反応して顔を赤くした気がするが、たぶん気のせいだろう。あぁ、駄目だ。深く気にしてはいけない。なにか深く踏み込んだら女の子に対する幻想が永遠に壊されたままになりそうな気がする。なので追求だけは絶対にしないと誓って、剣を抜いて肩に乗せる。

「それじゃあまずは体を作ろうか」

「はい!」

 何よりも大事なのが体だと自分は知っているから。


                           ◆


「あと五十回」

「は、ひゃい!」

 苦しそうに息を吐きながら必死に腕立て伏せをするティーゼの姿が目の前にある。その姿を見て、昔を思い出す。剣を習い始めた頃、まずは十分な体力や身体能力があるのか、それを調べる為にマサキが軽いテストを組んだことがあった。そしてその中にはもちろん腕立て伏せも存在した―――ただし、背中にキリトを乗せた状態で。あの時は奇声を上げながら必死に負けない様に腕立て伏せをしていたなぁ、と。

 もちろんそんな事をティーゼにさせるわけにはいかない。ロニエがキリトにつき、そしてティーゼが此方についてから、出来るだけの事はやってあげようとキリトの間で決めている。自分の様に未だにキリトから教えを受けている者からしたら誰かを指導する立場はおこがましいかもしれない。だがキリトは自分もまだ修行中との事でノーカン宣言をしていた。時たまキリト理論はキチガイの理論ではないかと疑う時があるのだが、そこは為になるところが多いし、目を瞑って見逃す事とする。触らぬ神に祟りなし、とは一体誰の言葉だったのだろうか。

「二十九……!」

 頑張って腕立て伏せしているティーゼの姿を見る。その顔は必至なもので、そして大量の汗がついている。だからこそ池に近いこの位置を訓練の場所として選んだ。水桶が無くてもさっとタオルを濡らしたり顔をふく事が出来る上、それなりに校舎から離れている。個々なら余計な人間が来ることはない為、ゆっくりと訓練に身を入れる事が出来る。

「三十、よーん……!」

「頑張って。終わったら休憩にするから」

「ひゃ、ひゃい!」

 結構限界が近いなぁ、と呟きながら時間を思い出す。少し前に鐘が鳴ったので、大体昼過ぎ位だろう、今は。朝の全てを基本的な体作りとウォーミングアップに消費したため、午後からは剣技の訓練に入る。と言ってもティーゼは既に基本となり、戦術の要となる型を家の方から教わり、習っていた。だから自分がやるべき事はそれに対して選択肢を増やしてあげる事だと理解している。だから余計にアインクラッド流剣術等という既存剣術の概念に喧嘩を売る流派を教えず、純粋に剣術の冴えを磨く事のみに目的を置く。

「よんじゅーん! よんじゅごーぉ!」

 ……最後の方って以上にテンションが高くなるよねー……。

 終わりが見える事、幸福がやってくる未来。その間の時間こそが一番の待ち遠しい時間であり、耐えられがたい時間なのだ。痛みが来ると解る数秒前は怖いし、好きな食べ物を食べる数秒前は嬉しくてテンションが上がる。今のティーゼは大体そんな状況だ。こういう状況って後で振り返ると死ぬほど嫌になるので、とりあえず終わったら―――、

「―――五十!」

 優しくしよう。

「お疲れ様」

 冷やしてから絞り、水気を切ったタオルをティーゼへと渡す。

「そ、そんな、申し訳ないですよ!」

「これも授業の一環だと思って受け取っておいてよ。僕が持っていても渇くだけだし」

「……そ、そう言うのなら」

 そうは言うが、危機としてティーゼはタオルを受け取って汗を拭きとっている。現金だなぁ、とそこは思うも、仕方がないとも理解できる。誰だって汗をそのままにしておくのは嫌だろう。ティーゼが汗を拭いている間にあらかじめ用意しておいた水筒をだし、そして軽くつまめるようにと持って来たサンドイッチをバスケットの中からだし、その上に置く。まずは一つ。まだサンドイッチは多めに持ってきてあるが、食べてもまだ入るようであれば、という為だ。

「本来なら自分の仕事なんですが……」

「教える時は徹底的に、って決めてるから気にしなくていいよ。それに食事にも気を使ってるし。水筒の中身は忘れずに全部飲んでおいてね? 摂取しやすいものを選んでるから、もちろん食べ物もだけど。口の中でパサパサしない様にとか結構考えているんだから」

 まあ、これが井アギと考え始めると楽しいもので、キリトは何処の嫁だと言うが、正直体を動かすよりはこうやって考えたり計画したりする方が個人的には楽しい。こうやって剣を握り、かなりの腕前の領域へと踏み込んだ。剣を振るう事に必要性を感じるが、それが好きになる事はない。

 結局アリスを奪ったのは力であり、奪い返すのもまた暴力なのだから。

 暴力的なやり方は正直好まないが―――必要なら遠慮はしない。敵は切る。そして忘れてはならない、ティーゼもまた短い付き合いであり、手段なのだ。

 ”修羅の道だぜ、ユージオ”。それがキリトが送ってくれた言葉だった。セントラルカセドラルへ行ったあと、アリスを連れ出せるとは限らない。寧ろ整合騎士と戦う確率の方が高い。この世界を守る戦士と戦うのだ修羅と呼ばれずして何と呼ばれるのか。そんな事を思っていると本当にこんな自分が人に教えていいのかとさえ思う。

「うぅ……」

 と、食べているティーゼが顔を歪める。もしかして食べやすさを意識しすぎた結果不味くなてつぃ舞ったのだろうか? 素早く自分の分のサンドイッチにかぶりつき、そして味を確かめる―――天命も切れてないし、味も問題はないはずだ。だとすれば、

「もしかして苦手なものでも入ってた?」

「いいえ……」

 ティーゼは球を横に振る。

「むしろ美味しくて困ってるんです。正直食べやすくて、こっちの事を気遣ってるって解りやすくて、美味しくて、ちょっと女としてのプライドをズタズタにされたといいますか……」

 あぁ、そればかりはどうしようもない。プライドの問題は自分で折り合いをつけなくてはならない。ただ個人的に言わせてもらうのであれば、

「僕、結構な完璧主義者っぽいから、悪いけど手を抜いたりはしないよ?」

「ですよねー。あ、いえ、すいませんユージオ上級修剣士殿。この敗北を糧に更に邁進します……!」

 お前は一体誰と戦っているんだ。……が、やる気があるのは実にいい事だと思うしかない。この学院の中でもティーゼやロニエ程意欲的な学生もまた多くはないのだ。

「ま、頑張る分には応援するし手伝いもするよ。僕みたいな未熟なやつお手でいいならいつでもね」

「そ、そんなことありません! ユージオ上級修剣士殿と、そしてキリト上級修剣士殿は皆の憧れですよ! 正直このポジションだって競争率が異常に高くて、指名されたときは夢だと思って頭を壁に叩きつけたんですから!」

 うん、その光景は呆然として眺めていたから知っている。

 と、そこでティーゼが少し顔を俯かせる。今度の原因は自分にないという確信を持って話しかける。

「ティーゼ?」

「あの、いえ……その……もしかして迷惑なのかもしれませんが……」

 今更な話だ。

「今更な話だよ。もし迷惑と思うような器量な人間だったら僕は言最初から僕と関わりそうもなく、手伝いもしなさそうな子を選択したよ。だから僕で力になれる様な事だったら是非とも力にさせてほしい……ダメかな?」

 ティーゼへと真直ぐ視線を向けてそう言葉を放つ。ティーゼは視線を受けて一瞬だけ困ったような様子を見せてから―――覚悟を決めたように口を開く。

「実は同室でフレニーカという子がいるのですが、彼女も私やロニエと同じで上級修剣士殿に傍付として付いているんです。ですが最近フレニーカの様子が少しおかしく感じれて……心配した私とロニエでちょっと問いただしたんです」

 ティーゼはそう言って一旦区切ると、

「……実はフレニーカ最近、お付の上級修剣士殿が厳しくなられて……部屋の掃除以外にも色々と命じになるそうで。そして些細な間違いに対してあまりにも厳しい懲罰を与えたりと、その……学院内では、その、不適当と思われるようなことも言いつけているようなんです……」

 一瞬ティーゼが喋るのを迷ったのを理解した。そしてそれはつまり、言葉では表現しづらいようなことをこのフレニーカという少女に対して行われたという事になる。これが普通の上級修剣士であればまた不可能かもしれなかったが、正直な話この話を聞いてピンとくる部分はあった。腕を組んだままティーゼへと言葉を放つ。

「……その子の担当している上級修剣士ってもしかして……ライオス?」

「あ、はい、そうです……」

 ライオス―――つまり一週間ほど前に此方に対して喧嘩を売ってきた”馬鹿”の事だ。実力が見えていない。己の武を弁えていない。周りが見えてないのにプライドばかりが一人前。アレは貴族であり、そして……たしか、皇室の関係者だったはずだ。だとすれば納得がいく。少し金を学園へと渡せばルールを曲げることはできるし、他のものだって”解釈”次第ではいかようにもなるのだ。

 ……そっかぁー……あの馬鹿かぁー……。確実に原因僕だろうなぁ……。

 一週間ほど前に本気で5秒以内に沈めてしまったのでおそらくプライドを完全に折ってしまったのだろう。そしてその腹いせに……というルートでも全然違和感がない。

 うん。

「何とかしてみるよ」

「本当ですか!?」

「うん、大丈夫」

 とりあえず話見ようとは思う。それでだめなら、また別の手段を取る。

 ―――少なくとも、今はそれだけで十分だと思った。

 思ってしまった。

 思い込んだ。




|ω・‘)<鬱さんがアップし始めました
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| 断頭の剣鬼 | 20:42 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

まさか地下世界にも衆道至高天による汚染がっ……!

| 椎茸 | 2013/07/29 00:27 | URL |

やだー、急展開フラグじゃないですかー。
俺はこの微温湯の日常にまだ浸かっていたいんだー(棒)

| 断章の接合者 | 2013/07/29 09:25 | URL | ≫ EDIT

衆道至高天w
だれだ流出してるのは。
この世界のエレ姉にも娘がいるのか

いよいよ本番への準備運動がはじまりそう。
そう準備運動。これが終わってからが本当の地獄だ

| シオウ | 2013/07/29 21:50 | URL | ≫ EDIT















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