陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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修剣士 ―――ミー・アンド・マイセルフ

推奨BGM:Bottomless Pit


 キリトと解れて向かう先は上位修剣士用の修練場、個人的には無駄に広すぎると思う程に広い修練場だ。元々は十二人全員が同時に使用して使われる事を想定した大きさなのかもしれない、とキリトは言っていた。そう言われればなるほど、と納得できる広さの修練場だった。全員が槍を持って振り回したとしてもまだ十分なスペースが余る大きさだ。キリトは無駄に面倒な奴と関わらずに済むから丁度いい広さだ、と言って修練場の中で無駄にバク転をしたり、色々と曲芸染みた動きをロニエとティーゼに披露していたのを覚えている。……自分についた修剣士に自分の知識の一部か、技の一部を提供して教育するのも上級修剣士としての義務の一つだ。その為にキリトはアインクラッド流から一部の連続剣技を伝えている。型が剣術の主流となっている中、連続で剣を動かして戦うという戦闘方法は実に実戦的だ。そこに型の様な美しさはないが、一つの完成された芸術だと個人的には思う。

 修練場の中には運よく誰もいなかった。何せ、他の上級修剣士とは正直折り合いが良くないのだ、自分たちは。キリトはデタラメに強すぎて嫉妬の対象に、そして自分は田舎からやってきた農民という事で差別の対象として、そういう目で見られている所がある。いや、貴族には特に嫌われている。その嫌われ方を”頭が悪い”とキリトは表現していたが……それはまた別の話だ。問題なのは他の上級修剣士がいると、向こうが此方に絡んでくるので鍛錬に身が入らないというのが問題だ。いや、キリトに雑音の排除の仕方は教えてもらった。集中すれば無視もできるだろう。だがそうやって無視していると直接かかわってくるのが非常に面倒な所だ。


 だから、こうやって邪魔する者のいないこの時間は非常に貴重なものだ。上級修剣士になると、実力は教師に匹敵するものだと言われているため、授業はほとんどない。このレベルになるとほとんど自分で勝手に学び、そして手伝いが必要な時に手伝ってもらう、そういう形になってくる。それぞれ実家に師を雇い、持つ者もいる故に配慮だ。何せ、学園では基礎や骨組みを整えるしかできず、上級者にありがちな特殊な剣術をするせいだろう。

 かという自分も師はキリト一人だ。だから剣術に関しては極力キリト以外からは教わっていない。というか教われない。連続で剣技を繰り出すという性質上、その異端さから型などを習うと無駄になりかねないのだ。

 修練場の奥へと到着すると、腰から剣を抜いて構える。修練場の奥の方、パっと見では入口からは見えない場所だ。これでちょっかいをかける目的で来る者は直ぐに自分を見つける事が出来ないだろう。一番握りやすく、そして自然体でいられる状態、この二年間で生み出した自分だけの構えを取る―――皮肉にもそれはキリトと非常に似ていた。弟子は師に似る、という事だろうか。

「……よし」

 一旦余分な思考を全て脳内から追い出す。集中するのは手に握っている刃の潰された剣と、そして自分だけだ。他の全ては余計な情報として脳内から追い出し、そしてただただ、刃を振るう。鋼の刃は鉄色の軌跡を描きながら風切音を鳴らし、振るわれる。それを振るい、そして手の中に感じる剣を感じる。

 ―――軽い。

 軽すぎる。

 鋼でも、鉄でも、なんでもいい。修剣士となって剣が訓練用に配布されたが、どれも軽すぎる。キリトが普通の剣じゃそのうちどう足掻いても満足できなくなるという言葉の意味を理解した。理解してしまった。ここへと到着してから木刀やら模擬刀などで修練を行っているが、その重さが青薔薇の剣と比べると遥かに軽く、そして扱いやすいのだ。そのおかげで予想以上に速度が乗るのはいいが頼りなさすぎる。キリトに連れられ一度この剣を作った人に会いに行ったこともある。いい人だと思うし、良く作られているとは思う。だが足りない。重さも、硬さも、鋭さも、全てにおいて足りていない。一度業物に触れてしまうと、それ以外の剣では圧倒的に足りていないと納得してしまう。満足出来なくなっている。

「まあ、おいそれと使う事は出来ないんだけどね」

 本来はそう言った装備の持ち込みも禁止されている訳であり、特例で持ち込めるのは貴族ぐらいだ。だが何故か禁忌目録や校則を全て無視してしまう勇者が近くには存在した。入学した次の日の夜に外へと、預けていた場所へと向かい、そして改宗して戻ってきたのだもはや何かを言っても無駄だと割っているので、とりあえず目瞑るという事で個人的には納得しておく。

 刃を振るい、振るわれ、振るう。

 ただ無心で刃を振るう。振るうその瞬間はとにかく頭の中を空っぽにする。余分な力を抜き、力ではなく技量で刃を振るえ、とキリトは言っていた。力ではなく、技術が発達すれば力を込めずとも相手を斬る事は出来るらしい。それにはまずは自分と得物が一体化したような、そんな境地に立つ必要があるとも言っている。

 まずそれが無理なんじゃあいかなぁ、等とは絶対に口にしない。だがキリトが言うのなら確実にそういう領域が存在するのだろうとは思う。だから文句は言わずに、言われた事はやる。ここまで自分を強くしてくれたのは間違いなくキリトであって、それに疑いはない。だからたどり着けると言ったキリトの事だ―――自分はたどり着けるのだろう。

 疑うことなく刃を振るう。そうして刃に映しだされるのは焦りだ。こうやって無心に振るった時こそ自分の内面が映し出される。そして、その焦りも飲み込む。解ってはいるのだ、どうしようもなく自分が焦っている事には。

 アリス、アリスと別れてから何年が経過した。

 彼女は処刑されたかもしれないのに、今もどっかで家畜の様に生かされているのかもしれないのに。自分は一体何をしているのだろうか。そんな疑問が問う中によぎる事は良くある。そしてそんな時こそ全てを忘れて剣を握る。そうやって振るっている時は焦りを飲み込んで何も考えずに剣を振るう事が出来るから。これは自分を鍛える必要な事でありながら、一種の逃避なのだとも思う。焦燥感は時間が経つごとに深まり、そして泥沼の様に体を飲み込んで行く。

 本当に精神修行は早いうちにやっておいてよかった―――していなければ、ある点で爆発していたかもしれない。目の前にセントラルカセドラルがあるのに、そこに触れる事の出来ないもどかしさ。それを何とか耐える事が出来ている。そして今日もそれに耐える為、キリトすら超える力をつける為、ひたすら刃に集中して剣を振る。

 振るった軌跡を全て脳に刻み、寸分の狂いもなく同じ軌跡を描く様に刃を振るえば、今度は全く違う軌跡で振るう。そうやって体に刻み込むのは肩や振るい方ではなく、刃を振るっているという感覚のものだ。自分の体の一部にする様に、ひたすら刃を振るい続ける。この先に心技一体の境地があると信じて、ただひたすら振り続ける。見開いた目に汗が入り込んでも、それでも目を見開いたまま刃の軌跡を脳に刻み込む。自分がひたすら打ち込み、そして信じたこの時間は絶対に裏切らない事は二年で証明されている。だからその連鎖を止めないためにもひたすら振るい続けたところで―――。

「―――おい、見ろよ」

 ヤツらが来た。顔を見なくても声だけで解る。酷い耳障りだ。特に願いも信念もないくせに、強くなればそれだけでいいと思っている奴ら。同じ空気を吸っていると思うだけで吐き気がする。何故お前らが自分と、そしてキリトと同じ場所に立っているんだ。ここはお前らの様なやつがいるべき場所ではない。

 思い浮かんだ言葉を無心のまま刃を振るう事で両断する。無視する。関わっていい事なんて一つもない、百害あって一利なし。なるほど、確かにその言葉は至言だろう。関わって碌な事にならないのになぜ関わる必要がある。

 だから、無視して刃を振るう。尚も相手は此方へと視線を向けて、罵る様に言葉を吐いて挑発してくる。生まれがどうとか、生意気だとか、腰ぎんちゃくやら。間違ってはいない。言っている事は間違っていないからこそ怒りは生まれず、そして受け流す事は出来る。

 だが、

「―――所詮田舎の剣術、刃を振るう事しか能がないな。そんな事しかできないお前も、キリト上級修剣士も程度が知れるな」

 その一言に動きを止める。

「お」

 相手から喜色の声が漏れる。関わってはいけない。それは理解しているのだろうが、

「訂正して貰えないかな。僕のは別にかまわないけどこの剣とキリトお馬鹿にするのはちょっと筋違いじゃないかな」

 相手の笑みが濃いものになるのを自覚する。餌に釣られてしまった。そして相手が何故こうやって此方へと突っかかってくるのも解っている。キリトの名前を出したのも露骨な餌だ。それに引っかかった自分は本当にばかばかしい。本当に、修行が足りない。

「間違ってはないだろう? 来る日も型を一つもやらずにずっと素振りばっかりで馬鹿にしか見えないぞ。聞いたぞ、知っているぞ。お前あの”化け物”から剣術を教わっているんだってな? それなのにずっと素振りしかさせてもらえないなんて―――」

 面倒だ。

 刃を相手へと向けて突きつける。それだけで相手は黙る。キリト式交渉術その一。

「いいよ、解っているよ。僕の事が気に食わないでしょ? キリトの事が気に食わないんでしょ? 君達それで本当に貴族のつもり? 僕が仕えていた上級修剣士は立派な人たちだったのに、君達はまるで駄目だね。まるで肥えた豚が残飯に縋り付いてるようなその体たらく、生きていて恥ずかしくないの? 貴族なら平民に対して人としてはどうあるべきかを指し示す為の姿であれと僕は先輩から聞いてたよ? 実際それに納得したし、尊敬も出来た。それに比べて君たちはまるで―――」

 ―――糞の様だ、という言葉は飲み込む。

 キリト式交渉術その一、とりあえず挑発しよう。ムカついたらまずこれ。

 完全に選択肢は間違っている気がするが、まあ、腹の内はスカッとするのでこれでもういいんじゃないかと納得しておく。目の前にいる上級修剣士の存在は4人だ。仲良子よしの貴族グループ、その集まり全員がここに揃っている。既に鞘の中に収められている剣に手が伸びているのは解っている。

 ―――貴族は平民と比べて禁忌目録の制限は若干緩くなっている。殺人は冒せなくとも、抜け穴を突いて人を必要以上に傷つける事が可能だ。だから、待っていたのだろう。

「いいですよ、やりたいんでしょう? なら四対一で勝負しましょう。えぇ、もちろん模擬戦で。武器を手放すか、降参するかまでが勝負という事で」

「おい、聞いたかよ」

 いやらしい笑みを浮かべて剣を鞘から抜く連中を見る。まるで負けるとは思っていない。不愉快だ。存在そのものが不愉快だ。

「―――5秒も必要ないね」

 一瞬で終わらせるためにも相手が剣を抜いたのと同時に、踏み出す。


                           ◆


「おー、やってるやってる」

 机に向かいながら、参考書やユージオから借りたノートを広げ、試験勉強のさなか、下の方からわずかだが、剣劇の音が聞こえた。だがそれも一回だけだ。次の瞬間には他にもう音はないだろう―――二度も打ち合う必要がある様にユージオを育ててはいないのだから。

「全く懲りないもんだよなぁ……まあ、苛めっ子の発想ってやつだよな」

 プライドなんてものは犬に食わせておけばそれはそれで平穏な生活が訳されているだろうに、何故態々自分よりも強いものに抗うのだろうか。……いや、相手が自分よりも強いと理解しているからこそ反抗しているのだろう。直感的に相手が自分より強いと理解し、そしてそれが認められないからああやって難癖をつけて、戦える場を用意しようとしているのだ。

「ま、ここら辺心配する必要はないよな」

 ユージオはもう十分に大人だし、それにユージオを倒すのであればあのレベルの腕前が10忍集まった所で無駄だ。ユージオは俺が化け物と認めた逸材なのだ、というか場合によっちゃあ整合騎士とも戦ってもらうのだから、負けて貰っちゃあ困る。が、さて、

「そろそろかなぁ……」

 壁にかけてある黒い剣を見る。

 正樹が手紙で紹介したカインが研いだギガスシダーの枝、それから生み出された漆黒の剣。いい加減訓練用の剣ではユージオには合わないし、何より自分もそろそろ本格的に鍛えないと不味い。なんというべきか、首の浦賀チリチリするような、嫌な予感がする。この予感はラフコフの襲撃する前と似たような感じだ。非常に宜しくない感じ。

「出来る事はやっておくか」

 とりあえず今はノートと睨みあう事しかできないので、それに全力で取り組むことにする。




 いい感じに内面的な所が映せてる感じなので、もうそろそろですかねぇ、WEB版から変更のあったあの場面は。
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| 断頭の剣鬼 | 16:02 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

SAOを知ったのは文庫版からなんで、ウェブ版は見たことがないんですよねぇ。
だから、どこがどんな感じに変わったのかわからないので、なんか損している気分なんですよね。

| イーヴル | 2013/07/21 18:20 | URL | ≫ EDIT

ギガスシダーの枝よく手に入れたな。
先代のキコリとか絶対くれないと思ってたのに

変更があった場面ってR指定がついてるかついてないかのところですよね。てんぞーさんはどっちでいくんだろう

| シオウ | 2013/07/21 21:42 | URL | ≫ EDIT

うん、ユージオがいい感じに育ってきたね♪

| Poh | 2013/07/22 03:00 | URL | ≫ EDIT

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| | 2013/12/01 19:12 | |















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