陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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修剣士 ―――スウィート・パイ

推奨BGM:Burlesque


 街の喧噪は嫌いじゃない。なぜならそれはそこにあるという証なのだから。

 手の中に握りしめた銀貨をしっかりと持っている事を認識し、夜の大通りを歩く人の波を縫いながら歩く。夜の大通りにはそれなりに人が多く、昔のアルンの大通りを思い出す。ここを通る時はちょっとくだらないかもしれないが、いわゆる”自分ルール”というもので遊んだりしている。

 つまり誰ともぶつからない事。

 人が多く、通れる場所は狭い。場所によっては人の壁ができている。だが一度も体の動きを止める事無く、死角から死角へ、体を滑り込ませながら歩く。一度それに集中しすぎてサイフを落とした事があるので、それ以来必要な金以外は手に持たない様にしている。手の中に持っている金はそういう理由である。


 周りの人間の間の空間を認識し、把握し、そして流れを予測して、走る。べつに急いでいるわけではない。が、ゆっくり歩いてそのまま抜けられるのは当たり前だ。今度は目隠ししながら挑戦してみようかと思いながら、楽々と人の間の隙間を通って、人の流れに逆らって進む。そうやって人の波を超えた所でようやく目的地へと到着する。この街、セントリアでもかなり有名店で、それなりの行列ができている。正確に言えば有名なのは店の商品であり店自体ではない。その一品で有名になっているタイプの店だ。

 この時間であれば目的の品も出来上がったばかりだ。目論見通り店からは良い匂いがし、そして運のいい事に客の数もまだまばらだ。素早く店の仲へといけばすんなりと目的の品を購入する事が出来る。目的の品を購入でき、満足げに店を後にする。目的の品、

 即ち蜂蜜パイ。

 丸く、さくさくとしたパイの中にははちみつが詰まっている。その生成方法は知らないが、実に良くできた食べ物だと思う。瓶がさくっとしており、そしてその中からとろーりと蜂蜜が溢れ出す。男子女子関係なく学生に人気のある商品だが―――生憎、学院には校則というものが存在している。それによって自由な外出を縛られている学生たちにこれを入手する方法は全くと言っていいほどない。まあ、貴族クラスの学生となれば外から発注したりするのだが、大方はそんなものではない。だから銀貨を店員へと私、出来立ての蜂蜜パイを袋いっぱいに購入する。湯気が見える程に出来立てのそれは、非常にもろく、天命値は低くされていされている。それはお菓子や食べ腿のの場合仕方がない事で、冷めてゆくごとに仲の蜂蜜は固まり、そして天命も一気に削れる。それは非常にもったいない。

 だから購入した袋いっぱいの蜂蜜パイに心意を使ってコーティングする。これで天命の減少は大幅に遅らせられる。この二年で心意を悪戯と生活のおう様にしか使ってない気がするけど―――まあ、正直戦いの使うよりははるかにいいと思う。

 こっちへとやってきたときと同様、今度は人込みに沿う様に人と人の間をすり抜け、学院へと駆け足で戻って行く。袋の中からパイを一つ鳥、それを口に加える。少し熱いが、食べる分には全く問題ない。まだ熱く、そしてさくさくするパイの生地を噛み、そしてその中から溢れ出すはちみつを楽しみながら学院へと戻ってくる。

 ―――北セントリア帝立修剣学院、それがこの学院の正式名称。

 だが正直に言えばクソ名前が長く、激しく言い辛いのでユージオとの間ではただ簡単に学院、という風にしか呼んでいない。というよりも、たいへんの学生がそういう風にしか呼んでいない。まあ、創設者化スポンサーが極度の見栄っ張りなのはどこでもよくある話だ。利用者からすればめんどくさいのは嫌だ、で終わるのに。

 ともあれ、十二人しか存在しない上級修剣士であれ、流石によるに出かける自由などない。上級修剣士といえば学院に十二人しか存在せず、そしてそれはこの学院における学生最強の十二人という称号である。ここから他に上級修剣士を十人倒し、学院代表となる。あとは四帝国統一大会という大会に参加し、最低でも準決勝に勝ち残れば整合騎士になる資格を得る、というかなれる。そうなれば確実にセントラルカセドラルの中へと入れる。まあ、それまではまだあと一年ほど時間がある訳だが。正直な話、一人だけであればセントラルカセドラルへと特攻するのもアリかもしれない。心意をうまく使いこなせば後れを取る事はない……と思いたい。だが目標はユージオと共にアリスを見つける事だ。少しだけ時間のかかる道だが、この学園のレベルは既に見切った。

 学生レベルでは話にならない。いや、先生でさえ相手になるか怪しい。

 それだけの異常性を持っているとしっかり認識しておく。

 ともあれ、修剣士学院の広大な敷地は鉄柵や壁によっておおわれている。普通なら門を通してしか入る事は出来ないだろうが、自分に関してはその制限は通じない。大通りから外れて横道に入り、人のいない場所を見つけ―――一気に飛び越える。そうして着地するのは草地の大地だ。この修剣士を育成する学院の土地の六割は草原と森で出来ている。

 ……が、しかし激しく違和感はある。

 ―――こんなだったろうか?

 手紙の内容と一部、どうしても合わない内容がある。街の場所や、街並み等、少々知っていた情報と噛みあわない。もしかして正樹が日本語に不自由していた可能性もありえなくはないが、前成績の話になった時オーバーキルされた記憶があるので、とりあえずその可能性を否定しておく。

 正樹、そう正樹だ。

 ―――結局セントリアへと来ても、アイツの足取りを見つける事は出来なかった。まるで蒸発したようだった。手紙にあった戒に似た鍛冶師にあっても知らないと答えられ、ベアトリスに似た教師に話しかけてもあった事はないという返事だった。まるで最初からセントリアへと到着した事はなかったかのような反応に大いに驚き、そして戸惑った。

 本当に正樹はセントリアへと到着していたのだろうか……?

 それを答えられる人物はいない。ならば無事だという事を祈って、自分にできる事をするしかない。……そのできる事が激しく少ないのが難点だ。

 そんなこんなを思案している内に敷地内を歩き、上級修剣士専用の寮へと到着する。初等、中等、高等が百人ずつ存在し、彼らのトップに立つ上級修剣士は十二人。その十二人専用に寮が与えられるのだからその待遇と期待は解りやすい。他にも上級修剣士は世話役を与えられたりと、色々と優遇されている。その代わり、課せられている責任も大きいのが面倒だ。

 上級修剣士専用の寮、自分の部屋の窓の下へと到着すると、上へと視線を向ける。自分が使っている部屋はよくユージオとのたまり場に使っているが、その位置は二階だ。窓があいている事を確かめると、片手で袋を持ち、噛んでいたパイを完全に咀嚼する。そして右手でポケットから銅貨を一枚取り出すと、それを部屋の中へと投げ込む。数秒後、呆れ顔のユージオが窓から顔をだすので、何かを口にする前に手の中の袋を上へと投げる。

 ふわり、と袋が一瞬だけユージオの頭を通り過ぎ、ユージオがそれを掴む。

「ナイスキャッチ」

「また跳ね馬亭まで行ってきたね……」

「おいおい、お前も嫌いじゃないだろう? うん? 遠慮しなくていいんだぜ? うん? どうなのかなぁユージオくぅん」

「窓の鍵を閉めるよ」

「この一年でだいぶセメントになったよな、お前」

「そりゃあキリトと一緒にいればねぇ」

 ユージオが苦笑しながら窓から離れる。それを確認しながら足で大地を蹴り、飛び上がる。ただし超人的すぎる身体能力は見せない。壁のでっぱりに手をかけ、一気に体を持ち上げ、そうやって壁を素早く登って行き、

「よ、っと」

 窓の淵に掴まり、体を持ち上げる。一気に部屋に飛び込めば、そこにはユージオの姿しかない。そのユージオは既に袋を開け、その中から蜂蜜パイを取り出して食べている。俺の部屋でゆったりとやっている辺り、大分砕けたというか、俺のいい加減さが移ったようで大変よろしい気がする。

 ともあれ、部屋へと上がりこんでから窓を閉める。本日も誰にバレることもなくシニーキングミッション完了―――やっぱ学生生活はこんな風にスリリングでなければやってられない。

「っと、そういえばロニエとティーゼは?」

 ロニエとティーゼとは世話役の子であり、上級修剣士に一人ずつ与えられるわけだが、ユージオには赤毛の少女のティーゼ、自分には黒毛の少女のロニエが世話をしてくれている。部屋の掃除とかも彼女たちの担当だ。跳ね馬亭へと買い物に出かける前に彼女たちがやってきて、部屋の掃除とかをやっていた気がするのだが―――もう帰ってしまったのだろうか?

「たぶんキリトの想像通りだよ。流石にもう消灯時間前だからね。長居させるわけにはいかないよ」

「あちゃあ、分けられるように大量に買ってきたんだけどなあ」

「見れば解る」

 まあ、仕方がない。今ユージオと食べるだけ食べて、あ待ったのを分けてあげよう。幸い心意で保護したので明日になっても冷えているという事はない。朝のおやつ代わりに食べればそれでいいだろう。ユージオに近づき、袋の中からパイを一つ取り、それを食べる。やはり甘いものはいい、疲れた頭を癒してくれる。あぁ、本当に疲れた。

「なんで試験勉強しなきゃいけないんだよ……」

「そうは言うけどキリト、そこまで頭は悪くないよ? というか頭は良い方じゃない」

 まあ、それなりに学に関しては自信がある。そうでなければ自作でPC組んだりプログラムやったり、海外へ留学を考えたりはしない。というかできない。だからと言って、整合騎士になるのに試験勉強が必要だったとか本当に聞いていない。自分が使う机の方を見れば資料やらノート、羽ペンやらがあちらこちらに散乱している。勉強は苦手ではないが、激しく面倒なので嫌いだ。何せこれが本当に人生で役に立つのか? と深く考えれば間違いなく返答はノー、つまり役には立たない。それはもう解りきっている事なの忍、貴族向けの事を考えて歴史やら礼儀作法やら、そういった事まで細かく教えてくるのだ。

 残りの上級修剣士を倒すのは別にいい。だがちゃんと学があることを試験で証明しなければ、学園代表として選出される事はない。校長が一体どういう人物なのかは見た事がないが、きっと凄い面倒な奴に間違いはあるまい。

「あー、空からギロチンでも降り注いで試験だけをピンポイントで滅ぼさないかなぁ……」

「キリト、君は一体何を言ってるんだ……?」

「流星やら隕石なら見た事があるんだけどなぁ……恐るべし非モテ連中。聖夜は人間を修羅に変える力を持っているなぁ……!」

「だから君は一体何を言ってるんだ」

「たぶん一生解らなくても困らない事」

「あぁ、つまり何時もの事だね。安心した」

「そろそろ俺のポジショニングについてお前とは話し合う必要があると思んだ、俺は」

 そう言ってユージオと互いを見やり、軽く笑いあう。

 ここに来るまでかかった時間は二年。二年なのだ。訓練と入学で一年。そしてそこから上級修剣士になるために一年。入学した時から自分の実力を周りに、そして教師に見せ、自分が絶対強者であることを示し、そして圧倒的である事を証明しつつ上級修剣士へ。自分がこの学院最強であることに疑いようはない―――そしてユージオが自分の技術をほとんど飲み込んだ化け物である事も忘れない。自分とユージオが周りに対して圧倒的であることを証明し、心を砕きながら進んできた―――誰も張り合う事が出来なくなるように。

 まあ、そんな計画したように行くわけにはいかず、記憶がない事になっている素性の解らない俺を嫌うやつがいれば、元開拓農民だったユージオを嫌う貴族なんて腐るほどいる。いや、むしろ嫌ってない方が少ない。俺としては珍しく敵を作るだけのミスとなってしまったが、まあ、それもいい。

 校則と禁忌目録。これを誰も破る事は出来ない。唯一の例外が俺であり、正樹であり、そしてアリスだった。ユージオは俺が自分の意志でこのルールをあっさりと乗り越えられる事を知っている。そして―――それを悔しがっているのも知っている。

「もうそろそろ消灯時間……かな?」

 ユージオがそう言ったとたん、空から鐘の音が聞こえる。これで消灯時間になった事が解る。パナイスタイミングとユージオの事を褒め、手を叩きあってからユージオが部屋を出る。ユージオは自分の部屋へと戻ったらこのまま寝るのだろうが……自分はあと少しだけ、勉強する事にしよう。最うぃあ、眠気と疲れは尾を引かない体なのだ。有効活用しなくては罰が当たる。

 軽く体を捻ったり伸ばしたりし、身体の調子を確かめてからユージオが去った扉を見る。

「……さて、ここで歪むなよ、というのは傲慢なのか、もしくは見下しているのはどちらあんだろうなぁ……」

 そんなくだらないことを呟きながら椅子へと向かう。

 電気を消し、暗くなった部屋で心意を使ってものを見る。

 ……さて、今夜もまた長くなりそうだ。




 CCCと比べると文章が超真面目!
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| 断頭の剣鬼 | 14:17 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

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| | 2013/07/07 21:15 | |

ロニエとティーゼがキリトの帰りを待ってないのはここが大欲界天狗道だからですかね。アリシゼーション編主要人物がどう変わってるのかも興味あります

| シオウ | 2013/07/07 21:19 | URL | ≫ EDIT

心意のちからってすげー!
戦闘強化はあたりまえ。
パイの保温から、理想の嫁まで、何でもできるんだと。

(某携帯獣風な心意の説明)

| 断章の接合者 | 2013/07/09 18:35 | URL | ≫ EDIT















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