陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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CCC-32

 仕方がなく迷宮から再び旧校舎へと戻ってくる。体を軽くストレッチし、桜の樹へと入ろうと振り返るが、

『す、ストップです先輩! 流石にまだ組み換え中です! もう少しゆっくりと時間を潰してください! 流石に無謀すぎです……』

 と言われ、動きを止める。組み換え中であればそのまま向こう側へとショートカットできないものかと思ったが、流石に無謀だったらしい。入れるようになればどうせ桜か生徒会室の誰かがアナウンスしてくれるはずだ。それまでは純粋にどっかで時間を潰す事にしよう。

『何故最初からそうしないのよあんたは……』


 凛の呆れた声が聞こえるが、とりあえずそれは無視とする。ストレッチを終わらせて適度に体を温めたが、特にする事はない。既に探索の為の準備を終えてしまったのが仇となったようだ。手持ちにはサクラメントがないから買い物で時間を潰す事は出来ない。ウィンドウショッピングをしようとすれば言峰の”温めますか”コールがウザすぎてまともにできもしない。かといって生徒会室は忙しいだろうし、そしてジナコとカルナも先ほど突撃したばかりだ。さっきの今ので再び邪魔すれば迷惑してしまうだろう。

 実に困ったが、さて。

「ん? 好きにすればいいんじゃないかな? 聖杯戦争においてコミュニケーションは最強の平気だぞ。……まあ、ムーンセルは相性によるサーヴァントの選出を行から裏切る確率が試合形式と合わさってほぼ0パーセントなんだがな。まあ、同じ脱出を図る仲間、少しでもコミュニケーションを取っておくべきではないかな?」

 なるほど。シャヘルのお墨付きは貰った。ならば、ちょっと交流を深めるとしよう。





「俺の所へ来たのか。あえて言わせてもらおう―――馬鹿め、と」

 話に来たのに開幕から暴言を吐くのはショタっこサーヴァント、ハンス・C・アンデルセン。殺生院キアラのサーヴァントだ。基本的にサーヴァントは絶頂期の姿で召喚されるはずなのに、何故アンデルセンは子供の姿なのか? という問いに対して子供の頃が一番想像力があったからだ、と自分さえも見下し、死にそうな程に絶望できると断言してしまう程の皮肉家であり批評家。アンデルセンというサーヴァントと話す場合はかなりの神経が必要されるが―――自分はこのサーヴァントを結構面白いと思っている。というより何事も隠さず素直にズバズバ言う辺り結構好感が持てる感じ。キアラはそんなアンデルセンの行動を叱るような行動を取るが、これはこれで一つの形だと思う。

「ほう、そして批評家を批評するとはずいぶんと面白い事をするな岸波白野よ。あぁ、貴様がここへ来ている理由は見れば解る。どうせ交流が少ないからこの際少しでも多く知っておこうと思ったのだろう? まあ、その行動自体は理解できない事ではない。何せ人間という生き物は本質的になるべく多くの選択肢を残そうとするからだ。だから再び言わせてもらおう―――馬鹿め、と」

 そう言うアンデルセンの表情は実に嫌そうだが、それでも声が弾んでいるのは解りやすい。この男、中身がかなりひねくれているのは一度話し合えば解りやすい事だ。

「アンデルセン! 折角訪ねてくださったというのにその言い方は……!」

「あぁ、そうだな。そして俺はそんな馬鹿の手伝いをしろとキアラに命令されている。言っておくが俺もそこまで便利なサーヴァントではないぞ? ステータスは件並死んでいるし、スキルだって攻撃的なものは一切ない。俺に話しかけたのであればそれなりの毒を吐かせるという事だ。さ、どうする?」

 キアラがすみません、と謝ってくるが別に謝られる程の事ではない。シャヘルはこっちへ歩き始めた瞬間霊体化して姿を消してしまったが、アンデルセンの批評を期待して話しかけているという点も少なからずはある。キアラが真名を出して事によって得たアンデルセンのマトリクス―――そこには人間観察のスキルと、批評家と説明されている。ならばその手腕を見せてもらおうではないか。

「ほほう 俺に挑戦を売ってくるのか。これは面白い。いいだろう。好きに言ってみろ」

 アンデルセンの口が笑みに歪んでいるのが見える。ここでキアラ、やマスターを出しても面白くはない……そう、サーヴァント共でここは攻めてみよう。ではまず第一に円卓の騎士ガウェインをどう見る?

「忠犬だな」

 いきなりの評価だった。

「忠犬以外なんと批する? アレは典型的な英雄タイプのサーヴァントだな―――個人的には実につまらんタイプだ。人生がある、冒険がある、仲間がある、そして終わりがある。サー・ガウェインの人生は一つの壮大な物語でありながら典型的な英雄譚だ―――つまり悲劇による終わりがあった。しかしムーンセルに召喚され、聖杯戦争に参加する事によってその願いは叶えられている。即ち主へと完全に仕える事だ。運が良いのと同時に運が悪くもある。ガウェインは最高の主を手に入れたが為に己の役目を本当の意味で全うする事は出来ない。結局悲劇で終わる英雄は次の生でも悲劇を味あわせられるという事だろうな。さて、その結末に納得できるかどうかは、あの少年王がこの先どういう風に変化する事にかかっているだろうが……まあ、愉快な変化を迎えているアレはそう悪くはない。アレならば終わりも笑顔で迎えられるだろう」

 どうだ、と言わんばかりにアンデルセンがドヤ顔を向けてくる。それが少しムカついたので今度は違う方向からブローをかましてみる。

「エリザベート・バートーリー」

 その名を聞いて、アンデルセンはハッ、と吐き捨てる様な笑みを浮かべる。何というか、非常に仕方がないなお前は、なんという感じの隠されて……ない笑いだった。

「一言でこいつを評するのであれば―――愚か者だ」

 アンデルセンはそれだけは絶対だと断言した。

「いいか? 奴は自分以外の存在全てを見下している。それが彼女の価値観であり、塗り固められた認識だからだ。貴族の少女として生まれ育ったエリザベート・バートリーにとって自分の親族を抜いたほとんどの人間がただの家畜程度しかない。だからこそ彼女は彼女にとって有用な美女を”子リス”と呼んで餌にしか考えず、そして男を無用の家畜として”子ブタ”と呼んでいる。だがそれは同時に彼女は家畜相手に胸を張っているだけという事だ。実に愚かしくて笑い声が出るな! 誇るという事は対等な相手に対して行う行動だが、彼女にとってマスターを含めたすべてが餌であり家畜だ! 彼女は家畜相手にしか威張る事の出来ないただの小娘だ」

 その小娘相手に凄い苦戦したのがここにいるマスターと、そして霊体化中のサーヴァントのコンビです。

 ……自信ありげなアンデルセンを見ているとおそらく、というか大体が的中しているのだろう。しかし実に恐ろしいスキルだ、この人間観察というものは。アンデルセン程のランクの人間観察スキルを所持していればその人物の過去さえも覗きこめるらしい。そしてそこから独自の判断を経てなされるのが、アンデルセンの”批評”だ。

「なんだ? 満足か?」

 いや、もちろんこれで満足するわけがなかろう。此方も今の二回でようやくテンションが上がってきたところだ。さあ、勝負だアンデルセン、批評の貯蔵十分か。

「そう言われても貴様が知っているサーヴァントの数には限界があるがな」

 そりゃあそうだ。

 ……まあ、カルナはジナコのサーヴァントであり、一応味方だ。ガウェインはほぼ知っているからセーフだったとして、流石にカルナの事を聞くのはマズイだろう。だからここはもっと別の生物の批評を頼もう。

「アルクェイド」

「―――ほう」

 今度アンデルセンが浮かべたのは興味深いという表情だった。さて、と前置きを置いてからアンデルセンは話し出す。

「アルクェイド・ブリュンスタッド。このサーヴァントはお前のサーヴァント程ではないがかなり複雑な生き物だ。何せこいつは英霊でも神霊でもなく、精霊種に最も近い存在というか、そのものだからだ。地球という精霊そのものがアルクェイド・ブリュンスタッドの本性にして正体。器にして目覚めるべきではない存在だ。しかし、その存在は過去の事件により大きく崩壊されている。本来は殺す事がほぼ不可能な生物ではあったが、どっかの世界の何らかの事件で殺されているためにバグが発生し、大きく性格が―――つまり現在の形である”ファニーヴァンプ”を作り出す事となった。それからのアルクェイドを説明する必要はあるまい? 主を惑わし、狂わせ、そして破滅させる毒婦。それこそが本来の形だ」

 だが、そうだな、とアンデルセンは一旦完結させた自分の批評の蛇足として、言葉を続ける。

「あえて何か言うとすれば―――猫はタダでは懐かない。ふむ、我ながら中々下手な事を言った、死にたくなるなこれは!」

 なにやらアンデルセンがなにやら勝手にダウナー状態に入った。小説家にはよくある話なので軽くスルーしておいて、軽くだがキアラへと視線を向ける。彼女はこれまで黙っていたが、何やら好機の視線をアンデルセンへと向ける。

「あらあら、中々楽しそうに話しているではありませんか」

「目が腐ったかキアラ? 俺が楽しんでいる? きさまがやれと言ったからやっているだけに過ぎん! 批評等元々暇な人間が暇なときに思い返すためにあるようなものだ。そんなものを時間を割いてまで聞く必要はない」

「そうですか? しかし空いた時間だからこそここへ着たのではないでしょうか?」

「解らないかキアラ? ―――こいつらに空いた時間など初めからない。故にここへ寄るのは完全な寄り道でしかない。……まあいい。それよりもどうした、もう終わりか?」

 アンデルセンとキアラは何か不思議な感じがする。確実に言い争っているのだが―――何か、訴えかける中身がない様に感じる。……そう、二人のスタンスは既に確立されて、固定されている。だから言葉は表面上の確認でしかない。そんな感じがする。……それはともあれ、

 もちろん終わりではない。とっておきのフィナーレを用意してある。

「ほう、予想はつくが言ってみろ」

「シャヘル」

「―――ハッ!」

 名を出した瞬間、アンデルセンは意地悪な笑みを浮かべ視線を横の虚空へと向ける。

「この俺に態々サーヴァントの批評を頼むとは実に物好きなヤツめ! いいぞ、出してみろ! ケツの穴まで見聞してやるぞ」

「―――ふぅ……」

 そう言いながらも出てきたのはシャヘルだが―――その雰囲気がいまいち、何時もとは違った。

 言葉として表現するの枝れば、そう、覇気に溢れていた。

 レベルも、スキルも、全て先ほど一緒に迷宮へと潜っていたシャヘルと一切変わりがないだろう。だがその見に纏う雰囲気が剣呑なものだった。それこそ第三層でエリザベートと凛と戦った時以上に剣呑な雰囲気をまき散らしながら現れた。腕を組んで登場した彼女は目を閉じた状態で自分の横に立っている―――それは断固として前にいる女を、キアラを見ない為なのだろう。流石に失礼ではないのかと思い、口を開こうとした瞬間、

「止めておけ」

 自分を制したのはシャヘルではなくアンデルセンだった。そこで再びさて、と前置きを置いてから喋りはじめる。

「俺ではお前を正しく評価する事は出来ないだろう。何せ俺とお前とではスタンスが違うし、理想も考えも違う。だが、それでも確実に言えることは一つある。―――俺がお前に下す評価は唯一にして絶対、狂人だ」

 それをアンデルセンは断定した。

「Amantes Amentesとはよく言ったものだ。そうだ、シャヘルという存在は狂っている。血に狂っている、怒りに狂っている、絶望に狂っている、希望に狂っている、明日に、今日に、過去に狂っている。そして何よりも、誰よりも深い情愛に狂っている。この”男”と並び立つほどに人類という種を愛している存在もまた稀だろう。このサーヴァントは無条件で人間を愛し、そしてその可能性を限りなく信じている。そして、だからこそ、その先に期待している。決して相容れる事の無い存在以外であれば敵でさえ、たとえ罵り、殺し合おうとおもその存在を愛するに違いない。岸波白野、貴様がサーヴァントにしているのはそういう存在だ。覚えておけ」

 そして、とアンデルセンはキアラへと向けて言葉を付け加える。

「余ほどお前の事が嫌いらしいなキアラ! そこの汎用救世主型主人公に感謝しておけ―――ソイツがいなきゃ今すぐにでも殺す気だぞこいつは」

 ―――シャヘル……?

「出番は終わったな」

 それだけを言うとシャヘルは姿を消して、消えた。途端、空間に満ちていた圧倒的な気配と覇気が消え、近くでNPCが酸素を求める声がしている。そうか、自分やキアラは慣れているものだが、サーヴァントの本気のプレッシャーとはそう言う殺人的領域に立つものであった。キアラの何が一体気に入らないのかは解らないが、サーヴァントの不始末はマスターの不始末だ。とりあえず済まない、とキアラへと謝ろうとして、キアラが頭を横へ振る。

「その言葉は必要ありません。いえ―――足りない、というのが正しい事でしょう。貴女様のサーヴァントが何故私を一方的に嫌うか、それは私の本質を見抜いているからでしょう。もし本当に”神話通り”の存在であれば、確かに許容できぬことでしょう、ですので」

 と言った時、通信がピピピ、と音を鳴らす。おそらく迷宮の再構築、その完了の知らせだろう。

「”何故”を、それを理解しても尚頭を下げる必要がある、そう思えば頭を下げてください。それまではここでいつも通りお待ちしております故、武運を祈っております」

 話はこれまでだ、と言われた様なものだ。アンデルセンに感謝の言葉を返し、そして背中を向けて去って行く。シャヘルの態度は気になるものだが、迷宮へと潜ればいつも通りの姿へと戻ってしまうだろう。追及はマイルームへと戻った時にするとして、

 今はあのノーパン娘の目を覚ますのが先決だ。




 アンデルセンとの会話は毎回楽しかったなぁ……。
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| 断頭の剣鬼 | 20:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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