陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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プロローグ ―――ウィナー・アンド・ルーザー

推奨BGM:Krieg


「ま、結局どう足掻いてもこうなるよな」

 舞台の上に立っているのは自分を含めて三人しかしない。即ち自分と、キリト、そして審判。予想通りというべきなのか、もしくは予定調和というべきなのか、最速でブロックを制覇したのはキリトで、それに追いすがる様に優勝したのは自分だった。キリトも、僕もそれぞれのブロックで優勝した。それによって僕たちがこの街でコネを得て、半年後にはセントリアへと努力と実力次第では行ける事が確定している。いや、キリトが言うには確実に行ける”流れ”だって言っている。これが確定したシナリオだとしたら行けない理由が存在しないと、キリトはそう言っていた。その言葉の意味は解らないが、だけどこの状況がどういう意味かは解る。つまりキリト対僕。


「ま、こうなる事以外ありえないんだけど……心待ちにしてなかった、と言えば嘘になるな」

 そうやって笑みを浮かべるキリトは何時も通りの姿だ。あの演武以外でキリトは心意という技術を使ってはいない。そして使う事はないと宣言している。今まで煮え湯を飲まされてきたキリトに、唯一勝利するチャンスだ。……ある意味で、いや、この舞台で確実に、一番重要な戦いがここだ。今の自分の実力が、本気で戦った時の実力が、どれだけキリトへと届くのか、それを確かめるためのいい―――いや、そんな弱気では駄目だ。勝つのだ。絶対に勝利する。それ位の気概で挑まないと負ける。

「お、やる気だな」

 こっちの気持ちを知ってか知らないでか、キリトはニヤニヤと笑みを向けてくる。本当に気楽そうに見えるが、

「うん―――いい加減キリトから一勝ぐらいは奪いたいからね」

「お?」

 意志を言葉に乗せて伝える。それを聞いたキリトはそっか、と呟いてから、剣をいつも通りの構えで構える。

「そう言えばユージオ負け続きで俺に一勝もできてないもんな」

 事実なだけに強烈な言葉のボディブローとして響く。痛い所を突かれた。確かに今まで勝利した事はないが、今はチャンスであり、そして、

「ここで倒せば全く問題なし!」

 剣を構える。キリトが構えている者も、自分が構えている者も、全く同じく真剣だ。相手に当たれば切れる。だから相手の事を考えて刃を振るわなきゃいけないのが常だが―――。

「―――じゃあ、油断とか手心とか慢心とか、そういうの一切期待するなよ?」

 急に、キリトが凶悪な敵として認識できる。強烈な敵意と殺意をキリトが此方へと向けてきている。剣を構えていた体が反射的にそれから逃れようとして動くが、それを意志の力で無理やり抑え込む。手加減というレベルではない。もしキリトがこんな調子で稽古をつけていたのであれば、一生剣を握る事が出来なかったのではなかろうか。だが……それも今なら耐えられる。

「っ……!」

 すぐそばで審判が開始の言葉を叫ぶのが聞こえる。そしてそれが聞こえるのと同時に前へと踏み出す。

「ぉぉおお―――!!」

 恐怖を弾き飛ばす様に叫び声を上げながら、キリトへと向かって一直線で突き進む。素早く、一瞬で、隙を突いて、一撃で終わらせる。長期戦に持ち込まれれば絶対に勝てない。それは予感ではなく、経験からの答えだ。音は他には聞こえない。聞こうとしない。聞こえるのは自分の息遣いと、鉄の音と、そしてキリトの声だけだ。

「甘い」

 キリトも前へと踏み込んでくる。その体勢は此方が構えた刃よりもはるかに低く、くぐるような体勢だ。握った刃を逆側の方を超えるように引き戻して溜めを作り、踏み込みと同時に低空から斬撃を繰り出してくる。完全に攻撃をくぐる様に迫ってきたキリトの動きは意表をついてきている―――いや、今までが今までだ。キリトはこちらの面倒を見ていただけで、此方から素人はしていない。

「教えられていることと、使ってくる事は別……!」

 こんな状況で出来る事と言えば一つ、軽く汗をかきながら跳ぶ事だ。前転する様に跳躍し、キリトの一撃を飛び越えて回避する。剣を手で握らず、口元へと投げて咥えてキャッチし、その瞬間に両手で地面に手をついて転がる。

 その瞬間、悪寒を感じる。

「っ!」

 背後を確認せずに横へと転がりながら剣を握れば、先ほどまで立っていた場所をキリトが剣を振り下ろしているのが見えた。いや、待て、

「容赦なさすぎでしょ!?」

「避けられると信じてるから! 大丈夫、先っちょ、先っちょぐらいなら大丈夫!」

 この大会の終わりをを生きて迎える事が出来たら、絶対にキリトの顔面にグーパンをかましてやる。そんな事を新たに誓いながら、ローリングから何とか体勢を復帰させる。だがやはり、というか再び、キリトは目前まで迫っている。まるでことごとく此方の動きを把握しているような、此方の動きを予測しているような、そんな鋭さと精確さ、圧倒的優位性を見せていた。

「呆けてていいのか?」

 キリトの剣から斬撃が振るわれる。復帰直後の体は重く、思う様に回避行動がとれない。故に両手で柄を握り、キリトの剣と刃をぶつけ合う。

 ―――その刃は予想していたよりもはるかに軽かった。

「……え?」

「以外か?」

 力を込めてキリトの剣を弾き飛ばせばキリトとの間に距離が開く。軽くステップしながら着地したキリトを見る。剣を払う様に左右へと振ってからぶらり、とだらしなく下げるんはキリトの何時もの構えだが、それはまるで手首から衝撃を逃がすような動きにも見えた。それよりも気になるのはキリトの斬撃の軽さだが、

「驚く事でもないぞ。心意さえなければ普通の人間なんだ。斬られたら痛いし、突き刺されたら死んでしまう事だってある。体の形はお前と違いはないんだよ、ユージオ」

 理解した。今まで戦ってきた、稽古をしてきたキリトは心意に頼って体を強化していたのだ。だからこそ軽いと感じたのだ。木刀のキリト相手に青薔薇の剣を叩き込んでもまるで歯ごたえがなかったキリトだが―――その時の姿と比べて今の姿は何とも弱々しい。

「なによりさ、お前が苦労した時間は裏切らないって事だよ」

 その言葉に首をかしげる。

「これ以上は恥ずかしいからもう言わないけどなっ!」

「うわっ!」

 素早くキリトが踏み込んでくる。その速さは確実に人並みのレベルだ。だがその動きが異常なのだ。技術という技術が圧縮されており、線の移動ではなく、ほぼ点から点への移動に近い。いや、確実にそこには走る、疾走、足による動きが混じっているはずなのに、正しくそれを認識する事が出来ない。これこそが熟練した技巧、ひたすら修練を続けてきたキリトの技術の一つの形だという事を認識させられる。

「よっ、と」

 まるで軽い作業を行う様に懐に入り込んでキリトは刃を振るってくる。だがその刃の軽さは一度受け止めた事で理解している。改めて力を込めてキリトの刃を受け止めようとし―――

「なっ!?」

「だから甘いって」

 ―――刃がすり抜ける様に回避し、迫ってくる。突然の事に驚くが、半年間の訓練による経験が反射的に体を横へ飛ばす。ギリギリ服を掠る様に一撃を回避する事に成功する。

「さ、流石にそれは卑怯なんじゃないかなっ!」

「おいおい、此方とら二年間毎日化け物狩って生活してたんだぞ? 慣れればできるできる」

「いい訳になってない……!」

 戦闘で、本気此方に敵意と殺気をぶつけてきているというのに、それでもひょうきんなキリトの姿hなんら変わってはいない。これがキリトなんだろう。どんな状況でも、どんな状態でも絶対に自分を変えない、変わらない。そうやって常に自分らしくある事が、キリトであるという事なのだろう。

「ズルイなあ……」

 キリトへと攻め込む。踏み込みと同時に繰り出す斬撃をキリトは笑みを浮かべたままスウェーする事で回避し、スウェーから体を更に半回転させ、スイングからのバックハンドで刃を叩きつけてくる。潜る事でその一撃を避けながら、本気の一撃をキリトへと叩き込む。

「っぁ!」

「ほ、っと」

 剣と剣がぶつかり合って受ける感触は非常に軽いものだった。

「”この”体は本当に弱いよ。ユージオみたいに何年間もずっと木こりを続けたわけじゃないからさ、そこまで”筋力”がついているわけっじゃないけど、やりようはいくつかある」

「ねえ、キリトって凄い負けず嫌いでしょ」

「知ってたろ? ずっと昔から」

 きぃん、と音を鳴らして剣が弾き飛ばされる。空中で回転しながら軌跡を描き、少し離れた位置で剣は音を立てながら落ちる。何度か跳ねてから動きを止めた瞬間、審判の口から勝者の宣言がなされる。その瞬間、この大会最強の剣士がキリトであることに決まった。悔しさはあるが、同時に納得してしまう。

 つまり目指そうとしているのはこの領域であり、自分はまだその領域に足をかけてさえいない。

 心意さえなければ勝ち目があると思うのさえおこがましい。

 そういう次元にキリトは立っているのだ。嫌になる以上に、更に渇望が燃え上がる気がする。そう、何時だって僕たちは対等だった。今はキリトが先に行っているだけで―――自分もすぐにそこに追いつく。その確信がある。何故ならば、不思議と不可能とは絶対に感じないからだ。この根拠のない自信はやはり、この大会、一度も躓くこともなくここまで勝ち抜いてきた事にあるのだろうか? それとも、また別の要因なのだろうか?

 それろ理解する事はまだできないが、キリトは剣をしまうと、此方の背中を強く叩いてくる。

「ま、俺が最強であることはもうずっと前に証明されているんだけど? 俺弱いユージオ君はそこそこ健闘したんじゃないかなぁ!」

「煽ってるなら今すぐ二ラウンド目突入してもいいんだけど……?」

「冗談だよ冗談」

 笑みを見せるキリトは周りの人目を気にすることなく此方の方を組んでくる。

「これで一歩。最初の一歩だ。ここで全力で実力を証明して、半年で央都へ行くぞ。正樹に何があったか調べなきゃいけないし、アリスも探さなきゃいけない。やる事は山積みだけど―――」

「うん、解ってる」

 不思議とキリトと一緒であればどうとでもなると思う。昔からそうだった。

「……さて、これが俺の思った通りの事だったらたぶんアリスを見つけるまではどんな問題があっても確実に成功するんだけど、問題は誰が企画者って事だよなぁ……」

「キリト?」

 キリトがふいに漏らした言葉に不穏な気配を感じる。アリスを問題なく見つけると言ったが、それは一体―――。

「うん? 今は気にするな。どうせ説明しても解らないし俺も確証がある訳じゃない。だけど”匂わせた”ということはつまりそういうヒントだったんだろ。まあ、何をしたって掌の上だったら精々利用できるところまではしようね、って話だよ」

「全く意味が解らない……けど、信じていいって事だよね?」

「あぁ」

 もちろんだ、というキリトに僕は自身を持ってついて行く。




 ―――全てはトントン拍子の進んで行く。

 半年後にはザッカリアからセントリアへ、そして剣士に、騎士になる為に学園へと入学。キリトが呟いたように最速、そして最低限の寄り道で、全く問題を起こさずにそれは進んで行った。

 ただ、央都セントリアへと到着して唯一の問題はマサキが見つからなかった事だけだ。

 アリスの情報もない。

 入学して一年、それは本当に平和な時間だった。

 そして二年目、ようやく僕らの長いプロローグは終わりを迎え始めた。




 いよいよ学園編。と、まあ、一年目は完全にキンクリで(イベントも特にありませんし)。

 学園編からカセドラル編と、UW編も段々と激動の時代へと入ってきますね。ユージオの言うとおりいよいよプロローグの終わりって感じです。いや、まあ、ゲク炎もプロローグの範疇ですがね。
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| 断頭の剣鬼 | 18:16 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

キリトが奴の手口になれてますね。
肝心のニートがどこにいるか知らんが、たぶん波旬との最終決戦まではいつも通り裏で暗躍するんだろうな
学園編楽しみにしてます。

| シオウ | 2013/06/30 19:05 | URL | ≫ EDIT

実は本編読まずにこちらを読ませていただいてます。だって本編読むと違和感を感じ(ry
学園編をワクワクしながら待ってます。

| | 2013/06/30 19:18 | URL |

学園編…ついにあいつらの、お出ましか!?

楽しみですニャ♪

| Poh | 2013/07/02 17:43 | URL | ≫ EDIT















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