陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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プロローグ ―――ディシジョン

推奨BGM:特になし


 ―――怖い。

 サイドステップで鉄色の剣閃を避ける。その動きに淀みはない。何故なら此方へと迫ってくる剣閃は遅いからだ。いや、一般的視点からしてこの件戦は十分に早いレベルに入る。だがこの半年間、これよりも素早く、鋭く、容赦がなく、それでいて完成されている剣閃を見ていた。何度男受け止め、当てられ、そして見てきたのだ。だから自分に迫ってくるこの一撃は、その目にも止まらない一撃と比べれば止まっている様にさえ感じる。これで二回戦目。まだ大会は始まりを告げたばかりだが、もしこれが敵のレベルだとすれば、改めてキリトの強さの異常性が浮き彫りなる。

 だがそれは正直どうでもいい。


 キリトがおかしいのは最初から分かっていた事だ。キリトが何かを隠しているのは最初から分かってた事だ。だからそれ自体はいいのだ。

 問題は、自分の事だ。剣を、真剣を握って振るう事がここまで怖いとは思いもしなかった。

 一回戦目は良かった。何度か剣を打ち合わせれば相手が下手だったこともあって剣を弾き飛ばす事が出来たから。相手の動きを見れば剣に不慣れ化銅貨ぐらいすぐにわかる。だから、一回戦は良かった。だが二回戦は違う。真剣に此方を倒そうとする、剣の修練を積んだ者が相手なのだ。明確に敵意を持って襲い掛かってくる。実力は―――自分の方が上だと思っている。模わなきゃやってられない。

 得物を握るのは、恐怖だ。

 なにせ握っている武器は真剣で、刃がついている。これを相手へと叩き込めば実際に殺す事が出来る。何が理由で刃の潰れてない剣ではなく真剣を使っているのかはわからないが、目の前の相手は先ほどの戦いとは違う、到底手加減で勝負できる相手ではない。手心を加えればその瞬間噛みつかれ、負けてしまう。チラっと、先ほど見たキリトの戦いを思い出す。

 完璧すぎる程の勝利だった。

 敵が接近した明るくスウェーして回避し、そこから素早い一撃で手を浅く切り裂く。得物を握る力だけを奪い、治療可能な範囲で全てを終わらす。剣が握れないので即座にキリトの勝利。敵を最小限のダメージで倒し、最速で試合を終わらせている。良くも悪くも、キリトはこの大会における注目を完全に集めていた。悪く言えばッ見栄えが悪い。が、間違いなく最強だった。その実力の差は他の誰と比べるまでもない。他の試合が数十秒、長くて数分続く所、キリトの試合だけは三秒ほどで終了している。常軌を逸脱した技巧には誰も声を出せない。

 だからこそ、尻込みする事は出来ない。

 自分は、キリトと対等にならなくてはならない。

 友人として、共にアリスを助け出す仲間として、最低でもキリトと同じ領域に立たなくてはならない。だから、真剣を握っているという事を今は一旦忘れ―――目の前にいる敵を見据える。姿はどうでもいい。問題はこれが敵であり、殺してはいけないという事だ。

 ―――キリトは言っていた。

 生かして倒すのが一番難しいのだと。

 なるほど、とその言葉には納得せざるを得ない。こうやってキリト以外と戦う事になって初めてその意味が解る。キリトと戦う時は全力で青薔薇の剣を振るえばいいのだ。キリトと自分の間には絶対的な差があって、それでキリトは全力を受け止められるから。こっちは一切の気遣いをする必要はなかった。だから、本当に楽だった。だが今は違う。全力で戦えば相手を殺してしまう可能性がある。

 それを可能性でも考慮すれば自然と体は力を緩めてしまう。

 禁忌目録の教えは絶対だ。これはどう足掻いても破れない。だから全力で剣を振るう事は出来ず、全力で戦えない。

 だけど、それでも―――まだ自分の方が強い、と自惚れたい。

 踏み込みからの斬撃を剣で受けない。キリトから習った事の一つは”必要時以外は接触を避ける”事だ。どんな武器にも耐久力が―――天命が存在している。青薔薇の剣は事実上破壊不可能だから良いとして、普通の得物を使う分には損耗を避ける為に武器同士をぶつけてはいけない。何より相手の方が筋力が高かった場合、剣と剣をぶつければ手がしびれてしまう。

 だから相手が攻撃してきたとき、斬撃と軌跡を合わせ―――体をつかっちょけながら、軌跡から自分の握る剣を外す。その動きに相手は驚く。習った事その二、型が上手いやつほど予想外の動きには弱い所がある、奇を狙いすぎるのは良くないが、適度に相手を驚かすのは有効。

 衝突するはずだったと思われる剣は空振り、力を込めていた斬撃なだけに相手は大きくよろめく。その瞬間に刃を引き戻し、相手の首に当てる。

「ふぅ―――僕の勝ちです」

 息を吐きながら勝利宣言をする。悔しそうに相手が剣をおろし、此方の勝利が確定する。礼儀として剣を鞘にしまい、頭を下げてから控室の方へと歩いて戻って行く。教わった事を実践しているだけなのに、心臓は驚くほどにバクバク音を鳴らしている。やはりこの緊張感は慣れない。

 罵倒されまくったりしてある程度精神修行の真似事もされたが……こうやって多くの人間に囲まれて、自分の剣技を披露する事なんてなかった。

 やっぱり、ルーリッドとは違うなあ……。

 改めて自分の今の状況を噛みしめながら控室へと戻ってくる。

 大きく変わった。変わらざるを得なかった。寂しさを感じるかどうかを問われるとすれば―――確実に寂しいとは感じる。だが決して後悔はない。

 後悔だけは絶対にない。それだけは断言できる。キリトがいなければ自分は確実に腐っていた。あの村で、永遠に木を切って過ごして、それで人生を終えていた。たぶんアリスの事さえ何時か忘れて、それでいい人生だったとか、そんな事を言っていたに違いない。

 そんな人生―――。

「よっ」

「ひぃやぁっ!?」

 控室へと戻ってきたとき、唐突に首の裏に冷たさを感じる。体を震わせながら勢いよく振り向くと、何故かそこには黒い服装の相棒の姿が、キリトの姿があった。というか少し待て、

「こっちは……!」

「しー! しー!」

 キリトがこっちの口を塞いで、自分の口元に指を持ってきて、静かにする様に、とジェスチャーしてくる。とりあえずまた何かやらかしたな、という予感と共に頭を振って頷くと、キリトが片手で何かを持ち上げてくる。

「ほら、飲めよ」

 それは水筒だった。中身はたぶんシラリー水。それを此方に渡してくる。やはりというべきか、キリトの顔には一滴も汗が流れていない。此方は緊張で汗をかきっぱなしというのに、凄く卑怯だ。というか、今まで再開してから、キリトが汗をかくところを一回も目撃していない気がする。相変わらずの人外っぷりが羨ましく思えてしょうがない。

「で、こっちへどうやってきたんだよ」

 声を低くしてキリトへと問い詰める。答える様にキリトはポケットに手を伸ばすと、何枚から銀貨を取り出してきた。

「余の中金だよな……」

「うん。とりあえず見なかった事にするよ」

 キリトの破天荒な行動は今更だが、

「こっちへ何しに……?」

「弟子の様子を見に来ることの何が悪い」

 胸を張って偉そうなキリトの腹を突っついて、水筒を受け取る。線を抜いて、そして喉に流し込むシラリー水の味は美味しい。緊張と汗で抜けて行った活力が再び体に漲るような感じだ。

「ま、その様子見ている分には大丈夫そうだな。こっちにはそう長くはいられないんでそんじゃ」

 此方に水筒を渡したキリトは現れた時と同様、直ぐに消えてしまった。消えて行った方向を眺めながら、軽く頭を掻く。やはり、というか確実忍キリトには心配されているのだろう。キリトの立場からすれば当たり前の話だが、自分はそれだけ頼りないのだろうか?

「……いや、頼りないからそうなんだろう」

 できる事なら並び立ちたい―――が、今はそれは不可能。だから甘んじてこの扱いは受け入れようとしよう。だが何時かは絶対にキリトと同じレベルへと並び立たなくてはならない。それは過大ではなくて、前提条件なのだ。

 アリス。

 アリスを助ける。

 あの洞窟で戦ったゴブリンと渡り合えるのが整合騎士なのだ。アレに単体で勝利できるようにならなければ、どうあってもアリスを助け出しにはいけない。あぁ、だからこそ強く、もっと強く、更に強くならなくてはならない。

「―――ユージオ選手、試合の方が―――」

 舞台の方から名前を呼ばれる。再び自分の順番が巡って来たらしい。勝ち上がれば勝ち上がるほど選手の数は少なくなるのだ、ならば順番も早く巡ってくるというモノだろう。軽く体を動かしつつ、鞘から剣を抜いて舞台の上に立つ。相手は既に部隊の中央に立って此方の事を待っている。少しだけ早足で舞台に立ち、相手と相対する。

 まずは一歩。確実な一歩。

 キリトと自分の間の差は明確で絶望的だが―――埋められない差ではないと思っている。

 試合開始の声が響く―――どうでもいい。

 相手が踏み込んでくる―――遅い。

 鉄色の剣閃が襲い掛かってくる―――温い。

 ”型”だ。この動きは型にはまっている。前の相手と同じ動きで始まっている。早く、使いやすく、そして応用が利く。なるほど、実に便利な動きだ。だがそれだけだ。使いやすいというだけで使っていてはだめだ。動きを適応させなくてはならない。学んだことをそのまま実践するだけでは駄目だ。学んだことを自分の形へと変える力が一番必要である。

 型にハマり過ぎているとキリトは言っていたが―――なるほど、確かに、そういうことだ。

 軽いスウェーで回避する。集中し、相手の動きを観察する。完全に振り抜いている刃の動きは早く、すぐさま元の型へと戻るだろう。だがたしか―――そう、こうだったはずだ。

 刃を小さく、素早く、浅く、そうやって相手の手元を狙って……切り裂く。

 小さく血が飛び、鉄の響く音がする。

 結果は明白で、相手が手を切ったために剣を落とした。それだけが結果だ。

「勝者、ルーリッドのユージオ!」

「ありがとうございました」

 頭を下げて、舞台を去る。これで一勝をまた得た。これでまた、アリスの存在と、そしてキリトの背中に一歩だけ近づいた。キリトができるのであれば、自分にできない筈はない。だって子供の頃からそうだったのだから。一緒に笑って泣いて、悔しんで、頑張って……一緒に成長してきたのだ。そのキリトが成長を先に済ませただけ。だから今度は此方の番。

 確実に決勝へと駒を進めるんはキリトに違いない―――だからと言って負けるつもりはない。

「今度は勝たせてもらうよ……キリト」

 この大会、自分の目標をキリトへの勝利という事を決め、控室へと戻る。あと試合は数回。それが終われば、決勝に勝ち抜いた勝者同士での勝負だ。

 それまで、あと少し。




推奨BGMあると思った? あると思ったでしょ!? あると思ったな!?

次回でプロローグは終了、学園1年目ですねー。
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| 断頭の剣鬼 | 15:02 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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| | 2013/06/24 00:29 | |















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