陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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CCC-23

 三日目、というべきなのだろうか。探索三日目の目覚めは中の様子も外の様子も変わりはしない。何時も通り赤い夕陽が差し込む木造の校舎。歩くたびに足音が反響し、そして足元の木がキィキィと音を鳴らしてその古さを象徴している。こういう細部までをほぼ現実と同じレベルで左舷するムーンセルは改めて凄まじいものだと思う。ともあれ、マイルームで朝食を済ませて廊下に出ると、何時も通りの光景がそこに広がっている。シャヘルもアルクを頭の上に乗せて、横で軽く体を捻ったりして運動をしている。どうやら調子は悪くなさそうだ。シャヘルが昨日、占ってくれたおかげで今日は激戦の予感がするらしいし、気を引き締めてかかろう。


『白野、聞こえますか?』

 ピピ、と音を鳴らしてレオから通信が入る。端末からではなく、近くのスピーカーから聞こえてくるレオの声に、生徒会室へと向かいながら聞く。

『本日は議題はありませんので、そのまま探索を開始してください。今生徒会の皆さんと戦闘データに関して相談中です。次のスキルをデータ化できるまではまだ時間がかk理想ですので、今あるもので何とかしのいでください』

 了解した、と返事を返しながらシャヘルを連れ、生徒会室の前を通り過ぎる。と、視線の先、廊下に立つシンジを見つけた。軽く手を振って朝の挨拶をする。

「はいはい、おはようおはよう。ったく、お前も飽きないやつだな。どうせそのうちムーンセルが僕らを見つけてくれるっていうのに、ホント良く頑張るよ」

 とりあえずシンジの態度がムカついたのでガトーにシンジの居場所を告げておく。数分後には回収の為にガトーがどこからともなくやって来てくれるだろう。

 階段を下りればすぐそこに購買がある。言峰店長は此方を見ると笑みを浮かべ、カウンターの下からあるものを取り出す。

 ―――それは、麻婆豆腐の絵が描かれたエプロンだった。

 ゆっくりとそれを装着すると笑みを浮かべて言峰は挨拶してくる。

「いらっしゃいませ」

「やべぇ、違和感しかねぇ」

 その言葉には概ね同意だが、店員としてはごく当たり前の対応なので見逃す事とする。シャヘルの占いの結果を信じ、残されたサクラメントで回復用アイテムを少し多めに購入し、ついでにリターンクリスタルも補充しておく。

「温めますか?」

 回復用アイテムを温める理由が見つからないが、こうやって聞かれたのなら一回は温めるべきだと思おうので、言峰に温めるのを任せる。ほう、と言峰は声を零すと、購入したアイテムを裏のレンジに纏めてツッコミ、一分間温めてからプラスチックの袋にアイテムをいれて、手渡してくる。

「お買い上げ、ありがとうございました」

「やってる事は普通のコンビニ店員なんだけどなぁ……なんだけどなぁ……!」

 言峰に関してはもううバグか何かで壊れたとか思わないとやってられない。温まった回復アイテムを全てアイテムフォルダの中に投げ入れ、これで準備は完了する。廊下の奥に立っているキアラとアンデルセンに向かって軽く手を振って挨拶をしながら、校舎の外、校庭へと出る。何時も通り美しく咲き誇る桜の樹へと近づくと、桜の樹が持ち上がり、その下に隠されているエレベーターが出現する。

「おーい、そこのマスター。ちゃんと補給はしたか? 礼装は装備したか? メモの用意はできているか? サクラ迷宮に出てくるエネミーは大抵パターンで動いているから、少しずつ観察してメモれば時間をかけて倒せるぞ」

 大丈夫、と直ぐ近くの壁に寄り掛かっているNPCに挨拶をして苦笑する。そういえばこのNPCは二日連続でそこに座っているのを見かけているが……。

「うん? あぁ、ちょっとお節介なだけなんだ。何、初心者や不慣れな奴に知識を分ける事を趣味にしているだけでな。特に問題がなければ俺の事は無視してくれて構わない……まあ、そんなんだからハブられているんだけどさ」

 ま、そういうおせっかいな人は嫌いじゃない。どれも知っている事だが、確認してもらえるというのは幸福な事だ。ありがとうと告げ、桜の樹のエレベーターに―――サクラ迷宮の入り口へと降りる為に乗る。続いて乗ってくるシャヘルの姿を確認してからエレベーターの扉が閉まる。

 そして、虚構世界へと落ちる。





 デザイン自体はそう変わらない。夕陽色に染められた白い建造物が海から生える世界。だが確実に建造物が生える海面、その知覚までやってきていた。エレベーターから外へ踏み出せば第三層の入り口へとやってくる。視線を前へと向ければ数十歩先にSGによって封鎖された道が見える。足元は依然として透明な床だが、そのすぐ下には海面が見える。段々とだが月の裏側、虚数の海の中へと自分の意志で溺れて行くような気がしている。

「狩りの時間だ」

 シャヘルはそう言いながら大太刀を作りだし、それを肩に背負う。戦意は上々のようだ。しかしその大太刀、あっさりと姿を変える事が出来たようだが、他にも色々と形を変えられるのではなかろうか?

「まあ、ある程度は自由だぞ。基本的には渇望やら心象風景の物質化だからな」

 ほう、ならまだ応用が利きそうだ。そこらへん、時間が空いた時に相談するのはいいかもしれない。

「ま、それよりも早く進みましょーよ。結構私、暇なのよ」

「なら歩けよ」

 ネコアルクはそう言われるとシャヘルの頭の上で露骨に目を背けて下手な口笛を吹き始める。こいつ、本来はもっと恐ろしい存在だった気がするのだが―――まあ、いいだろう。探索しかできる事はないのだ。恐れず、前に踏み出す。すぐそばにシールドがあるのでそこまで行こうとしたところで―――脇道を見つける。

 そしてそこには赤い少女の姿があった。

「集めなきゃ……」

 凛は此方に背中を向けたまま、此方に気づく事無く、迷宮の奥へと進んで行った。その様子は明らかに今まで見てきた遠坂凛とは違う、若干弱々しい姿だった。上の二層、【テンプレーション】も【拝金主義】も見ればすぐにわかる、遠坂凛らしいSGだったが、あんな姿の凛は今までに見た事がない。明らかに見れば解る、というタイプのSGではなさそうだ。

「ま、スーパーストーキングタイム開幕、ってやつだな」

 言い方は悪いが、凛を追いかける事以外は結局、何もできないのだ。凛が消えた方向へと視線を見れば不自然に途切れた道が見える。凛がその方向へと歩いて消えてゆくのは見えた。この迷宮で特別な権限を保有する凛が飛行舌とも考えられるが―――。

「そらよ」

 シャヘルがサクラメントを1だけ拝借し、それを前方へ投げる。それが道の途切れている所の中央で見えない床に当たり、二度跳ねながら動きを止める。間違いなく目に見えない、透明な道が繋がっているのだ。凛はこの上を通って奥へと着て行ったらしい。追わない理由は存在しない。行こう、と進む意志をシャヘルと告げて歩きはじめる。

「あいよ」

「ごーごー!」

 愉快な探索だなぁ、等と思いつつ、少しの勇気を振り傍って見えない通路を踏みしめ、進んで行く。途中に鳥形エネミーが出現しているが、レベルは前層の門番エネミーと比べれば低いし、動きも単調だ。シャヘルで一気に襲い掛かれば反撃されることもなく一瞬で倒せる程度には弱い。道中でアイテムフォルダの中身を回収しつつ進めば、抜けた所、入り口から見てシールドの向こう側の位置に、凛の姿があった。少々疲れたような、苦しそうな姿をしている。

 反射的に声をかけようとするが、何かが頭に飛びついてくる。視線を持ち上げれば、頭にしがみ付いたネコアルクが指を口に当て、しー、と喋らない様にジェスチャーを送ってくる。

「駄目……足りない……これしか……」

 若干ふらふらした足取りで、凛はそう告げてから更に迷宮の奥へと消えて行った。その姿を見送り、凛がいなくなってから口を開く。何故先ほど凛に話しかけるのを貯めたのだ、と。

「うーん、はくのん優しいのはいいけどさ、それじゃあどうにもならない時だってあるのよ? 偶には黙っていた方が情報もてないハイルの。見れば解るけど、ヒントを歩きながら出してくれているんだし、もうチョイ頑張りましょう?」

 うーん、正直凛の様子が悪いので心配なのだが、確かにSGのヒントも必要なのだ。一番効率いいのは凛を追いかけ、その行動を観察する事には間違いはないのだ。だからアルクェイドの判断は間違ってはいないのだが……。

「というかよ」

 シャヘルが刃を肩に担ぎながら此方を見る。

「あの凛はアバターってか分身だぞ? ―――ちょっくらボコっても本体にはノーダメじゃね」

 なら問題ないな。

「いい話にしたら納得されないのに……!」

 まあ、そこらへんは軽く割り切るとして、再び凛を追いかける為に迷宮の中を突き進んで行く。意外な事だが、アイテムフォルダは通り道に多く設置されていて、まるで此方を支援するかのように見える。正直物資は重要で、有難いので、回収しつつ、道中見かけるエネミーを皆殺しにしながら進む。……八匹程倒してもレベルが上がらなくなってきた。そろそろもっと本腰を入れて、レベリングの為だけにサクラ迷宮へと潜る事を考えるべきかもしれない。

『レベルの足りなさも問題の一つではありますね。その考えは悪くはないです』

 まあ、それは今回の探索を終えてから考えよう。

 再び歩みを続け、鳥形のエネミーを真っ二つにしながら細い道を抜けていくと、少し開けた場所へ出る。その中央ではやはり凛が背中を向けている姿を目撃できる。目に見えて疲労している凛の様子を見て、軽く驚く。本当に彼女は自分の知っている遠坂凛なのだろうか? それにしては弱々しい。弱々しすぎるのだ。自分の知っている遠坂凛という少女はもっと強く、厳しい人物だ。何よりも自分自身に弱みを見せる事を許さない人物だ。こんな場所で、こんな姿を見せる筈がない。

「足りないわね……これしか集まらないなんて……でも、ランサーは私のサーヴァントだし、いう事を聞かなきゃどうにもならないのよね……嫌なのに、嫌なのに……!」

 どうやら凛のこの弱々しい姿はどうやらランサーに何かを強制させられているのが原因の様だ。凛のこの姿は何というか―――非常に不安なものがある。やはり隠れているなんてことは出来ない。

「あっ」

「ちょっ、おまっ」

 シャヘルとアルクェイドが何かを言える前に前に踏み出す。その足音に気づき、凛が此方へと振り返る。凛の話しかけようとして手を伸ばし、口を開こうとして、

「―――も、もしかして聞かれた? ぬ、盗み聞きなんてしてるんじゃないわよ!!」

 凛は叫ぶと、エネミーを召喚した。そして召喚するのと同時に、凛の姿が光って消える。十中八九転移だ。おそらくだが奥へ逃げたに違いない。

「一瞬で片を付けるぞ」

 召喚されたエネミーは頭しかないワニの様な姿をしている―――こんな構造的に欠陥しか存在しないエネミーを出すとは、ずいぶん舐められたものだ。後ろへと少し下がり、入れ替わりにシャヘルが前へと出る。その瞬間、噛みついてくるようにエネミーは跳びかかってくる。が、既に指示は出してある。

「ガード」

「ほらよ」

 素早く防御に入り、ワニの噛みつきを刃で防ぐと、刃に噛みついたワニをそのまま床へと思いっきり叩きつける。その衝撃で口を開けた瞬間、床へ縫い付ける様にシャヘルがエネミーを突き刺す―――口の上から。

 唯一の武器が口で、手足も存在しないエネミー。とあれば必然的にこの状況から抜け出すすべはない。突き刺さった刃によって素早くライフは消滅し、ワニのエネミーは砕け散る。その構成サクラメントを回収すると、前方を眺める。

 迷宮にまだ続きが存在している。が、それがそう続くようには思えない。

「じゃ、ガールハントを続けますか」

 凛のあの態度は間違いなくSGへと通ずるものがあるし、その秘密を解くカギは間違いなくランサーが持っている。となればシャヘルの言うとおり、あの二人を見つけるしかない。となればガールハントだ。何かがおかしいとか、細かい所は気にしてはならない。

 サクラ迷宮、その奥へとさらに踏み込んで行く。




 次回で3層後半、その次でランサー戦ですかね。

 素敵なあんけぇいとは此方です。というか大体セイヴァーで確定ですかねぇ。
 あんけぇいと
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| 断頭の剣鬼 | 17:21 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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