陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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CCC-17

「んっ―――」

 体を軽く伸ばしながら”迷宮から出る”。到着するのは入り口となっていた桜の樹の前。校庭に戻ってくるのと同時にシステム保護によるものなのか、シャヘルに適応されていたダメージと、そして使用されていた魔力が完全に回復される。これからもちょくちょく疲れたら校舎へと戻って回復してから潜るのもありかもしれない。

「帰ったか」

 声がした方向へと視線を向ければ校舎の横に寄り添うように黒いコート姿が、ユリウスが立っていた。横に立つシャヘル、その頭の上に引っ付いているネコアルクを確認し、全員がいる事を確認して頷く。


「ちゃんと全員いるようだな。生徒会室の席の廊下の突き当たりにマイルームを用意した。ここでの生活の拠点はそこになるだろう。端末に桜が他のキーと共にルームキーを送信しているはずだ。休むのならそこで休め。レオからお前はしっかり休む様に伝えろと言われている。無駄なことはせずにさっさと休め」

 どうやらそれを伝える為にユリウスはここにいたらしい。ここで待ち伏せせずに端末でメールでも送ればいいものを律儀に待っていてくれたのだ。去ろうとするユリウスの背中にありがとうと伝える。ユリウスはその言葉に足を止め、振り返る。

「気にするな。これも仕事だ」

 仕事だとしたら仕事ついでに頼みごとと聞きたい事がある。

「なんだ、言ってみろ」

 ユリウスは校舎に戻ろうとしていた足を止め、振り返る。

 まず、そのコート、熱くないのだろうか。

「熱い。ものすごく熱い。言峰にスーツを発注している。もうしばらくしたらスーツに着替える」

 やはりそうだったか。いや、ユリウスのコートは暗器とかを隠すなら非常に便利そうに見えるが、この校舎では別に暗器を所持する必要はない、故にコートはただ分厚いだけなのだ。特に防御力もなさそうだし。そしてもう一つ。

 ―――帰りの挨拶するならもう少し、こう、可愛らしく、”よぉ、おかえりはくのん!”ぐらいやってくれないだろうか。あ、できたらメガネ付けて。

「大変頭がおかしくてよろしい。一考だけはしてやるからさっさと寝ろ」

 呆れたような溜息を吐きながらユリウスの姿が校舎内へと消えてゆく。何故だ、今のユリとの会話はパーフェクトコミュニケーションだったはずではないのか?

「あえて言うなら全部悪かった」

 解せぬ。





 校舎二階、生徒会室へ繋がる扉が存在する廊下を突きあたりまで進めば、一つの扉を見つける事が出来る。扉に触れ、表側の聖杯戦争でやった様に自分の部屋に入りたいと思った瞬間、扉はあっさりと開き、その中へと迎え入れてくれる。そうやって踏み込んだ部屋は実に質素なものだった。学生寮、という言葉が実に似合う。

 部屋はそこまで広くなく、向こう側の壁には窓と、そしてそこに並べられるようにベッドが一つある。ベッドの横にはベッドサイドテーブルがあり、部屋の片隅には机と椅子がある。それ以外には特に装飾も飾りもない、そんな普通の部屋だが、それがなんとなく自分を受け入れて、待ち望んでいたようで、少しだけ落ち着く。窓の外を見れば夕陽で染まっていたはずの空は暗く、夜の色に染まっている。他にも扉が見えるが……そこが洗面所へと通じている扉なのかもしれない。

「ちょっとまってろ」

 横を抜けてシャヘルが前に出ると、服のポケットから何かを取り出す。それはなんらかの圧縮データの様にも見える。

「表側のマイルームで今まで何度か大河の手伝いをして家具をコツコツ増やしてただろ? こっちへ来る前に回収できるだけ回収してきたんだよ。まあ、一部壊れちゃって使い物にならないけどなぁ……」

 そう言ってシャヘルは圧縮データからアコースティックギターを取り出すとそれをスタンドに乗せて部屋に飾ったり、パッチワークのクッションをベッドの上に増やしたり、カーペットを取り出して床に敷いたりしている。なんというか、英霊の癖に実に生活感あふれる相棒だと思う。

 最終的にクローゼットを取り出したシャヘルがそれを壁にくっつけ、ベッドに座る。

「ま、こんなもんだろ」

「貴女にしてはまあ上手くコーディネイトしたんじゃない?」

 ネコアルクが褒める様に、部屋は質素な様子から若干生活感のある部屋へと変貌していた。態々硬い椅子に座る事もないし、シャヘルの横に座る様にベッドに座る。ついでにクッションも手に取って膝に乗せてみる。

 パウダークッションだった、意外と気持ちい。

「あ、それいいわよね。パウダークッション。こう、もにゅもにゅして遊べそうな感じが」

 ネコアルクも既に頭から飛び降り、ベッドの上でくつろぎながらクッションで遊んでいる。何時までいるのだろうか……と聞こうと思って、この不思議生物が実は今のシャヘルの存在維持を何とかしているという事を思いだし口を閉じる。ずっと一緒に行動しているのだし、おそらく離れる事が出来ないのだろう。そういえば、どれぐらいでシャヘルのフレームは修復するのだろうか。

「そっちは解らんなあ。クラスができりゃあリレイズ効果で一気に再生させることも不可能じゃねぇんだけどなぁ」

「どうでもいいけど高レベルのサーヴァントがリレイズ持ってる状況とか最悪よね」

「ま、今回は運が良かったな。あのランサーはスペックとは違ったレベル40前後だったから何とかなったもんだ」

 ランサー。

 そう、ランサーだ。私達はあの時―――見逃された。

 ”面白そう”だと、ランサーは凛が消えるところを見てそういう感想を漏らした。そしてこの先、放置していればもっと面白くなりそうだと。ランサーはそう言って去って行ったのだ。どこからどう見ても見逃された、というのがただしい見方なのだろう。……正直、かなり悔しい話だ。あの時一緒にいたマスターがバゼットであれば確実に殴り殺していた気がする。

「バゼットは人類の限界に到達して生身で英霊の領域踏み込みかけてるから気にするな、マジで。人間とバゼットを比べてはいけない」

 バゼットは別次元の生物として神霊に認められた。おめでとうバゼット、これで君も人類卒業だ。と、そういう話ではない。シャヘルはそこらへんどうだったのだろうか。今回はかなりぼっこぼこにされていたが。

「そりゃあ悔しいさ。でも俺の人生というのは常に格上との戦いだったからな。これぐらい絶望的だと滾る滾る」

 笑顔でそう言えるのだから、やはりシャヘルにとってあのランサーに対する敗北はそこまでの問題ではないらしい。まあ、自分とシャヘルの一日目だったのだ、これは。まだレベルは二ケタに届いたばっかりで、記憶も礼装もない。そんな状態で強力なサーヴァントと衝突すればそりゃあ勝てないわけだ。それも竜の属性を持ったような相手ならなおさらだ。

「それにしては弱かったけどねー」

 ネコアルクがクッションの上でゴロゴロしながらそんな事を言う。弱いというのは一体どういう事であろうか?

「英霊ってのは基本的に数字的レベルで表すと最低60ぐらいで、聖杯戦争で召喚できる最高ランクのは大体90ぐらいなんだよ。あのランサーが本当に竜属性系の英霊なら少なくとも70か75はあってもおかしくないのに、アレ、バゼットよりも低い40レベだったぞ」

 それよりもバゼットがあのランサーよりもレベルが高いという事実にぶったまげた。本当はこっちが留守番して最終撲殺兵器バゼットを投入した方がはるかに効率的なのではないだろうか。

「効率から言えばそうだろうなぁ。ただそれが正しいかどうか、では大きく違う。何事も”最良が最高の結果を生む”という事ではないんだよはくのん」

 シャヘルの言った言葉の意味は良く解らないが、まあ、深く考える事でもない。つまり適材適所という事なんだろうと理解しておく。

「ま、今はそれぐらいでいいさ。どうせそのうち嫌でも強くなる」

 強くなる。強くなってランサーに勝つ。だがランサーと戦うようになるにはSGと呼ばれる鍵を取得し、迷宮を突破しないといけない。そしてその話となって気になるのは―――SGだ。遠坂凛から摘出したSGは【テンプレーション】というものであり、この中でツンデレというテンプレートに当てはまるのが遠坂凛だった。秘密、という割には公然すぎるのだが、まあ、SGは秘密を元にした鍵。となれば、私にもSGはあるのだろうか。

「それは無理よ」

「だなぁ」

 アルクェイドもシャヘルもどちらも苦笑しながら無理だと言ってくる。それは何故か、と問えば簡単な答えが返ってくる。

「お前は正直すぎて隠し事なんてできないだろ? つまりそういう事だ」

 ……なんかそれはそれで非常に釈然としない。まるで私の事をシャヘルは全て知っているような言い方ではないか。いや、たぶんというか確実に記憶を無くしている私よりはシャヘルの方がいっぱい知っているのだろうが、それでもやはり釈然としない。じゃあ私にそういうシャヘルの方はどうなんだ? そういうのであればシャヘルは―――。

「あるぞ、SGの三つぐらい」

 数字がやけに具体的ですがシャヘルさん、それは本当だろうか?

「そりゃあ誰にだって隠したい事はある。それが公然であれ、誰も知らない事であれ、少なからず秘密は誰もが所持している事だ。むしろはくのんみたいに秘密を持ってないタイプの方がおかしいんだ。まあ、お前の場合は”仕方がない”事だとして、そうだなぁ」

 シャヘルは手を自分の胸元に入れてまさぐると、そこから光の欠片を手に握り、取り出してくる。五停心観もなしに、このサーヴァントは自分のSGを摘出しやがったのだ。

「ほら、俺のSGだ」

「え?」

 此方が驚き呆けていると、端末が音を鳴らし、SGデータの読み込み完了を告げる。それを確認するまでもなく、シャヘルは自分のSGの解説を始める。

「俺の一個目のSGは【人類愛美】ってやつさ。つまり人間が好きで好きでしょうがない。心の底から人間という生き物が大好きで、心の底からずっと守ってあげたいぐらいには愛している、という俺の心を表しているSGだ。……まあ、所詮一個目のSGだ。やはり”公然の秘密”ってやつだろうな。そこそこ付き合いがあれば解るような内容だ……がっかりしたか?」

 いや、やっている事には驚くし、スケールが少々大きくてビックリする所もあるが……まあ、シャヘルの事をもう少し多く知れてうれしくない事はない。できたら他のSGがあるのであれば知りたい所だが―――。

「ははは……」

 シャヘルは少しだけ頬を赤くし、そっぽを向きながら頬を掻く。

「正直自分でSGを摘出して見せるのは裸の心をそのまま見せているようなもんなんだ。少し恥ずかしいからさ、……もう少しシャヘルちゃんの好感度を上げて攻略を進めればいいんじゃないかなぁ」

 恥ずかしさを紛らわす様にシャヘルは手をぱん、と音を立てながら一回叩くと、視線を此方へと向けてくる。

「それよりも今日はもう寝ろ。風呂に入るのもシャワー浴びるのも起きた時に回しておけ。起きてからずっと働き詰めだろ? ほらほら」

 シャヘルに強引にベッドに倒されてしまうが、言っている事に間違いはない。初日から色々とやっているせいで体が休息を求めているのは事実だ。ベッドに倒れると予想外の心地よさに一気に眠気が襲い掛かってくる。だがその前に、一応シャヘルやアルクェイドがどこで寝るのか聞いておかないと。

「ベッドがデカいし三人一緒でいいわよ」

「さんせー」

「ちょ」

三人が並んで寝ても十分な大きさのベッドだが、流石にこうなるとは予想外だった。デフォルメ姿のアルクェイドを挟む様にベッドに寝る事になる。……まあ、予想外は予想外だったが、シャヘルも姿、というか今は生物上は女性だ。となれば、全く問題はない。それに一人で寝るより二人……と一匹の方が賑やかで楽しいに決まっている。そんな事を思って目を閉じれば猛烈な眠気が襲い掛かってくる。

「良い夢を、我が愛しき主よ」

 うん、おやすみなさい。

 何とか呟こうとして、そのまま眠りに落ちる。




SG1
【人類愛美】
 シャヘルという存在は人間の事をこよなく愛している。正確に言うのであれば努力をしている人間を愛しているのであるのだが、人類という全体を普通の愛とはまた別の次元から愛している事に違いはない。聖杯戦争中でもそれは全く関係なく、たとえ相手が自分のマスターを傷つけた者であろうと、その愛の矛先はむけられてしまう。

 愛は素晴らしいものの様に聞こえはするが、その実態は底抜けた狂気の裏返しでもある。全てを愛するという事は全てが平等であるという事でもある。善人も悪人も等しく愛する事は善悪の区別をつけないという意味でもある。シャヘルの善悪論はそのおかげでやはりカオスの極まりへと到達している。最も幸いなのはシャヘルにとって”特別は存在する”という認識なのだろう。

 余談だが、シャヘルは自分の存在そのものを四次元的位置から観測し、客観的に見てこの意味を理解していてこの結論へと至っているのでたちが悪い。何より邪悪だと理解しているからこそ絶対に天を握ってはいけないと覚悟を決める一因となっているSGでもある。
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| 断頭の剣鬼 | 20:46 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

やだ、ユリウスが教師のノリ……ッ!
そしてスーツ姿のユリウス……カッコいいんだろうけど、
身長が小さいから違和感が漂うw

| 裸エプロン閣下 | 2013/06/15 22:18 | URL |















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