陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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CCC-14

 結論。仏教はもう嫌だ。

「アレ一人で仏教をくくられるのは大変遺憾だと仏陀が言いそうなので決めつけるのは止めようよ。な? な?」

 シャヘルが何か言っているようだが完全にスルーし、再びサクラ迷宮へと戻ってくる。場所は変わらず入り口から。桜が放ったソナーによる反応によれば、このフロアの出口近くにチェックポイントがあるらしい。それはあのシールドの向こう側なので、まずやはり、あの壁をどうにかする必要が出てくる。さて、

 ―――何事もなく五停心観は”手渡された”のだ。

「白野?」

 ―――何事もなく五停心観は”手渡された”のだ。

「はくのんさーん?」

 ―――何事もなく五停心観は”手渡された”のだ。


「駄目だわこりゃ。完全に生徒会室での出来事忘れようと頑張ってる」

「ファーストキスじゃないんだからいいじゃん」

 あ、ファーストキスじゃないんだ。ならセーフ―――ってなんとぉ!? その話は初めて聞いたぞ。少し待てシャヘル。落ち着いた話し合おう。まず何故それを知っている。どこでそれを知った。そして何時、誰相手に私はそれを失った……ま、まさか寝ている間にシャヘルが無理やり……!?

「お前もいい感じに混乱してるな」

「いたっ」

 シャヘルにケツに蹴りを入れられる。しっかりしろ、と言われて冗談の時間は終わりだと告げられた。迷宮へと到着すると武器を取り出し、右手に刃を逆手に構え、やや前傾の姿勢で待機する。左手はぶらん、と自由に動かせるように無手で放置されているが、改めて見た事の無い構えだ。

「ふざけるのもいいが、あまりふざけ過ぎるなよ? 今の所俺達はバゼット一人よりも弱いんだから」

『むしろそれはバゼットさん一人が人類の限界に挑戦しすぎてるって事なんですがね』

 相変わらずバゼットの戦闘力には定評があり過ぎる。まあ、バゼットを動かせないという意味は解る。校舎にはガウェインがいるが、それ以外にも内密に動かせる人間は必要だろう。バゼットはおそらくそういう要員として扱われているに違いない。ともあれ、軽く頬を叩き気合を入れ直し、歩き出す。五停心観術式はちゃんと自分の中で機能しているのを確認できる。だから後はそれを摘出する相手、凛を見つける事だが―――。

 エネミーを発見する。噴水の向こう側を固定エリアとしているのか、丸いエネミーがふわふわと浮かんでいる。一瞬で戦闘態勢に此方が入ると、向こう側も此方に気づく。だが既に相手のパターンは全て覚えた。命令を繰り出すと、シャヘルは魔力放出・光の効果により、魔力を光という形でジェット噴射のように放ち、ワンランク上の戦闘能力を発揮する。素早い噴射とステップで接近、踏み込んだところでナックル、キック、踵落とし、そして刃での串刺し。全長二メートル以上の刃の一撃は極悪極まりなく、貫かれたエネミーはあっさりとサクラメントに変化してくれる。

「うむ、絶好調だな。ノーダメージで敵を倒せたときはスカっとするもんだ」

 この程度の敵に後れを取る訳にもいかないだろう。

「そんな事を言っていると足をすくわれるわよー」

 にょきにょき、何て音を立てながらネコアルクが死角、シャヘルの髪の裏から体を上り、頭の上へと到着する。そして、そこにしがみ付く。どうやらあの頭の位置を定位置と決めているようだが、前回迷宮へ来たとき吐くとか言わなかったっけ。

「自己改造でファイナルアンサー」

「お前のどこにそんなスキルが存在したんだ……!」

 この精霊様は一体なんなんだろうか。どんどんイロモノ化が進んでいるというか―――どんどん本編ではなく番外編に出演すべきキャラに進化してきたのではないだろうか。もしくはスピンオフ作品とか格ゲー用のキャラに。いや、おそらくおかしな電波でも受信したのだろう。番外編や格ゲーってなんだ。一体何のことだ。

「ほら、そんな事よりもアレアレ。新型よ新型。ちょっと今まで通り行けるか確かめなさいよ」

 シャヘルの頭の上で二本足で立ち、シュシュシュ、とシャドウボクシングをするネコアルクの視線の先には前、迷宮へ来たとき、凛が退路を断つ意味でも召喚した盾形のエネミーが存在している。丁度、此方からシールドが存在する通路の間に邪魔する様に漂っている。どうせ自分とシャヘルは”足りない”のだ。経験値の糧とさせてもらおう。

「向上心があるのはいい事だ」

 シャヘルと共に走って近づくと、エネミーの感知圏内に入り、相手が此方を認識する。シャヘルと共に構える。相手の形は盾の様な姿をしている。それを眺め、憶測を立て、思考し、

 ―――ふと、頭を何かがよぎる。

 瞬間、指示は決まっていた。

「おうさ!」

 踏み込みと同時に魔力放出で光を纏ったセイバーは両手で刃の柄を掴むと、それを大振りに叩きつける。その体の形状通りのイメージというべきか、盾形のエネミーは防御する事を選んでいた。両手での上段からの振りおろしで盾形のエネミーは一度床に叩きつけられ、

「そぉれ!」

 振り下ろしから今度はスイングで空へと打ち上げられ、落下する所を三連撃でシャヘルに打ち込まれる。

「隙だらけだぞ、っと!」

 完全に無防備となったエネミーの体に両手持ちでの連撃が繰り出され、切り上げが最後に加わる。素早くも力強いコンビネーションを受けて盾形のエネミーは一気に砕け散る。口笛を吹きながらシャヘルは刃を回転して床に突き刺し、

「レベルアップだマスター。またまた素敵になったな?」

 少しだけ強くなったのが解る。魔力容量が増え、そして少しだけだがシャヘルに力が備わって行く。これは力をつけている、というよりは力を取り戻している、という状況に近い様に感じる―――本当に力をつけているなら魂の改竄を通して此方の魔力回路を整えなくてはならないからだ。しかし、

 シャヘルのステータスの伸びが横一遍なのが気になる。

「クラスがないからだろうな。俺という存在としての成長率に違いはあれど、それを支え、補正するクラスが存在しない。だからキャスターなら魔力が多め、とかそういう事が発生しない。全部均等に成長している……って事だ」

 なるほど。つまり私のせいですね。解ります。

 はぁ、と溜息を吐きながら軽くだけだが落ち込む。今回の弱体化については完全に私が悪い。なぜならシャヘルにとって重要な事を完全に忘れてしまったからだ。それは我々の間にできた絆の証拠と言ってもいいものだ。それを自分は一方的に忘れたのだ―――笑って許していいようなものではないはずだ。だがシャヘルは一切文句を言わずに従ってくれている。その思いに応える義務が私には存在するのだ。

 と、ネコアルクがシャヘルの頭の上でおぉ、と声を漏らす。

「おぉ、流石ね。私を殺したんだからこれぐらいしてもらわなきゃ困るんだけど、ま、ぎりぎぃ? 及第点かしらぁ?」

「シェイクするぞキャットめ」

「やめてくださいしんでしまいます」

 あのネコとキツネはほんと仲がいいなぁ、等と呟きながら少し歩けば、前回の探索でやってこれた位置まで到着する。やはりシールドは依然とそこに存在したまま、此方を拒んでいる。五停心観とキアラの説明を受けて、これが心の壁という表現は間違いではないと思える。何せ、確かにこの壁からは”拒絶”の感情を感じる事が出来る。あぁ、間違いなくこれは心の壁だ。視線を心の壁から外し、横へと続く通路へと向ける。その道を守護する様に凛の召喚したエネミーがいる。

 レベルアップ前から習得し、そして最初から使用可能だったスキルをようやく発動させる。

「仕留めてシャヘル」

 命令と同時にシャヘルが一瞬で動く。時間を切断しながら一瞬でエネミーへと到達し、

「断て、罪姫・正義の柱」

 盾形のエネミーを一撃で真っ二つにする。移動も攻撃も全ては一瞬。だがその行動のために消費された魔力はそこそこ多いものだった。数字的に確認すれば30ほどだが、それでもレベルが低い自分にとってはかなり重いコストとなっている。少し前に気づいたことだが、自分も月の裏側へと落ちて、記憶を失い、レベルが初期化されている。シャヘルは気にするなと言っているが、マスターの戦闘における一つの目的はサーヴァントの魔力タンクでもある。サーヴァントに十全な戦闘行動をさせられないのは辛いものがある。

「だから悩む必要はないと言っているんだがなぁ……」

 ぼやきながら攻撃を終えたシャヘルは大太刀を床に突き刺し、視線を先へ向ける。狭い通路の先には海から姿をだし、高く聳え立つ建造物が見える―――それには鉄格子で阻まれているが、入り口な様なものも見える。

『白野、此方の方でも貴女の見ている建造物をチェックしています。これ見よがしに存在しているのです。何らかのヒントにはなるはずでしょう』

 レオに言われずとも、あそこには向かつもりだ

『岸波白野』

 次に通信を通して聞こえてきたのはユリウスのクールな声だ。

『俺の勘だがあまりいい”臭い”がしない。覚悟しろ』

「おや、本当に変わったなあ、お前。ま、文句は言わないさ」

 ユリウスの忠告に対してシャヘルが意味の解らない事を言うが、シャヘルはなんでもないと、頭を横に振って話題をぼかす。まあ、シャヘルにも言いたくない事もあるんだろうと、少しだけ寂しさを感じながら足を動かし始める。幸い、先ほどの盾形エネミーが建造物との間にいる最後のエネミーだった。数分も歩けばあっさりと建造物に到着する。

 だが建造物に近づくにつれて嫌な臭いが強くなる。

 ……おそらくユリウスは直感的にこれを察したのだろう。少しだけ鼻を押さえるそぶりを見せると、何かが此方の顔に投げつけられる。その衝撃に軽く驚きながらも、それを手に取り確かめる。それは花の刺繍の施されたハンカチだった。投げた方向、その視線を向ければ……やはり、シャヘルの姿しかなかった。

「臭いがキツイようだったらそれで鼻と口を押えれば少しは楽になるぞ。まあ、少しだけは」

「シャヘルたん意外と紳士的よね。いや、この場合は淑女的かしら」

「おいおい、こんなパーフェクト淑女を引っ張ってきておいてそれはないだろ」

「ショウジキナイワァー」

 ネコとキツネがコントに乗り出しているが、もう既に目的に到着しているのだ―――覚悟はできているし、躊躇することなく鉄格子の横、それを開くためのレバーを下へと引く。やはり電子世界というべきか、鉄格子は現実で起こすはずであろう錆びれた、擦れた、悲鳴のような音を立てず、静かに開いた。

 その向こう側にあったのは地獄だった。

 床一面は赤く染まり、壁もあちらこちらが赤く染まっている。いや、それだけではない壁には人の影らしきものが多く映っている。何人、ではなく何十人という規模で空まで続くこの建造物の壁は人の影で埋まっている。床に置いてある拷問器具、そして、

「あ、あぁ……あぁぁああ……」

「うぁぅぅ……」

 断続的に聞こえてくる人の悲鳴と呻き声。この部屋は間違いなく地獄だった。思わずの事態に体が震えそうになるが―――それを堪える。駄目だ。これを見なくてはならない。私はマスターだ。何のためにここにきている。これを見て、覚えて、知って、理解するのが私の役割りだ。

『とはいえ、あまり女子(おなご)が見ても良い光景ではなかろう。辛かったら早急に部屋から退出し、我々の解析を待つのも手であろう』

 ガトーが通信の向こうから声を送ってくれるが、口を開いて大丈夫だと答える。少々強すぎる血の臭いにやられただけだ。しっかりと状況を認識する。

「むごいな……」

 そう言ってシャヘルは壁に触れて、何かを確かめる様に目を閉じ―――。

「血液データと魔術回路を引き抜かれているな、これは。魔術師としての才能を殺されている」

『……そういえばどこかで見た事がある気がするな。拷問術を習得するようなサーヴァントを。たぶんここはそういう能力を持ったサーヴァントの領地ではないのか?』

『もしくは遠坂凛の行っている所業でしょうか?』

 バゼットの言葉を否定する。それはありえない。遠坂凛という少女は自分は記憶を失っても覚えている。良く笑い、良く怒り、そして良く心配してくれる少女だったはずだ。彼女は常に善側の人間としての性質を持っていて、そして誰よりも他人と、そして自分自身に厳しい存在だ。たとえ誰かを傷つけようとも、それは遊びや加虐趣味から来るものではない。それは彼女が敵に敬意をもって、敵として認識し、全力で滅ぼさないと、と認めたからこそだ。彼女が敵として認めなければそもそも彼女は気にする事すらしない。

 だから、ありえない。

 遠坂凛という少女は絶対にこんな事をしない―――それは自分の魂に誓える。

「ふふ」

「満足そうな顔ね」

「白野は何処へ行って、どんな状況でも白野まま、というのを知れてね」

「なるほどね」

 何やらキツネミミとネコミミが密談をしているようだが、二人とも声が小さすぎて良く聞こえない。ただ生徒会室からの通信も来ないので、少々心配になってきた。端末を軽くコンコン、とノックをし、反応を確認する。

『っと、すみません、少々呆けていました』

 レオの声が帰ってくが、大丈夫だろうか。もしかしてここにいる間のサポートで無理をさせていないだろうか?

『お前がそれを心配する必要はない。レオの体調管理は俺の仕事だしな。それよりもお前が自信を持ってそういうのだ、そうなのだろう―――早くそこから出て進め』

 ユリウスがすすめと催促してくるが、不思議とそれはどこか暖かい響きを持っていた。だが待ってほしい。ここにいる人たちを解放できないだろうか?

『すみません先輩、その建造物は迷宮の一部分として認識されているようで生徒会だけのリソースではとてもですが……』

 そうか……ならなおさら凛と会う必要がある。この施設は十中八九あのランサーのものだ。だとすれば、凛を問い、この施設の真実を知らなくてはならない。そして可能なら、解放を。拷問部屋から退出し、再び偽の太陽の光を浴びながら歩き出そうとしたところで、再び生徒会室から声が聞こえた。

『なあ、岸波』

 シンジの声だった。シンジから話しかけてくるとは実に珍しいが、何か言いたい事もであるのだろうか、珍しく真剣な響きをしている。

『お前さ、遠坂の事良く見ているんだな。記憶を持ってないくせに良く覚えているんだな。敵だったかもしれないのに』

 シンジは何を馬鹿な事を言っているのだろうか。凛はたしかに敵だったかもしれないし、今では立派な障害として登場している―――だがそこのどこに忘れる為の理由がある。どこに拒絶するための理由があるのだ。たしかに相手を知って、友になって、そして戦うのは辛いかもしれないけど……なにも知らずに戦うのだけは嫌だ。自分が死ぬにも、相手が死ぬにも、それがどんな短い時間であろうが私は相手を知りたい。相手を知って、自分を知ってほしい。友達になりたい。そうやって、自分にでも相手にもでも、願いがあったことを、彼らがいた事を覚えていたい―――それはそんなにおかしい事なのだろうか。

『……』

 シンジからの返信が来ない。シャヘルとネコアルクへと視線を向ける。

「ポテト食うのに忙しいんじゃない?」

「もしくはハーウェイカレーとか」

 シンジ死んだん……?

『死んでねぇよ!! そんなに僕を殺したいのかよチクショォ―――!!』

『ガウェイン、逃げたシンジを捕獲してきてください』

『円卓流捕縛術の有用性を証明して見せましょう!』

 結局はこの空気になるのか、等と思いつつも―――まあ、やっぱりこの生徒会にはシリアスな雰囲気は似合わない。

 願えるのなら、最後まで笑いながら月の表側へ戻りたい。

 そう思いながらシャヘルを連れ、迷宮の奥へと向かう。




 生徒会に自重はなかった。すげぇな、生徒会!
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| 断頭の剣鬼 | 15:03 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

生徒会だからね、仕方ないね!

| おk | 2013/06/13 08:20 | URL |

アルクinネコアルクが着実に柴田亜美的ナマモノ化してません?(笑)

| アルフィード | 2013/06/13 08:21 | URL | ≫ EDIT

境ホラの総長連合とかで出ててきても違和感無いなコイツらw

| hunting ground | 2013/06/14 16:15 | URL | ≫ EDIT















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