陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

プロローグ ―――コンテスティング・ソーズ

推奨BGM:Burlesque


 背に増えた荷物を背負い、住み慣れた農場から去って行く。最後まで此方の事を惜しんでくれた農家の人達にさよならを告げて、数ヶ月前は歩いていた土と砂の道を再び歩きはじめる。あの時は三人だったが、今では二人しかいない。だが距離も短い。それでもこうやって二人で歩いていると、どうしても三人で歩いていた時を思い出してしまう。

 ……たぶんだが、その寂しさは表情に出てしまっていた。いや、寂しさというよりは不安だろう。

「キリト」

 ユージオの声が横からかかってくる。どうやら少し心配させてしまったらしい。が、大丈夫だ、と教える為に片手を持ち上げ、自分の元気さをアピールする。……納得はしていないだろうが、それで許してくれるユージオはとことん甘いと思う。が、その甘さは実に危うい。目的とは別の所でブレるという意味だからだ。まあ、その心配をいまする必要はないだろう。ともあれ、問題は別だ。


 ―――最上正樹と連絡が取れなくなった。

 最初はちゃんと手紙が来ていた。近況報告、央都で見つけた事、どういう場所だったか。戒に似た鍛冶屋や、ベアトリスらしき人物が学園にいた事とか、そういう情報には助けられていた。何せ、この世界に関する紛れもないヒントを送ってもらっていたからだ。だが急にその情報が来なくなった。いや、正樹の安否自体解らなくなった。無茶をやって掴まったのか、もしくはそれどころではないのか、少々不安にもなる。

 が、あの一族、兄弟そろって限界突破するレベルで無茶をするので恐ろしくもある。あの兄弟、一度やると決めたらとことん妥協を許さない異常な精神力してるし、発想も結構ぶっ飛んでいる。それだけならまだマシだが、何故か自己犠牲精神までついてくるので恐ろしい。味方でいるとこれ以上頼もしく怖い存在だ。こうなって考えてみると十中八九無茶しているに違いない。そしてあの兄弟が無茶すると百パーセント結果がカオスになるので実に頭が痛い。

 忘れはしない、アインクラッドとアルフヘイムでかましてくれた数々の無茶を。カオスを。そしてインフレを。

 少しだけ胃が痛くなってきた。アインクラッドでカオス兄が姿を消した時はPKや盗賊ギルドが皆殺しにされてた時だ。それを弟の方が再現するかどうかはわからないが、それレベルのイベントでなければいいなぁ、とは思う。まあ、祈るだけは無料なので祈っておく。とりあえず知り合いが平和でいますように。

 これが某漫画であれば”その願いは叶えられる範疇を超えている”とか言われそうな気もするが、祈るだけなら何も悪くはないはず。

「キリト? 若干顔が青いよ?」

「ごめん、昔の参事を思い出して少しブルーになってただけだ」

「一体過去に何があったんだ……?」

 ユージオも、まあ、少しはツッコミを入れられる程度に心に余裕があるのはいい。だがその目を見れば覚悟の決まった男のものであると解る。そういう目をしたやつ程ロクな事をしないのは経験上良く知っているので、ますますユージオから目を離す事が出来ないな、等と考えつつ土の道を歩く。

 ルーリッドから離れて都会へと近づいていけば周りの交通量が増えているのが解る。ルーリッドは流石に辺境過ぎたのだろうが、既に見えてきているザッカリアともなれば違う。距離的にはルーリッドよりも遥かに央都セントリアに近いザッカリアは盛んに交易を行っているだろう。

 土を踏み、空気に混じり始める熱気の匂いを感じ取る。十分に早い時間に農家を出たつもりだったが、それでもザッカリアは既に熱狂に包まれているようだった。年に一度行われるザッカリアの剣術大会。それは辺境の村の少年にとっては剣士になる為の門だ。ここで良い成績を出せば目を付けられる可能性はあるし、優勝すれば警備隊に所属できる。そこで半年ほど経験を積めば央都の学園の方に推薦を送ってもらい、入学する事も出来る。いわゆるエリートコースの始まりがこの大会だ。

 推薦枠は二つ。決勝戦に残った二人にのみ与えられる。

 なら決勝戦で戦いあうのは俺とユージオでなくてはならない。

 まあ―――自分とユージオ以外が残るとは思えないが。

 まず一歩だ。この大会で優勝する事によって央都への道は開ける。央都へと到着すれば正樹の消息を掴む事も出来る。故に焦ってはいけない。焦りは簡単なミスを生む。ゆっくり、令達なほどに頃を落ち着ければ―――それでいい。

「キリト」

 ユージオが歩きながら話しかけてくる。

「どうしたんだ?」

 ザッカリアの門のすぐそばまでやってくる。門番が見えてきたところで荷物の中からルーリッドの村長の推薦状を取り出し、それを準備しながら門を通ろうとする人間の列に並ぶ。やはり朝早くにやってきて良かった。まだ早い時間なのに、既に入ろうとして行列ができている。

「……なんか緊張してきた」

「あー……。ユージオ、人込みは初めてだっけ」

「う、うん。ほら、僕って今まで村から出てこなかったからさ」

「まあ、心配する必要はないと思うけどな? だってほら。剣を握って相手を見た時はどうする?」

 え、とユージオは呟いて一瞬悩んでから答えてくる。

「相手だけを見て集中する―――あ」

「そういう事。周りを気にしなくなるさ」

「そう言えばキリトの剣に集中し過ぎたら、何時の間にか木が後ろにあったなあ……なるほど、そういう事だったんだ」

 まあ、本当はそれではいけないのだが。SAOでの冒険ではほとんどソロだったため、索敵スキルを使って常に周辺を注意しながら戦っていたものだ。ソロだと一番怖いのは囲まれてしまう事だ。だから常に三次元的に位置を把握し、自分と敵の位置を調整しながら戦わなくてはいけないものだった。だからユージオに行ったことはまだ未熟な間にしか許されない事、一対一の戦いでしか許されない事だが、まあ、それぐらいはいいだろうと思う。実際今すぐ整合騎士と戦えと言っているわけではないのだから。まだ数年、ユージオには未熟を拭う時間がある。

 ……自分もこのままではいけない。もっと強くならなくてはならない。

「なんかキリトと話したら楽になったよ」

「そりゃどうも」

 笑いあいながらザッカリアの門番に推薦状を見せ、街の中へと入って行く。今年は挑戦者が多いらしく、並んでいる人も多い。故に登録は早めにしろとのお達しを受け、ユージオと共に街を楽しまず、小走りで会場へ登録の為に奔走する。





「や、やばい、て、手が震えてきた……!」

「はぁ……」

 登録を終わらせ、ザッカリアの剣術大会の登録を終わらせ、大会の控室へとやってきたのはいい。だがそこからが問題だ。ユージオのメンタルが異常に弱かった。ユージオの型を組み、体を引き寄せる。

「おいおい、大丈夫かよ……最初、演武だぞ?」

 この世界、アンダーワールドでの剣術は基本的に”型”が存在し、それを重視する傾向にある。それは調べれば簡単にわかる事であり、この型の完成度の高さを持って採点が施されるのが大会の第一部なのだ。半年前から既にどの”型”が採点対象になるかは発表されている。だから後はその型の感性素を極限まで高め、ミスなく演じればいい。それだけだが―――予想外に多くの人間に見られているという事がユージオにとっては問題だったらしい。軽く大会の会場の様子を見たが、百人を軽く超えるだけの観客が会場に押し寄せていた。確かに今まで村から出た事がなければ緊張したりもするだろう。

「いや、まあ、目を瞑ればいいんじゃないかなぁ」

「それでも視線は感じるよ! なんというか、凄く……恥ずかしい」

「まあ、その気持ちは分からなくはないんだよなあ……」

 学校でスピーチをする為に前に立つ時の感じだ。自分で用意された内容が笑われないか、そういう思いを抱いてしまう為に生まれる不安感だ。ここら辺は本当に慣れしかない。この半年間、ずっとユージオにつきっきりで剣術とメンタル面の面倒を見てきたが、どうだろうか。

「うーん、ユージオは剣術に関してなら絶対俺を超えるだけの才能を持ってるんだけどなぁ。二部の試合形式に入れば確実に残るのは確信できるんだけど……」

 それだけの力量をユージオは持っていると確信できる。だがその前に豆腐メンタルだったっぽい。覚悟が決まっている分、戦闘となれば大丈夫だが―――こういう経験、現代社会であれば学校などでまず経験刺せるものだが、まだ時代が古い事に設定されているのが仇となったか、ユージオには大勢の前に立つ経験がない。

 と、それで思い出した。

「そういやあお前、ルーリッド出る時えーと、何か勝負したよな。いっぱい見られていたのに」

「名前を言ってあげようよ!」

 そういうユージオも名前を思い出そうとするそぶりも見せないので同罪だ。ただそうだな、と呟いてユージオは首をかしげる。

「……気になる場合じゃなかったから?」

「なるほど。それどころじゃなくなればいいのか……!」

「まってキリト。昔から君がその表情を浮かべた時はロクな事がないんだ。ほんと、何を想像してるのかはわからないけど、止めてくれないかなぁ、舞台に立つ前に僕の胃が死にそうだよ」

「ユージオって化粧したら女装イケそうだから女装してそれどころじゃない状態にしようと思ったけど、駄目だったか……」

「やめて―――!!」

 ユージオが頭を抱えて楽しそうに悲鳴を上げている。いや、楽しいのは此方だけなのだが。まあ、これぐらいでユージオの気を紛らわそうってのが無理なんだろう。

「というか」

 ユージオは抱えた頭を持ち上げ、此方を見てくる。

「キリトはどうなんだよ! 演武とか覚えるのすっごい苦手そうだったじゃないか!」

「あぁ、うん。ほら。俺には心意あるから、こう、幻術的なので……」

「ずっる!?」

 いや、ずるいのは解るが心意の便利さに最近気づいて色々やっているのだが、これもまあ実力の内なので許されると思う。というか許されて欲しい。第一型ってなんだ型って。そんなものを実戦で重視するとか聞いたことがない。動きと言えば型にはめるのは言いが、実戦を繰り返して自分にフィッティングする様に最適に削って行き、一番無駄のないものを探すのが正しいものだろう。というかアインクラッドでの攻略組は基本そんな風に自分のスタイルを確立させているような連中しかいなかったぞ。型の美しさと完成度で剣士としての格を決めるとかなんだそれは。美しければ勝てるとでも思っているのだろうか。小一時間この基準を作った人物に実戦剣術の素晴らしさを―――。

「キリト、何となく怒っているのは解るからそこらへんでね? うん。今肩組んでるでしょ? それがだんだん首を絞めてくれるから早く解放してくれると大会前に死ななくて済むかなぁとか思うんだけど……!」

 ちょっとした怒りでユージオを殺しかけていた。危ない危ない。

「悪い悪い。いや、まあ、でもやっぱり……!」

「ストップ! 止まって! 死ぬ! 本当にこれ以上は危ない!」

 ユージオが凄まじい勢いで腕をタップしてくるので首を解放する。息を求めて口を開くユージオに対して謝りながら、軽く頭を掻く。あんまり使いたくない手段だが、こうなってしまえば使うしかない。

「ユージオ」

「うん?」

「解っているのか? ―――失敗したらそれだけアリスに会える可能性が遠のくんだぞ?」

「―――」

 そのことbを聞いた瞬間ユージオの顔色が変わる。覚悟の完了した表情。先ほどまでのふざけていた様子はない。スイッチを押したかのような一瞬の切り替え。これでいい。これでユージオは緊張も失敗もしない。触れたくはないスイッチだが、自分の計画も含めてユージオには失敗されては困る。

「気負いすぎるな」

「心は熱く、頭は冷静に、だろ? 解ってる。そう、そうだ。こんな所で躓くわけにはいかないんだ……」

 そういって呟くユージオの姿には危うさを感じる。大会開始のラッパの音を聞きながら、ひそかにユージオのこの考え方、精神をどうにかしなくてはならないな、と誰にも相談できない事を悩む。せめて正樹に連絡を取る事ができれば、とも思うが、ないものねだりは出来ない。

「こればかりは俺の課題だなぁ」

 呟き、腕を組む―――まずは勝ち抜かなくては、と思いながら。




 天狗道の住人でまともな精神してる人が主人公含めているわけないじゃないですかぁー!!
スポンサーサイト

| 断頭の剣鬼 | 15:29 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ユージオもキチガイになるのか楽しみなところです

| | 2013/06/11 20:53 | URL | ≫ EDIT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/412-78b41738

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。