陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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CCC-9

 魔性。彼女の魅力を表すのであれば、そう表現するのが何よりも正しいと思える。そしてその認識は決して間違ってはいないと思う。息遣い、足運び、姿勢、目線。その全てが色っぽく、他人を魅入らせるような雰囲気を持っている。

 簡単言ってしまえば―――エロい。

 痴女だ。

 ち、痴女だ―――!

『ナイス二段リアクション。いいぞぉ、もっとやれぇ!』

 霊体化しているシャヘルが五月蠅い。こいつ、この女性―――殺生院キアラという女性がよほど嫌いらしい。霊体化中なのにひしひしと背中側からキアラへと向けての敵意を感じる。それを実体化せず、霊体化したまま発してくる辺り実に本気っぽい。まあ、彼女がこの校舎内にいる最後のマスターだ。とりあえずは挨拶をしてから、本題へと入ることとしようとし―――。


「では、まず言っておきますが、私は貴女方の手伝いをすることができません」

 申し訳ありません、そう言いながらキアラは頭を下げてくる。何故、とキアラに問うと、キアラは頭を横に振る。

「一身上の都合、としか今は答えられません。ですが、どうかこれを誠意としてお受け取りください」

 頭を下げていたキアラは頭をあげると、横の空間へと向けて声を放つ。

「アンデルセン」

 今、キアラは確かに”名”を呼んだ。そしてそれはつまり、

「ふんっ、この毒婦め。呼ばれたから出てきてやったぞ」

 損だいない態度と共に現れたのは英霊、英雄、―――サーヴァントであった。アンデルセン。青い服装の少年はそう呼ばれた。腕を組み、笑顔と共に自分の主たる人物へと毒を吐く姿は異様だった。

「此方が私のサーヴァントであるキャスターのアンデルセンとなります」

 殺生院キアラ。この女は頭がおかしい。

 戦わないから、その代わりに自分のサーヴァントの情報の開示をしているのだ。真名をバラすという事はステータスから宝具までのデータ、その全てを相手に調べられるという覚悟を持つことだ。それをキアラは迷うことなく晒した。

「アンデルセンは直接的な戦闘の出来るサーヴァントではありませんが、きっとお役に立つことでしょう、何か困ったことがあれば訪ねてください。直接的な介入は無理でしょうが、必ず力になれると思います」

 そう言ってキアラは申し訳なさそうな表情を浮かべる。その表情、実に申し訳なさそうで、そして魅了の魔法がかけられそうに美しい。傾国の美女という生物はおそらくこういう事をいうのだろう。行動一つ、仕草一つに見淹れられ、許してしまいそうになる。

 ―――まあ、同性なのでそこまで意味はないのだが。

 キアラから得られる最大限の譲歩がここまでという事は理解できた。ならこれ以上押しても困るだけだろう。アンデルセンとキアラに、困ったら存分に助けを求めに来る、と伝えたらアンデルセンは笑顔で、

「は、実に面倒な話だ! この女は働けないんではなく、働きたくないという欲求から動かないだけだ。実に愚鈍! 同情したり心配するだけ無駄だ、お前には他人を心配する余裕はないはずだ。この毒婦の事は同情も考えもせずにやる事だけを見て進め」

 キィン、と音を立ててアンデルセンが姿を消す。その様子にキアラが怒りを見せ、アンデルセン、と名を呼ぶが、少年の姿をしたサーヴァントは姿を現さない。その事に怒りを見せる様な姿をキアラを見せながら、申し訳ない、と再び頭を下げてくる。

「見た通り実に口の悪いサーヴァントですが、戦闘以外に関しては実に有能な所も持っています。では、アンデルセン共々よろしくお願いいたします」

 了解した。これでこの校舎に残った全てのマスターに挨拶をした。もうそろそろ生徒会へと戻り、レオに成果の報告とこれからの方針に関して話し合うべきなのだろう。では、と挨拶をしながら去ろうとしたところ、キアラの声に引きとめられる。

「あぁ、そうでした。最後に一つ、お聴きください。……私にはどうしてもここに我々をこの校舎に置いた人物がそう悪くは思えません。慈悲を持った人物であるようにどうしても思えてしまうのです。ただ、それだけをどうか覚えていてください。それだけです。邪魔をして申し訳ありませんでした」

 今度こそキアラと解れ、二階の生徒会室へと向かう。

 が、

『慈悲ねぇ……』

 エロ尼に毒舌ショタとか組み合わせが濃すぎるあの主従マジすげぇ、としか感想は残らなかった。

『そっちかぁ……』





 全てのマスターとの確認が終わり、生徒会へと戻ってくる。生徒会室の扉を軽いノックから開けると、そこには既に勧誘済みのマスターの姿があった。山盛りマッシュドポテトの前に椅子にロープで縛りつけられたシンジ、そして本棚の前で腕を組んで立つガトーとバゼット。最初から生徒会にいた三人を抜けば、月の裏側の校舎に存在するほとんどのマスターが集結していた。

「お帰りなさい岸波さん」

 レオが笑顔で長方形テーブルの反対側の席を手で示す。それがおそらく自分用の席だろう。椅子を引いて座るのと同時に、横に腕を組んで胸を支えるシャヘルの姿が出現する。そして、とりあえずシンジに視線を向ける―――マッシュドポテト美味しい?

「地獄だよ! 助けてよぉ!」

 恥も外関もなくシンジが助けを求めるとは珍しい―――もっと見たいので無視しよう。

「だいぶキャラ崩壊してんなぁ……いや、気が抜けてるだけか」

 うん、まあ、気が抜けてる、と言われたらそれはそれでしょうがない。何せ、今の生徒会室に敵は一人も存在しないのだ。ここに存在するのは全員味方で、殺し合う必要はない。あとで、此処から脱出すればまた戦いの世界へ戻るのだろうが―――それでも今は仲間であり、同じ目的を持った味方。彼らの実力は誰よりも自分が知って、見t目ている。これ以上なく心強い状況ではないか。

「そうやって信頼されるのは此方としても実に嬉しい事がありますが、我々から見れば貴女も”心強い味方”の内に入るのをお忘れなく」

 そう言ってから、レオは表情を引き締める。

「では簡潔に月海原生徒会の目的を言います。それはズバリ―――ここからの脱出であり、正規の聖杯戦争への復帰です。ごまかす事も茶化す必要もありません。この目的に関してはほぼ全員の賛同が得られるでしょう」

 ほぼ、とレオがいうのはジナコとキアラのケースを言っているのだろう。彼女たちは協力はしないし、積極的に表へと戻るようなこともしない。聖杯戦争に参加したマスターとしては実に異端的な行動をとってくれるものだ。

「ですが譲歩を得られただけでも十分だと思っています。僕や兄さんが交渉に出向いた時は話にすらなりませんでしたからね。あ、岸波さん、聖杯戦争が終わったら西欧財閥へと来ませんか? そのコミュ力の節操の無さを利用してネゴシエーターなんて職業を用意しますよ」

「レオ―――聖杯戦争で負けたら死んでいる」

「あ、そうでしたね。ありがとうございます兄さん―――ではまずはここでネゴシエーターを始めましょうか」

「結局は雇う気かよ!」

 シンジのツッコミが冴え渡る。それを聞くだけでも生徒会へと拉致させた意味があった。このボケ無法地帯にシンジというツッコミマシーンの存在は不可欠、そのうちハリセンでも作って渡しておこう。この旧校舎で猛威を振るってくれるに違いない。

「さて、そろそろ場が温まった所で真剣な話に入りましょう」

 レオが手を組み、肘をテーブルに乗せ、全体を見まわしてから話しを進める。

「現在の僕たちの状況はそう良いものではありません。旧校舎へと我々を押し込んだ黒幕の正体はわからず、記憶を奪われ、一部のマスターに関してはサーヴァントを封じられた状態でもあります」

 視線はシンジ、バゼット、ユリウス、と移って行く。彼らはこの旧校舎に存在するが、サーヴァントを引き連れていないマスターだ。この旧校舎で確認できているサーヴァントは三体。シャヘル、ガウェイン、そしてアンデルセン。どの英霊も全員真名を名乗っている異常なタイプの英霊たちだ。いや、真に異常なのは真名を公開しても問題ないと思うマスターの精神なのではなかろうか。

「―――事前調査のおかげでここからの脱出方法は解っています」

 レオがそう言うと、生徒会室の扉が開く。そうやって中に入ってくるのは―――白衣姿の少女、健康管理AIの桜だった。

「紹介します。皆さんはもう知っていると思いますが、健康管理AIのサクラです。彼女には僕の方から生徒会のバックアップを頼んでおきました」

「よろしくお願いします。皆さんが正しい聖杯戦争へと戻る事をサポートさせていただきます」

 そう言って頭を下げてくる桜の存在を受け入れてから、レオは桜へと話を引き継がせる。

「実はこの月の裏側から脱出する方法はあります。サーチをかけた結果、虚数空間に”泡”の様に浮かぶ構造体を発見しました。虚数空間の中に存在するという事で非常にもろく、存在が不安定ですが、いくつかの術によって存在を固定、中に進入する事が出来るようになりました」

「―――これを僕らは桜の木の下から通じる事を含め、サクラ迷宮と名付ける事にしました」

 レオが構造体の名前を口にしたとき、桜が恥ずかしそうに俯いて、顔を赤く染めているのが見えた。とりあえずレオへと視線を移せば、サムズアップを向けているレオと、ビデオカメラを片手に装備したガウェインがいた。あとでデータ寄越せよレオ、という視線を込めてサムズアップを返す。あぁ、解っているさレオ。今のお前は誰よりも輝いている。

「聖剣はどうしたガウェイン」

「ガラティーンなら休暇でカムランへと行きました」

 シャヘルとガウェインも何やらカオスな会話をしているが、深く踏み込むと頭がおかしくなりそうなのだスルーしておく。ともあれ、サクラ迷宮だ。それが―――。

「はい、先輩。その構造体を段階的に抜けていくことによって月の表側へと通じる”通路”の役割を果たす事が解りました。ここらへんはシャヘルさんとバゼットさんが入り口辺りから調べてくれました」

 シャヘルとバゼットへと視線が集まる。シャヘルは肩を揺らし、

「ただ目覚めを待つというわけにもいきませんからね。事後承諾となりますが、サーヴァントに一時護衛させてもらいました」

「俺が必要かどうかはすっげぇ疑わしいけどな。この女ヤバイよ。パンチでエネミーの頭粉砕するんだぜ……?」

 やだこわい。……が、調査でそれが判明したのであればいい事だ。怒る事はない。怒ってなんかない。

「ははは……あとで何かお詫びをお持ちしますね」

 タダでくれるとはバゼットも優しい。

「えー、ともかく。このサクラ迷宮を突破する事が月の表側へと戻るために必要な行動だと僕は思っています。ですので、岸波さんとシャヘルにはこのサクラ迷宮を二人で突破してもらおうかと思っています」

 ちょっと待て。それはつまり私とシャヘルの二人だけで迷宮を突破しろ、という事だろうか。

「はい、そうです。僕とサクラ、兄さんは生徒会室からサクラ迷宮へと潜る貴女をバックアップしないといけません。そうするとガウェインを動かす事も出来ませんし、バゼットさんには岸波さんとはまた別の仕事を頼もうと思っています。現状、サーヴァントを自由に動かせ、そして戦闘ができるのは貴女しかいないのです」

 それは解っているつもりだが、シャヘルのステータスはほぼ初期化されている。その状態の中でサクラ迷宮へいけ、と言われると少々心配になってくる。

「それならこちらでも把握しています。打開策に関しては既にいくつか出来上がっています。それに足りない状態から這い上がって行く―――それが誰よりも得意なのを僕たちは知っていますよ」

 正面から信頼されていると言われると実に恥ずかしいものがある。が、さて、そうだな。

「―――期待されているんなら頑張らなきゃ、ね」

 そう言って立ち上がる。その光景を見て、笑い声を零す者がいる。

「ふふふ、ハハハハハハ!! 良き哉良き哉! うむ、実に良い流れだ。皆が己の役目を理解し、そして真っ当しようとする。うむ、実に美しい事だが―――小生の仕事は?」

「トイレ掃除しててください」

「はーい」

 のそのそとガトーがトイレ掃除へと向かう。ガトーが不憫に思えるが、アレが暴れ回っても正直迷惑なだけなので、トイレ掃除して大人しくしてもらっていた方がまだいいのかもしれない。さて、自分もそろそろ役目を果たすべきだろう。

 立ち上がり、生徒会室を出ようと動きだいs多ところで、

「岸波」

 ユリウスの声によって動きを止められる。

 ユリウスが此方へと話しかけてくる様子は実に珍しい、と心の中で思っている自分がいる。おそらく月の表側ではあまり良い関係ではなかったのかもしれない。その証拠に、ユリウスと向かい合う時は少々緊張している。

 そして、

「―――ハンカチは持ったか? 水筒は持ったか? 非常食の準備は大丈夫か?」

「オカンかよお前!!」

 シンジのツッコミが生徒会室に響いた。そういやぁシンジがいたなぁ、等と呟きながら何かを喚く姿を無視しつつ、外へ―――。

「あ、あの、先輩!」

 桜の声に引かれ、振り向く。その光景にその部屋にいる誰もが驚き……一人、シャヘルだけが微笑ましそうな笑みを浮かべていた。

「そ、その、頑張ってください!」

「うん。ありがとう」

 桜の言葉に頷き、答えながら生徒会室を退室する。

 応援されちゃったのであれば仕方がない。頑張ろうかシャヘル。

「荒事はは任せろマスター。暴力という言葉の意味を見せてやる」

 頼もしい事を言ってのける相棒の言葉に苦笑しつつ、旧校舎の中を進んで行く。




 キアラとアンデルセンが結構難しい感じで。しかし月の裏側はホント平常運転ですねぇー。
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| 断頭の剣鬼 | 10:34 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

殺生院キアラの口調に若干の違和感がありますね。もう少しお姉さんぶってたような。
それにガラティーンが休暇って……。剣に休暇がいるのかと小一時間(ry

『サクラ迷宮と名乗る事にしました』
これって誤字、ですかね? 名乗るではな名付ける、の方が違和感がないと思います。

| 黒羽鴉 | 2013/06/06 18:27 | URL |

八歳児の方のシンジはいい仕事するなぁ・・・。
貴重なツッコミ要員が追加され、ますますカオスになってやがるっっ!

| 断章の接合者 | 2013/06/06 22:37 | URL | ≫ EDIT















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