陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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CCC-5

 桜を保健室へと運び、彼女の面倒を見てから十数分が経過した。いい加減家に帰るべきだと主張する桜に保健室から追い出され、ようやく自分が焦っていた事を思い出す。不思議だった。あの保健室にいる間は妙に落ち着き、心が安らぐ気がする。だがこうやって外へと出れば自分が何かに対して焦って、意味を思い出す為に左手の令呪を誰かに見せなくてはならない事を想いだす。その焦りと共に強い違和感を感じる。

 ―――何故こんなに暗い……?

 窓の外はもう既に夜になっていた。ゆっくりと歩みをすうs目ながら昇降口へと向かって廊下を歩く。まだ学生が残されている時間なのに、もう夜だと言っても差し支えない暗さにまで外は変わっている。夜になるのが早すぎる。それは間違いない。だがこの状況に対して違和感を持っている人間が一人もいない。その状況に対して、強い違和感を覚える。自分だけ。自分だけがこの世界を疑問に思っている。

 解らない。解らないけど、声を思い出す。痛みと共にやってくる声を。ここに吐いてはいけない。ここから抜け出さなくてはならない。ここは―――間違っている!

『―――残念、ここでおしまいです』

 そんな声が響いた瞬間、校舎はその世界を変えた。


「……!!」

 夜の世界に黒い異形が現れる。触手の様なもので校舎の床を侵食し、窓の外を見ればありえない数が地平を覆っている。そうやってゆっくりと近づいてくる黒い集団。それは間違いなく私を見ていた。突然の異常事態に体が硬直する。なんだ、これは。なんなんだこれは。こんな場所ではない。ここは間違っている。ここに、私はいるべきではない。徐々にだがここは正しくない場所だという認識が自分の中で広がって行く。ここは自分が本来いるべきではない場所。

 ―――アイツがいないここは私の居場所ではない。

 そう認識するのと同時に走りだそうとし、動きを止める。廊下、教会方面も用務員室方面も、どちらも完全に黒い異形によって埋められており、そして地下へと向かう階段は完全に黒い液体の様なもので埋まっている、先へは進めない。なのに、二階への階段は異形が立ちふさがるように立っている。たった一体だけだが、触れたら終わる―――そんな予感が自分にはある。

 だからこそ、次の行動には驚かされた。

「ぬおおおお―――!!」

 人影が教会方面の廊下から飛び出し、階段の前に陣取っていた異形を吹き飛ばす。その粗暴な姿を私は知っている。

「えぇい、小生見るではない! 行くべき所があるのだろう! ならばさっさと行かぬか!」

 異形を吹き飛ばした人物と、その先を見ようとして言葉で制される。教会にいたはずの男が何故―――。

「ふ、男に女を救わぬ道理があるものか―――ここが偽りと感じるのであれば行け、振り返るな。一時の夢に溺れるのも良かろう。しかし、ここはお主の居場所ではない」

 何故、とは問うまい。その心意気を無視するわけにはいかない。だが彼も”違う”という認識は強い。―――そこから彼は脱出できたのだろうか。いや、違うのはこの世界の全てだ。人も、物も、場所も、すべて違う。階段を駆け上がると、追いかけてくるように一階へと通じる階段が黒い液体に染まり、埋められる。―――こうなれば、教会にいたあの自称ウルトラ求道僧も、そして保健室の桜も無事ではあるまい。この世界が違うと認識しておきながら、唇を強く噛む事を止める事は出来なかった。

「―――うわぁぁああ―――!?」

 そんな時、声が響く。声の主、廊下の方へと視線を向ければ、教室前の廊下で黒い職種に掴まり、体が黒く染まって行くシンジの姿を見る。

「クソ! クソ! クソ! どういう事だよ! やっと思い出したのに、思いだせたのに! こんなの聞いてないぞ! おい、助けろよ! 誰か助けろよぉ―――!」

 毒づきながら必死に逃れようとし、飲み込まれて行くシンジの姿を見つける。彼は此方を見て、姿を捕捉する。

「助けろよ岸波! 僕は、僕はまだこんな所で消えるわけにはいかないんだよ! 消える器じゃないんだよぉ!!」

 必死に助けを求めているシンジ。その姿はもう手遅れだ。手を伸ばしても助けられない事は明白だ。逆に触れれば自分も取り込まれそうになるだろう。助ければここで終わりだろうが―――迷うことなく駆け寄って、シンジの腕をつかむ。自分がダメになるとかどうした。

 友達を見捨てる程薄情な人間のつもりはない。

「……」

 腕をつかんだ瞬間、シンジは言葉を発さなくなる。だが腕は伸ばしたままだ。都合がいい。このまま力を込めて全力で―――。

「はっ!」

 不意に衝撃を受けて突き放される。シンジは笑みを浮かべて此方を見ている。

「何をやってんだよお前、馬鹿じゃないの。もしかして俺の事を友達とか思ってた? あーあー、ほんと救えないな、お前。レオと仲がよさそうだから一緒にいてやっただけだよ。お前何かホントにどうでもいいんだよ。……だから―――早くいけよ。どっか行っちまえよ。クソ! 早くどっかいけよぉ―――!」

 涙をためて、シンジがそう叫ぶ。彼も”違う”のだろう、と冷静に分s系している自分がいる。

 だがこうやって行っている事は間違いなく真実だ。

 それを疑ってはならない。

 行け、消えろ、さっさとどっかへ。そうやって涙をためながら叫ぶシンジの姿をもう視界で捉える事は出来ず、目を閉じて三階へと向かって全力で走る。後ろに聞こえる悲鳴や暴言は全て耳を塞ぎ、ただただその心を無駄にしないために振り返らず三階へと走り上がり―――三階以下の階層が全て黒に埋まる。もう、逃げるしかない。ここから逃れるしかない。

『無駄ですよ。ここに逃げ場なんてありません。諦めちゃいなさーい、くすくすくすくす』

 此方に諦めろという声が響いてくる。だが決してあきらめない。息を整える間もなく、三階から屋上へと向かう。下へ逃げる場所はもうなく、ひたすら上へと目指して逃げるしか道はない。だから振り返らず、あきらめず、ただひたすら上を目指して走る。

『無駄な事が好きですね、先輩は』

 声を無視して屋上の扉を蹴り開ける。そのまま屋上へと踏み出し、周りを見る。月すら見えない月海原学園の夜。そこへと到着し、呼吸を整えようとすれば悲鳴が聞こえる。

「何よこれ―――」

「いやぁ、放してぇ―――」

 自分以外の者すべてがあの黒い異形に掴まり、飲み込まれて行くのが感覚として伝わってくる。今現在、それが起こっている事として認識できる。だが、ここも安全な場所ではない。周りを見渡せば、そう。既に屋上も囲まれている。黒い、影のような異形。彼らが屋上の端から此方へと向かって迫ってきている。

『これにてゲームセット。足掻くだけ無駄ですよー。さ、あきらめて受け入れましょう? そしてもっと深い眠りへと落ちましょう―――』

 優しいような、それでいてどこか恐怖を感じる様な、そんな声だった。異形から逃れる様に自分の姿をフェンスまで後退させる。それを見ても歩みの速度は変わらず、ただひたすら異形達はゆっくりと迫ってくる。

 なら。

 フェンスを掴み、体を持ち上げる。そのまま屋上の給水塔が置いてある入り口の上へと飛び移る。それが終わるころには異形達は先ほどまで自分がいた場所に到達している。本当ん委何時の間に、というタイミングだった。あと少し上へと逃げる判断が遅れていれば―――。

『ああーあ。逃げる場所がもうないですよ? さ、あきらめて大人しくなりましょう』

 あきらめる? 大人しくする?

 何を馬鹿な事を言っているんだ。

 フェンスの外側を見る。

 そこにはくろとはまた別の黒がある。その黒円卓がまた別の黒であることは解っている。それを見ただけで覚悟が決まる。本当にばかばかしい。諦めるとか、大人しくするとか、ほんと舐めないで欲しい。自分をここまで追い込んだのであれば、この天の声の主は解っているはずだ。

 岸波白野という人間はとことんあきらめが悪く、そして相手の言いなりになるのが嫌な馬鹿なやつだと。追い込まれたのがどうした。絶望的な状況がどうした。どんな状況でも前に進む事を止めない事が岸波白野という少女の唯一の誇りではないのか? いや、唯一の取り柄なのだ。こんな状況でそれを止めるのはとんでもない。何よりも、

 そう簡単に言いなりになるのはムカつく。反抗するならとことん。

『ッ! ダメ!』

 声が焦っている。が、体は既に動き出している。異形達が素早く動こうとするが、その頃には助走は終わっている。

 全力の助走と跳躍。体がふわりと浮かぶのは一瞬だけ。

 フェンスを越え―――体は落ちる。

 声はもう聞こえない。視界に学園の姿は映らない。

 体は永遠に闇の中へと落ち続け―――私はここにたどり着いた。





 そう、始まり。これが始まり。思い出した。私は呼ばれていた。目を覚ませ、と。

 私は落ちていたのではなく―――逃げて、此処にたどり着いた。

 永遠に続く闇。永遠の虚空。ここには何もない。何も存在しない。だから一度落ちれば永遠に落ち続けるだけ。そこに私は逃げ込んだ。あの偽りの世界を否定するために。私が私である為に。もう忘れ続ける事なんてできない。彼/彼女は私をあの中でもずっと呼んでいた。今更ながら、何故あの相棒の事を忘れられていたのか不思議でしかない。

 あぁ、だが、思い出した。口を開いて名を呼ぶ。

「―――」

 声が出ない。そうだ。この空間に時間の概念なんて存在しない。だからもう、何年ここで過ごしていたのかさえ解らない。だから目も、口も退化している。全く機能しなくなっている。

 だから心を燃やす。

 その熱を全身に送り込む。

 手と足に、少しずつ感覚を送り込んで行く。体に命を吹き込み、動けるように知覚能力を広げてゆく。そして、少しずつだが口を開く。まだ声は出ない。だが口をは動く。少しずつ、少しずつゆっくりとだが耳を澄ませて名を呼ぶ。

『白野! 聞こえるか!? ここまでが限界だ、俺を―――』

「―――ぁ」

 聞こえる。ずっと呼んでくれている人の事が。ずっと手を差し伸べてくれていた存在が。さあ、あとは此方から手を伸ばすだけだ。距離も時間も関係ない―――ずっと守ってくれると約束してくれた。だから、常に傍にいる。思い出す事の出来る名を口に、枯れていた喉に熱を込め、全力でその名前を叫ぶ。

「来て、シャヘルッ!」

「―――おうよ」

 瞬間、世界が割れた。

 闇しか存在しなかった世界に光が満ち、星空が見える。全方向を光で満たしている。まるで無限の星空を落ちてゆく様な、そんな感覚と共に、伸ばした手を握る存在が現れる。

 蒼い髪、赤い衣、黒のスラックス。彼の姿は何処までも変わらない。その頼りになる姿は常に心に、そして魂に刻んできた。その姿が今、自分と同じ場所にいた―――もう、それだけで十分だった。

「よぉ、マスター。相変わらず寝坊助さんだな」

 そんな風に憎まれ口をたたいてくれるものだから、こんな状況でも笑みがこぼれてしまう。そして口に出して答える。

「ありがとう」

 助けてくれて、来てくれて、名を呼んでくれたありがとう。おかげで私はあの世界から、あの偽りの夢から目を覚ます事が出来た。

「はっ!」

 彼はそれを今更だ、と言って笑う。

「ほんと今更だよ。敵からも、味方からも、ムーンセルからもお前を守る―――どんな形であっても、なりふり構わずお前を守る。それだけは誓ったからな」

 そう言ってほほ笑む彼は此方の握った手を離す。

「さ、目覚めの時だ白野。いい加減嫌な夢から覚めて朝日を迎えよう」

 いや、朝日を迎える必要はない。こうやって自分から迎えに来てくれたんだから。……だから、そう。

 いい加減夢の終わる時間だ。

「目を閉じて、此処から出る事を願えばいい。それでこの悪夢も終わる」

 彼、シャヘルの言葉に従い、目を閉じる。そして願う。この時間の終わりを。いるべき場所への帰還を。その願いと共に意識は遠のきはじめ―――そして意識が消える寸前、彼の声が虚無の世界に響く。

「―――あぁ、いっぱい話そう……失ったものを取り戻さなきゃならないからな」

 それがなんなのかを問う事は出来なかった。

 その前に―――悪夢は終わりを告げた。




 いよいよプロローグの終了です。次回から変わり果てたサーヴァントの姿、そして原作よりも更に2割増しカオスになった校舎をどうぞ。
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| 断頭の剣鬼 | 15:05 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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