陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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CCC-4

「予想の斜め上ですね!」

 最近レオがツッコミを入れる時はこれをよく聞いてる気がする。たぶんだがレオ、このリアクションを気に入ったのではないかと思う。その真相はレオしか知らないし、別に知りたくもないので、レオのこのリアクションは完全にスルーするとして、問題は友人Aではなく友人Bの方だ。今日も海藻ヘアーが活き活きとしている友人Bこと、間桐慎二は授業中が始まってから、そして休みが始まるこの時間までずっと虚空を眺め続けている。

 おーい。

 軽くシンジの前で手を振ってみるが、全く反応を示さない。というか気にしてない。駄目だ、この男、完全に脳をやられてしまっている。もうこのままでいいと思う。


「完全にチャームされていますね。ここまでシンジが骨抜きにされるのも珍しい話ですが、ついに春ですか」

 そう言えばそうだった。シンジは黙ってればそれなりにイケメンだし、頭もいい。それなりに女子にチヤホヤされているシンジがここまで一人の女性に向かって情熱を向けるのもまた珍しい話だとは思う。レオはあきれた表情を見せながら、結構楽しそうにシンジを見ている。

「まあ、シンジの短い春に関してはそろそろ次の授業が来るので放置しましょうか」

 ―――次の授業、と言う言葉で把握した。そこで鐘がなったのでレオに短くあいさつしながら席へと戻る。まだトリップ中のシンジに対して軽く合掌し、冥福を祈ると、直ぐに教室の扉が開く。相変わらず時間には厳しい先生だと思いつつ、扉から入ってきた先生―――バゼットの姿を見る。

「起立!」

 クラス委員長の声で全員が立ち上がる中、未だにトリップ中のシンジだけが立ち上がらない。バゼットはそれに対して声を向けるまでもなく、黒板に設置されてあるチョークを数本手に取り、

「フラガ・ラック!」

 全力でそれを投擲した。

「ごっ」

 姿を消してシンジの額に命中したチョークは接触と同時に爆発し、シンジの体をクラスの後ろへと吹き飛ばし、気絶しながら仕事を終える。満足そうに頷くバゼットの姿に軽い恐怖を覚えつつ、委員長の声で椅子に座る。

「はい、己に与えられた事をちゃんとやらない生徒には愛ある鉄拳で応えます」

 相変わらず愛を知る前にあの世を知りそうになる先生だ。





 一日の授業の全てが終了してもシンジは白目をむいたまま倒れていた。不憫な話だが、シンジが悪いので同情とかは一切ない。ただ通り過ぎるクラスメイトに時折合掌と冥福を祈られながら、朽ちたシンジを放置して皆は帰って行く。それは自分やレオも違いはなく、授業が終われば後は家に帰るだけだ。教室から出たところで、葛木先生がやってくる。

 いつも通り、レオを迎えに。

「レオ」

「えぇ、それでは岸波さん、また明日」

 うん、また明日。自分もレオにいつも通りの別れの挨拶をして、明日も学校で会おうという約束をする。レオが柔和な笑みを向けて、葛木と共に一階へと降りてゆく。その光景を眺めている。―――不意に、胸を締め付ける痛みを感じる。何故だろう。レオと葛木が一緒に歩いている光景、レオが葛木を見て、楽しそうに話している。その光景がとてもありえないものに見えて、何故か物悲しくなってくる。あんなもの毎日見ているはずなん井、ありえないものを見ている気がする。

「―――ハクノ」

「え?」

 声を聞いて振り返る。そこにいたのはスミレ色の髪の、褐色の少女。メガネをかけた、制服姿ではない少女。彼女を知っている。

「ラニ」

 ラニ。ラニ=Ⅷ。たしか前、事件があったのだ。ラニと、そして凛を巻き込んだ事件。そんな事件があった気がする。そしてその事件をきっかけにラニとは仲良くなった、そんな気がする。そう昔の事ではないのに、なぜか妙に懐かしく感じる。

「一体どれだけ長く寝ていれば済むのですか」

「え?」

 現れたラニは感情豊かに此方をしかりつけている。―――これもまた違和感がある―――ラニは本当に怒った様子で此方を見て、そして仕方がないから許すという言葉を告げてくる。

「では私は言いたい事を言えましたので、先に行っていますね」

 そう言ってラニは現れたと思ったら廊下の奥へと歩いて行った。その姿が廊下の先へと歩いて行く、消えるのを見て―――思う。

 ―――何をしてたんだっけ。

 軽く頭を掻く。確か今、誰かと話していた。そんな気がしたが……それだけだ。もうレオもシンジもいないのだし特に話す相手などいない筈だ。今日の授業もそこまで難しくはなかったし、日差しの暖かさにやられて少し寝ぼけてしまったのだろうか? それとも白昼夢でも見ていたのか自分がほんの数秒前までやっていた事を思い出す事が出来ない。

 まあ、特に問題ないだろう。

 どうせ日常は変わり映え―――。

『―――野! ―――ソ、駄―――』

 脳をノイズが襲う。酷い痛みを一瞬だけ感じる。まるで中身をかきまぜられたような、そんな感じだ。だがその痛みは直ぐに消え、今度は痛みが左手の甲へと移る。一体何事かと、そう思い、手の甲を見れば―――そこには見慣れた/見慣れない痣が出現していた。それもただの痣ではない。まるで剣の様な紋様の痣だった。そして痛みと共に現れたそれは、一瞬の光を見せ、

 そして痣の一角が消える。

 その意味は解らないが―――解っているが―――これは見るべきではないと誰かが自分に告げている気がする。

『―――ろ! くっ―――フレ―――破損―――』

 ノイズが再び襲い掛かってくるが、それも次の瞬間には消える。自分の手に何かあったような気もするが、別に気にする事でもないだろう。ノイズも痛みも消え、心配することは何もないが―――ふと、会いたくなってきた人物がある。

 そう言えば今日はまだ遠坂凛に会っていなかった気がする。となれば帰る前に少しだけ彼女と話しておくのも悪くはないかもしれない。何故か解らないが、抑えていた左手首を解放し、近くを通りかかった生徒に凛の居場所を知らないかを聞いておく。

「遠坂? 彼女ならさっき教会の方へと行くのを見たよ」

 普段、というか高い確率で屋上で黄昏ているのが遠坂凛という少女のルーチンなのが、教会の方にいるのは結構珍しい事だと思う。ともあれ、教会の方にいるのであれば愛に行くのも問題ではないだろう。帰宅前に友人たちと話し合っている他の生徒達の姿の横を抜けて、階段へと向かう。ここへ来たときは青かった空も今では段々とだが、オレンジ色に染まってきている。もうそろそろ完全に夕焼け色に染まる時間なのだろうと考えつつ階段を下りる。

 一階の廊下も二階と様子は大差なく、どこの誰もが楽しそうに明日の話をしている。実際、学生にとっては毎日が祭りの様なものだ。この日常は非常に壊れやすいもので、ふとしたはずみで壊れてしまうもの。だからこそこの刹那を楽しんでいる。それを理解していなくとも、本能的に感じ取っている。

 ―――何故そう思っているのだろうか?

 そんな事が脳をよぎるが、すぐに忘れてしまう。廊下を歩き、保健室を横切り、そのまま中庭へと向かう。扉を開けて差し込んでくる赤い夕陽の眩しさに目を細めると、夕陽よりも赤い服装に身を包んだ女性を―――遠坂凛を見つける。制服ガン無視で私服で学校に来ている彼女を見間違えることはないだろう。世間では優等生なはずなのだが、いや、だから私服は許されているのだろう。ともあれ、彼女を見つけたので片手を上げて、凛の名を呼びながら近づく。

「ん? あぁ、白野じゃない」

 こっちに気付いた凛は腕を組み、教会の前に立っている。その顔は実につかれている、というか辟易とした表情を見せている。

「ほんとガトーってうるさいわよね。というかアレで本当に聖職者なの? すっごい疑問なんだけど。暑苦しいし、どこからどう見ても胡散臭いし」

 そう言う凛の言葉に頷くしかなかった。ガトー。臥藤門司。彼はこの月海原学園にある教会の管理人だ。ごった煮宗教家というか、

「ぬう? 今小生をコールするヴィーナスの歌声が聞こえた気がするが……む?」

 教会の扉から頭だけを出して周りを確認し、そして凛を緑色の髪の男―――臥藤門司が見る。そこで凛の胸を見て、実に残念そうな表情を浮かべてから静かに教会の中へと戻って行く。静かにパタリ、と閉まる扉。言葉を残さないガトー。静かな中庭。……そのリアクションだけで凛には十分すぎた。

「よし殺す」

 凛が軽い震脚を繰り出し、ガトーへの殺意を見せながら教会へと向かって踏み出す。……今の凛は確実に”あかいあくま”と呼べるに足る覇気と殺意に満ちた悪魔と化していた……これ以上凛に関わるのは此方の命が危ない。……凛とガトーに関してはそっとしておこう。

 不意に、夕陽が眩しく、目を閉じてしまう。そのせいか軽くだが涙が流れてしまう。目を閉じて、涙を制服の袖で拭い、顔を持ち上げる。

 ―――つい、先ほどまで誰かと話していた気がする。

 何か、少しずつだが気持ちが悪い感覚が脳をよぎる。まるで何かを忘れている様な気がする。まるで何かを忘れさせられている気がする。まるでなにかから隠されている気がする。吐き気がするのに、なぜ吐き気がするのか全く分からない。どこかに、何かに押し込められている。そんな気がする。そんな気持ち悪さを感じながらも、今できる事と言えば一つしかない。

 即ち帰宅。

 家に帰ればこの気持ち悪さも感じわるさも亡くなるだろう。風呂に入ってさっぱりすれば吐き気もきれいさっぱりと消えるだろう。

 そんな事を思いつつ、家に帰る為に校舎内へと戻る扉に触れ、そして開ける。

『白野―――!』

「っ、ぁっ……!」

 あまりに痛みに手を抑える。左手を確認すれば、そこには令呪が浮かび上がっている。良く見慣れたそれは一瞬光ると、一画その存在を失う。痛みに耐えながら手を掴めば、脳内に直接ぶち込んでくるかのように声が響く。

『惑わさ―――そこは違―――サーヴァントフレームの限界が―――時間がもう―――リセット―――』

 聞きなれた/聞きなれない声がひたすらこっちへと訴えかけてくる。駄目だ。まだ解らない。まだ思い出せない。何なんだろうこの声は。この意味は。またその感覚が消えてゆく気がする。駄目だ、早くこれを見せなきゃいけない。家になんか帰っている場合ではない。手に焼きついているこれを見せなくてはならない。

 シンジでも、ラニでも、レオでも、葛木でも、凛でもいい。彼らの誰かにこれを見せなくてはならない。見せれば―――思い出せる―――。

「―――っ!」

 痛みは現れた時と同様に唐突に消え、そしてその痛みの理由と意味さえも失われてしまう。残るのは言いも知れない不安な気持ちと吐き気。それを必死にこらえながら、”何か”をしなくてはならないという焦燥感に身を焦がす。焦燥感が募りに募って、感情が体の中で爆発しそうな気がする。時間がもう残されていない。早く、令呪を見せて、その意味を、絆を取り戻さなくてはならない。

 意味も解らないのに左手を抑え、校舎内の廊下を駆け足で歩く。周りでは雑談を終えて、帰宅する学生の姿で溢れ返っている。彼らが作る人込みに紛れながら進み、靴箱前までやってくる。そこから会うべき人達に会う為、進むべき場所を探そうとして―――動きを止める。

 ―――それは異様な光景だった。

 白衣の少女が倒れていた。

 靴箱の少し先、昇降口の前に、少女が倒れていた。

 長い菫色の髪、月海原学園指定の制服を着た少女。

 彼女は誰もが通る道にたれているのに、誰も彼女を見ていなかった。

 誰もが彼女を避け、踏み越え、彼女を見ていなかった。

 ―――あんなにも苦しそうに倒れているのに、誰も手を伸ばさない。

 だから。

「―――大丈夫?」

 走って少女に駆け寄る。間桐桜。保健室の少女。この学園の保険医。辛そうにして倒れている姿に駆け寄って、抱く。その光景を、桜は目を大きくし、驚いた様子で見ていた。

「……え……なんで……私は―――」

 なんでもどうしてもない。倒れている誰かを見かけたら手を差し伸べるのは当たり前の事だ。そんな事に一々理由はいらない。保険医の桜とは別に親しいわけではないが、そんなこと関係ない―――助けが必要なら助ける。それだけの話だ。まだ胸に焦燥感はあるが、それでも今はこれだ。他人を犠牲にしてまで急ごうとは思わない。桜の腕を自分の片に引っ掛け、桜の体を立ち上がらせる。少々重いが、無理なレベルではない。

「先輩、私が見えるんですか……?」

 馬鹿な事言う。こうやって触れている事が何よりもの証拠だ。一体何が起きているかh解らないが、まずは桜の事だ。

「……私世界から取り残されている感じがしたんです。あのまま、誰にも知られないまま、気づかれないまま、消えちゃうんじゃないかなぁ……て」

 おかしな事を言う。人間がそう簡単に消えるわけがない。

 このまま保健室へと運ぶので、もう少しだけ頑張ってほしい。

「はい、先輩……ありがとうございます」

 桜に肩を貸し、共に保健室へと向かう。

 人はそう簡単に消えたりしないと、それを伝えながら。




レオ君の飛ばしっぷりがすげぇ。そして教育(物理)。さて、次回辺りですかねぇ……。
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| 断頭の剣鬼 | 16:37 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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