陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第18話 見習い騎士世話になる

 ゆっくりと意識が覚醒して行く。

 手と足の先に痺れにも似た感覚の復活を悟るのと同時に、指先と足先を少しずつ動かしながら体を確かめて行く。手の指も、足の指も動く。少しずつ落ちていた瞼を開けて行く。光が入り、開けかけていた瞼を素早く閉じる。そこから何度か開けたり閉めたりを繰り返し光に慣れてきたところで完全に目を開ける。


 まず目に入ってきたのは白、天井の白だ。腕を動かして上半身を起き上がらせる。予想外に近い天井に頭を低くしながら周りの様子を見て、やっと自分が何処にいるのかそこで気づく。

「んにゃあ? お! 起きたかマーシュ」

 声のした方へ頭を向ければそこには私服姿のエリックが先日ウィルフレッドから貰ったグラビア雑誌に目を通していた。と言うよりも、アレは入寮祝いで自分の物じゃないかと一瞬思ったりもしたが、面倒な事になりそうで何も言わず、部屋を見る。部屋の中にはエリックのほかにも逆側の二段ベッドの一段目、その上で弓型のデバイスを布で磨くタカヤの姿がある。それ以外にはエリックしか居らず、ルシオの姿は部屋にない。

 そこで部屋が若干暗い事に、部屋を照らしているのが天井のライトだという事に気づき、急いで窓の外を見る。

 窓の外は暗かった。


                   ◆


「……え?」

 その日何度目かは解らないがその場で呆け、そして外を見るマーシュに対して下からエリックの笑い声が響く。

「マーシュ結構いいのを貰っちゃって気持ち良さそうに意識失っちゃったからそのまま運んじゃったけど、結局夜まで起きないとはなあ。こりゃあもう笑うしかないだろ。ハハハハハハハ!」

「冗談とかじゃなくて本当にもう夜?」

「残念だけど真実だよ」

 肯定するその声はタカヤのものだ。そちらの方へと視線を向けると、弓のデバイスを自分の横に置き、タカヤがマーシュに視線を合わせてくる。どうやらタカヤもそれなりに面白がっているらしく、その顔は愉快そうだった。

「マーシュがなんだか良く眠るからね。騎士ウィルフレッドもどこまで寝てるか試そうとか言ってくるもんだからそのまま放置してたんだよ」

「なんだか物凄く勿体無い事をした気分だよ……」

「はははは! 気にする事はないぜ。初日で新入りがノックアウトされんのは結構よくある事だからよ。あんま落ち込むな」

 エリックの声に励まされつつ、マーシュが二段ベッドから軽い跳躍と共に飛び降りる。飛び降りた際に少しからだが揺れるがそれでも問題なく着地し、マーシュが自分の格好を見る。それは修練場で着ていたジャージ服だった。あまり運動もしてないからほぼ綺麗な状態のままで、汗の匂いもしない。まあ、とタカヤが苦笑しながら言う。

「犯人が犯人だし仕方がないよ」

「え?」

 それはどういう意味か、と思ったところで言葉が続く。

「ルシオがやったんだよ」

 ルシオ、今この場にいないぶっきらぼうだがマーシュを心配してくれるルームメイトの事だ。マーシュは自分の記憶を掘り起こし、ルシオが他の見習い達とは違い、個人用のデバイスを所持していた事を思い出す。美しい、嫌みのない装飾の施された大剣型デバイスだった。それがストレージデバイスかアームドデバイスかは解らないが、ベルカの騎士を目指すのであればアームドの確率が高い。確か、その名は"エッケザックス"だったはずだ。

「あの大剣で斬られちゃなあ」

「"エッケザックス"、ルシオが実家から持ち込んだ唯一のもんでルシオ専用にチューニングされたアームドデバイスなんだぜ、アレ。しかもAI搭載型だから俺達が訓練用に使ってるデバイスよりも威力も処理能力も全てにおいてあっちの方が上。戦いになると結構テンションの上がるやつで加減とかも出来なくなってくるから思いっきりぶった斬った事結構心配してたぞ」

「アレは戦いの最中にぼぉっとしてた俺が悪い訳でもあるし」

「ま、だよね」

 肯定された。ここは普通不意打った方が悪い、となるはずの場所だが……なんとなく、マーシュはこの部屋の住人が"普通"の騎士見習いとは違う事に察しが付いていた。タカヤ、エリック、ルシオともにこの三人全員が何処か"特殊"な部類だと言う事は大体理解できた。ルシオに関しては年齢が一人だけ高く、そして戦闘力もズバ抜けて高いらしい。タカヤは騎士があまり使う事のない弓と言う武器を使用していた。銃がポピュラーなミッドチルダでは珍しい武器だ。そしてエリックに関しては騎士ウィルフレッドに同調していた時点で十分異端だ。いたって普通の人生を送ってきた自分が何故こんな所に入れられたかは解らないが……ともかく、この部屋の住人が普通ではない事は確認できた。

 ……と考えて、これで他の部屋の住人も似たような性格だったりしたら恥ずかしいのだろうな、とマーシュは考えた。

「はぁ、ところで今何時か解るか?」

「七時半だ。おめでとうマーシュ君。君は見事に晩御飯も昼御飯をスルーしてしまった」

「うわぁ……」

 先日到着して連れて行ってもらった食堂の食事が予想以上に美味しく、食べる事を期待していたマーシュとしてはかなりのショックだった。その場で項垂れているとエリックがしかし、とポーズを構えながらマーシュを指さす。

「しかーし! 私、エリック・ウィーゼルは凄く凄くすごーく! 友情に厚い人間なのですよはい。いいか、マーシュ。その耳の中を綺麗にして―――」

「そこのテーブルに晩御飯を持ってきたから食べるといいよ」

「あー!? 俺っちのセリフ―――!!」

 項垂れるエリックの横、部屋に置いてある木製のテーブルには上から紙がかかっているが、一人分の夕食が置いてある。晩御飯は共通して六時半と、結構微妙な時間になっているのだが、既に一時間が経過している。確実に冷めているだろう。だが、その味は変わらないだろう。

「悪い」

「気にするな」

「そうそう。ルシオが持ってきたんだし。"俺が必要だと思ったからやっただけだ"とか言ってるけど心配してるよ」

「流石ツンデレだ」

 ツンデレというのは良く解らないが、どうやらルシオにいらない心配をかけてしまったようだ。今日、無様を晒してしまった事を軽く後悔しながらテーブルの前の椅子に座り、紙を退ける。そこにはまだ湯気の立つスープとミッドチルダ風のパスタが置かれてあった。

「あれ、まだ暖かい?」

「ふふん、そこは俺っちの功績さ」

 エリックが偉そうに胸を張る。

「エリックは結構温度とかそういう関係の魔法が得意だからね。魔法で食べ物の温度を保ってくれてたんだよ」

「だから何でタカヤは俺っちが言おうとする事を先に言うんだよ! アレか、芸人が憎いのか! 芸人が憎いのかぁ―――!」

「いや、ちょっと鬱陶しいと思ってるだけだよ」

「うわ、良い笑顔見せながら言い切りやがったよこいつ……!」

 タカヤとエリックのなれた会話に笑みを浮かべ、スプーンを手に取りスープを掬う。こぼれないように気をつけながらそれを口に運び―――

「―――美味しい」

 こうやって美味しい物を食べられる事を持ってきたルシオ、そして温度を保っててくれたエリックに感謝する。


                   ◆


「―――ご馳走様」

 綺麗に食べ終わったスープボウルと皿など、食器類が残る。

「もう食堂は閉まってるっつーか見習いは入れないから明日の朝持ってくといいぜ」

「うん。そうするよ」

 それらを置いて立ち上がると自分の体をマーシュが確かめ始める。捻ったり指の先を開けたり閉めたりし、特に異常がない事を確かめる。その様子を見ていたタカヤが口を開く。

「マーシュ、これから体動かすのか?」

 あぁ、とマーシュが頷く。

「結局今日一日何も出来なかったし、それに見た感じ一番弱いのは確実だったし……残るためにも頑張らないと」

「マーシュは真面目だなぁ」

「ツッコミ属性が増えるのはありがたいけどね」

「ツッコミ属性って……」

 三人で笑いあいながらも、マーシュは自分の弱さを敏感に感じ取っていた。今年の騎士候補達は全員が全員優秀で、そして豊作と言われている今年で自分が一番弱く、そして誰よりも才能が無いだろう。だからと言ってそれを嘆くようなガラスのハートを所持しているとはいわない。

 だが、果たしてこのままでいていいのか、とは思う。

 そんなマーシュの考えを見越したかのように、エリックが片掌をマーシュに向けて突き出す。

「まぁ、ちょいちょい待て。時間的にもう直ぐのはずだから」

「?」

 エリックがそう言った次の瞬間にはマーシュの背後でドアがキィ、と軋む音を立てながら開く。マーシュが体を動かし背後を見やると少し疲れた表情のルシオがジャージ姿で部屋の中に入ってくる。無事に立つマーシュの姿を一目確認するとそのまま自分のベッドに向かう。

「無事だったか」

 ぶっきらぼうに言ってくる姿がエリックやタカヤの言っていた通りの姿で、どこかそれがおかしくて、マーシュが苦笑を漏らしてしまう。そんなマーシュの姿にルシオが奇妙な物を見るような顔をし、マーシュが口を開く。

「晩御飯有り難う」

「俺が満足する為だ。気にするな」

 そう告げるとルシオがベッド横のタンスを開き、服を取り出す。マーシュに背中を向けるようにしたまま、

「修練場へ行ってこい」

 それだけ言い、黙る。横目にエリックやタカヤを見ると笑いを堪えているような顔をしているので余計な刺激はせずに、有り難うとだけ告げる。服装は既にジャージ姿だし、これ以上必要な物は無いと確認してから部屋の外へと向かう。

「それじゃ、修練場へ行ってくるよ」

「行ってらっしゃい。遅くなりそうだったら好きにやってくれ。基本的に僕らは眠りが深いから」

「解った」

 そのまま部屋を出る。


                   ◆


 季節が春になったとはいえ、八時近くになると流石に空は暗く、完全に夜の闇が広がっている。夜の聖王教会は昼間のそれから雰囲気を一変させ、神聖な中にどこか恐怖を感じさせるものがある、昼間とはまた違う雰囲気に若干困惑しつつ、マーシュはまだ二回しか訪れていない修練場へと向かって道を間違えずに進む。

 鍵のかかってない修練場に踏み込むと、誰もいないはずの修練場には灯と共に誰かの影があった。

「ん? やっと来たか」

 聞いた事のある声だとマーシュは思い、即座に誰の物か思い出す。

「騎士……ウィルフレッド……?」

「もうちょいフランクにウィルで構わねえよ。まあ、適当に呼びやすい言い方を自分で見つけてくれ。騎士ウィルフレッド騎士ウィルフレッド。毎回長くて言い難いだろ?」

 赤毛のスーツ姿の男、ウィルフレッド・カーストが修練場の中央で待っていた。暗闇だというのに遮光効果をもたらすサングラスをつけたり、騎士服をつけないかなり外れた男。修練場へ行けとルシオに言われたが、まさかこんな大物が待っているとは思わなかった。思わずフリーズしてしまったマーシュの姿を見るとウィルフレッドは頭を掻き、

「あれ、俺が来るって言わなかったか?」

「あ、いや、いえ……ただ修練場へ行け、と」

「ルシオも口数が足りないなあ。まぁ、そこがいいんだけどな。ほれ、ちょっとこっちへ来い」

 そう言って手招きするウィルフレッドの方向へと歩く。冷静に見えるマーシュではあるが実際その頭の中はパニック状態寸前で、何故やどうしてという言葉が頭の中でグルグル回り続けていた。その状態のままウィルフレッドの前にまで歩くと、もしかして今朝あっさりとやられてしまった事を怒られるのではないかと、そんな考えが頭をよぎる。

 このまま、才能が無いから止めろと言われてしまったら―――

「痛っ」

 トン、とマーシュの額に軽い衝撃が走る。

 マーシュよりも背の高いウィルフレッドが人差し指でマーシュの額を小突いた衝撃だった。

「心配するんじゃねぇよ。別に叱ろうとって訳じゃねえよ。才能が無い事なんて一目見りゃあ解るし」

「あ……はい……」

「そう露骨に落ち込むなって、ククク」

 叱れるわけではないとわかった瞬間感じる安堵に自分は予想外にここを気に入ってるのだな、とマーシュが感じているとウィルフレッドが切り出す。 

「ま、"ご褒美"ってヤツだ」

 ご褒美、とは確か今朝の訓練の時にウィルフレッドが言っていた事だ。もし好成績を収める事ができれば何らかのご褒美を与えると。だけどマーシュは戦いの初めの方で気絶し、つい先ほどまで寝ていたので成績どころかほぼ戦ってすらいないのだ。

「聞いてないのか? 今現在、見習い騎士最強はルシオで、今日のバトルロイヤルの勝者はアイツだ。一人で半数以上やっつけてぶっちぎりの勝利だったぞ。いやぁ、勢いのある若者って怖いよなぁ……」

 純粋に凄い、とマーシュは感じた。個人用のデバイスを所持している時点で中々の実力者である事は理解できたし、強いとは思っていた。だが実際は予想以上だ。見習い最強とはいえたった一人で、制限があったとしても"豊作"と呼ばれる集団の半数を倒した。とてもだが付け焼刃の格闘術で入団したマーシュには想像も出来ない実力だ。

「えーと……そこに自分がどのような関係を?」

「何でも一つだけ融通してやるって俺が言ったらお前を鍛えてくれって頼まれたんだよ」

「……え?」

 今度こそ思考を完全に停止させる。

「本来なら糞面倒だからソッコで断ってシャッハ辺りに丸投げするんだけどな、基礎がある程度出来てるのに構えが酷すぎて話にならねえ。ま、弟子探しも完了して一息ついたし、俺の都合もあるから引き受けてやった。まだ日が浅いのに仲良くしてくれるルシオに感謝しろよ?」

「あ……はい」

 本格的にルシオには頭が上がらないな、とマーシュが思っていると背中を思いっきり叩かれ、前のめりに倒れそうになる。

「おら、時間はねぇんだ。お前に体術の基本的な構えと技は叩き込んでやる。そっからはお前一人で勝手に発展させろ。それ以上面倒を見る義理も余裕も俺にはない」

「は、はい!」

「うし、そんじゃ構えろ」

 そう言われマーシュはすぐさま構える。ミッドチルダでも最近スポーツとして人気が高くなってきた"ストライクアーツ"。公園へ行けばやっている人はそれなりに見かけるそれをインストラクターに頼むお金も無いので、見様見真似で覚えた構えだ。そのほかの動きも全部見たのを覚え、反復練習で叩き込んだ物だ。左半身を少し前に出すようにして、左と右の拳を―――

「うわぁ……なんだこれ……予想以上にひでぇ……」

 ドン引きされた。

「ほれ、ちょっとこう構えろ」

 ランプライトの中で、ウィルフレッドが構える。それはマーシュが見てきた事のある構えではない。左半身をほぼ完全に前に出す形で、左肘を前に突き出し、右肘を後ろに突き出す形で体は構えられている。すぐさまウィルフレッドと同じ構えを真似るようにとる。

「左をほぼ完全に前に出して、左肩から肘までは」

 ウィルフレッドに腕や体を掴まれ動きを強制される。

「ここまで完全に固定な。右腕も肩から肘までは固定。ただ左肘から先、コイツの力加減は緩くしろ。手が額の前に来るようにしろ。右肘から先は肘を叩き込むように真っ直ぐ、そうだその感じ」

 ウィルフレッドにとらされる構えはマーシュの知識の中には一切存在しない妙な構えだった。足の開きはあくまでも踏み込みやすい位置に指定されているあたり、あまり足技の多い構えではないのだと判断。

「あと拳を作るな」

「え?」

 ストライクアーツの肝とも呼べる拳を握るなと言われてしまった。思わず脱力してしまいそうな体をウィルフレッドの厳しい声が止める。

「構えを止めんな。いいか、拳ってのは本気で殴っちまえば簡単に砕けちまうもんなんだよ。それをデバイスやら魔力やらで色々強化してごまかしてるけど、基本的に拳は結構簡単に砕ける。自分の得物を簡単に壊す馬鹿はいねぇだろ? だから拳を握らずに指先だけを丸めろ。掌底は知ってるよな? それを放つ時のように緩い握り拳と掌底の中間を作るようにしてみろ……硬い。まだ硬い。そう、これぐらいだ。今のところは戦う時は掌底をぶち込めばいい。拳で殴り飛ばすのは骨や筋肉がもっと使いもんにになってからだ。まずは魔力を使わない素の身体能力に徹底的に型を基礎と共にぶち込む」

「はい!」

「うし、良い返事だ。とりあえずその構えから掌底千発やるけど、その前になんか質問あるか?」

 とりあえず構えてから聞いてみたかった事を聞く。

「これ……本当にストライクアーツですか?」

 ウィルフレッドが悪戯を成功させた子供の様な顔をし、エリックと似たようなポーズを取りながら宣言する。

「ストライクアーツじゃねぇよ。 ―――カイザーアーツっつーんだよ」

「…………………………………………え?」

 本日何度目かのフリーズをマーシュは味わう事となる。
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| 不良騎士道 | 13:09 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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