陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-44

 なにやらまた夢を見ていた様だ。ムーンセルでは夢を見ないとかいうが、結構よく見ている事もあるし、そろそろその言葉が本当かどうかを疑い始める。ただ、今の夢の内容がなんだったのかは理解できる。

 眠りが覚めて体を持ち上げれば、少しだが体が痛い、と感じる。毎回こんな所でセイバーを寝かしていたのだ。今度からはもうチョイいい所で寝かすべきかもしれない、と思いつつ起き上がる。間から差し込み光は何時も通り明るい。凛の姿もラニの姿もないが、ベッド眠るセイバーの姿だけは確認できる。

 ……その存在は昨日よりも希薄になっている、そう感じられる。

 確実にセイバーを構築している魔力が尽き始めている。元々サーヴァントの体はマスターにより供給されている魔力、そして体を巡る魔術回路によって構築されているのだ。魔力が体を作り、そして魔術回路が魔力を体に巡らせる。このうち魔術回路が破壊されているため、セイバーは魔力を全身に送る事が出来ない。そして自分との間に破壊された魔力供給用のパス、これがないのでセイバーに魔力を送る事も出来ない。


 起き上がり、セイバーの様子を見ようと端末を取り出す。が、

「お、起きたのか白野」

 ベッドで寝ていたはずのセイバーが起き上がり、ベッドから降りる。端末を慌ててしまい、セイバーの体をベッドへと無理やり倒す。この馬鹿は一体何をやっているのだろうか。

「何って、もう朝だぞ? もちろん朝食を作るに決まっているじゃないか」

 ―――こんな状態でも習慣を、何時もやっている事を守ろうとするセイバーに対して呆れて声もでない。このサーヴァントは基本的に奉仕的な資質を持っているらしい。率直に言えば馬鹿だ。こんな状態になっても同じことに執着しようとするとは。

「違う違う、こんな時だからこそ執着するんだよ、マスター」

 諭すようにセイバーは言ってくる。もう立ち上がるようなことはしない、ベッドのふちに腰掛ける様にして話しかけてくる。

「日常というものは凄く儚く、東特、そして美しいものだ。俺はそれを愛している。何よりもその刹那を守りたいと俺”達”は願った。この一本、この軸だけはどんなに回帰しようが変わらない。変わらなかった。だから生きている間は全力でどうでもいいような時間を守るために戦っているんだ」

 セイバーは笑みを浮かべながら、実に楽しそうにそう語っている。それは本当に好きな事を語っている様な、そんな顔だ。セイバーが日常や、くだらないどうでもいい時間を心の底から愛しているのは疑いようもない。だからこそセイバーは痛むはずの全身を無視して何時も通りふるまっている。馬鹿だ馬鹿だ、とは思っていたが、かなりの馬鹿だった。

 セイバーの額に軽くデコピンをかます。

「私が作るからセイバーは座っていて」

「マイルームを燃やす気か!?」

「殴るぞ」

 セイバーの発言に軽くイラ、っとさせながらもそれを抑える。何も今までセイバーが料理してきたとき、横になったり何もしていなかったわけではない。ちゃんとセイバーの作るところを見て、暇を見つけては練習してたのだ―――脳内でだが。

「ごめん、ちょっとマジで心配なんだけど」

 大丈夫、そこらへん切ってどうにかなる。ここムーンセルだし。

「食事は魔力を直接体内へと摂取する大事な方法なんですけどねぇ……」

 恐れるセイバーを無視して、部屋の隅に設置されているキッチンへと向かい、適当に作れそうなものを作ってみる。





 意外と何とかなるものだった。何時もの朝食と比べて味噌汁の味が濃かったり、少しパンが焦げてたり、目玉焼きの黄身が途中で崩れたからサニーサイドになったり、ちょっとしたトラブルはあったものの、心配するだけして、セイバーは絶対に手を出す事はなかった。なんだかんだ言って、このサーヴァントは此方の事を信頼してくれている。

 食べ終われば残された皿はただのデータだ。洗う必要はなく、消せばそれで終わる。セイバーはこれを洗う時が楽しいと言っているが、それは流石によくわからない事だ。

 と、ここで凛とラニが未だに来てない事を思いだす。というよりも、マイルーム全体から彼女たちの気配を感じない。何時もなら既に起きているラニと、そして人には見せられない様子の凛がのそのそと現れてもいいころあいなのだが。

「あの二人を探してるのか?」

 セイバーがベッドの上から話しかけてくる。流石に一回言われれば十分らしく、食事もベッドの上で済ませたセイバーは腕を組みながら此方に視線を向けてくる。まあ、何をしようとしているのかは大体わかる。大方気配察知で居場所を掴もうとしているのだが、それも却下だ。

「魔力を使わないぞ?」

 それでもだめだ。病人は病人らしくベッドで死んでいるべきだ。

「最初の頃はもうちょっと優しくて素直な無個性だったのに……」

 何があった、と言えば確実にお前のせいだ、と言ってやる。まず間違いなく自分の時間の9割はセイバーと共に過ごすところにある。だから何の影響を受ける、と言えば確実にセイバーが主犯ということになってしまう。お分かりいただけただろうかセイバーさん。

「うん。俺黙ってるよ」

 よろしい。

 と、言ったところであの二人の助けが必要なのは解っている。この状況で二人が逃げ出す事に対するメリットは存在しない。だからずっとどこかに出かけているという可能性が高い―――。

「端末、なってるぞ」

 セイバーの声で端末が音を鳴らしている事に気づいた。それも報告とかで鳴らす音ではなく、携帯電話とかで流れる様な少し軽いメロディだ。この端末、そんな音をだせたのか、等と少し驚きながら端末を手に取れば、そこから知っている声がする。

『あー、あー、あー。テステス。どう? 聞こえる?』

 端末を通して凛の声が聞こえた。この端末、通信機能がついているとか初めて聞いたのだが。

『え? もちろん寝ている間に拝借して改造したけど?』

「流石現役レジスタンス。工作が得意だなぁ。俺、そこらへんの小細工はレギオン任せだったから……」

 シャラップセイバー。凛も改造するのであればせめて許可を取って欲しい。生命線が知らぬうちに改造されたら正直シャレにならない。というかよく見たらこの端末所々デコレーションされてないか。

『私がしました』

 ホムンクルスてめぇ絶対無感情とかありえないだろう。確実に悪乗りしたな。

『はい、悪乗りしましたが何か?』

「諦めろはくのん」

 セイバーはセイバーで何やら新しいあだ名を思いついたわけだし。何か非常に混沌としている。混沌しすぎて今の状況がどんなものか忘れかけてた。そうだった、凛とラニは今どこにいるのだ。朝から見かけないし、如何したのか軽く心配したのに。

『あぁ、ごめんね? でも安心し―――寝ている間に体の方に治療方法インストールしておいたから』

「なにやってんのぉ―――!?」

 凛は私に恨みでもあるのか。人の端末弄ったり、勝手にインストールしたり、アレか、改造厨なのか凛は。流石の私もこれは怒りを持ってコードキャスト(物理)という手段に手を出さざるを得なくなる。

『待ってください』

 端末の向こう側からラニの声がする。ラニが止めに入るのか、そう思ったが、

『改造厨等という不名誉な名前は止めてください。私の為にもっと別の名前を所望します』

 貴様も共犯かラニ―――!!

『もちろんです』

 居候が知らない間に家主を改造する様になっていた。死にたい。凛もラニも流石に酷過ぎる。何かをするのであればせめて、せめて冗談でもなんでもなく一言事ぐらい言ってくれればいいのに! 知らない内に改造されているのはぶっちゃけ超怖いのだ……! まあ、ぶっちゃけそれだけなのだが。凛もラニも抱き込む以上は信用すると決めたから改造されたという事実自体はどうでもいい。信用するという事はつまりそういう事で、疑う事はしない。だから凛もラニも自分が有利になる様動いてくれていると信じる。

『……』

「……」

 帰ってきた返事は沈黙だった。端末もセイバーも黙った。どうしたのだろうか。

『―――まぁいいわ。後でそれに関して謝るわ。それよりもセイバーを助ける方法を知りたいのでしょう? 一回しか言わないわよ? しっかりと聞きなさい』

 端末から凛の声がする。彼女が端末を通し、説明を始めてくる。

『まず第一にセイバーを生かすためには二つの事をしなきゃいけないの。一つ目がセイバーの魔術回路の修復。これをしなきゃ基本的に何もできないわね。だけど修復を急がせることは不可能だって前に言ったわよね? だから修復じゃなくてセイバーの体内で魔術回路を新しく作るわ。それがまず一つ目の目標』

 一つ目、と凛は言った。もちろん他にもしなくてはいけない事はあるのだが。

『まあ、詳しい説明ははばくけど、セイバーの体内には貴女が四回戦の時セイバーに捧げたリソースが残っているの』

 そこで凛は黙り、此方も視線をセイバーへと向ける。視線を受けたセイバーは肩を揺らして反応する。

「あの時、白野から受け取ったリソースを使用したわけだが、完全に全部消費したってわけじゃねぇ。寧ろアレは力みすぎて余分にソース送り込んでたから激しく焦ったぞ」

 今度は此方が黙る番だった。だが端末の向こう側から凛はいい結果だったと言う。

「それを使うわ。ぶっちゃけセイバーは改変とか改造とかそういうのを凄く受け付けにくい体質、というか構成されているの。ホント蒼崎の改竄技術には驚かされるわ。妹の方ででもセイバーを改竄する事が出来るのから、姉の方の実力は想像もできやしないわよ……っと、これは関係のない話ね。まあ、貴女のリソースが存在している、と言うのが重要な点よ。セイバーは外部からの物体に対しては高い耐性を見せてるけど、パスを通して常に繋がっている貴女に対してだけはそういう拒絶を見せないの―――だから残ったリソースを魔術回路へと作り変えるわ』

 そんな事が可能なのだろうか。いや、凛がここで話を出している以上、それが可能だと判断したのだろう。それをステップ1と凛は言った。

『セイバーの魔術回路を修復したら今度はパスを繋げるわ。令呪をまだ一画残しているわよね? それが残っている限りセイバーとパスを繋げる事は難しくはないわ。魔術回路さえ復帰すればセイバーから繋げ直してくれるでしょう。で、最後に魔力の供給。自然に任せてたんじゃ何時までもセイバーが回復しないわ。魔術回路も追加するのは少数、そう早く回復できるものじゃないのよ。だからセイバー復活の為に直接魔力を供給してね』

 それが凛の説明だった。なるほど。実に解りやすく理解した。で、その手段とはいったいなんなんだろうか。寝ている間にプログラムをインストールした、と凛は言っていた。それが手段なんだろうが、プログラムを探るよりも口に出していってほしい。

『…………よ』

 端末からはもごもごした声しか聞こえない。あの強気な凛がここまで言いづらそうにするとはよほどハードな事なのだろうか?

『ミス遠坂が言いづらそうなので代わりに私がズバッと言います』

 凛の代わりに話を続けたのはラニだった。何故か端末の向こう側でラニがメガネをクイ、っと持ち上げる光景が見えた気がした。

『セックスです』

 ―――はあ?

『性交渉するのです』

 ―――はあ?

『体位はどれでもいいので―――』

 そういう問題ではない!! せ、セックス! それは全裸!

『そう、余分な服を脱ぐのです。それが正しい姿―――』

『ラニ、アンタの露出癖を他人に押し付けるな! あ、でも方法に関しては間違ってないから。性的な行動が魔術的儀式に関わるのはかなり昔からある事よ。ご愁傷様、というべきなのかしら? プログラム自体ははじめたら勝手に発動するから! じゃ!』

 凛、待てぇ―――!!

 叫ぶが端末の向こう側から返事はない。おそらくきられたか逃げられた。少々混乱しながらもセイバーへと視線を向ける。

 そうだ、セイバーだ。

 セイバーは既婚者ではないか。しかも娘までいるという話ではなかったか? そんなセイバーが自分の様な他の娘に……!

「白野、前にも言ったが俺は本体の、憤怒と狂気だけで世界を支えている俺とは違う。ここにいるセイバーは世界中の”俺”を収束させて生み出されたお前の為だけの最弱最優のセイバーだ。結婚も充実した生活を送ったのも本体―――ここにいるのは記憶だけを引き継いだクローンだとでも思ってくれ」

 なにより、とセイバーは言った。

「いい加減気づいてくれない鈍感なマスターの為にも言おう」

 何を、と言う前に、セイバーは言った。

「好きだ。愛している。お前の事を異性として見ている。心の底から惚れた。だから問題はない。オールオッケーだ。俺の方はずっと覚悟完了している。だから俺を言い訳にしないでほしい。答えは口ではなく行動で見せてくれ、マスター。君がいい女であることは俺が誰よりも知っている」

 ―――。

 ……。

 ……そんな事を言われてしまったら、自分にも逃げる事は出来ない。

 あぁ、そうだ。セイバー露骨すぎたし好意があった事など四回戦辺りから知ってたよ! こんちくしょう!!

「は、白野!? ブレザー脱ぎ捨ててどうしたの!? セイバーさん豪快な脱ぎ方に驚き!」

 ブレザーを投げ捨てて、今度はスカートを外し、それも適当に壁の方へ投げて叩きつけ、捨てる。自分もマスターである以前に乙女だ。―――ここまで言われたらもういい。此方も覚悟は決まった。

「セイバー!! 私もセイバーの事が好きだぁ―――!!」

「乙女とはなんだったのだろうか……」

 シリアスな空気とかは似合わない。何時も自分とセイバーはこんなノリだったのだ。

 だったら、一線を超える時も大体こんな感じだろう。

 私もセイバーも笑っている。ムードもへったくれもないが、もう、これでいい。

 ブラウスも邪魔なので脱ぎ捨てて、下着姿でベッドの前に立つ。そのままベッドに座るセイバーを押し倒す様に飛びつく。

「ホント乙女ってなんだったんだ!」

 セイバーに抱きつきながら、唇を合わせる。もう知らない。もう深く考えない。もうこうなったら―――あとはなるようになれ。この瞬間ぐらい聖杯戦争とか治療の為とか、そういう事を忘れて、

 愛に溺れたっていいじゃない。

 ―――乙女ですもの。




 実は端末ついたままです
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| 断頭の剣鬼 | 01:33 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

通話繋げたままって……。何、その新手の実況配信!?

| reficul | 2013/05/20 02:49 | URL |

最悪! 最悪でござるよあの娘共!?(あの忍者風に)

| アルフィード | 2013/05/20 06:57 | URL |

壁がいつの間にか消し飛んでたんだが・・・

はくのんさを益荒男過ぎませんかねぇ・・・?

| おk | 2013/05/20 08:50 | URL |

セイバー陣営の色気のなさに絶望。
もーちょっと、なんかあっていいんじゃないかな。
こう、視聴者サービス的な。

| 断章の接合者 | 2013/05/20 13:49 | URL | ≫ EDIT















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