陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-43

 走って走って走った。途中で転びそうになりながらも体勢を整え直してまた走り出す。そうやって危なっかしくながらも何とか教会まで到着する。もはやアサシンに会った事なんてどうでもよかった。めっきり来訪者が少なくなって広く、そして寂しくなってきた教会の中で蒼崎姉妹はつまらなさそうにしていた。此方を見かけると乱れた髪型や服装を見て少し驚くような表情を浮かべ、

「改竄してく? って感じじゃないわよね」

 青子が茶化す様に言葉を放ってくる。走ってきたせいで正直あんまり喋る余裕はないので、口を開く前に、端末を取り出し、そこからデータを抽出して橙子と青子に見せる。蒼崎と言われて、どちらかは解らない。基本的な業務は青子の担当だが、こういう事は橙子の方が詳しい。正直、少し焦り過ぎでから回っている感がある。それでもとりあえず、一つずつ片付ける様にデータを蒼崎姉妹に見せる。

 それを見て、以外にも反応を返したのは橙子が先だった。


「これはまた派手にやられたようだね」

 電子タバコを指で掴むと、橙子はもう片方の手でデータを操作し、その内容を見ている。逆側では同じようにデータを見ている青子の姿が存在し、少し驚いたような様子を見せている。

「ありゃ、姉貴が興味持つのはまた珍しいわね」

「それなりに関心のある事なら興味もわくさ。何せ最弱だったはずのコンビが何を間違えたのか五回戦まで勝ち残っている。別に知り合いじゃなくても多少は興味を持つ出来事だ」

「へぇ、身内以外は興味を抱かない姉貴がねぇ……」

 それっきり姉妹の間で会話が起きる事はなかった。ただ二人とも数分間データを睨むだけで、そして二人はほぼ同時にデータの確認を終わらせた。橙子は再び電子タバコを口元に持っていくと、口を開いた。

「協力者達に言ってやれ”可能”だ、と」

 それだけで橙子の言葉は終わった。再び橙子はムーンセルへとアクセスした本来の目的へと没頭し始めた。こうなると何を話しても無駄なのは身を持って理解している。だから、まだ此方へと意識を向けている青子へと視線を向ける。

「まあ、姉貴の言った通りそれで間違いはないわよ。酷くやられたようだけど、結構貴方達の活躍は楽しませてもらってるから、無責任だけど頑張ってねんー」

 何か実に無責任というか、力の抜ける言葉だ。だが、それは聖杯戦争に直接かかわらず、一歩横にそれた場所から眺めている蒼崎青子だからこそ言える言葉なのだろう。何せ、彼女には一切の責任はないのだ。この改竄だってもう利用者は自分ぐらいだ。橙子と青子に感謝の言葉を告げて、マイルームへと向かって歩きはじめる。端末に送信されたデータをまだ見ていないが、そんな事を確認するための時間はない。

 こんな状況でセイバーを置いておく時間は一秒もない。走ってマイルームへと向かう。

「―――アレ、大丈夫かしらねぇ……初体験だろうし」

 そんな、青子の言葉を聞き逃すぐらいには焦ってた。





「休め」

 マイルームへと戻っての第一声がそれだった。

 マイルームでは凛とラニが二人でプログラムの作成か、なにやら情報の処理で忙しい様子だった。それをもちろん自分がどうこう出来るわけではないというのは解っている。だがここで露骨に無能宣言されてしまうと流石に心が折れる。

「あ、違う違う!」

 凛が操作の手を一旦止めて、此方を見る。

「ぶっちゃけ少し頑張り過ぎよ。アリーナから戻ってきてずっと心配したりして心労溜まってるでしょ? 私達の方の準備はまだ時間がかかるから、その間休んでて欲しいのよ。明日までには準備ができるし……その」

 少しだけ凛は言いづらそうにしてから、

「覚悟しておいてね?」

 何を覚悟しろというのだろうか。だが、まあ。凛の提案には素直に従っておく。この二人を働かせるのは非常に心苦しい話だが、覚悟しろ、というには何か重大な役目を任されるのに違いない。なら少しでも休んでそれに備えるのが自分の役目というものだろう。

「え、あ、うん。たぶん凄い体力使うから! 眠れなくなるから!」

「ミス遠坂、流石に焦り過ぎです。凄く怪しすぎます」

「う、五月蠅い!」

 この二人、結構仲がいいなぁ、と思いつつあると軽く欠伸を漏らしたことに気づく。……予想以上に気を張っていたらしく、気を少しだけ抜いたら眠気が襲いかかってきた。凛達が言うにはセイバーを助ける手段はあるし、蒼崎姉妹はその手段を肯定してくれた。なら後はそれを信じて、自分にできる事をやるだけだ。

 普段はセイバーが寝床にしているソファで体を横に寝かす。セイバーがベッドを使って、自分がソファを使うというのも結構変な話だ。流石に頑張っている凛やラニの部屋を使うのは躊躇する。なのでこのソファで、普段どんなことを感じながらセイバーは眠っているのだろうか、そんな事を考えつつ横になって目を閉じれば、

眠りは直ぐにやってきた。





 ―――欠けた夢を見ている。

 それは白い。どこまでも白い空間だった。

 何十、何百という棺が置いてある。まるで墓場の様だと思った。

 ただ奥に浮かび、輝く立方体が、ここが神聖な場所だという事を主張していた。足元を流れる水は海から抜け出し地上へと到達した事を示す事なのだろうか。体の自由はなく、ただ漠然としてその光景を眺め―――気づく。天に浮かぶ座の前に存在する棺の山を。

 その上に。男が一人いた。

 どこまでも広がる無限の空間、棺の上に座る孤独な男は何かを待つように目の前の空間を見続ける。白衣とメガネという、自分の見た事のない姿だ。そして見た事のない姿が夢に現れるのはおかしい。いや、そもそも夢を見ていること自体がおかしい。SE.RA.PHでは互換全てを使って接続されている。故にダイブ中が夢のような状態であり、その中で夢を見る事は出来ないはずなのだ。

 だからこれは何だろう。

 それとも体がないからこそ見れるものなのだろうか。

 だがそれを判別する手段が自分にはない。言葉を話す権利さえなく、漠然と夢の世界で見る。その男が何を求めているのかを。

 白衣の男はただ虚空へと視線を向け、そのまま棺の上で動きを凍らせている。まるで彫像の様に指一本動かすことなく時は過ぎて行き―――ついにうごいた。

「見つけた」

 白衣の男はそう呟くのと同時に立ち上がる。棺の上で立ち、目の前の空間を見る。やがて、棺の前の濡れた大地に魔法陣が浮かび上がる。

「ムーンセルの深層を探り見つけた最強のサーヴァント」

 そして、魔法陣の中から姿が浮かび上がり始める。それは男の姿だった。それはよく知っているようで知らない男の姿だった。まず、男の髪は血の様に赤い色をしていた。男は両手と、そして下半身を守る様に白亜の鎧を身に着けていた。だが守るべき上半身には何もつけていない。その体には見たこともない紋様が刻まれ、そして首には斬首された様な傷跡が刻まれていた。見た事があるようで見た事がない姿。妙な鎧姿の男は腕を組んで正面、棺の上に立つ男を見上げる。

 それに応える様に白衣の男は下に現れた男を―――彼が呼び出した最強のサーヴァントを見る。

 男たちの間に沈黙が満ちる、待っているのか、見極めているのか、それを判断する事は出来ないが、男たちは互いを見て、そして存在を理解する。

「救世主」

「”セイヴァー”」

 互いに相手の存在を認め、そして認識する。その存在は根本的に同じであるという事を。そして二人を見て自分は二人について気づく。この二人は同じ視点から人々を見ている。即ち天上の視点、人ではない視点。

 救世主の視点から全てを見ている。彼らにとって人類は、いや、自分以外の全ては善人であれ、悪人であれ、それは救うべき対象であり、愛するべき存在なのだ。人が殺し合う事も、自滅する事も、その全てを許して愛する異常者。ただその愛の方向性が違うだけで、この二人の視点は決して人間に理解される事はない。何故かだが、この二人の思想、渇望というべき魂の熱だけは理解できた。どちらも心の底から人類のこれからを憂いている。

 だからこそ、次にサーヴァントの発する言葉が信じられなかった。

「―――駄目だな、貴様は。失格だ。よくも俺を召喚してくれたな救世主」

 セイヴァー、救世主のサーヴァントは腕を組んで白衣の男を睨む。その言葉を偽っている様子も試す様子もない。このサーヴァントは召喚されたことに対して本当に怒りを感じている。そして救世主の男は、それに対して驚きの表情を浮かべない。その表情はもっと意外なもの―――納得の表情だった。この男もセイヴァー同様、このサーヴァントとは絶対に相容れない事を確信している。

「あぁ、そうだね。君とでは絶対に相容れる事は出来ない。今更ながら見て理解したよ―――致命的に君とは合わない」

 それが自分には理解できなかった。何故そうも相容れない。この二人が人類を救済するための渇望を持っている事は悩む必要はない。心の底から救いを求めている。だから目的という点でこの二人は絶対に納得するはずだった。だがそれは発生しない。ここで起きたのは決裂と敵対だった。あのサーヴァントセイヴァーは白衣の救世主に対して明確な敵意を抱いている。それは殺意と発展しないものは何だろうか。いや、目を見れば理解できる。

 セイヴァーが男に対して向けているのは―――憐みだ。

 憐れんでいる。このセイヴァーは救世主の存在に対して憐れんでいるのだ。そしてそれに納得する。このサーヴァントにとってはこの男も救うべき対象でしかない事を。だからこそ自分には理解できない何かを理解し、そしてその結果、この図式が成り立っている。

「今更ながら最強と呼ぶには相性が悪すぎる。なるほど、単純に力が強ければいいのではなく、力が強く、なお相性のいいサーヴァントを選ぶ必要があるのか」

「力だけを求めるのであれば確かに俺がを引く事が最高の結果だろう。だが俺と相性がいいか、と問われれば否、としか答えようがないな。そもそも俺と相性のいい人間がムーンセルに存在するわけがない」

 サーヴァント・セイヴァーは救世主の男へと向けて言葉を放った。

「―――聖杯を求めてムーンセルへとやってきた時点で貴様らマスターは全員失格だ。俺を召喚するには値しない」

 このサーヴァントは聖杯を求めるマスターには使役されないと宣言した。この男が聖杯を求めてセイヴァーを召喚した。その時点で話は終わっている。いや、このセイヴァーの話が本当であれば、このサーヴァントを召喚する方法なんて存在しない。ムーンセルへとやってくるマスターは例外を除き、確実に聖杯を求めている。だから、このサーヴァントを選ぶことは不可能であり、選ばれる可能性もごくわずかとしか言いようがない。

「で、君は不本意ながら召喚されてしまったけどどうするんだ」

 セイヴァーと救世主の間にはパスが完成されてしまっている。それはマスターとサーヴァントを決定づける道具だ。マスターが命令すればセイヴァーはそれに従うしかない。故に、セイヴァーは自身の意志を証明するために、腕を持ち上げた。

「知れた事よ」

 それをセイヴァーは―――自身の心臓に突き刺した。

「憐れな救世主。新たなセイヴァーを求めるといい。同族からの助言だ。覚者辺りであれば求めに答えるであろうかもな」

 セイヴァーは心臓に突き刺した腕を体から引き抜くと血を吐き、胸から血を流す。それは床を覆う水に滴り落ち、色を赤く染め上げ、そして流れてゆく。セイヴァーの姿は再生されず、徐々にだが消え始める。

「その言葉覚えておこう。君との出会いは実に為になるものだった。さらばだ、人類を愛した魔王よ」

 徐々に消えゆくセイヴァーの体。その結末は悲しすぎるものだ。思想が合わない。それだけでセイヴァーは自らの命を絶った。それがあまりにも悲しすぎ―――

「―――涙を流す必要はない。人生、意外とどうなるか解らないものさ、マスター」

 セイヴァーは笑みを浮かべ、此方を見ていた。

 ―――意識が覚醒する。

 欠けた救世主達の夢は、終わる。




実はありすに召喚される可能性は少なからずあった(
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| 断頭の剣鬼 | 13:23 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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