陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-41

「……」

「……」

「ぉぁぁぁ……」

「へいへい、ツンデレっ子、牛乳は此方。ドリンクオーケイ? オー、イエース!」

 とりあえずセイバーの頭にハイキックを叩き込みながら寝起きでとてもだが人に見せられる状態ではない凛を見る。共同生活を始めて理解した、というか知った知りたくもなかった遠坂凛の一面である。セイバーは笑いながら牛乳のパックを渡して楽しんでいるが、この男確実に確信犯で、楽しんでいる。


 サーヴァントをはり倒せるわけもなく、対魔力Bで凛の魔術も無効化してしまう為、気づいてガンドを打ち込んでもセイバーには通じない。その光景を自分は笑って眺め、ラニは呆れたような表情を浮かべ、セイバーはからかいながらマイルームを逃げ回る。凄く騒がしい浅田が、

 こういう朝は好きだ。こう言う日々が欲しかったんだと言える。

 そしてこんな日常を続けたいから―――戦い続けているのかもしれない。

 そんな事を感がながらも、新たな朝を迎える。





 体を動かしてみればちゃんと体が動きについてくるのを確認できる。昨日感じていた体の欠損も、痛みもない。体は軽く、ジャンプすればどこまでも届きそうな若干ハイな気分ですらある―――これがサバイバーズ・ハイというやつか。

『真顔でお前は何を言ってるんだ』

 頭に軽い衝撃を受けて、正気に戻る。朝の平和で幸せな気分に少し浸っていただけだ。そう、ほんの少しだけ。マイルームは聖域で、その外は戦場だ。心を入れ直して聖杯戦争へと望むとしよう。もう、たぶん、というかきっとだが……次の対戦相手は大体として感じている。この予感を確かめるためにもマイルームから一歩一歩、踏み出す足を数えながら掲示板へと向かい、そこに書いてある対戦相手の名前を確認する。

「―――お前が俺の相手か」

 そこに書いてあった名はやはり、というべきか。

 ―――ユリウス・ベルキスク・ハーウェイ。

 そう書かれていた。

 音もなく背後から現れたユリウスは冷たい、氷のような視線を此方へと向けてくる。その中に感情はなく、存在するのは殺意の意志だけだ。お前は危険だ。お前は邪魔だ。お前だけは絶対に排除しなくてはならない。その意志がユリウスの目から見てとれる。その殺意はもはや何時、襲い掛かってきてもおかしくはないレベルの高さだった。その目を正面から捉え、ユリウスに気圧される事無く睨み返す。普段なら一言茶化す様に言葉を放つセイバーも、今回に限っては何も言わず、無言で控えている。

 沈黙が続く事数秒。

 先に口を開いたのはユリウスだった。

「あの時じゃ無害だと思ったマスターが生き残るとはな。ここまで……いや、だが―――」

 ユリウスは背中を向けて去って行く。その言葉は此方へと向けてではなく自分へと向けて放った言葉だった。

「それも今回で終わりか」

 ユリウスはまるで最初からここにはいなかったかのように姿を消す。アリーナへと向かったのか、どこかに確保している拠点に戻ったのか、それを判断する事は出来ないが、

『間違いなく昨日の件はヤツの差し金だろうな』

 となれば、ユリウスのサーヴァントはアサシンで決定だ。セイバーに注意しろ、という必要はないだろう。セイバーの事だ、既に警戒し始めているに違いない。ユリウスは、決して油断のならない相手だ。それは今までの行動を見れば明らかな事だ。

『俺の命に代えてでも白野だけは守る、そう気負う必要はないぞ?』

 いや、それは困る。セイバーに命に代えてでも守られたらその続きがない。自分が目指すのは大団円ではない。どう足掻いても殺したという事実は消えない。だから、せめていま生きて助けられた人とは一緒に……セイバーと、凛達だけは無事に、一緒にこの聖杯戦争を乗り越えたいと思っている。だから命に代えても、とかはなしだ。

『お、おう……』

 そこは普通に答えてほしかった。

 まあ、締まらないところを含めて、それが岸波・セイバー陣営の魅力だと思って大人しく受け入れる事とする。そうでもしないともっとつかれそうな気配がするし。第一こんな変なサーヴァントを引き当てた時点で色々と諦めるべきだったのだ、私は。いや、引き当てるとかどうとかまったく意味の解らない時代だったのだがそれは。

 一階へと降りながらも、ふと、最初の方を思い出す。

 思えばずいぶん遠くへとやってきたものだ。既に四回戦が終了しているので、最低でも一ヶ月はこのSE.RA.PHで過ごしている事となっているはずだ。セイバーが私を肉体のない存在として断定してくれちゃったのでもう気にしてないが、凛とラニとかどうなんだろうそこらへん。風呂とか、トイレとか、こっちへ来ている間体の面倒はどうなっているのだろうか。激しく気になる……!

『マスター、最初はいい話で始まるかなぁ、とか思ってたら思いっきり斜め上へ話が跳んだよ。すげぇ自然だったから見逃しかけたよ』

 そうか。セイバーを振り回せる程度に愉快に慣れたのなら―――それは確実に進歩だ。少しずつ歩いて、覚えて、そして自分というものを獲得した結果、得たものだ。うん、だからそれを忘れず今回も進もう。この戦いでも得るものが数え切れないほどあるはずだ。それを一つずつ拾い上げながら二人で進めば、きっとなんだってできる。

『……』

 セイバーは答えてくれないが、パスを通してセイバーから楽しげな感情が伝わってくるのは解る。だからそのまま一階へと降り、近くで見かけた大河に挨拶しながらそのまま廊下の奥へと―――アリーナの入り口へと向かう。

 既にトリガー生成の報告は受けている。

 今日もまた、こうやって聖杯戦争が始まるのだ。





「まて、白野」

 アリーナに踏み込むのと同時にセイバーは服の下から刃根を伸ばす。もう二刀を握るつもりはないらしく、このまま刃根で戦う方がはるかに効率的で強いらしい。そんな姿でセイバーは自分の前数歩を進みでながら、動きを止める。

「アリーナに敵の気配がする。距離はそう遠くはない」

 つまり、ユリウスとアサシンが既にアリーナにいるという事だ。ユリウスの事だ。アクションを取らないという方がおかしな話だ。少し高めの位置にあるアリーナの入り口からアリーナ全体を見回してみれば―――少し歩いた先にユリウスが一人で立っている姿が見える。サーヴァントが見えないのだからおそらく単独行動中なのだろうか? ともあれ、ユリウスが一人なのであれば接触のチャンスだ。彼と彼のサーヴァントを知るためにも接近しよう。

「気をつけろ白野。あまりいい空気じゃない」

 セイバーの忠告を聞きながらも歩き出す。念のために移動速度強化のコードキャストを自分に施し、逃げる準備だけはしておく。そのまま走る事はなく、ゆっくりとセイバーに警戒させながらアリーナの通路を歩いて行く。途中でユリウスは此方に気づいているはずなのに、何のリアクションも起こすことなく立っていた。

 明らかにおかしいし、あやしい。

 だがユリウスが立っている位置は無視できない場所でもある。

 そのまま進む事とする。

 緊張しながらもセイバーと並んで歩き―――何事もなくユリウスの前まで到着してしまう。無言無表情で此方を見るユリウスが存在する。ただその殺意、殺気は強烈の一言に尽き、アーチャーに命を狙われた時を再び思い出す。だがそんな状況を思い出しながらも、結局のところ取れる手段は少ない。いや、決まっている。

 無防備なマスターにサーヴァントを消しかける度胸が自分にはない。

 だから片手を上げながら、

「―――」

 言葉を口にしようとした瞬間、横で何かが倒れる音がする。

 見知ったその姿を見間違えるはずがない―――赤い衣の処刑人、セイバーだった。

 無言、音もなく、ただ静かにセイバーは倒れた。その光景を唖然と見るしかなかった。一体どういう事なのだ。セイバーへと駆け寄るよりっも早く、体をやや低く、かがむような体勢を取りながら体に魔力を通し、リターンクリスタルを握る。

「ユリウス!」

 目の前の男の名前を叫ぶ。が、ユリウスは此方に視線を向けず、背後へと視線を向けている。

「仕留めたかアサシン」

 その声に呼応するように、

「―――カカッ」

 背後を振り返る。そこには何もない。誰もいない。通路だけが続いている。気配もしないの二、そこに”何か”がいるという事は声が漏れたからこそ理解している。これは明らかにアーチャーの”顔の無い王”と同様の宝具かスキルだ。そしてそれを使用したのは……アサシンだ。

「少々侮っていたかもしれぬの」

 そう言って虚空から赤い服装のサーヴァントが現れた。野獣を思わせるような凶悪な目つきの中華風の男。

 ―――その男は片腕が肩から切り離され、血を流していた。流石のユリウスも、その状況には目を見開いてみていた。

「アサシン」

「何、気にするでないユリウスよ。こやつは思っていたよりも狂っていた、それだけの事だ」

 カカッ、と笑いながらアサシンは残った腕で自分の傷口を抑え、視線をセイバーへと向けている。

「そいつは攻撃を受けた瞬間に攻撃した来た。一撃で殺せる首への攻撃を的確に。おそらくワシでなければ間違いなく首を持っていかれただろう」

「アサシン」

「気にするな―――二の打ち要らずの名に偽りはない。こいつは壊した」

 それは自分にとって残酷すぎる宣言だった。アサシンは暗殺と奇襲に優れた暗殺者のサーヴァント。それが仕事を果たしたというのであれば、確実にセイバーを葬ったという判断なのだろう。ユリウスはアサシンへと視線を向けると、何事もなかったかのように言う。

「令呪を持って命ずる、傷を癒せ」

 令呪の消費によりセイバーが放った一撃はあっさり回復された。肩から先の一切を失っていたアサシンは腕を再生し、それを握りながら所在を確かめている。そしてそれで頷くと、アサシンは姿を消した。そして、そのまま、ユリウスは何も言葉を発することなくアリーナの奥へと消えて行った。それを確認した瞬間、床に倒れたセイバーへと飛びつく。

「セイバー!!」

「少し……騒がしいぞ、白野……」

 セイバーの反応がある……!

 アサシンは一撃で仕留めたと言っているが、セイバーは何らかの方法で耐えきったのだ。喜ぶのと同時に安心しかけ―――喜ぶのを止める。アサシンは確実に葬ったと判断したのだ。となれば、アサシンの一撃は単純な一撃ではなく、何らかの効果を持った一撃のはずだ。その証拠に、今もセイバーの顔は血を吐きそうなほどに苦しそうだ。

「ごめん白野……少々油断したかもしれない……パスは感じるか……?」

 ムーンセルによって生み出されるマスターとサーヴァントのパス。

 ―――それを感じる事が出来なかった。

 それだけではない、軽くセイバーに探査プログラムを走らせればセイバーの体内がぐちゃぐちゃになっているのが解る。アサシンの一撃が一体なんだったのかは解らないが、アサシンは確かに己の役目を果たしていった―――これは自分の知るコードキャストやハッキング、魔術技術では修復できない。

「セイバぁ……!」

「そんな心配そうな声をするなよ……」

 弱々しい声を漏らしながらセイバーは刃根を杖代わりに立ち上がり、体を持ち上げる。その体をすかさず自分が支える。

「大丈夫……まだ、大丈夫……どっかの落ちこぼれ拳士の方がまだ凶悪な拳を持ってたはずだ……たぶん……」

 セイバーの軽口には覇気がない。解っている。今もこうやって支えているセイバーの体から命が流れ出ている事が。

 迷う必要はない。

 ユリウスやアサシン対策よりも、今はセイバーの命だ。即座にアリーナから脱出する。

「お願い、お願いだから耐えてセイバー」

 自分に向かって必死にセイバーはまだ大丈夫だと言い聞かせながらリターンクリスタルはその効果を発動させる。

 後に残されたのは静寂だけだった。
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| 断頭の剣鬼 | 09:09 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

蒼一は拳士最強だからねぇ( ̄◇ ̄;)

| ガリバー | 2013/05/17 03:54 | URL |















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