陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-40

 エレベーターに乗ってから、校舎につくまでセイバーも自分も終始無言だった。別に気まずいとかそう言う理由ではない。純粋に自分もセイバーも限界以上の力を発揮した結果、これ以上なくセイバーも自分も疲労している。セイバーは体力を1ドットだけ残して戦闘能力をほとんど失っている。そして自分はセイバーを勝たせるために自分のリソースを削ってまでスキルを発動させた。おかげで上手く体が動かない。これはマイルームへと戻る前に一旦保健室へと向かうべきなのかもしれない。

 エレベーターから外へと踏み出したからだが―――大きく揺れる。

「白野」

 それを再び後ろからセイバーが優しく抱きしめてくれる。自分一人で歩けると告げて、顔が赤くなっている事を自覚しつつもセイバーから離れようとし、セイバーによって動きを止められる。


「無理すんなばぁーか」

 馬鹿、とは言うがセイバーの言葉は実に優しい響きが混ざっていた。純粋に此方の事を気遣っている様子で、馬鹿にしている様子はない。だが、セイバーも実際ギリギリだろう。そうやって支えてくれるのも辛いはずだ。

「だから、無理をするな、馬鹿」

 セイバーは此方の体をいわゆるお姫様抱っこで持ち上げると、よいしょ、と声を漏らしながら保健室へと向かってゆっくりと歩きはじめる。

「俺とお前は運命共同体。パスを通して無理しているのは解っているし、そんな繋がりがなくても顔を見りゃあ十分辛いってのは解るさ。何時も気を張っている必要はない。少しぐらい俺に辛いって吐き出してもいいんだぜ?」

 ……甘えるのと、弱音を吐くのは違うと思う。そしてこの場で自分の口からセイバーに助けを求めるのは違う気がする。だから、そう。セイバーの自主的な行動に感謝の意を見せてこのマスターを保健室へと姫様抱っこで運ぶ栄誉を与える事とする。

「くくく」

 そんな言葉を聞いたセイバーが楽しそうに笑い、そしてこの場所に似つかわしくない、そんな表情に、思わず自分も笑いそうになり―――

「―――ほう、ならば仲睦まじくここでともに散るのが良かろう」

「―――」

 セイバーが跳んだ。瞬間、何が一瞬で接近し、攻撃を叩きこんだ。それはセイバーの刹那の判断により回避を成功したが、着地するのと同時にセイバーは片膝をつく。セイバーの動きが停止する事によってようやくその視線の先を捉える事が可能となる。

 ―――セイバーの視線の先にいたのは赤色の中華風の服装に身を包んだ男で―――。

「カハハ! その満身創痍の体で気づくか―――これは早々仕留めぬばならんな」

 男には油断も慢心も欠片も存在しなかった。アーチャーと敵として対時した時に感じた体を犯すような悪寒―――殺気が全身を突き刺す様に放たれる。凄まじいその衝撃に体が震えそうになる瞬間、セイバーが少し強く体を抱き、そして服の間から背に生えたギロチンを出す。それで抱いている此方を守る様に、盾の様に展開する。

「セイバー……!」

「……ちとやべぇな」

 周りは校舎ではなくアリーナの様な空間に変化している。しばらく耐え切ればムーンセルの介入により元の校舎へと帰還する事が出来る筈だ。こんな不正行為を黙って見ているはずがない。だが―――それをしのげるかすらあやしい。見た事のない相手、奇襲、戦闘直後、どれを見ても不利であることに変わりはない。こうやってセイバーは守る様に構えているが、自分よりもセイバーの方が苦しいのには決まっている。

 この状況から脱するにしたって、令呪もない。

 今までも何度もピンチを経験した事があるが、今回は一段とヤバイ。だが、

「諦めない。認めない。どんな劣勢でも足掻き続け明日を求める。駄目ならダメでそれでおしまい。そういう事だろ?」

 そう。まだ両足がある。両手がある。頭だって思考できる。これだけできれば十分だ。まだ十分に抗う事が出来る。そして抗えるうちは絶対にあきらめない。どんな状況でも常に前を向いて歩き続ける。だって、それこそが、

 ―――岸波白野という少女の誇りだから。

「その、誰よりも人間らしい、姿に、俺は惚れた―――なら頑張るしかないよな」

 中華風の男が一歩踏み出すのと同時に、セイバーが満身創痍の体を引きずりながら一歩下がる。徹底して逃げと時間稼ぎの構え。アレが此方もセイバーも、どちらも殺そうとしているのは目に見えている。ならばこそ、二人一緒に逃げ続けなくてはならない。

「さて、どこから壊すべきなのやら―――」

 そんな呟きと共に一瞬で敵は距離を詰めてくる。セイバーは素早く後ろへと飛び退くが、疲労からか、その動きは精彩に欠いているだけではなく、魔力がなくてスキルの取得も使用も出来ない。その状態でセイバーは刃根を盾の様に駆使し、敵の攻撃を防いだ。

 拳の一撃を受け刃根が破壊される。

「くっ!」

 がその一撃はあまりに重く、防御しながらもセイバーの体は押し込まれる。そう何度も受け止められないのは今ので理解できた。だが敏捷的な問題でこの空間内を逃げ回る事も得策とは言えない。ならばアルクエイドの時同様受け流せるか、とセイバーに問えば、

「相手の方が純粋な武人としての力量は上だ、俺にゃあ”処刑”しかないぞ!」

 刃根を破砕され、拳名から逃れようとセイバーがもがきながら叫ぶ。

「お前本当にアサシンか!」

「さてな、それはそちらの判断する事であろう」

 アサシン。セイバーは相手をそう見抜く。確かにこんな奇襲、アサシン以外にできるものではない。アサシンの英霊であれば真っ当な戦術だ……ただそれにしては、このアサシン、少々武芸に秀でてい過ぎるような気もする。

「良く持ちこたえているようだが、これで詰みだな」

 アサシンはそう言って拳と蹴りの連撃を繰り出す。それ自体はトドメではない。ただアサシンの言った意味は理解できる。ここから始まる一連の流れ―――その終わりまでつながる道の間に自分たちが逃れる集団がないのだ。だからこの連撃を受けきれば、スキルでも使わない限りは此方の敗北というルートが完成してしまう……!

「―――それは少々早計なのでは?」

「なにっ!?」

 そんな声と共にアリーナは砕け散った。深海を思わせる光景は粉々な破片となって砕け、そして再び明るいが、寂しい校舎の姿が見えるようになった。保健室前の廊下、セイバーを抱く自分の姿の前にアサシンが存在し、そして―――その向こう側にはバゼットと、見慣れない姿の青年がいた。目に包帯を巻いているのか、青年は片手でナイフを手にしながら、目を覆う様に布を巻き直している。

「あの空間を殺した。再生は不可能だ」

 青年は感情を感じさせない声でそれを言うと同時に、バゼットは頷く。

「ありがとうございますアサシン―――と、いうわけで、これでもまだその二人を襲うというのであれば”三対一”で相手をしてもらう事になります、ハーウェイのアサシンよ」

 バゼットはそう言って拳を構える。バゼットのサーヴァント、アサシンはそれに関して問うこともなく、迷いなくバゼットの横に立ち、ナイフを構える。恐ろしい事に、バゼットはサーヴァントに対して支援のコードキャストをかけたりして援護するのではなく―――己の肉体で文字通り戦うと言っているのだ。

 少しはまともな人間かと思ったがそんな事は全くなかった。聖杯戦争に普通の奴なんかいねぇ。

 思いがけない援軍が現れた事により、希望が見えた。そして同時に心も現金なもので軽くなり始める。拳を構えていたアサシンは挟まれる様な己の状況を見ると、構えを解く。

「止めておこう。これ以上目立つことはマスターの意に沿わぬだろう」

 アサシンがそう言った瞬間、

「―――それがいいだろう」

 少し混沌としていた場にもう一人侵入者が現れた。と言っても、この男の場合は現れて当然だったのかもしれない。黒いカソック姿の言峰神父はこの場に現れるべき存在であり、

「目の届かぬ範囲であれば少々遅れる”かも”しれないが、こうやって堂々と校内で争うのであれば職務の一環として止めぬばならんからな。こう見えて君たちを止められるだけのサーヴァントをムーンセルから渡されている―――あぁ、挑戦したいのであればペナルティ抜きに相手するがどうかね? 私のロールはそこまでアクティブではなくてな、聖杯戦争の参加者と”交流”するのであれば何も問題はない」

 止めるどころか言峰は挑発する。だがアサシンは構えないし、バゼットも構えを解く。バゼット側のアサシンは姿を消す。これでこの場での戦闘は完全に終了した事を表していた。言峰はつまらなそうな表情を浮かべると、それが賢明だろう、と言葉を残して去って行く。アサシンも失敗し、去る為に背を向ける。だがその瞬間、

「おい」

「む?」

 刃根をしまい、セイバーがアサシンを呼び止める。何事かと思いセイバーの顔を見上げれば、

 ―――そこには恐ろしい程に無表情のセイバーがいた。

「―――待っていろ、貴様と貴様の主の首は近いうちに俺が貰っていく。覚えたぞ、貴様らの魂の色、魂の臭い。逃げるなよ―――三千世界の果てでも追えるぞ」

「カカッ、それは実に楽しみではないか」

 アサシンはそれだけを残し消える。セイバーは無言でアサシンのいた方角を見続けるが、やがて頭を横に振る。どうやらアサシンは完全に去ったらしい。それをバゼットも確認したのか、彼女も此方へと寄ってくる。

「無事でしたか? 要らぬ心配かと思いましたが、知らない仲でもないですし手を出せていただきましたが」

 そんな事はない。実際バゼットが助けに来てくれなかったらかなりヤバイ所だった。決戦が終わった直後を狙われて、自分もセイバーも限界に近い状態だった。あのまま助けがなければムーンセルが介入する前にアサシンに葬られるところだった。

「だとすれば幸いです」

 と、バゼットは笑みを浮かべてから、思案顔に移る。腕を組み、手を顎に当て、

「しかし、決戦の直後を強襲しましたか」

 バゼットのその言葉の意味は解る。

 こんなタイミング、狙わない限り遭遇する事はない。アサシンは明らかにこのタイミングで自分とセイバーを殺しに来ていた。となれば、相手はどのタイミングで戦闘が終了するか、もしくは戦闘そのものを知っていたに違いない。ずっと張っていたわけでもあるまい。

 また、いや、今度こそは視聴覚室を使われたかもしれない。

 マスターがだれか、疑う必要はないだろう。

 アサシンと相性が良く、他のマスターを予選で排除し、そしてルール違反にさえ手を出すマスターは―――自分が知るにはもう、一人しか残っていない。

「おそらくまた何らかのアクションがあるかもしれません、注意だけはしておいてください」

 それはもちろんだ、と頷いておく。そして改めてバゼットに感謝の言葉を継げる。

「いえ、それほどでもありません。……あぁ、それと」

 バゼットが此方を見ながら首をかしげる。

「サーヴァントと仲が良いようですが、もしかして……」

 バゼットが何かを言い終える前に、自分の恰好を思いだす。思わず今の姿に対し赤面し、拳を握ってセイバーの顔面へと叩き込む。

「痛い! マスター痛い! 超痛い! 今セイバーちゃんHP二けたしかないの! 殴るのやめて! セイバーちゃんからのお願い!」

 殴られながらも絶対に離さないのだから流石セイバーというべきなのだろうか、もう、何かつかれたので殴るのは止めて、力を抜く事にする。あぁ、そうだ。良くみろよバゼット―――これが私達だぁ―――!

「あの、何かヤケになってないですか」

「マスター、お前が鈍いのが悪いんだよ」

 バゼットのサーヴァントは溜息を吐きながら姿を現すと、包帯のまかれた顔の視線を此方へと向け、済まないと雰囲気だけで伝えてくると消える。……案外バゼットのサーヴァントはああ見えて苦労しているタイプの人物なのかもしれない。

 ともあれ、援軍として非常に心強かったバゼットとアサシンのコンビは去って行った。自分達もここに止まる必要もない。今のやり取りしている時間の間にムーンセルによる供給でセイバーも自分も少しずつだが回復してきたので、もう保健室による必要はないのだが―――。

「さ、保健室で桜の世話になってくれよ」

 ……もう少し自分の事を心配してくれるセイバーの姿が見たいので、このまま黙って保健室のベッドまで運ばれる事にする。




 デレデレじゃねぇかコイツ……!

 と、まあ、これで次回から5回戦発表で、5回戦の開始です。CCCはガチで今月中に始められそうですね
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| 断頭の剣鬼 | 16:20 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

やだぁ、このマスターかなりデレデレ。


あと、たぶんカテゴリ間違ってますよー。不良騎士道になってるんで。

| 空 | 2013/05/15 16:52 | URL |















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