陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-39

 ―――決戦の朝は何時も静かだ。

 凛とラニも空気を読んでくれたのか、朝からマイルームにその姿を見ない。だからセイバーと二人で静かに朝食を終わらせ、一階へと向かう。そこには予想通りと言うべきか、当たり前なのだが言峰神父が待っていた。その表情は待ちわびていた、というべきものだった。

「四回戦ともなれば参加者もだいぶ減ってくるが、その中で君の顔をまだ見る事が出来るのは実に幸運な事だ。正直な話、第一回戦から今現在まで、君が勝ち残る確率は最優のサーヴァントを引けたとはいえ、10%以下の確率だった。故に君のここまでの奮闘を祝福しよう」

 端末を取り出せばそこからトリガーが二つ出現し、言峰はそれを扉へとセットする。

 扉は開かれ、そして決戦場へと向かうエレベーターは此方を迎える。

「では行くが良い、最弱のマスターと最優のサーヴァントよ。”何者”からのメッセージだ―――光あれ、と」


 欲しくもない祝福を受けながらエレベーターへと乗り込む。エレベーター内では既にガトーtバーサーカーの姿がある。セイバーも乗り込むのと同時に姿を現し、腕を組んでバーサーカーとガトーのコンビを見る。……シールドによって遮られているとはいえ、バーサーカーを前にするプレッシャーは相当なものだ。だがそれを遮るように立つセイバーのおかげで、心は落ち着いているし―――冷静だ。

「来たな天魔よ、小娘よ! 今日こそ貴様にアポカリプスの如く駆逐してくれようぞ!」

 ガトーはこんな状況でもガトーだった。相変わらずキチガイ染みた言葉を吐くごった煮宗教家。だがこれの地上の足跡を追えば少しずつだがガトーの事が見え始める。この男は決して狂人ではなく、求め、探し、っして何も得られなかった男なのだ。

「あぁ、だが安心するがいい」

 ガトーは笑みを浮かべ、此方を見る。その目は信仰心で狂っているが―――狂気ではない。理性、圧倒的な理性を宿している。

「貴殿らの奮闘、渇望、慟哭―――それらは決して無駄ではない。我が神はいずれ全ての宗教を駆逐し、頂点する程のお方。慈悲深く、屠った者の事を忘れる事はなかろうよ。故に安心するがいい。今は痛くとも、辛くとも、いずれ我が神が全てのものをアルカディアへと導いてくださる。それは小生が約束いたそう」

 ガトーは此方を敵として見ている。それは間違いない。だがそれと同時にガトーは子tらを救うべき対象としても見ている。それは今までのマスターとは大きく違う事だ。ガトーは此方を撃破し、忘れず、風化させる事無く、聖杯へと辿り着きサーヴァントに人を救わせる気なのだ。それはとても傲慢に見える行為だが、聖杯の力であれば間違いなく実行可能だ。そしてその原動力が―――信仰心というものなのだろう。特定の神を信じない自分からすれば驚くべきパワーソースだ。

 だからこそ、ガトーには聞いておかなくてはならない。

 ―――ガトーは、地上で一体何を見たんだ……?

 ガトーはその質問に驚愕した表情を浮かべ、そして―――悲しい表情を浮かべた。

「小生が知ったことを小娘、貴様が知るべきではない。小生は敵を求め、自分でも修練を重ね、修羅を求める求道僧だ。だが―――小生とて分別はある。小生が見つけた答え(ぜつぼう)を他人へと分ける様な愚かな男ではない」

 間違いなく、ガトーは地上で何かを見つけた―――ガトーを月の聖杯へと走らせた何かが。そしてそれを知る事が出来ない限り、自分は本当の意味でガトーと戦えない、そんな気がする。いや、それは違う。自分は知りたいのだ。ガトーの事を、敵の事を。そうやって自分自身の中に来k座見込みたいので、忘れられぬ痛みと記憶として、

 これから自分は殺し合う、のだから。

 殺しても殺されても、相手の事を忘れたくないから。

「小娘よ」

 ガトーは、驚くほどに穏やかな声で、諭すように言葉をかけてくる。

「―――だからこそ貴様には言えぬよ。……良い主を持ったようだな、光の神よ」

 応よ、とセイバーは頷きと共に答える。

「愛する民の中にこういう愛いやつが混じっている事は実に幸運であり、そして幸福であった。結局のところ、神話を振り返れば俺が敗者であり失敗者であることは疑いようがない。守ろうとした者は何一つ守れず、全て零れ落ちてしまう―――そんな人生だったからこそ、俺は負けないぞ、臥藤門司」

 ガトーは笑い声を上げながら両手を広げる。おそらくだがセイバーはガトーの答えを理解し、その空気から遠ざける為に話題を転換した。……それを突くほど自分も野暮ではない。

「ならばこそ! 我が神こそが、原始の女こそが真にふさわしき勝者であることを証明いたそう……!」

 バーサーカーはその光景を黙ってみるだけで、答えはしない。その表情から何を思っているのかは想像できない。ただ無言で此方を見続ける。そして、そのバーサーカーに対し、セイバーは笑みを向ける。それ以上誰も言葉を発する事はない。

 数秒間無言の時が続き―――エレベーターは海の底へと到着した。

 視線を相手と会わさずにエレベーターから降りて到着するのは海底、岩場のステージ。周りには巨大な岩がそこらに落ちているのが見える。数は多くはない。やはりというべきか、中央は当たり前だが、大きく開けたフィールドとなっている。中央で二手に分かれ、向き合う。

 セイバーは無手の状態でバーサーカーを睨み、バーサーカーは爪を構える。その光景を見ながら臥藤は再び両腕を広げる。

「さあ、神よ! 今日こそ決着の日! 終末の審判が下される日! ジャッジメント・デイ・なう! 敗北者に敗北を与えるべき日であることを知らせるのだ!!」

 よく言ってくれる、と口にする。そしてセイバーが笑みを浮かべる。

「まだだ、俺の知っている審判の日はこんなもんじゃない―――俺達の終わりはまだだよな、マスター!」

 勿論そうだ。こんな所で終わる訳にはいかない。だからセイバーの咆哮と共にスキルを発動させ、セイバーに魔力放出:光をAで取得させる。同時に、セイバーが上着の衣を脱ぎ捨て、此方へと投げてくる。それを受け取る頃にはセイバーの姿は変わっていた。と言っても、その変化は大きく小さい。

 服を突き破り、背中から八枚の刃根(はね)が生えていた。両腕を組んで立つセイバーは背中の刃根をまるで生きている様に動かし、調子を確かめ、そして切っ先を全てバーサーカーへと向ける。罪姫・正義の柱(マルグリット・ボワ・ジュスティス)。それこそがセイバーの第一の宝具であり、得物であり、そして本来の使い方であるという。

 そして、戦闘は始まりを迎える。

「ウゥゥゥァァァァ―――ッ!!」

 バーサーカーが大地を蹴り砕きながら一気に加速する。瞬間、セイバーも瞬発する。バーサーカーの敏捷にはどう足掻いても届かないセイバー。しかし、魔力放出を取得したセイバーは魔力をッ光として放出し、それを力に変える事が出来る。魔力を放出しながらジェット噴射の如く一気にその姿が加速し、中央でバーサーカーとぶつかり合う。

「神よ! 汝の生涯を砕けぇ!」

 バーサーカーは吠えながらもその言葉に従い、セイバーに爪を振るう。それはセイバーの刃根へと触れた瞬間、

 ―――セイバーの刃根を砕いた。

「ぬぅぉ!?」

 あまりにあっさりすぎる破壊にガトーは一瞬の共学を見せる。だがそれも一瞬だけだ。セイバーの刃根は特別性であり―――セイバーが健在であり続ける限り無限に生え続ける。そしてその数に限りは存在しないという。セイバーの折れず、不屈の魂を象徴する様な危険な得物。

 もちろん―――この得物は形状に囚われないという。

 刃という鋼の性質を持っていながらまるで鞭の様に動き、斬撃をバーサーカーの首目がけて連続で繰り出す。素早いギロチンの連続にそれでもバーサーカーは対応する。魔力放出を得、速度では一段劣る程度でへと詰め寄ったセイバーの攻撃を視線で追い、そして自身へと向かってくる刃を爪と拳で確実に破砕する。それを理性のない状態で、ほぼ本能のみで行っているというのだから驚愕的だ。

 だが、物量の前に速度はつぶれる。

 無限に生え変わる刃根の前にバーサーカーが次第に押され、そしてついに後ろへと飛んで距離を取る。瞬間、それをチャンスと見て指示を出す。

「無価値の炎よ」

 セイバーの刃根に黒い炎がまとわりつく。今までは二刀の処刑刃に纏わりつくのを見てきただけに、こうやって新たな姿としてまとわりつくのを見るのは実に新しい―――等と考えられるのもその一瞬だけだった。

「おぉ―――!」

 ガトーから大量の魔力の放出を感じた瞬間、全身を押しつぶす様なプレッシャーを感じる。

 そして―――見上げる空には―――赤い月が登っていた。

「セイバー!!」

「ベルゼバブ・アポトーシス……!」

 セイバーが刃根を盾の様に何枚も重ね、防御の体勢へと入る。しかしバーサーカーは残像を残しながら赤い月光の下を駆け抜ける―――。

「―――原始の女よ!」

 バーサーカーの姿を視覚的にとらえる事は不可能だ。【防御】を固めさせる事でしかこの一撃に対応する事は出来ない……!

「汝は、大雑把に美しい! !」

 ガトーが腕を広げながら宣言した言葉。それを実にガトーらしいと思った。大雑把、といえば悪い風に聞こえるかもしれない。だがそうではない。ガトーは細かい所を褒めるような男でもないし、それを自覚している。己を知っているからこそ大雑把に、その全てが美しいと宣言している。

「ウゥゥゥゥァァァァァァアアアアッ―――!!!」

 バーs-アカーの爪の一撃がセイバーに直撃する。何十も重ねられていたギロチンの刃は一撃で砕かれ、威力を減衰させられながらも凶悪な一撃をセイバーへと叩き込む。瞬間的に、

「フゥッ……!」

 ―――セイバーが魔力放出でバーサーカーの攻撃に合わせ、光を発する。光の衝撃が更にバーサーカーの威力を削ぐ。が、それでも凶悪極まりない筋力による一撃はセイバーを無慈悲にも遅い、その体を大きく吹き飛ばす。

「かぁ、くっ……がぁ……!」

 吹き飛ばされながらも体を丸め、セイバーは体勢を整え直す。今の一撃でセイバーの服は破け、上半身は完全に裸になっている。そうマフラーだけが残り、新しいスタイルを……! これは是非ともセイバーにメガネをかけてもらいたい姿だ!

「お前もうちょっと思考整えろよザビ子!! お前脳内でドバドバ出ちゃいけないものが出てるぞ今!!」

 余裕のある証拠だと思って流してほしい。セイバーが着地するのと同時に礼装を通してコードキャストをセイバー向けて放つ。セイバーのそう高くもないHPは一発で半分以上回復する。が、回復しないものがあった。

 耐久力と、筋力だった。

 大地に着地したセイバーは片膝を大地につき、しゃがむ様な形で刃根を構えている。その視線はバーサーカーへと向けられている。赤い月光を受けて吸血鬼としての側面が強く出ているバーサーカーは瞳を爛々と輝かせながら爪を構えている。

「重いなぁ……」

 そう呟くセイバーを見れば、首に巻かれているマフラーが地面へと縫い付けられるように下へと向かって引っ張られているように見える。いや、違う。引き寄せられているのだ―――強力な重力によって。それをセイバーは重い、というレベルで済ませているから流石英霊というべきなのだろう。片膝の状態から構えたまま、セイバーは呟く。

「だが捕まえた」

 それはバーサーカーの腕を見ての事だった。バーサーカーの腕には無価値の炎が絡みついている。そしてこの炎は突いたら最後、戦闘が終了するまでは決して消える事がない呪われた炎。

「邪気封滅ッ!!」

 ガトーが即座にコードキャストでデバフの解除を行うが、炎はコードキャストによる回復を否定する。

「無駄だ、我が魂の兄弟、ベリアルの炎は魂を腐らす呪いだ。俺が死ぬか許すまでは永遠に食らいつくぞ」

「ウゥゥゥゥァァァァ―――ッ!」

 月の出現により強力な重力で体を縛り付けられながらも、セイバーは立ち上がる。その体を守る対魔力が重力による束縛を和らげているのは解るし、ここでバーサーカーお魔力が低かったのもセイバーが立ち上がれた理由だ。背中の刃を広げ、セイバーは右手を突きだす。

「さ、行くぞ我が子よ」

 一瞬の光がセイバーを包み、スキルの発動が完了する。短時間の間だけ全ての攻撃を2倍の威力へと引き上げる破格のスキル。その使用には大量の魔力を消費する。発動した瞬間にアイテムを通して魔力の接種を行うが、魔力放出の使用料と合わせて、魔力の前回には程遠い。だがそれでも、

「さ、久しぶりのガチ殴り愛だ司狼、派手にやるぞ」

 二つ目のバフ効果がセイバーへと付与され、この状況に対する最低限の対策が施された。魔力の回復効果とダメージの軽減、そして衰えた筋力を補う様に一撃の上昇。それで此方の準備は完了した。そして対するバーサーカーも、

「ハァァァッ……!」

 セイバーに反応する様にスキルを発動させ、己を強化する。その効果は把握できないが―――それ以上観察する暇はない。セイバーは刃根を振るい、バーサーカーは爪を振るう。

 中間点で両者の一撃が衝突し、爆裂し、衝撃を生み出す。

「くぅっ……!」

「ウゥッ……!」

 セイバーとバーサーカーが睨みあうのも一瞬だけの出来事。セイバーは瞬間的に十数を超える刃根による斬撃を一斉に叩き込む。六倍の重力化ではその動きは本来のと比べてかなり遅くなっている。だが、魔力放出スキルを通して魔力を余分に放出する事で敏捷の低下をセイバーは力技でごまかしている。自分の中からどんどん魔力が枯渇する様な感覚を受けながらも、セイバーへと魔力を渡し続ける。

「バラバラになれ―――!」

 文字通りセイバーはその程度で終わらすつもりはない。一瞬のうちに攻撃に参加する刃根の数を倍加させるとそれでバーサーカーを圧殺する様に仕向ける。当初は爪の一撃で完全に拮抗していたバーサーカーもそれには耐え切れず、刃根の攻撃を体に食らう、

「ウァッ! ……ウゥゥァァァ!!」

 バーサーカーの体に刃根が数枚突き刺さる。だがそれは見た目以上の重みをもっている。セイバーの刃は今、威力倍化の加護を受けている。突き刺さっただけでも激痛と体を吹き飛ばす様な掌撃を得ているはずなのに、バーサーカーは咆哮する事でそれを耐え、

「ガトォォォォォォ―――!!」

「邪念ッ! 注入ッ!!」

 ガトーのコードキャストが刃根を超えセイバーへと直撃する。対魔力による減衰を受けるも、セイバーはガトーの術により呪われ、命を削られる。それが口の端から流れる血液として表現され、

「悪いな真祖、破戒僧。負けられないんだよ」

 刃根が床に突き刺さり、それがまるで森の様に大地から生える。一瞬の判断でバーサーカーが跳ぶ。が、それを追いかける様に刃根はアリーナの床に至るところから姿をだし、バーサーカーの体を捉え―――そして串刺しにする。一撃、二撃、三撃、と、容赦することなく何本もの刃をアルクェイドの体へと突き刺す。

 星の触覚。

 真祖の吸血鬼。

 アーキタイプムーン。

 アルティメット・ワン。

 アーキタイプアース。

 セイバーはアルクェイドに関する情報を分けてくれた。だから―――ここでダメ押しだ。最後まで気を抜く事は許されない。

「shock!」

 礼装を通してスタン効果のあるコードキャストをバーサーカーへと叩き込む。茂垣、抜け出しかけていたバーサーカーの動きがそれによって一瞬だけ停止する。

「小娘! 貴様……! えぇい、破邪顕正ォ!!」

 スタン効果が解除されるが、セイバーの刃根は既にバーサーカーを抜け出す事が不可能なレベルにまで突き刺さっている。

「セイバァァァ―――!!」

「応ともさ……!」

 セイバーがバーサーカーへと突き刺していた刃根を破壊させる。バーサーカーの残りHPが僅かだ―――ここで一気に決める。残り少ない魔力を全てセイバーへとぶち込みながらトドメの一撃を最速で決めさせる。もはやガトーには何もさせる隙さえ与えない。

「時を刻め―――罪姫・正義の柱」

 刹那を超えてセイバーは時を刻む。もはや誰もその瞬間、セイバーに触れる事は出来ない、正面、しばしの距離を持っていたセイバーは一瞬でバーサーカーの背後へと回り込み、抱擁する様に刃根を背後からバーサーカーへと繰り出す。

 これで―――!

「―――我が神、原始の女へ令呪を―――」

 瞬間、ガトーの声が嫌に重く、そして長く響いた。ガトーへは片目で視線を送る。既にガトーの令呪は消費されていた。何故か、そうではない……嫌にすっきりとした表情を浮かべ、ガトーの手の甲からは―――

「―――二画もって陳情申し上げる」

 令呪が二画消費され、消えていた。それは既に令呪を使った命令が完了されているという証でもあった。そう、”ガトーの命令は既に完了している”のだ。この状況、何を命令したかはわからない。だがそれがまともではない事は既に理解している、聞き終わるのよりも先にセイバーを叫ぶ。

 が、

「―――調子に乗ってくれちゃったわね!」

 バーサーカーが―――理性を見せていた。

「原始の女、星の触覚、真祖の姫君よ―――我が我執に囚われる事無く暴れよ。この月の海で真に汝を縛るものはない。全てから解放され暴れられ世―――その姿こそが、やはり、大雑把に美しい!! フハハハハハハハ―――!! そう、その姿が真に、美し―――!! ッハハハ―――ハハハハハハハ!!」

 ガトーは、臥藤門司はその瞬間、己が見つけた神へのしんこよりも―――神の勝利を選んだ。

 結果を見ればそれだけの話だった。

 だが、それは最高の一手でもある。

 バーサーカーは―――アルクェイドは時の加速を無視してセイバーの頭を掴む。その光景がゆっくりと、スローモーションで見えるが、実際は違う。早すぎる結果、それしか見えなくなり、ゆっくりと感じる様になっているのだ。セイバーが苦笑いを浮かべ、アルクェイドを見ているのが解る。

 そして、口が開く。

「やべぇ、ムリゲー始まった」

「えいっ!」

「がぁっ―――!」

 セイバーの頭を片手で掴み、もう片手でアルクェイドはセイバーを殴り飛ばした。立った一撃でセイバーはアリーナの端へと音速で吹き飛ばされ、見えないか微叩きつけられる。その衝撃でアリーナ自体が震えるが、アルクェイドは特に気にする封もなく着地する。今まで枯渇寸前だった魔力が今の一撃で完全に回復した。そして同時に消費もされる。

「かぁ……はっ……テレジアの献身には感謝してもしきれないな……!」

 アリーナの壁から体を引きはがしたセイバーが口から血を吐き出しながら床に着地する。背中の刃根は今の一撃で全てが砕け散っている。着地しながら再び十数枚の刃根が生え、それをセイバーが構える。が、それは無駄な抵抗という行動だろう。

 終わった。

 もはや自分でさえ理解できる。

 バーサーカーだった存在に、アルクェイドに勝つことはできない。

 プレッシャーなどを感じる事はない。寧ろ天真爛漫な女性、という風にしか見えない。だがそれは表面上なだけだ。ハッカーとしても、魔術師としても少しだけ力をつけてきた今になら解る。あの体の中に渦巻く膨大で、そして規格外の力の正体を。

「アスアスおっひさー! 元気ー?」

「その言い方やめろアーパー吸血鬼また地球吹っ飛ばすぞ」

「あー! ひどーい! 折角お話できるようになったんだし少しぐらい余裕見せたっていいじゃない。ほら、貴方今超詰んでるじゃない。だからほら……慈悲ってやつ? 強者の余裕ってやつ?」

「そりゃ慢心だよばぁーか。英雄王みたいに隙を突かれて死んでくれ」

「嫌よ。なんか志貴もここに来てるっぽいし。そう簡単に負けるつもりはないわよっ!」

 赤い斬撃が放たれる。それはガトーの我執というかせによって弱体化していたバーサーカーではできない、細かい魔力操作による攻撃だ。爪から放たれた斬撃はアリーナの床を砕きながらセイバーを襲う。セイバーは飛び退きながらそれを回避し、やや前かがみになるような体勢で刃根を構える。その姿から視線を外し―――彼女は此方を見た。

「あ、そうだ。貴女」

 彼女は金色の両目で此方を見ながら言った。

「ちょっと死んでくれない?」

 迷う必要はない。あの女は何馬鹿な事を言っているのだ。

 ―――彼女の為であれば自殺する事など当たり前―――。

「ドアホ!」

「痛ぁっ!?」

「馬鹿が、アイツの目を見るな……!」

 セイバーは何時の間にか自分の前へと戻ってきている。刃根を使い、此方の視線をアルクェイドから外している。そして思い出す。彼女の保有しているスキル、魔眼Aを。Aとなれば上位の魔眼だ。対魔力を持たない人間であれば容易く取り込まれる。……今の自分の様に。

 もはや愛はバーサーカーではない。何にも縛られず暴れる姿は、真に”ファニーヴァンプ”の名にふさわしいサーヴァントとなった。

「ふ、フハハハハハ! 見事! 流石我が神! 無敵! 圧倒的! 強靭也ぃ! ささ、目の前の供物をどうぞ!」

 ガトーの言葉にファニーヴァンプは眉を寄せる。

「私、神様じゃないんだけど。というかなによ神って。私って星サイドの精霊種よ? 人の観測できるレベルに落とされるのは何気にちょっと不愉快なんだけど」

「あぁ、しかし我が神よ。これは小生の勝手であり願望なのだ。小生が地上を駆け巡り、そしてこの突きで得た最後の答えなのだ―――報われぬと解っていてもすがりつくのが真人間の業よ。小生のこれは死ぬまで治らぬ。故に原始の女、我が神よ。小生の最期まで付き合ってほしい」

 ガトーらしからぬ達観した様な、悲しげな言葉。それは予想外に静かだった。

「な、言っただろ白野? アレはと君高い坊さんだって。今までがバーサーカー過ぎただけで」

 それは理解した―――しかし、それで条件が好転するわけでもない。このまま戦えば確実に負ける。だからこちらはどうにかしてこの差を埋める必要がある。

「ハッ―――」

 セイバーは笑みを浮かべる。獰猛な、獣のような笑みを。それは自暴自棄になっているから現れるものではない。セイバーはまだ勝てると踏んでいる。勝率はないと断言したのに、この状況でもまだ勝利できると言っているのだ。そして―――それは自分も同じだ。

 シンジは八歳だった。彼は聖杯戦争で泣きながら最期を迎えた。彼の為に為に私は涙を流した。その涙を諦める事で無駄なものに和隊舎したくない。シンジtとエル・ドラゴからは命を奪う残酷さを覚えた。

 ダン・ブラックモアは私の記憶のないこの短い人生で唯一の師と呼べる存在だった。彼とロビン・フッドからは覚悟と迷い、そして決してあきらめない事の重要さ、そして何より人生の指針を与えられた。

 ありすは不幸な少女だった。人生は誰にとっても平等であり、そして幸運であるという事を彼女は存在を持って否定してくれた。世の中はどうしようもなく無情であり、状況によっては救われる液存在にこそ一片の救いもない事を教えられた。

 ここまで―――多くの物を与えられて、進んできた。

 忘れない。

 忘れられない。

 消えられない。

 消えない。

「私は―――この全てを忘れたくないから」

 それでいい、とセイバーは呟きながら笑みを浮かべる。セイバーからは覇気は十分に感じるあぁ、セイバーも自分もまだ戦える。ならそれだけで十分だ。アルクェイドの体力は回復していない。セイバーによって串刺しにされたその瞬間からHPの変動はされていない……あと一撃当てる事ができればば、それで勝利は確定する。だがそれを相手は理解しているだろう。何より一撃を当てるだけ、という条件であれば圧倒的有利であるはずのセイバーの必殺スキル、”時を刻め”が止められた事で、これがほぼ不可能だという事は解っている。

 一撃で決める事が不可能ならば―――

「―――数で攻めるしかない!!」

 セイバーと声が重なった。

「我が名はレギオン―――!」

 セイバーがスキルを一斉に発動させ、事故の強化を果たし、その瞬間百を超える刃根の斬撃を全てアルクェイドへと向かって叩き込む。物量からして間違いなく今までの戦いからしても最高クラスの量。それを前にアルクェイドは手を前に出す。

「フェイク―――」

 そうやって出現するのは鎖だった。現実をテラフォーミングする”原初の一”としての能力。空想具現化。マーブルファンタズムと呼ばれるそれを持ってアルクェイドは、

「フェイクフェイクフェイクフェイクフェイク……!」

 刃根に対抗するだけの鎖を生み出す。アリーナ内を蹂躙する様に刃根と鎖が出現し、ぶつかり合い、刃根が一方的に砕かれる。もはや強度においてはアルクェイドを凌駕する事は不可能となっている。だがそれでもあきらめずセイバーは一撃を届かせるために刃根を増やし、

「神よ!」

「いっくわよ―――」

 アルクェイドは腕を引く。瞬間鎖の量が一気に増える。

「グノーデン―――」

 刃根の森を突き破り鎖がセイバーの体を拘束する。そして、それによってセイバーの体はアルクェイドへと向かって一方的に引き寄せられ、

「―――ストース!」

 拳がセイバーの体に叩き込まれる。刃根を打ち破った鎖さえ粉砕する拳の一撃。その衝撃はアリーナを響かせ、セイバーを再びアリーナの反対側へと叩き込むだけの破壊力を持っていた。吹き飛ばされる途中で、セイバーの魔力回復効果とリザレクション効果が発動するのが見える。

「せぃ!」

 アルクェイドが一気に加速するのと同時に壁に叩きつけられたセイバーへと向かって加速するのが見える。

 ―――ここで防御すれば死ぬ。

 ほぼ直感的にだが、それを見抜く。セイバーにアルクェイドの初動を崩す様に指示を飛ばす。アルクェイドの動きは強く、早く、そして圧倒的だ―――だがセイバーの様に芸術の領域に達した武芸が存在しているわけではない。

「ふっ……!」

「お、おぉ?」

 セイバーは一撃を受け止めず、即座にリザレクションに魔力を使用しながらアルクェイドの攻撃を受け流す。処刑という一概念に特化した存在の為、武芸特化の英雄程上手くはないが、それでも敵の動きを流す事には成功する。

 少量のHPの減少と共に。

「えい、やっ、せいっ、とっ!」

「が、く、シッ―――!」

 超高速の連撃をセイバーはギリギリの領域で踏ん張り、受け流す。だが圧倒的過ぎる力の差がセイバーを徐々にだが追い込み、削り殺している。このままではそう遠くない先で、セイバーがアルクェイドに敗北する。

 考えろ。

 敵は圧倒的。今切れる手札には対抗策がない。完全な詰みの状態だ。

 今の手札では。

 此方も令呪を使えば可能性によっては―――。

 まて、

「可能性……!」

 そう、可能性だ。セイバーは可能性に満ちたサーヴァントだ。そしてそれを引き出す事がマスターである己の役目。現在セイバーはスキルを一つ取得している。故にこれ以上の取得は現状不可能だ。令呪を使えば取得スキルを一つ増やす事が出来る。だが既に令呪は二画使用している。故にこれ以上の使用は無理だ。

 考えろ。

 令呪はブースト装置、巨大な魔力の塊。

 ブーストには大量の魔力が必要。

 魔力がなければどうする。

 あるところから持ってくる。

 魔力ムーンセルからの供給である為この状況で引っ張ってくるのは不可能。

 なら代用すればいい。

 ……そう言えば魔力に関して調べた時に面白い記述を見た気がする。

 魔力を消費する時、魔力が足りなければ肉体が削られ、そしてそれが足りなければ―――魂が削られる。

 あぁ、なら簡単だ。

 ―――この血肉をセイバーにスキル取得の代償として捧げる。

 何を取得する?

 それは、もうすでに決めている。

「取得宣言―――!」

「白野! ヤメロ!!」

 セイバーが叫び、とっさの反応が遅れるその体はアルクェイドの蹴りを受けて何度も大地を刎ねガラ吹き飛ばされ、岩塊に激突する。それを見ながら、宣言の意志を固める。瞬間、自分の体を構成しているリソースが三割崩壊したのを感じる。体が内部から切り崩され、それセイバーへと流れ込む感じ。パスを通してセイバーは生きているのは感じるし、そしてそれが彼の力にもなっているのが解る。

「―――神性を得よ、セイバー!」

「……! 落ちなさい―――偽りの月よ」

 宣言が完了するのと同時に、アルクェイドが空に浮かべていた重力発生の源、赤い月を落下させる。超重量の物質が落下し、それが頭上からセイバーへと襲い掛かる。だがその状況でセイバーはゆっくりと立ち上がると、光を全身に纏わせながら、ゆっくりと進み出る。

「我が最愛の人の覚悟を持って最終固有スキルを解放する」

 セイバーの瞳は輝き、アルクェイドを捉える。

「―――我は全にして一、一にして全―――我が名はレギオン。我は我が過去に連なる我が全てである。我はシャヘルにしてツァラトゥストラ、魂の系譜の一部―――」

 セイバーの背中からは刃根が消え、その代わりセイバーの右腕は黒く変色していた。まるで金属の様な輝きを帯びた黒。その腕からは一枚の刃が生えていた。

 それは、間違える事無く、一枚のギロチンだった。

「―――Verweile doch du bist so schon」

 瞬間、世界が停止した。一秒以下の停止。その中でセイバーがゆっくりt歩くだけのが見えた。落下する月の下から逃れ、全身血まみれの姿を引きずり、アルクェイドの前で動きを停止する。

「我は最初にして最後の黄昏の守護者―――いくぞ、アルクェイド。十七分割なんて生ぬるい事は言わないぞ。最低でも百八分割だ」

 次の瞬間には、全てが完了していた。アルクェイド”だった”ものがそこに鎮座し、セイバーの腕のギロチンが音を立てて砕ける。瞬間、セイバーの全身から血が噴き出る。セイバーのHPは1ドット残す以外は魔力までもが消失し、激しく息を切らしているのが解っていた。だが、それは紛れもない勝利だった。満身創痍で、どこまでもぼろぼろで、そして瀕死だが―――間違いなく勝利だった。

 その勝利を確信し、体が痛みと疲労から倒れかける。その体を、戻ってきたセイバーが後ろから抱いて支えてくれる。セイバーも文字通り死の一歩手前というのに、見事かっこつけてくれる。

「―――小生は、負けたのか」

 ガトーの呟きと共にオレンジ色の壁が出現する。聖杯戦争の敗者を捉え、そsて消し去る絶対死の壁。それがガトーの体を消去し始める。

 が、ガトーは喚かず、悟ったような表情を浮かべ、安らかに目を閉じている。

「小生にも解っている。妄信すればそれで良い、というのは違うと。しかし、小生は知ってしまった。地上を歩き、人生のほとんどを神へと捧げ、絶望的な真実を得てしまった。故に小生は狂った。自分の信じようとしていたものが信じられず、真に信仰全てを預けられるぬと悟り、求めるしかなかった」

 ガトーは目を開き、此方を見る。

「小娘―――いや、岸波白野よ。貴様を支えるそのサーヴァントは実に情が深い神だ。―――そして情の深さゆえ敗北した。そういう逸話を持つ者だ」

 セイバーはガトーの様子を少々驚いた様子で見ていた。

「敗北の間際に我執から解放され、至ったのか」

 それがどういう意味かはよくわからないが、ガトは返事をすることもなく、腕を組み、笑い声を上げる。

「ふ、ふふふ、フ―――ハハハハハハ! そう、これこそが正しき終わりよ! コキュートスの底でいずれ会いまみえようルシファーよ! その小娘に説法などいらぬだろう、故に!」

 ガトーは見上げながら叫ぶ。

「門司臥藤、これにて地獄へと落ちよう! さらば……!」

 そして、ガトーの姿は消えた。

 最後まで、自分にはよく理解できなかった男だった。だが、最後の最後でガトーは何か大事なものを見つけたようにも思えた。それがガトーに取って掬いだったのかどうかは、自分には解らない。だがこの男も、何か大事なものを抱き、そして答えを得たという事実だけは、理解できた。

 ふぅ、と息を吐き出しながらセイバーに支えられる。自分もセイバーも、これが終わったら少々ゆっくり休むべきかもしれない。セイバーは最後の固有スキルとやらで武器を破壊した一撃を繰り出し自爆ダメージで瀕死だし、自分も自分でセイバーに肉体のリソースを捧げてしまったので少々動けない。ほんとボロボロすぎて笑えてくる。あと超痛い。

 これ、絶対凛達に怒られるんだろうなぁ、等と思いながら―――違和感を覚える。

 エレベーターが来ない。

 そしてシールドが消えない。

 エレベーターがあるはずの位置に視線を向けるが、そこにはエレベーターが現れない。おかしい。ガトーとアルクェイドを撃破し、そして今し方消したはずだ。なら何故エレベーヤーは来ず、そしてシールドは消えない……!

 そう思った瞬間、

「―――ほんと、よくも殺してくれたわね」

 シールドの向こう側、無傷で立つアルクェイドの姿があった。その姿に驚き、そして絶句する。ほんの数秒前まではアルクェイドは確かにセイバーが”解体”して肉塊に近い、というかグロテスクすぎて放送できないような物体になっていたはず。百八分割とか頭悪すぎるだろうとか言えないほどのレベルのトラウマな形だった。

 が、そんな姿だったはずのアルクェイドは無傷で姿を現していた。

「ちょっと、首を落とされなかったから良かったけど、細かく切り過ぎでしょ! おかげで創造するのに手間がかかったわよ!」

 ぷんぷんと、いうのが見えてきそうな感じに彼女は頬を膨らませている。その姿を見て、セイバーは苦笑する。

「ほら、言っただろ白野? 勝率ゼロパーだって。このアーパー吸血鬼はな、殺されたって死体の状態から自分を”創造”する事で復活できるんだよ。。転生概念破壊系とか不死殺し系じゃないと完全に殺しきれない」

「まあ、今回は意図的に首を外してくれたおかげで蘇れたんだけどね、っと!」

 アルクェイドが爪を振るうと空間に穴ができる。ムーンセルは彼女の解体を始めないし、彼女の暴虐を許している。唖然とその光景を眺めていると、アルクェイドは此方に視線を向ける。

「見た事のない人種だから付き合ってみたけど、結構意外な感じに収まったわね。私の良そうだと高確率であのまま私を認めず、神と見たまま死ぬって感じだったんだけど……ま、終わった話だしもういいか。じゃ」

 と、彼女は笑みを浮かべる。

「久しぶりに懐かしい経験をさせてもらったわ。黄昏の女神ちゃんの力が健在ならまた来世で会いましょう」

 蠱惑的に笑うと、アルクェイドは言葉を継げながら穴を抜ける。

「―――私を殺した責任、とってもらうんだから」

 そんな言葉を残し、アルクェイドは姿を消し―――聖杯戦争四回戦は幕を閉じた。




 今回は1万4千文字ー。やっぱ金髪巨乳はいいですね。

 ともあれ、最後の固有スキルに関してはセイバーさんが何時かマトリクス完全版と一緒に開示してくれるでしょう。今回はこれまで。もうすぐCCC……!
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| 断頭の剣鬼 | 11:13 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

CCCはネタの度合いがマジ酷いからな!楽しみやでぇ・・・!

| おk | 2013/05/14 17:14 | URL |

週末の裁判ってw軽すぎるww
自我が戻るってw予想はついてましたけどね!
セイバーを強化するために、白野はなにを失ったのか・・・

| 通行人D | 2013/05/14 17:17 | URL |

おい、信じられるか。
この激戦で、まだ四回戦なんだぜ・・・?
これ以上のインフレなんてあり得ない・・・?

| 断章の接合者 | 2013/05/15 12:41 | URL | ≫ EDIT















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