陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-36

 今日も今日とて朝がやってくる。

 もう寝相が酷いとセイバーにからかわれるのには慣れてしまった。朝起きれば此方の顔をソファから眺めているセイバーの姿はもう、本当に日常的な光景というか、逆に何時も通りなのだと安心する所さえある。何か乙女としては致命的にダメな事だと思うが、そこらへんはこの際完全にスルーしておく。セイバーは日に日にリアクションが薄くなっている事を若干残念に感じているらしいが、そろそろこいつにはガツンと一撃をぶち込むべきではないのかと思う。

 いや、むしろそうしよう。

 食堂ではなくセイバーが用意した朝食をマイルームで食べ終え、マイルームから外に出る。基本的にセイバーは小物を大量に、さっぱりとした味の料理を好む。なんでも一日の栄養バランスを考えるとこれが一番良いらしい。このオカンスキルはどんな結末を迎えれば習得するのか、今度暇があれば聞いてみるのも良いのかもしれないと思いつつも、もはや日課となりつつある保健室へと向かう。


 四回戦となれば人は少なく、廊下で通り過ぎるのがNPcなので寂しい。が、……それも、大分気にならなくなってきた。それは自分の心が慣れてきたのか、それとも少しずつそういう人間になってきたのか、意味合いは似ているが……。

『くだらない事を考えてないか? 慣れたとか擦れたとか。そういう事に悩むにゃあまだまだ経験も何もかも足らんよ』

 このサーヴァント相手には悩む事すら許されない。というか勝手に人の心を読まないでほしい。

『顔に出るから解りやすいんだよ』

 自分が原因だったことに軽くショックを受けつつも、一階の保健室前へと到着する。そこでセイバーは何時も通り霊体化を解除し、保健室の前に立つ。

「ほいじゃ、行ってらっしゃい。俺は青子と破界談義。終わったら”セイバアアアアアア! 好きだああああああ!!!! と叫んでくれれば戻ってくるから」

 ノータイムでセイバーの顔面を殴る。目を閉じていてドヤ顔をしていたセイバーの顔面に渾身の一撃は突き刺さり、セイバーの上半身を大きくのけぞらす。セイバーが痛みで顔面を抑えている内に保健室の扉を開け、セイバーの後ろに回り込む。

「ひど―――」

「えいっ」

 セイバーの尻に蹴りを叩き込んで、その体を保健室へと押し込む、それにしても破界談義とはなんだ。貴様らそのうちに世界をぶち壊す気か。サーヴァントとはクラスにはめられて弱体化しているから、召喚される前のセイバーであれば可能かもしれない話だが、魂の改竄担当の青子がそれに混ざるってのはどういう話だ。そう言えば橙子が青子の事を波動砲とか宇宙戦艦とかと評していたな。……嘘じゃない?

 とりあえずセイバーを蹴りいれた保健室に自分も入り、扉を閉める。目の前にはテーブルでお茶を飲んでいる凛とラニの姿上がり、そしてテーブルの角に頭をぶつけて倒れているセイバーの姿がある。どうやら少し強く蹴り過ぎてしまったようだ。まるで犯罪現場を眺めている様な光景だ。とりあえず桜の方へと視線を向け、

「―――証拠隠滅とかできない?」

「せ、先輩が言うのでしたら!」

「止めなさい」

「貴女は今日も何時も通りですね、ミス岸波」

 床で倒れているセイバーの事は完全に無視し、自分もテーブルに参加する。すかさずお茶を入れてくる桜に感謝の言葉を返す。その桜は床に倒れているセイバーを見る。

「……セイバーさんにもお出しした方が宜しいんでしょうか……?」

 いや、それは放置でいい。どうせセイバーの事だからわざと倒れたままでいるのだろうから。

「もっと、こう……追撃とか楽しいリアクションを期待してて待ってたのに……」

 マイルームでも言った覚えがあるが、セイバーの芸風には大体慣れてきた。なんというか、徹底的に楽しめる事は楽しもうとする前向きな姿勢がある。それは見習いところだが、正直それにしても時と場合がある。あとほら、セイバーよ、早く立ち上がるがいい。私がマッチョ系女子だと思われる。

「思わないから大丈夫よ。ただ単に私達と顔を合わせるのが気まずいだけよ、ソイツは」

 頭の後ろを掻きながらセイバーは立ちあがる。まあ、自分も解っている事だ。セイバーはあの時の選択を間違っているとは思わないが、それでも命がけで救った凛と、そしてラニの主張を尊重しているのだ。セイバー一人であればセイバーは救った後完全にどうでもいいと無視しただろうが、

 ……たぶん、私の事を心配しているんだろう。

 セイバーがそういう態度を取れば、私と凛たちの関係がこじれてしまうのではないかと思って、極力関わらない様にしていたのだろう。そこらへんセイバーは優しいと思う。自分事を卑下している様子が所々見えるが、友や身内と言った存在にはとことん甘いような気もする。

「ま、正直」

「余計な気遣いです」

 凛とラニはセイバーの気遣いを不要だと一刀のもとに切った。えー、とセイバーが声を漏らしながら肩をがっくり、とおろしている。余計な気遣いだったかぁ、といかにも残念そうな表情を見せている。

「まあ、あの時は確かに頭に血が上っていたし、色々と考え付く事はあったけどこうやって冷静になれば落ち着けるし、何時まで同じことで怒りを感じる程子供なつもりもないし。ランサーには少し悪い気もするけど、この状況、白野に乗っかった方が聖杯へ近づけるわ」

 凛のイーブンは中々にドライなものだが、もう怒りはなく、そして協力する意思をセイバーに伝える。そしてラニは軽く頷く。

「―――正直な話、私は最初は貴方ではなくミス岸波を恨んでいました。ですのでセイバーには恨みはありませんし、特にいう事もありません。ただ我々を評価している割には信頼する様な事はしないのですね、とだけ言っておきます」

 ラニに関する話も既に聞いたことだ。ラニはアトラス院で創造されてから師の命令を受け、活きてきた。それを失敗させる原因となったのが自分である。存在理由をラニはなくし、半ば人形のような状態で保健室のベッドに倒れていたものだが―――自分なりに新しい事を見つけ出そうとラニは自立をし始めている。凛もラニも、今は恨む事はないと言う。

「……」

「こっちみんな」

 セイバーが首だけを此方へと向けて、リアクションに困った表情を見せているのでとりあえず突き放しておく。最近のセイバーは若干調子に乗っている様なので躾の為にもこれぐらいの鞭は必要なのだ。

「くぅんくぅんくぅーん」

「犬真似するな」

 駄目だ、このサーヴァント反省しない。早くどうにかしないと……!

「アンタ達仲がいいわね……」

「それが彼女の強さなのでしょう」

 その光景が面白かったのか、凛もラニも笑みを浮かべ、そして保健室の隅でオロオロしながら状況を見守っていた桜も空気が緩んだことにホっとした様子を浮かべる。そして笑みを浮かべ、お茶を入れる為に桜が動きはじめる。凛とラニが言葉としてセイバーに対する許しを与えた事で、少々こわばっていたセイバーの体も安らいでいるように見える。

 セイバーを見ていて思う。

 誰もが何かを恐れて生きているのだと。それは人間であろうと英霊であろうと変わらないんだな、と。

「けっ、いいもんいいもん。好きなだけ生ぬるい視線で見てろ―――マスターだけをな!」

 セイバーが霊体化して姿を消す。扉が開いてない事からするとどうやら保健室を出たわけじゃないが、姿を隠しただけだ。……なんというか、セイバーって実はツンデレ属性もちじゃないかと思う。こう、結構オープンだったりするがその中にチラリと見せるツンデレイズムが……なにを言っているのだろうか自分は。

 桜の茶を飲みながら一息をつく。こんな平和な時間もあれば少しは変な事も考えるか、と納得しておく。

 もう少しここで茶を飲んだらアリーナへと向かおう。そう思った矢先、凛が笑みをけし、扉の方へと視線を向ける。

「誰」

 凛が睨んで言葉を放った瞬間、扉が開け放たれる。

「御免! 邪魔をする!」

 そう言って暑苦しい男がやってきた。

 背に三度笠を背負う巨漢、ガトーは保健室に入ってくると此方に視線を向けてくる。どうやらガトーは此方の事を探していたらしい。此方を見つけ、ガトーは口を開き―――そして凛とラニ、そして桜を見て一瞬だけ硬直してから怒りを見せる。

「ぬおおお!? 会わぬ会わぬとは思っていたが、このような所で密会とは破廉恥な! おおおぉ、実に神許せぬ! しかも同性ではないか! なんと非生産的ハーレム! あ、ちょっと悪く―――いやいやいやいや、それは駄目であろう!! 小娘よ! 禁欲的アンド英雄的! 今すぐ小生と共に復唱するのだ! い、っせーの!」

 もちろんそんな事は言わない。と言うかハーレムってなんだ。というかお前今何を想像した。早口で隠したつもりだがこの岸波白野、しっかりと言葉を聞いたぞ。というかガトーが若干可哀想に見えてきた。特に頭が。大丈夫かコイツ。

「おぉぉおおお、おのれぃ! その憐れなものを見る目、かの魔性菩薩、殺生院キアラめを思い出したわ!」

 両手を広げて荒ぶるガトーのポーズを披露するのを無視し、ラニは桜を連れて保健室の奥へと退避する。凛は立ち上がり、数歩後ろに下がるが、その手の中には宝石が握られているのが見える。遠坂凛の魔術は宝石魔術であり、戦闘に使うものを握っているという事は、凛は此方と共に戦う意志を見せてくれている事だ。

「大丈夫ですか桜? えぇ―――筋肉達磨に関しては彼女達がどうにかしてくれるでしょ」

「ラニもここ数日でだいぶはっちゃけて来たわねぇ」

 お褒めに預かり光栄です。

「あ、やっぱり自覚してるんだ」

 それはもう。第一ラニが人形だとか、存在意義がないとか、そんな事は絶対に認めない。ラニの人間らしい所、少女らしい所、そういう所を自分は知っている。自分も最初はもっと空虚な存在だと思っていたが、こうやってセイバーのおかげで馬鹿の様な事をやっても笑っていられるようになった。だからそれをラニへと伝えただけに過ぎない。そこからはラニの努力だ。

「ぬう!」

 此方の会話をガン無視し、憤っていたガトーは此方を見る。

 その雰囲気は重い。いや、

 ―――これはプレッシャーだ。

 それもバーサーカーが出現している間に感じる様なものだ。

「我が憤り―――否、我が神の怒りによって死ぬが良い! 小娘、貴様は小生と我が神の怒りに触れた!!」

 よほどキアラという存在が嫌いなのか、苦手なのか、それを思い出させられたことを、たぶん、ガトーは怒っていた。いや、そもそもこの男は狂っている。頭のネジが数本というレベルではなく外れている。ガトーはこの場でバーサーカーを呼び出し、ペナルティを気にせず攻撃に入ろうとしている。

「正気……!? いえ、正気じゃないから仕掛けてこれるのね……!」

 凛はガトーの行動に驚愕しながらも、迎撃の姿勢を見せる。

 何か念仏を唱え始めるガトー、ガトーがバーサーカーを召喚する前に、セイバーが出現した。

「控えよ臥藤門司」

 威厳のある声でセイバーがガトーを睨み、動きを止める。そこには普段見せないような荘厳で厳格な姿があった。セイバーの出現と同時に多少だが魔力を吸われた感覚がある。セイバーは何らかのスキルを取得している。そのセイバーの姿の前に臥藤は動きを止めている。

「貴様はここを病室だと忘れてしまったのか? ならば思い出せ、真に神に仕えるものがそこを戦場にしてよいかと。闘争を求めるのであれば狩場にて一次の雌雄を決するのも良いだろう。今しばしその怒りを力として溜め込め」

 違いすぎるセイバーの雰囲気に驚愕するが、ガトーはその光景を見て、聞いて、そして笑みを浮かべる。それは期待に満たされた顔であり、素晴らしいものを見た、それを確信したような表情であった。

「おぉ、その神気、溢れ出る威厳、サーヴァントという型に落とされながらも、人々を夜明けへと導く本質は変わらぬと見た! ふはははは! 望むところよ光の神よ! 敗北の魔王よ! 貴殿にこそ小生は我が神の威光を刻み込んでみせよう!」

 笑い声を上げながらガトーは保健室から出て、アリーナへと向かった。おそらくアリーナでのハンティングが終了した直後に襲い掛かってくるだろう。丁度いい。いい加減バーサーカーの動きを見て覚えなくてはならないと思っていたところだ。

「白野、遠慮はいらん。存分に力を振るいアレを蹂躙するぞ」

 そう言ってセイバーは姿を消した。この場は何とかセイバーのおかげでなった。振り返れば宝石をしまった凛が此方に済まなそうな表情を向けている。

「まだアイツとバーs-アカーに関する情報は掴んでいないから、あと一日だけ待ってて。こっちも出来る限りのことはやってみるわ」

 凛の言葉をそこから引き継ぐようにラニが保健室の奥から現れる。

「必ず間に合わせますので、どうか星の導きがありますよう―――」

 うん。この二人の努力も成功も疑わない。彼女たちは自分よりもはるかに優秀な魔術師で、ハッカーなのだ。仲間が増えた事実に安堵し、心を引き締める。

 自分が何か、よくわからない存在だとしても―――それを恐れる理由はない。

「行こうセイバー」

『ヤヴォール・マインヘル』

 久しぶりに聞くセイバーのその言葉に背中を押され、アリーナへと向かう。
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| 断頭の剣鬼 | 17:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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