陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-32

 マイルームへの道すがら、セイバーは異常に静かだった。何時もなら軽口の二三あるのだが、それがないだけでもこんなに静かに感じられる。セイバーの異様な雰囲気に若干何かを感じつつも、何も話すことなくマイルームへと帰還する。一日の終わりの魂の改竄も、凛とラニの確認もせず、ただ真直ぐにマイルームへと戻る。

 そこで、姿を現したセイバーは唐突に―――上半身裸になった。

「なにやってんの―――!?」

 武具を外し、上半身裸になったセイバーは服をソファの上に投げ捨て、そしてそのまま倒れる様にソファに座り込む。元々は机による代用品だったソファもセイバーが力をつける事によって本物のクッション付ソファへと進化している。それに体を沈み込む様に座り込むと、セイバーは深く溜息を吐き出す。その姿は何かに非常に疲れている様な様子がして、話しかける事をためらわしていた。


 今までどんな分野、活動においても完璧な結果を見せてきてくれたセイバーが見せる事のなかった負の側面。それが惜しげもなく目の前で晒されていた。そうやってソファに沈み込んでいるセイバーに話しかける事はためらわれたが、それでも話を続けるほかない。

 明らかに今日のセイバーの様子はおかしかった。聖杯戦争を勝ち抜くのであれば、絶対にその理由を……いや、そんな理由ではない。自分は純粋にセイバーという唯一無二の相棒を心配しており、その態度の豹変の理由を知りたがっている。だから椅子を引っ張ってセイバの前に置くとそこに座り、意を決して話しかける―――セイバー、いったいどうしたのだ、と。自分から相手の真名をバラしたり、自分の真名につながるヒントを出したり、全く持ってセイバーらしからない。何か問題があるのであれば教えてほしい。

「ふぅ……」

 セイバーは長い溜息を吐くと、俯いていた表情を浮かべる。前髪が顔に影を作り、その表情が良く見えない。だが、セイバーは何とも言えない、そんな感じの表情を浮かべている。そんな気がする。

「結論から始めよう」

 セイバーが言う。

「白野、お前は―――ゴースト、もしくは―――地上に肉体を持たない存在だ」

 セイバーの出した結論に心臓を止められる気がした。

 セイバーの顔を見る。が、そこには冗談を言うつもりはない、と書かれていた。嘘を、セイバーは、言っていない。そうはただ、己が見つけた真実を此方へと打ち明けてくれているに違いない、そしてそれは自分にも、セイバーにも予想外にヘヴィな事だった。

 いや……ある程度だったら、予測はできていたはずだ。

 何故ならありすは―――自分を同じと呼んだのだから。

 だが、何故、何故セイバーはそれに気づいたのだ。根拠は、どうか、教えてほしい。何故私の正体がゴーストか、肉体を持たないものであると気づいたのかを。

「……まず最初に怪しいと思ったのは初めて魂の改竄を行った時だ」

 その段階から、セイバーは此方の正体に関して悩み始めていた。

「俺、というサーヴァントはかなり特殊な部類に入る。神話(マイソロジー)系でありながら概念系の反英雄。俺の召喚は相性の良さと、そして俺に認められる事で成功する。だが―――それとは別に受け入れるだけのキャパシティが必要なんだよ」

 英霊という存在はムーンセルによって維持されているのとは別に、マスターとパスでつながっている。サーヴァントの維持に魔力が消費されているのが基本的な知識として解る様に、マスターはサーヴァントを”保有”しているのだ。

「このキャパシティってのは魔術師としての技量だったり、才能だったり、魔力保有量とかで決まるんだが、魂の改竄を通じてお前を感じた時、お前の魔術回路が嫌に未発達な事に気づいた―――なのにサーヴァントを受け入れ、自由にするキャパシティだけは凄まじく大きいものと来た。明らかに普通ではないが、その時は”マスターとしての才能”を持っている事として納得した」

 ……そう言えばずっと前にセイバーは自分はマスターとしては一流の才能を持っていると言っていた。まさかそれがこのことだったとは。

「で、まあ、ありすの事ももっともだが―――存在自体に疑問を持ったのはお前が視聴覚室の扉に触れた時だ」

 視聴覚室の扉といえばほんの少し前の出来事の話だ。扉に触れ、少し衝撃を受けたが、それだけの話だ。

「いや、アレは侵入者対策のトラップだ。俺が酷く慌てていたのを覚えてるか? ―――普通の人間ならアレで脳を焼かれて死んでいる。だからあの時、半ばお前の存在が人間ではない事を確信した。そして今日、悪いが試させてもらった」

 セイバーが何を言っているのかを理解した。今日も、同じような衝撃を受けた瞬間があった。―――セイバーの提案でムーンセルから情報をサルベージしようとした時だ。アレでセイバーは此方が本当にそうなのか、どういう存在なのかを確かめたのだろう。そしてそれはセイバーを確信させるに至ってしまった。

「済まない白野。騙すようで本当に済まない」

 手を祈る様に組み、俯いてセイバーは此方から視線を外す。その様子に、本当に追い詰められているのは自分ではなく、この最優のサーヴァントであることに気づいた。自分はありすの時からある程度見て見ぬふりをしていたから……まだいい、だがこのサーヴァントは、セイバーは、そのトラウマか、過去に触れる何かを侵してしまったのだ。

 だから―――ここで自分がするべき事は一つだ。

「セイバー」

 自分の声に反応してセイバーが顔を持ち上げる。だから問う。

「私がゴーストだったらセイバーは私を見捨てるの?」

「そんな事はない! この魂に変えてでも白野、お前だけは、最後まで守る!」

 自分がやるべき事はこの相棒を救う事だ。今まで自分はこの相棒に守られっぱなしだった。最初から、今まで、最優のサーヴァントであり続ける事によって此方の苦労や苦悩を全て食らい、守ってきた。突き放すような言動や、迷わせる言葉だって此方を思う事があっての事だった。セイバーは何時だって此方の事だけを考えてきてくれた。

 だから、今度は自分の番だ。

 自分に過去はないし、未来がどうなるかは解らないが―――”現在”がある。

「だったら私はそれだけで十分だよ、セイバー。セイバーが私の為に頑張ってくれる。だから私はセイバーの夢をかなえる為に頑張る」

 たぶん、たぶんだが……そんな理由でいいのだ、戦う意味なんて。頑張っている人男ために頑張りたい。助けられているから助けたい。決して依存しているわけではなく、その頑張りに報いたいから自分も頑張る。……その程度でいいんじゃないか、と思う。

 まだ明確な夢や目標、高尚な願いがある訳じゃない。

 だけどこの相棒の為に、そして自分の勝手で救った二人の為に―――私は最後まで戦う義務が存在する。

「だから、それだけでいいんだよ、セイバー。私、まだ夢はないけど、少しだけ覚悟と、戦いに意味を見つけたから。―――ダン卿に胸を張る事が出来るだけの理由を見つけたから」

 セイバーはその言葉を驚きと共に眺め続けて、珍しく呆ける様な表情を浮かべていた。

「―――あぁ……そうか」

 セイバーは驚きのままに何かを呟き、そして表情を戻す。復活が早いと言うか、表情を戻したセイバーはもういつも通りに戻っていた。何か、すっごくずるい。

 私は今の発言で顔を真っ赤にして、まだ落ち着けないと言うのに。

「くくくく、おい、耳まで赤いぞ」

「う、うるさい!」

 ソファの上の枕を拾い上げてセイバーの顔面に叩きつける。わぷっ、等という声を漏らす所を聞きながら上着を脱いでベッドにダイブする。布団をかけるのも面倒だ。そのまま目を閉じる。……今日は色々とあって、疲れた。何かもう考えたくはない。

「なんだ、もう寝るのか」

「寝る! おやすみ!」

「あぁ、お休み愛しいマスター。良い夢を」

 セイバーは何と言うか、非常にずるい。少し前までは超ダウナーに入ってたのにテンションの切り替えが早すぎる。……まあ、でも、何時も通りのセイバーに戻ってくれたのであれば歓迎すべき話だ。あんな風に落ち込んでいるセイバーは此方が見ていて辛い話だ。何時も通り意味深に笑みを浮かべて、馬鹿な話をしてくれる彼ではないと調子が狂う。

 だから、これでいいんだ。

 そう思いながら目を閉じれば―――眠りは安らかに訪れる。

 夢もなく―――悪夢もなく―――ただただ、安らかに見守られる眠りだった。





「舐めるなよ救世主」

 一瞬にも満たない攻防。マイルームへと侵入しようとした欠片は夢となることなく消滅した。その出所が燐天の檻であることは疑いようがない、と、この男だけが知っている。上も下も右も左も関係ない。ムーンセルにおいて場所を求める時に方角を頼りにするのは愚かな事だ。だから時と空間を超え、ただ場所のみを見続ければ良い。そうやってセイバーは睨みつけている。

 熾天の檻にいる者を。

 セイバーも、座にいる男も言葉は発しない。そもそも言葉は届かない。お互いに立ち位置が違いすぎるからだ。ただ両者ともに、事実として見えているという事を知覚している。互いに言葉を吐こうが、それは絶対に届く事はない。だから両者ともに互いの存在を無視して言葉を吐く。吐き続ける。互いにそれが届く事はないと理解していながら―――その話は噛みあっていた。

 だがそれも長くは続かない。

 そもそも繋がりなどないから続きはしない。

 だからありえない会話はそこで終わりを迎え、セイバーは中身の残り香少なくなってきたワインボトルを取り出し、コルクを噛んで引き抜くとそれを吐き捨て、中身を少しずつだが飲み始める。そうやって酒を飲んでも決して酔えるわけでもないのに、形としてだけ、味でもなんでもなく、”行動”を楽しむ。

「何故、何時も守りたいと思った者ばかりは―――」

 そこでセイバーは言葉を止めて、己の主を見る。愛しい己の主を。

「本体とは通信途絶、最新の情報が入らなきゃ結果を送る事も出来ない。能力だけ分けられた俺はレギオンから外れたあぶれものか……」

 記憶と、経験と、力を持っていようとも、己はベースとなった本人とは違うとセイバーは自覚している。だから結婚し、養子をとったという記憶と経験はあっても―――それは自分ではなく、今も狂気と憤怒で守っている守護者たる彼のものであるという事を自分の事だからこそ誰よりも理解している。だからこそこんな好き勝手な事を言って、好き勝手な感情を得る事が出来る。

 何故ならこの分隊の最期はムーンセルによる解体なのだから。

 だが、

「―――認めん。断じて認めるものか」

 ―――その終わりを、共有すべきではない存在がいる。

 安らかに寝ている主を見て、それが己の存在の全てを賭けるに足る存在だと確信し、己の願いを口にする。

「今度こそ……今度こそは守り通す。誰一人守れなかったこんな人生でも、一度くらいは、誰か、愛しい人を―――」

 残りの呟きはかすむ様に消え、

 そして夜は続く。




 白野の正体バレその1、そしてセイバーさんは平和男を……?

 と、言う事でセイバーさんの真の願いは”最後まで守り通したい”でした。

 守ろうとした人はほぼ全員死んでるからね!
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| 断頭の剣鬼 | 10:00 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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