陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-30

 マイルームの隅で、膝を抱え、体育座りで反省する。

 ラニと凛を助けたまでは良かった。だがそれは所詮こちら側の都合。ラニは自分が救われたことに対して驚愕と不審を抱いているし、凛に関しては噛みついてくる寸前だった。もしセイバーがいなきゃ首を絞めるに違いない。セイバーは否定したが、凛はあの状況を生き残る算段をつけていたのだ。それを邪魔され、尚且つサーヴァントであるランサーを始末されたのであればキレる理由も解る。

 だからこその体育座り。私一体何をやってんのよ、と。軽いというか深い反省と共に体を丸めている。その間、頼りになる、というか黒幕、主犯、実行犯、そのような表現がピッタリとフィットするはずの相棒は、近くのソファに背を預けながら、今朝飲んでいたワインの続きを飲んでいる。その姿は此方を見て苦悩している姿を楽しんでいるように見える。というか、


 セイバー、何をやってるの。

「マスター観察」

 楽しい?

「はっはっはっは―――愉悦!」

 自害しろセイバー。というかマジ何をやってんだ。

「何をって我が愛しのマスターが部屋の隅っこで体育座りしている姿を愛でているだけじゃないか」

 ちくしょう、こいつ性格が最悪と言っていい部類だ。信頼できると言えばできるのだが、こういう部分を本当にどうにかしてもらわないと私の胃がマッハでどうにかなってしまう感じがする。いや、そこらへんはムーンセルが管理してくれていそうなのでどうにかなる訳はないが、比喩的表現としてどうにかなる。

 ……なにを言っているんだろう。

 少し落ち着け、と自分に言いたい所だが、もう頭の中をいろんなことがぐるぐるとまわり続け、上手く考えられない。少なくとも少しは落ち着く時間が欲しい。

 ―――が、その自由さえ時間は与えてくれない。

「どうやら対戦発表の準備が整ったようだな」

 セイバーの言うとおり、端末からは電子音が鳴っていた。それを取り出して確認すれば次回戦、第四回戦の対戦発表の準備が完了したと表示されている。溜息と共にそれをポケットにしまうと、立ち上がる。何をするにしてもまずは誰が対戦相手なのか、それを知るところから始めるしかないのだ。何を使用にも、戦争という事実から逃れる事は出来ない。

「お、行くのか」

 愉快そうな表情を一切隠すことなくセイバーは立ちあがる。その手の中にはもうワインボトルもない。実はこのサーヴァント、愉悦ごっこをするためだけにワインボトルを手に持っているんじゃないかと思う時がある。……が、気にしていても致し方あるまい。

 セイバーを引き連れ、マイルームから出る。





 掲示板には既に対戦者の名と、そして場所が発表されていた。

 マスター―――臥藤門司、決戦場―――四の月想海。

 あんまり見た事のない文字故に、少々困るが、結局のところこの名前はガトー・モンジ、と読むのだろうと判断する。聞いたことのない名前だと、どういう人物かと悩んだその矢先、疑問を解消する様に声がかけられる。

「―――貴様が小生の相手か」

 その声に振りかえれば、見つけたのは鋼を思わせるな大男だった。緑髪に様々な宗教をごった煮したようなアクセサリーの類、素肌の上からジャケットにジーンズらしきボトムス。背中に見えるのはおそらく―――三度笠だろう。なんというか、姿からして混沌としている。

 だが、その瞳は強い。揺るぎのない自信と信念を持ってここに立っている。それは二回戦のダン、そしてアーチャーからも感じられる迷いのないタイプの人間の証だった。直感的に、この相手は強いと悟った。

 ガトーは此方を見て、眉をひそめた。

「なんだその生ぬるい面持は。戦いとは無縁の僧の様な面構えだな。―――覚悟や目的もなく欲界に流されるままやってきた放浪者といったところかな?」

 力強いガトーの言葉はまるで此方を見抜くような言動だ。鋭い、というよりも此方が露骨すぎるのだ。この状況、確かに自分のコンディションは最悪だ。だがそれを理由にすることは岸波白野としてのプレイドが許さない―――だから、認める。この男は何かを持っている。

 だから、言葉を返す。

 そう言うのであれば、貴方は何か目的があるのか。

 その言葉にガトーは笑みを浮かべ、両手を広げた。

「小生? 小生の事か? 小生はこの浮世で最も尊い目的の為にこの戦地へと参った! それは―――我が神を世界の神とする事だ!」

 それはつまり、

『こいつは宗教家だ。こいつの瞳は覚悟や信念で固められているが、その根底は妄信によって支えられている―――それが聖杯戦争に乗りこんでくるような宗教家ってやつさ。覚えておけ。こういうのはダンとはまた違うタイプで折れない。怖いぞ』

 セイバーは霊体化したまま此方の情報の欠損を埋めてくる。そしてガトーの恰好を見れば確かに、この男が宗教家であることに間違いはない。だがなんだ、何だろうこの”ごった煮”にしたような感じは。ガトーの服装からは統一性を感じられない。何らかの宗教か、神を信仰しているのであればそれが服装や言動に見られる。今の所日本っぽい所から仏教か神道かと考えられるが、

「我が神さえいればアポクリファは不要! ゴリアテも恐れるに足らず! 鬼子母神を凌駕し、人を楽園へと導く姿は神の子よりも美しい!!」

 駄目だ。何を言っているのか訳が解らない。どうか日本語で喋ってくれないものだろうか。心の中でそんな事を祈ってみるが、全くの無駄だった。ガトー・モンジは此方に語っているようで、明らかに自分の喋る世界に浸っている。それは語っているのではなく、説法の様に素晴らしさを広げている様に感じる。

「故に!」

 ガトーは力強く宣言する。

「小生は勝たぬばならん。小生はこの突きを獲得し、我が神を神聖四文字さえ凌駕する新たな神とする。これは小生の運命なのだ」

 ガトーは広げていた腕をおろし、此方を目で見てくる。

「―――ここで貴様は朽ち果てるであろう、だが我が神が君臨した際には貴様にも救いが訪れるだろう」

 背中を向け、ガトーは去る。

「貴様の迷いも苦悩も煩悩も、その全てをエデンへと我が神が導いてくれ耀。それまで大人しく待つが良い」

 ガトーは去って行った。その言葉の意味の大半は意味が解らなかったが―――ただ、あの男は此方を全力で殺す気である。そしてそこにはガトーなりの譲れない何かが存在する。それだけは感じ取る事が出来た。

 そして、

 ガトーは此方の死を通して、此方を救う気であったと、それも理解できた。だがその中の意味が理解できない。死を通してどうやって他人を救うのだろうか。いや、それ以前にあんな強い信念を持つガトーを前に自分は立つことができるのか。

 覚悟はなく、助けると言う行動に今、迷いを感じている自分は、本当に正しいのか?

 ありすという幼い少女の命を奪っておいてまだ覚悟も、聖杯戦争で戦い続ける意味も見いだせない自分は本当にこのまま戦い続けて良い存在なのか、それに対する自身の答えが見つからない。ダンに、答えを見つけろと言われて既に一週間が経過している。なのに、それでも自分は答えを見つける事が出来ずにいる。

 本当なら今からアリーナへと向かうべきなのだが―――足が動かない。このままアリーナへと向かっても満足のいく指揮を取れる気がしない。いや、それどころかセイバーの足を引っ張りレアエネミーにでも敗北してしまいそうな気がする。思考がドンドン悪い方向へと流れ始める。こればかりはムーンセルはどうしてもくれない。

 軽い混乱にあった時、

「なら戦った理由を見ればいいのさ」

 セイバーが出現しながらそう言う。此方を導くような言動をしながらも、セイバーはかなり意地の悪い事を言ってくれている。戦った理由を見ろ―――それはつまり自分が行い、そして残した成果を見ろと言っているのだ。

 つまり、凛とラニを見ろとセイバーは言っている。

「馬鹿じゃないの。ばっかじゃないの?」

「顔が笑ってねぇ……!」

 どの顔をして凛とラニに会いに行けとこのサーヴァントは言っているんだ。自分はあの二人の自由を奪ったのだ。ラニはまだいいとして、凛は確実にキレている。怒っている、何てレベルではなくガチギレしているに決まっている。

「本当にそうか?」

 セイバーのいつも通りの笑み。それは何かを確信しているようで、なにも読み取れない、そんな笑みだ。だがそんなセイバーの笑みも、少しだけ、何か少しだけ違ってきている様な気がする。今までどおりであるように感じつつ、それはそう、もう少し―――いや、気のせいだろう。勘違いだろうし、セイバーの思考を読めるような人間でもない。

 だが、そうだ。凛とラニ、彼女たちが今どうしているかは気になるところでもある。

 少しだけ頭を掻く。

 ……確かにどの面さげて顔を見せに来たんだ、何て言われそうだが……それでもあの二人の事は気になる。……アリーナへと赴く前に一目だけでもいいから会っておくのはいいのかもしれない。それにあの時はッセイバーが言いくるめる感じで凛の言葉を受け止めたが、助ける様に願ったのは間違いなく自分だ。

 今度こそ、凛の言葉を正面から受け止めなくてはいけない。

 少し、気を重くしながらも保健室へと向かう。





「何よその腑抜けた顔。アンタ大丈夫なの?」

 こっちが気を重くしながら保健室へとやってくると、顔を見て喋った凛の第一声がそれだった。

 第一声で怒鳴られると覚悟してやってきたものだから凛の予想外の対応に困った。そしてラニは依然として連れてきたとき同様、眠っている。ラニは今はそのままにするとして、凛の方へと向きなおり、そして頭を下げようとする。その動きを凛が止める。

「止めて、もしかして謝りに来たの? 本当にそういうのは勘弁だから止めてよね。それよりアンタ達あの空間にどうやって入ってきたのか説明はしてくれるんでしょうね……?」

 アリーナから連れ出してから凛には何も説明していなかった。だから改めて凛にユリウスの事、セイバーの言葉、そしてそれを判断して二人を助けたいという気持ちから助けた、という事を伝え、再び頭を下げようとし、

「だから頭を下げるな! ったく」

 凛は保健室のベッドから体を持ち上げる事無く、こっちに視線を向けて話しかけてくる。

「で、何? それを言うために態々話しかけてきた訳?」

 いや、むしろその行動そのものが大事な事ではないのだろうかと思うのだが、凛の意志を―――、

「だからそう言うのはいいのよ! それよりも対戦相手の発表は終わってるのでしょ? こんな所にいないでさっさとアリーナに行きなさい」

 半ば追い出されるように凛に保健室の外へと押し出される。その声から凛は何時も通りに見えるが、どこか無理をしているのは解った。

 だが驚く事に、凛は此方を恨んでいるようには見えなかった。

 それが不思議でしょうがないが……それを応えてくれそうにはない。

「少しは気が楽になったか?」

 セイバーが出現し、質問を投げかけてくれる。もちろん、少しだけ、ほんの少しだけだが気持ちは軽くなる。まあ、本当に少しだけだ。……アリーナで頑張って、何時も通りふるまう程度には、大丈夫だ。

「重畳重畳。準備ができたらアリーナへと向かおう、白野」

 言葉を残してセイバーは消える。

 問題や悩み事は多くあるけれど、それでも前へと進まなくてはならないのが勝者の義務なのだろう。

 ならば、今はそれだけを果たそう。
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| 断頭の剣鬼 | 22:56 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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