陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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現実 ―――ビハインド・トゥルース

推奨BGM:Jenzeits


 目の前のテーブルには紅茶が置かれている。

 質素な部屋だが、ティーカップとテーブルクロスは来客用のものだという事はその品質からして一目でわかる。ティーカップやティーポットは控えめながら金の装飾が施されたものであり、テーブルクロスも部屋の雰囲気を壊すものではないというのが解る。不思議と、目の前の人物がこんな物を持っている事に違和感ではなく、意外性を感じる。

 目の前の女性―――エレオノーレであればこれを余計と斬り捨て、必要な所へ金を回すような人物かと思っていた。紅茶から香る匂いが茶葉も高級品だという事を理解させてくれる。最近、こんな風に紅茶を口にする回数が増えて、自分もある程度は味が解ってきたと思っている。いや、実際思っているだけで本当にそうではないのだろうが。

 ともあれ、


 傷は一日休めば完全に回復した。傷跡さえ残ってはいない。流石、と評価するべきか、兄の剣の呪いと評価すべきなのか、アレを握ってから自分の存在はずいぶんと変化してきたなぁ、と口に出さず呟く。まさか自分が超人キチガイボディ化するとは夢にも思わなかった。良く考えればALOで無双……してはいなかったが、それなりに頭のおかしいスペックを披露していたキリトと同じ身体能力を手にしているのだ。これは何処の化け物だ、という話だ。

 さて、こうやってこの学園の長であるエレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグと対面しているのには理由がある。というよりも理由しか存在しない。むしろ存在しなかったら一生会いたくないタイプの人間である。誰が好んでこんな人外の前に座りたがるのか。自分はもっと小動物的で、平和を愛する人間だ―――と、思考がそれた。ともあれ、この苛烈な人物の前にいるのは”真実”を得るためだ。そしてエレオノーレが真実へ至る答えを持っている事は自分が知っている。

 だから、まずは、此方の話から始める。

 ゆっくりと、紅茶で口を温めながら、喋りやすい様に自分の心を整え、エレオノーレに自分がたどってきた道を話す。

 気が付いたらこの世界にいた事、キリトと一緒だったこと、キリトがここをSTLによる再現された世界と見抜いたこと、フラクトライトという存在について、ユージオについて、闇の国について、アリスについて、キリトとユージオが入学を目指す事について、自分がここへやってきた理由について―――そして自分が犯した無様に関して。

 ゆっくりと喋り、時間をかけながら情報の、話の要点をエレオノーレに聞かせてゆく。エレオノーレは話を聞いている間、此方に対して何も言わない。ただ黙って話を受け入れている。聞き流しているわけでもなく、此方の話を黙って聞き、受け入れているのは理解できている。だからこちらも確認することなくただ話を続ける。

 そして話は終わる。

 自分がエレオノーレに拾われたところで。

 自分の話が終わり、紅茶を口にする。予想外に喉は乾いていたようで、温めの紅茶はすんなりと喉を通って、体を潤してくれる。ふぅ、と一息をついて、カップを下ろす。

「これが、自分の今までの活動です」

「そうか」

 苦労したのだな、とも言わない。元々そういう風に労う様な人間ではない事は解っている。この女性は自分と他人に厳しく、己の役目は完全に果たすものだと信じている。だから責任を持って果たそうとしたことに対して失敗すれば責めはしないが失望はする。ただそれを口にすることはしない。それでも、ある程度の同情は貰えたらしい。此方へと向けてくる視線は、少しだけ優しい気がする。

「さて―――」

 そう言ってエレオノーレは咥えている葉巻に手を伸ばし、取る。紅茶に一度も手を付けず、ずっと葉巻を吸っている辺り、この女の煙好きは突き抜けている。形でさえ紅茶に触れようとしない。最初から最後まで葉巻を吸っている、根っからのヘヴィスモーカー。そのエレオノーレが葉巻を手に取り、此方へと視線を向け、

「―――ラースの始まりからことを話せなくてはならないな」

 ラース、それは兄が、そして黒円卓と呼ばれる超人集団が所属している組織の名称だ。そう、それが自分にとっての疑問の一つであった。

 これはなんだ、と。

 このオーバーテクノロジーは一体なんだ、と。

 その疑問は常にあった。

 それは人間の魂の生成だ。それは新たな世界の創造だ。もはや電子ネットワーク上に新たなシステムを構築しているのではない。別個の世界を創造し、人類をそこに生んだと言ってもいい状況だった。実際、その認識は間違っていないと思う。

 これが下層にしてはあまりにもリアルすぎるのだ。システム、という括りは確かに存在する。だがそれさえ排除してしまえば全ては現実だ。だからこそ、悩み、迷い、思考する。ここは明らかにおかしい。この技術は人間にとっては過ぎたるものだ。

 だからこの状況、この世界、フラクトライト、それに関して説明するには―――





「―――まずはラースの成り立ちに関して話さなくてはならんな」

 黄金の獅子の鬣を思わせるような長髪の男、ラインハルト・ハイドリヒはそう言う。彼と、そして菊岡誠二郎を正面から睨む。オーシャン・タートルの中の一室、テーブルを挟んでラインハルトと菊岡を睨む。自分の横には共犯者として凜子がいる。が、それだけだ。それ以上は何もない。脅迫しているわけでもなく、ただここに来ただけだ。ただ、それでも十分だったらしく、ラインハルトと菊岡はあっさりとネタバラシを開始する。

 キリトはどこへ消えた。

 そして何故、此処にいる。

 その疑問に答えるにはラースの成り立ちを知る必要がある、と言うのが答えだった。

 もう既にキリトの体は見て、一応の安心は得ている。だから少し心に余裕はある。だから、教えろ。

「ラースって、一体なんですか?」

「さて」

 答えたのは菊岡だった。メガネの位置を直し、腕を組み、テーブルに肘をつく。そんな、露骨に怪しげな姿を見せながら菊岡は言葉を吐く。

「―――我々は軍事産業においては大幅に遅れている。使っているものは海の向こうの国では一世代前のもの、そう軍事産業においては他国に後れを持っているのが我が国の現状だった。どんどんハイテク化していく兵器、自動化されて行く戦場。日本と言う国は少しずつだが最先端から遅れていたんだよ―――防衛相としてはそこらへん、結構危機感があったんだよ」

 菊岡の話は兵器に関する事情から始まった。だが待て、

「それは―――」

「話は最後まで聞きたまえ」

 ラインハルトに言葉をせき止められ、黙る。続行のサインをもらった菊岡はどうも、と頭を一度下げてから話を続ける。

「さてさて、我が国も流行の最先端というのにはノっておきたかったらね。高いものを売りつけられるんだったら購入するお金で作っちゃおうという話になったんだ。で、目を付けたのが―――AIだったんだ」

 菊岡は説明する。ハイテク化する現代の生活、兵器産業、確かにハードは重要だが、ソフトが大きな問題でもある。既に自動で飛行し、爆撃する戦闘機は存在するのに、それに搭載されているAIがポンコツでは意味がない。99%で敵を、そして1%で味方を攻撃する様なAIでは不良品でしかなく、変わる戦場の中で自己判断し、そして最適な行動を自分の判断で行える、”人間の様に思考する”AIというものが求められた。

「それがこのラース、―――プロジェクト・アリシゼーションの始まりだった」

 つまりは人間と全く同じ発想、行動、感情、そう言った自分の理論で動ける人間とそん色のないAIを生み出す事が目的だったのがプロジェクト・アリシゼーションの実態だった。そしてフラクトライトの説明を聞く限り、それは大成功に聞こえる。

「そう、僕たちは成功した。フラクトライトという人工の魂を生み出す事によって人の魂のベースとなるものを創造することに成功した。あぁ、言葉で説明すれば凄い簡単な話になるんだけどね、当時の僕たちはここら辺、手探りでやっているんだ。というか”魂”なんて電子工学から外れたオカルトの領域だよ? 僕たちはトップダウン型とボトムアップ型のAIの違いを理解し、ボトムアップ型のAIを生み出そうとしていたんだけど、ボトムアップにしても限界はある、人間と全く同じなんて完全に無茶な注文なんだ。壁にぶち当たるのはそんなに難しい話じゃない」

 そもそも、国内だけで着手していたから外国人のプロフェッショナルなどを使用する事は出来なかった、とも菊岡は言う。あんまりこの分野に関しては詳しくはない。むしろこういう事に関してはキリトの方が圧倒的に得意だったはずだ。だが意味は解る。限られた人員で大きなことを成そうとすれば、自然と人員も何もかも足りなくなる。そう言う話だ。

「で、解決したんでしょ?」

 足を組んだ凜子がそう言うと菊岡はそうだ、と頷く。

「でもアプローチは此方側からじゃない―――あちら側から来たんだ」

 菊岡はそう言った。そして、

「たぶん、いや、確実に僕たちは、”ラース”、そしてプロジェクト・アリシゼーションはその時から狂い始めた」

「何があったの?」

 いや、大体の予想はつく。この時点でまだ語られていない存在がいる。そしてその中心の人物に視線を向ける。

「―――あぁ、此処からは私の出番だろうな」

 ラインハルト・ハイドリヒは足を組み、腕を組み、実に穏やかな様子で此方を見る。そう、まだ彼らに関して語られていない。いや、”元々”は国内のプロジェクトなのに、何故ドイツ人のチームが参加しているのか。その疑問が応えられていない。

「そうだな、単刀直入に言えば―――カールが自らを売り込んできたのだよ」

 カール。カール・クラフト=メルクリウス。その名前は聞いたことがある。サイアスが、世界最悪の詐欺師とも、人生で一番関わってはいけない存在だと、愚痴る度にだしていた名前だ。ALOで職務についてから、その名を出しても嫌悪感を見せる事は一切なかった。寧ろあわれに思うようなところさえ見れた。そんな気がする。

 だが、あの超越者にそこまで評価される存在が、売りこんできたのだ。

「カールは既に売り込んできた時点でフラクトライトを完成させていた。そしてその発展型にさえ手を伸ばしていた」

 カール・クラフト初めからフラクトライトを完成させていた。そして日本がそれを求めている事を知っていて、手をのばしたのだ。菊岡は苦笑いを浮かべながら語る。

「あの時は凄いパニックだったよ。どこから情報が漏れたんだ、何時の間に完成させられていたのか、どうするのか、始末するのか、引き入れるのか。本当にパニックだったよ。だけど―――それ以上に上の人たちはカール・クラフトの言葉に引き込まれてしまったんだ。魅入られたと言っても過言ではないよ。カール・クラフト、第二次世界大戦に実在した占い師を名乗った男はねこう言ったんだ」

 菊岡は再びメガネの位置を直し、一旦言葉を溜めてから続けた。

「”ここに貴方方の求めるものがありましょう。されど、これはまだ未完であり、不完全の完成品。私の協力があらば更に先をお見せする事を確約いたしましょう”って、あと」

 そして、最後にこう言った。

「”神を創造したくはないかね?”―――と」




軽いネタバレ回はもう少しだけ続くんじゃよ。事実の何割になるんでyそうかね、このお話は。
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| 断頭の剣鬼 | 13:52 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

おいおい…俺はまだキリトと殺りたりねぇんだよ!!もっと殺らせろ!!

| Poh | 2013/05/06 10:48 | URL | ≫ EDIT

更新お疲れ様です。
あとPoh乙。

少しは疑えよ日本政府・・・。
あの水銀ニート、どーみても胡散臭いだろうに。

| 断章の接合者 | 2013/05/06 21:27 | URL | ≫ EDIT















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