陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-28

 ありすの死から一日が経過した。私の三回戦は完了した。が、どうやらそれで周りの大戦が終了した―――というわけでもないらしい。普段は端末に対戦相手が表示される時間となっても、端末は静かにねむっている。詰まる所、対戦発表はまだらしい。対戦発表があると踏んで、朝食を抜いて覚悟を決めていたのだが―――こうやって対戦発表がないと解ってしまうと脱力する。

「なんだ、ムーンセルも仕事が悪いなぁ」

 そんな事を言いながらだいぶ装飾品が増えてきた部屋で足を組みながらワインをボトルから飲んでいるセイバーの姿がった。藤村大河からお使いをちょくちょくこなし、ランプやら観葉植物、お香等と細かいアイテムでソファの周りを飾ったセイバーの姿はご満悦の様子で、ワインをちびちびと飲んでいる。足を組んで飲んでいるその姿は実に様になっているが、そのワイン、一体どこから持って来た。


「なに、言峰神父とちょっと人の愉悦に関して話が合ってな。記念に貰ってきたんだ」

 何だその邪悪な組み合わせ。レオと凛の討論の時にセイバーが口出した人間の死生観、人生論、予想以上に邪悪な感じがしたが、そんなセイバーと話しの会う神父っていったいなんなんだ。ともあれ、あの神父に関しては必要以上に関わるのは心臓に悪いのかもしれない。いや、既に心臓の悪い存在だ。極力関わるのは止めよう。

 というか優雅に楽しんでるな、セイバー。

「召喚されてるんだからその分楽しまなきゃ損損。で、朝食を抜いちゃったけどどうするの? 何か作ろうか?」

 最近は料理するのが楽しくなってきたのかセイバーが色々と凝ったものを作ってくれる。流石最優のサーヴァント、剣を包丁に持ち替えてもパフォーマンスは変わらない。ただそろそろ購買で食べる激辛麻婆の味が恋しくなったので、本日は少し遅めのブランチという事で購買で購入し、食べる事とする。

「お前も十分優雅に過ごしてるよ」

 ワインボトルを消したセイバーが立ち上がる。今は対戦相手のいない、比較的平和な時間だ。それでもセイバーがついてきてくれているのはマスターだからか、もしくは此方を心配してくれているからだろうか。いや、それは今考える事ではない。腰かけていたベッドから立ち上がり、霊体化したセイバーを後ろに引きつれてマイルームから出る。

 マイルームから出た瞬間、感じたのは言いようのない緊張感だった。

「……」

 これは、決戦の前の空気に似ていると思う。誰かと誰かが互いを意識し、敵視している、そんな爆発する前の空気だ。それが校内に充満している。軽く頭を掻き、まだ終わってない大戦があったから自分の対戦発表が遅れているのか、そんな事を思いつつマイルームの前から階段まだ移動する。

 そこで、凛とラニが振り返ることなく通り過ぎる光景を見る。

 それだけ、ただそれだけだ。

 だがその全てが物語っていた。

「あ……」

『―――あの二人、今日戦うな』

 セイバーは極あっさりとそんな事を言ってのけた。だが、自分も空気で解ってしまった。凛とラニの間の戦意を。慣れた訳ではないが、これでも三回勝利したマスターだ―――戦いの空気にはある程度だが、敏感になってきた。たぶん自分が忙しすぎて気にしてなかっただけで、三回戦中、もう既にラニと凛は敵対関係にあって、それでも自分は二人の協力を頼みこんでたのだろう。なんというか、自分の行動に頭が痛い。

 ……と、言ってもいられない。

 凛、ラニ。この二人はこの聖杯戦争で自分が勝ち残るために手を貸してくれた”友人”なのだ。

 それが今日、片方消える。

『ま、黙って結果を待つこと以外にできる事はないがな! ほら、購買に行くんだろ?』

 そう、今の自分にできることは何一つない。生き残るのがラニか凛、それを選ぶ力も権利もないのだ。あるとすれば―――そう、義理だ。助けられた自分は、彼らを助けるだけの義理が存在する。だが、それも、死んでしまえば消えてしまうものだ。

「辛い、なあ……」

 購買へと向かうために階段を下りて行きながら、そんな事を呟く。ムーンセルが示した聖杯戦争は勝ち抜き戦だ。つまり、最後に残る勝者は一人。生き残るマスターとサーヴァントは一組。この不文律を崩す事は出来ない。だから、同盟を組もうと、協力を得ようと、恋人を作ろうと、友を得ても、それは最終的に意味がなくなる。

 勝者以外は死ぬのだから。

 ―――この聖杯戦争は、実に無慈悲だ。





 購買へとやってくると、何時も通りマスターを全く見ない寂しい購買の風景があった。カウンターで激辛麻婆をいつも通り注文すると、もはや注文される事になれたNPCが少しだけ頬を引きつらせながら麻婆をトレイの上に乗せて、ご飯と一緒に渡してくる。

「お間、それを本当に良く食ってられるよな。無理。マジ無理。お前がナンバーワンだよ。ところで新しい回復シテムを入荷したんだけど―――」

 セールストークは必要な時に付き合うので、とりあえず無視して近くの席に座る。麻婆は赤く、熱い。何時も通り強烈な辛みの臭いを発している―――だがそれがいい。レンゲで麻婆を掬い、そしてご飯も掬い、口に運ぶ。

「辛ウマー」

 最初はかなり辛く感じた麻婆だったが魔力の回復効率がかなりいいものでアリーナで何十個と食べている内に辛いのには十分慣れてしまった。そろそろもう少し上の殻さのグレードに挑戦してみないでもないと思うが、まあ、それも余裕があればの話だ。予選が始まればこんな風に好きに食べる自由もなく、探索に走り回る日常が戻ってくる。

 ふと、思った。

 戦っている日々と、

 安らいでいる日々。

 どっちが、自分にとっての日常であり、非日常なのだろうか。もし”日常”の解釈が過ごしている時間によるものであれば―――自分の日常というものは、確実に戦いの方になる。

 ……そんな日常嫌だなぁ。

 そんな風にげっそりしていると、横に気配を感じる。セイバーの気配ではなく、新しく感じる人の気配だ。その登場に軽く驚きつつ、横を見る。

「隣、いいでしょうか?」

 そう言ってトレイを持っていたのはスーツ姿の女性だった。短い赤毛に、スカートではない、スラックスがボトムとなっているスーツに身を包んだ女性。その恰好からファッションではなく機能性を重視しているのが理解できる。唯一、イヤリングが女らしさを主張していると言えば主張しているが、どうだろうか、もっと言えば―――仕事人、そんな風なイメージを受け取る。カスタムアバターという事は、この女性も一流霊子ハッカーに違いないのだろう。

 と、姿を見ていて答えるのを忘れていた。止める理由はないのでどうぞ、と言って隣の席を譲る。

「ありがとうございます」

 横の席に座ってトレイをテーブルに置いた。そのトレイの上には自分と同様、赤い液体が―――麻婆が置いてあった。この赤さを間違える筈がない。言峰印の激辛麻婆に間違いない。まさか自分以外のマスターがそれに手を出すとは思いもしなかった。同好の者がいた嬉しさに、思わず話しかけてしまう。

「麻婆、美味しいですよね」

「そうですか? あ、いえ、味ではなく基本的に量とか栄養を重視しているので。味は正直……」

 軽く絶望した。この女、味ではなく量があるから、という理由で麻婆を選びやがった。いや、だとしたらまず最初に何故食べに来ているのだろうか。自分は完全に趣味なわけだが、このSE.RA.PHでは食事をする必要がない。

「一種の儀式です。食事をとらない事は我慢できますが、行動のルーチンを守る事は精神状態をいつも通りの、平静な状態へと持って行く事に対して効果を持ちます。ここでは自動的に供給されるために摂取の必要は確かにないでしょう」

 しかし、と女性はレンゲを掴みながら言う。

「味とかには正直興味はありませんが、”食べる”こと、”挨拶”すること、こういう状況だからこそ日常的なやり取りは精神衛生上良いものだと思ってます。私が食べる理由はそれだけです」

 つまりこの異常な状態でも限りなく通常でいるためにも、日常的なルーチンを壊さずにいる、という事だろう。なんというか、実にプロっぽい発言というか、慣れている発言というか。この状況に対して崩さないスタンスがある、という事はこういう状況に対してある程度慣れているという事ではないのだろうか?

「あぁ、紹介が遅れました」

 そう言ってスーツの女は握手の為の手を伸ばした。

「聖堂教会の執行者、バゼット・フラガ・マクレミッツと申します」

 どうもバゼットさん、と握手し、名前を教える。今の所変に怪しい所がなければ何か準備しているように思える。

「貴女はどうやら変に策を練ったりするタイプじゃないようですね」

 むしろそういうのが苦手なタイプだ。走り回って情報集めて、正々堂々と戦うタイプなのでトラップとか本当に勘弁してください。

 と、その言葉にバゼットは笑みを浮かべる。

「私もどちらかというと正面から戦うタイプなのでその気持ちはわかります。聖杯戦争で勝ち抜けばいずれ戦う事もあるでしょう。その時はお互い正々堂々と戦えることを」

 久しぶりにこんな正直なタイプを見た気がする。こんな歪んだ環境でも、真直ぐな人はいるものだなぁ、とどこか感心し、此方こそ、と言葉を返す。狙撃とか、固有結界とか、今までの戦いはすっごい面倒な事ばかりだった。正面から争い、競い合うのであれば大いに結構だ。

「ごちそうさまでした」

 と、何時の間にかバゼットは食べ終わってた。早い。此方の方はまだ半分しか食べ終わってないのに、もう食べ終わっているとは。あの麻婆に臆することなくあの速さとは―――神父並のスピードだ……!

「では、縁があれば戦えるでしょう、岸波白野」

 そう言ってバゼットは去って行った。彼女も今日は戦いがあるのかどうかはわからないが、ああいう気持ちのいい人物と戦えるのであれば少しは心が楽に―――なるわけないな。

 思い出す。

 結局は、殺す事になるんだ、と。

 と、そこでセイバーが出現する。

「ハ、聖堂教会の執行者と来たか。こりゃまた面白いのが聖杯戦争に紛れ込んでいるな」

 セイバーはそんな事を言いながら現れた。周りには他のマスターがいないのをいい事に、再びワインボトルを取り出しながらバゼットの座っていた席を占拠する。聖堂教会の執行者、バゼットが名乗った時は聞き流したが、いったいどんな存在なのかセイバーはしっているのだろうか。

「執行者ってのはキチガイクラスの魔術師を捕まえたりぶっ飛ばすための処刑人の事だよ。まあ、今の地球じゃあ魔術関係はほぼ滅びちまってるからなあ―――聖堂教会も西欧財閥とは別口で聖杯戦争に噛んでるって事だろ」

 ワインを飲むセイバーの様子を見ながら今の言葉を飲み込む。という事はあの執行者バゼットという存在は―――

「下級であればサーヴァントとさえなぐり合える実力の持ち主だぞ。執行者ってのは」

 ―――サーヴァントの実力に関して身をもって知っている。それを生身で渡り合える、と、セイバーは言っているのだ。

 あぁ、解った。

 聖杯戦争にまともな人間はいないんですね……!

「超今更」

 けらけら笑うセイバーの声を横に、麻婆を黙々と食べる作業に戻る事にした。




バゼットさんが聖杯戦争に参加してくれるって! 殺ッタネ!
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| 断頭の剣鬼 | 13:44 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ダメットさん!ダメットさんじゃないか!

| 空 | 2013/05/04 14:14 | URL |

 物理で無双なバゼットさんですねw
 貴女正面からというか、正確には正面から小細工諸共物理で黙らせますよねww
 子リスマスターの絶望が目に浮かぶ(合掌

| tonton | 2013/05/04 14:36 | URL | ≫ EDIT

バゼットさん介入w
……ちょっと待て、このままCCC突入だとして、彼女ならもしサーヴァントいなくても拳で迷宮潜る気がするんですけどww

ユリウスの俺達じゃ力不足的発言も、彼女なら物理で常識はっ倒してくれそうwww

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2013/05/04 17:39 | URL | ≫ EDIT















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