陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第15話 不良騎士色々と語り合う

 ホテル・アグスタの襲撃事件より一日が経過した。

 ホテル・アグスタを襲撃したガジェットは"ジェイル・スカリエッティ"と言う一人の次元犯罪者により生み出され、運用されている。そのためガジェットと連携するように現れた黒尽くめの集団はスカリエッティの私兵団、もしくは協力するテロリストだと判断された。その場にいた神殿騎士、ウィルフレッド・カースト及びクゥーニャ・ストレガ、そして機動六課の協力を持ってアグスタの襲撃事件は幕を閉じた。管理局はこの事件に対して聖王教会との繋がりに重要性を見て、"海"及びに"陸"と聖王教会の協力関係の強化を必要と主張した。


 これに対して、聖王教会はある程度の理解を示した。これからも良き"友"である事を主張し、そして合同での訓練などを確約した。管理局の担当する大きな事件に対しても騎士等の派遣をもう少し譲歩し、特に"ジェイル・スカリエッティ"に関しては協力を惜しまないと公言した。なぜならホテル・アグスタの襲撃事件において、スカリエッティが使用したガジェットの一つ、ガジェット・ドローンタイプ・ヒューマノイド、H型と命名されたそれは聖王がまだ存命であった頃、ベルカ統一戦争の時代に運用された兵器であったからだ。しかもそれは聖王が外道の術だといい、後世に使うことを禁じるよう封じた、そして抹消したはずの兵器である。実際聖王教会に兵器としての概要は存在していたが、その製造方法などは一切伝わってなかった。

 聖王の言葉を破ったジェイル・スカリエッティに対し、聖王教会は憤怒の表情を見せていた。

 表向きには聖王教会と管理局の華々しい活躍により犠牲者なく集束したホテル・アグスタの襲撃事件。だがその実際は違う。裏では覇権を狙う管理局の上層部や、ベルカ自治領の独立を目指す聖王教会。その両者による裏取引、足の引っ張り合い、様々な事があって決定に至った事である。

 ホテル・アグスタの襲撃事件より一日。

 仕事を終えたウィルフレッド・カーストは聖王教会へ戻り、カリム・グラシアの下へと向かった。


                   ◆


 ウィルフレッドは自分がカリムの部屋で正座している事を自覚した。

 それも足の下にギザギザの石を敷き、その上から石を抱いて。

「あのぉ……か、カリムさぁーん……?」

 若干頬を引きつらせながらウィルフレッドが向ける視線の先、カリムは椅子に座りながらウィルフレッドを見下していた。その目からは怒りなどの感情が見て取れる。だがそれに対して躊躇せずウィルフレッドは口を開く。

「あの、俺、お仕事して超眠いから寝たいんですけど……」

「寝たら? ―――そのまま」

 ウィルフレッドの背をつめたい汗が流れ、今現在、ウィルフレッドの前に立つカリムは完全に不機嫌である事を認識する。こうなってしまってはどうしようもないから普段は逃げているのだが、今日ばかりは逃げる事ができなく大人しく掴まっている。ウィルフレッドも、今回のカリムの不機嫌の原因は自分にある事を完全に自覚しているのだ。

 それにしても、とカリムが呟く。

「これ、はやてに教わったのだけれど、見ている分には中々いいわね」

「やらされている本人としては今すぐにでも止めたい気分なんだが」

「まぁ、もうやめてもいいわよ。どうせ意味ないし」

「そんじゃ」

 股の上に乗っていた石を退かし、両足で立ち上がる。仮眠を取ったとはいえ殆ど報告から検分と話し合い。しばらくぶりに色々と真面目にやった事と短い仮眠のせいか、ウィルフレッドは逆に眠気を感じていた。アグスタにいたときはちゃんと着ていたスーツも聖王教会に戻ってきた頃には何時も通り着崩されている。

 カリムがまだ怒りの表情を見せたまま腕を組む。その光景にウィルフレッドは萎縮する他なかった。人生において絶対勝てない相手がいるとすれば、精神的な意味ではカリムがトップに入るとウィルフレッドは確信している。

「……ウィル」

 静かに怒りを見せるカリムに対し、ばつの悪そうな顔を浮かべ、片手で頭の後ろを掻く。

「……悪ぃ」

 カリムがこれ見よがしに溜息を吐く。

「"悪ぃ"? "悪ぃ"って言ったの? 急に仕事が入るって言って連絡なしに出かけて、それで言う事が"悪ぃ"?」

 あ、これはスイッチ押してしまったな、とウィルフレッドが確信し、部屋の隅で様子を見守っていたシャッハへと向けて救済を求める視線を送る。しかしその視線にシャッハは微笑み、

「私は外にいますので」

 そう言ってスムーズに部屋からシャッハは去って行った。

「シャ―――」

「ウィル、こっちを見なさい」

「はい」

 怒られ、カリムの方に視線を向ける。

「いい? ウィル、前々から貴方は自分の事だけじゃなくて周りの事にもだらしなさ過ぎるのよ。解るかしら? タバコもお酒もギャンブルももう色んな意味で諦めてるわ。もう、なんと言うのかしら。個性、と諦めてるわ。
だから人前で露骨に吸ったりすること以外では別に止めはしないわよ? だけど昨日のアレはなによ。いきなり"仕事行っちゃいました"で事後報告。これで貴方はいいかもしれないけど、それが私達に通じると思ってるの? ロッサの紹介した仕事で身内って点からして信用は置けるわ。だけど、ちょっと昨日起きた事を思い出しなさい。ちょっと、昨日何をした?」

「おし―――」

「全部よ」

「……ロッサに護衛を頼まれたからホテルの見回りと警備状況の確認を―――」

「全部よ」

「……"急進派"が絡んでるって話をロッサに聞いたから六課が使えねーか確かめながら尻尾を掴めないかちょっとばかし遊んだ。元々証拠探しや六課のデータは喉から手が出るほど欲しいからな。戦っている間に新鮮なデータ取りをさせてもらった」

「レジアスに売ったわね? データ」

「……」

 それにウィルフレッドは黙った。黙るしかなかった。怒りの表情を浮かべるカリムは静かに腕を組んだままウィルフレッドを見つめ、……組んだ腕を解く。そのまま何処か悲しそうな表情を浮かべる。

「あのね、ウィル。私は正直心配してるのよ?」

 悲しそうな表情を浮かべ、上半身を後ろに、椅子の背もたれに預ける。

「貴方が裏でこそこそやってるのは知ってるけど、大丈夫なの? 今回戦ったガジェットってかなり危ない代物だったんでしょう?」

「安心しろ。その点については問題ない」

 ウィルフレッドが口を開く。

「今の段階じゃまだ試作品レベルで完成品と比べればまだまだの状態だ。あと数ヶ月すればどうなるかわからんが、今回はデバイスをを使う必要もなかったし、脅威と言うのには程遠いレベルだ。爺さんに扱かれている毎日と比べればまだまだ軽い方だ」

「それでも、死ぬ可能性はあったんでしょう?」

 カリムの声にウィルフレッドが頭を激しく掻く。

「―――心配したって今更降りる事は出来ねぇんだよ、お嬢」

 ウィルフレッドの声は少しだけ、荒々しくなっている。それは今までカリムの声に気圧されていたウィルフレッドの声とは質の異なる声だった。

「別に、止めろって言ってる訳じゃないわよ。必要以上に首を突っ込む事はないんじゃない、って言ってるの。ねぇ、ウィル。二位の意味の重要性は解ってるわ。でも貴方の仕事は聖王教会の守護よね? だったら別にそう離れなくたっていいじゃない。もっと―――」

「もっとこっちにいる時間を増やせってか? 突発的な仕事を断ってもか? おいおい、冗談きついぜお嬢」

 ウィルフレッドが軽い笑い声をつくり、肩を揺らす。その笑いには軽い自虐が混じっているように感じる。立ちあがった状態、右手人差し指をカリムへと向ける。その動きにカリムが反応し、少しからだを強張らせる。

「いいか、お嬢―――俺は教会の狗(いぬ)だ」

「ウィル!」

 カリムが耐え切れずに机を叩きながら立ち上がる。それでもウィルフレッドは薄笑いを浮かべながら言葉を告げる。

「俺も、クゥも、ジンも、セルマも、ディーラも騎士長も全員教会の狗なんだよお嬢。地位や"聖王"によって縛られているように見えて違うんだよ。俺達一人一人が喜んで鎖に繋がれてやってんだよ。それぞれの思惑を持ってな。俺たちは喜んで教会の狗になって糞の様な味しかしねぇやつらの首を噛み千切るんだよ」

「ウィル、もうそれ以上は……!」

「いいや止めないね。お嬢も解ってんだろ。この協会は清潔に保たれているようでその内部は腐り始めてんだよ。三十年前の聖王教会だったら"原典派""急進派"なんて派閥が生まれてもすぐさま自然解消する、それだけ上手く組織は回ってたんだよ。だが今は上に甘い蜜を吸おうとする屑が座ってやがる。そういうやつが争いを長引かせてたり助長させて自分の有利に運ぼうとしている。俺たちは喜んでそいつらをぶち殺すんだよ。見つけ次第ぶち殺すのが俺らなんだよ。昔からずっとそうやって始末して教会の腐敗を進めないように綺麗に保ってんだ。お嬢、今更お前が何を言おうとも俺の生き方もやり方も変わりはしないし変えられやしない」

「……、ッ……!」

 カリムが何か言い返そうと口を開けるが、口に出せる事無くそのまま後ろの椅子に倒れこみ、両手で顔を覆う。無言でウィルフレッドがカリムを見つめて数秒後、ゆっくりとカリムが言葉を発す。

「私は……貴方に……ただ……!」

「ただなんだ」

「ただ無事でいて欲しいの! ホテルの件だって直ぐに六課に情報を伝えて後は傍観に徹するって方法があったはずよ。なのに何故ワザと危ない橋を渉ったの!? その必要は全くないのに自分の命を賭ける様な事ばかり何時も何時も……!」

 カリムの必死な声にウィルフレッドは声を上げて笑う。部屋どころか廊下にまで響くような声で大声を上げて笑い、酸素を求めて息を吸う。それから体を落ち着けるためにも腹を押さえる。

「何故、何故かって? そんなの決まってるじゃねぇか」

 ウィルフレッドはまるでそれが常識かの様に言った。

「―――最後の最後で勝つためだ」

 その言葉にカリムが無言になる。椅子に背を預けたまま動かなくなる。ウィルフレッドも言葉を発さず、ただカリムの反応を待つ。だがカリムは反応を示さず、二人の間で言葉が交わされることなく時間だけが過ぎ去る。

 時刻は朝の七時。

 時間で言えば修道騎士や見習い達が朝の雑用を始める為に目を覚ます時間だ。これから、もう少し待てば段々と聖王教会は賑わうだろう。

「じゃ、俺はもう眠らせてもらうぜ」

「私は……正直独立なんてどうでも良いと思ってるのよ」

 出て行こうとするウィルフレッドの背中に向けてそんなカリムの言葉が放たれる。聖王教会からすればそれは明らかな裏切りとも取れる言葉だ。特に神殿騎士団の人間からは聞いてはならない、自身の破滅を招くような言葉にウィルフレッドは足を止めて苦笑する。

「悲しい事を言うなよ……そんな事言ったら今まで俺が必死に頑張ってきたのが馬鹿みてぇじゃねぇか」

「私は元々良家のお嬢様。聖王教会に所属したのは家が聖王教会と親密な関係にあったから。両親が二人とも熱心な信徒で多額の寄付をしているのは知ってるわよね。私がここにいるのは生まれ持った稀少技能が偶然古代ベルカ関連の技能だったから」

 ウィルフレッドがカリムの机の前にまで戻ってくる。

「あんましそういうことは言うな。どこで誰が聞いてるか解らねぇんだ。狗に聞かれたら消されるぞ」

「あら、貴方に聞かせてるつもりなんだけど」

 やれやれ、といった風に溜息が漏れる。

「どこの世界に好んで惚れた女殺す馬鹿がいる」

「ふ、ふふふ。そうね。元々貴方はそういう人だものね」

 カリムの諦めたような笑い声はただ悲しい、それだけだ。まるで取り戻せない昔に思いを馳せるような声にウィルフレッドは目を閉じ、昔の事を思い出す。

「昔に戻る事なんて不可能だ。狗になったら狗なりに生きていかなきゃ駄目なんだよ。それとも何だ、今の状態に不満か?」

「馬鹿ね、不満だからこうやってぶつけるんじゃない」

「そりゃそうだ。だけど俺は後悔してないしする事もないぜ。ずっと昔から俺の目的は変わらないしまだ道の途中だ。ここらで俺は降りるつもりはない。そして俺達教会の狗はそれなりの理由があって繋がれてやってんだ。死ぬまで人員は変わりはしねぇよ。だから諦めろ。俺は死ぬまで命を張ってこの教会に尽くす」

「泣きたくなるから、あまりそういうこと言わないでよ」

「悪い、好きな子には俺辛く当たるタイプなんだ」

「それで良く女を引っ掛けられるものね」

 再び苦笑が漏れ、ウィルフレッドが机越しにカリムの顎に手を当て、その顔を近づける。カリムの表情は何処か諦めと悲しみが混じっているような物で、このやり取りが既に何度も行われている事だという事を表していた。

「お前一人引っ掛けるためだけに練習したんだぜ?」

「貴方って本当に馬鹿ね……」

 泣き出しそうなカリムの顔にウィルフレッドの顔が近づいてゆく。ウィルフレッドとカリムの顔の間の距離がなくなってゆく。最初は顔全体が見えていたはずなのに次第に吐息を感じれる距離にまで接近する。そこでカリムは近づいてくる距離に応じるように顎を持ち上げ目を閉じ―――

「―――騎士カリム、話は終わりましたか?」

「キャア―――!!」

「痛ぇ―――!!!!」

 閉じずにウィルフレッドの頬を全力で引っ叩いた。部屋に侵入したシャッハはウィルフレッドとカリムの距離を確認し、辺りを見回してから冷や汗を浮かべる。

「……もしかして邪魔してしまいましたか?」

「うん! 物凄く!」

 大きく頷き肯定するウィルフレッドにはムードもへったくれもなかった。
スポンサーサイト

| 不良騎士道 | 12:34 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/37-989fe536

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。