陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第14話 不良騎士アグスタで最後の一暴れ

 正面に立つ騎士風の人型兵器から視線を逸らさず、なのはが呟く。

「人間が材料……?」

「具体的にいえば魔力を使用するためにリンカーコアをぶち抜いて動力に、脳をぶち込んで生体CPUに。おかげで勝手に考えて戦果をもたらす兵器の完成ってわけだ」


 なのはが吐き気を堪えるように両手で口を押さえる。実際、ウィルフレッドも決していい感情をその兵器に向けて持っているわけではない。特に、その兵器を再現した人物においては語る必要のないほどの殺意と憎悪があった。レイジング・ブルを構えながらも、ウィルフレッドは口を開ける。

「なのはちゃん―――殺れるか」

 その言葉になのはは一瞬だけ停止する。それはつまりあの兵器に捕まっている間は脳はまだ活動状態であるということ。そして―――同じ意思を持つ人物であるウィルフレッドが"殺せるか"と聞いてきた意味、それは―――、

「―――はい」

 短く返答するなのはに見えるようにウィルフレッドが笑みを浮かべる。

「よしよし、いい子だ。我慢の出来るいい子には後でご褒美をあげなきゃな。終わったら一杯付き合わないか?」

「仕事なのでまた今度」

「フラれた……ま、俺にはカリムがいるしいっか!」

「いい加減現実を見るべきじゃないのかな? カリムさんの事はいい加減に諦めようよ」

「おいおい、俺とカリムは相思相愛なんだぜ? 俺知ってる。アレって地球の言葉じゃ"ツンデレ"って言うんだよな」

 ふざけて作る会話の中でなのはの顔に薄くだが、笑顔が戻ってくる。それを見て、ウィルフレッドは頷く。

「あぁ、それでいい。笑おうぜ。何も解らずに材料にされて死んじまうんだ。最後ぐらいは笑って送り出そうや」

「……うん」

 今までの沈黙を破って騎士の目に光が宿る。それは電気などの光ではなく、魔力光だ。ベースとなった人間のものか、深い緑色をしている。魔法陣を出す様子はなく、巨大な騎士剣を振り上げる。容易く天井へと届くそれは天井へと突き刺さるが、それを一切の抵抗なく破砕しながら振るう。

「俺が前でドガーンとやっからなのはちゃんが後ろズドンね!」

「こ、これで解っちゃうのってなんだか嫌だなあ」

 天井、そして壁を粉砕しながら迫る巨大な騎士剣を逆手大剣で殴りつける。重量と硬さのみを追求した逆手大剣はそれ自体が凶悪な質量の塊である。故に、上に落とすだけで車をへこます程度の事は軽く出来る。そしてそれを勢い良くぶつければスクラップにすることだって可能だ。実際、さっきの戦闘で大剣の投擲を喰らい、それでも死ななかった相手は異常としかいえない存在だ。

 故に、この騎士剣も異常と言える硬度を持っている事になる。

 真正面からぶつかり合う逆手大剣と騎士剣、両者はぶつかり合った箇所から一寸たりとも動かずに動きを停止する。右下半身を完全に静止させたウィルフレッドが逆の手に握ったレイジング・ブルを騎士人形の頭へと向けて引き金を三回連続で引く。轟音を鳴らしながら吐き出された凶悪な弾丸は長剣使いのように避けられる事も阻まれることもなく命中し―――掠り傷を生む。同時に騎士人形の力が魔力により強化され、ウィルフレッドと拮抗していた力関係を一気に自分側へと引き寄せる。力ずくでウィルフレッドを弾き飛ばすとそのまま周りに複数の、魔力によって生み出された槍が出現する。

「硬いなぁ……任せたぜ」

 弾き飛ばされながらもウィルフレッドは逆手大剣を逆に持ち、それを天井に突き刺す。天井からぶら下がる体を一気に持ち上げるとそのままの動きで天井を力の限り蹴り上げる。

「フン!」

 魔力によって強化されたけりを持ってホテル・アグスタの天井、そして床が破壊された上の階へ繋がる穴が完成する。その中に体を投げ込む瞬間、騎士人形から魔力の槍が一斉にウィルフレッドへと向けて投擲される。

 が、それよりも早く。

「ディバインバスター―――!」

 桃色のビームが廊下を埋め尽くすように放たれる。射線上にいたウィルフレッドは既に天井に空けた穴に退避しており、攻撃を回避する。騎士人形を、そして魔法を飲み込んだディバインバスターはたっぷり二秒間放射され、そして消える。

「そんな、甘くないって事かな」

 なのはが後ろへ短く跳ぶのと同時になのはのいた位置に巨大な騎士剣が叩き落される。桃色の魔力の本流から抜け出した騎士人形の姿は完全には無事と言えず、その表面は魔力に焦がされて欠けている。だが、それでも騎士人形は止まる事無く動き続けている。騎士剣を振るいなのはが引いた瞬間に魔力の槍を生み出し、素早くそれを発射する。なのはの周囲に八本の魔力槍に対処する為に八つの魔力弾が出現する。レイジングハートに魔力を込めるのと同時に片手で魔力弾を誘導する。その動きは正面から衝突するのではなく、迫る槍を腹から打撃する事で折る動き。それを持って八本の槍を叩き割る。

 騎士人形が一気に前進する。

 おそらく一番のダメージを与えたなのはを脅威とみなしたのだろうか、その動きは一直線になのはへと向けて加速している。

「ところがそうは行かないんだな、これが」

 騎士人形がウィルフレッドのいた位置を過ぎた瞬間、ウィルフレッドが穴から落ちてくる。その右手の逆手大剣は極限にまで後ろへと引かれ、斬撃ではなく打撃を繰り出す。

 それに騎士人形は反応した。

 上半身を回転させるとすぐさま騎士剣をウィルフレッドへと向けて放つ。上から落ちてきたウィルフレッドと、そして騎士人形の騎士剣が衝突する。ここで圧倒的不利を仕入れられるのはウィルフレッドだ。上から落下する事で速度と重力は味方にしていても足場が存在していない為に、力を込められないのだ。故に、魔力による強化を持った騎士人形の攻撃に対してウィルフレッドは圧倒的不利を強いられる。

 そのはずだが、

「―――ッラァ!」

 逆手大剣と騎士剣が衝突する。

 そして騎士人形の腕が砕け散る。

 騎士剣と衝突し、騎士剣へと伝わるはずだった衝撃は得物を"通り"、騎士人形の腕にて炸裂したのだ。それはとある流派において"鎧通し"と呼ばれる技術。伝わる衝撃をそこでぶつけるのではなく、奥へと通すことにより内部からの破壊を目的とした技術。これが、この技術がウィルフレッド・カーストが高ランク魔導師のバリアジャケットを易々と貫く最大にして攻略不可能な攻撃。ただ単純に、ウィルフレッドの前では防御の意味がないのだ。

 そのため騎士人形の腕は破壊された。僅かに後ろへとウィルフレッドの体が押されながらも騎士人形は腕を破壊された事実に―――動きを止めなかった。ウィルフレッドの体が宙に浮いている間に残った腕の、小さなスリットから光の刃が現れる。青白い光りによって構成される刃は騎士剣とは異なり、熱量と電撃、その二つを同時に持つ必殺剣。所謂レーザーソードという武器だった。

「レイジングハート・エクセリオン、A.C.S!」

『All right master A.C.S strike』

 レイジングハートの形状が変化している。その姿は魔法使いの杖から一本の槍の様な形態へとその姿を変更させており、刃の様な翼を四枚生やす。魔力を使用しないことから、空中に身が浮かび直ぐに動き出すことができないウィルフレッドより大きな魔力を溜めたなのはを脅威とし、レーザーソードをなのはへと向けて振るう。その刃は実体剣の様に重さを持たない為に数倍早く振るわれる。が、なのは、そしてレイジングハートのA.C.Sモードが衝突する。高密度の魔力槍とレーザーソード、なのはの一撃がAMFによって減衰させられながらもレーザーソードと拮抗を始める。

「リミッターがあるんじゃこれぐらいが限界かな……!」

 少しきつそうな表情を浮かべ、そう呟くなのはに素早い言葉が返される。

「上出来だなのはちゃん。いい感じに動きが止まってるぜ」

 ウィルフレッドが空を蹴り、床へ立つ。

 それは空戦魔導師が飛行魔法を習得する前に覚える初歩的な魔法、"エアステップ"。足元に魔力による足場を生み出す魔法。それを持って空に浮かぶと言う感覚を覚える為だけの魔法だ。しかし陸戦魔導師からすれば空に立つことの出来る貴重な魔法。管理局魔導師には色々とルールがあり空を飛んではいけないなどと縛りがあるが、騎士であるウィルフレッドにそれは関係ない。足の裏にだけエアステップを発動させ足場を作り、それを蹴って真っ直ぐ着地したのはレーザーソード、それを発生させる腕の裏側。

「さぁて、仕上げるぞ!」

 逆手大剣が閃光の様な速さで動く。純粋な質量にのみ頼る一撃はAMFを素通りし、そのまま騎士人形の肩に打撃し、

「久々に行かせて貰う―――」

 逆手大剣に、ここで初めて魔力が付与される。AMF環境下では身体強化や物質硬度上昇など、基本的に強化系の魔法以外は発動が難しい。特に魔力保有量B+のウィルフレッドであれば魔力弾を生成すれば直ぐにAMFにそれをかき消されてしまう。

 だからこそ、逆手大剣に魔力を通す。

 行うのは大剣の強化ではなく、打撃のインパクトと共に魔力と衝撃の出力を一箇所、接触箇所に集めて打ち出すだす事のみ。先端を細めたホースから出る水の勢いが増すように、狭い出口から放出される衝撃と魔力はその接触箇所にのみ置いて威力を大幅に上昇させる。その箇所に限れば、ディバインバスターの威力を大きく上回るほどに。

「―――デモリッシュ!」

 ウィルフレッドの魔法の前に騎士人形が肩から肘にいたるまでを一気に破壊され、粉々に砕ける。同時に体から供給されていたエネルギーが切れ、レーザーブレードが消失し一瞬だけAMFそのものが揺らぐ。完全に得物を振りぬいた形で体を硬直させるウィルフレッドの代わりに、AMFとレーザーソードという障害をなくしたレイジングハートが一層輝く。

 両腕をなくした騎士人形が魔力の槍を生み出す瞬間。一気に加速したなのはのレイジングハートが、騎士人形の中心に突き刺さる。勢い良く突き刺さった槍は騎士人形を貫通し、背後から水の様な液体を零す。そのまま、力を失うように騎士人形の目から光が失われ、動きが完全に停止する。ゆっくりとレイジングハートを騎士人形の胴体から引き抜く。

 出来た穴の先、そこになのはが見たものは―――

「―――見るな」

 その前にウィルフレッドが視界を塞ぐように前に立ち、レイジングハートの穿った穴を覗く。その口調は何時ものおどける様なそれではなく、真剣な物だ。穿たれた穴の先にあるものを見ながら、明らかな嫌悪感を顔に表す。

「ジェイル・スカリエッティ……その名前しっかり覚えさせてもらったぜ」

 一歩後ろへと下がり逆手大剣を待機状態に変化させると、それをしまう。そのまま胸でベルカの象徴である剣十字を描き、

「我が主、聖王よ。冥界へと導かれしこの魂をどうかその腕でお抱き下さい。―――」

 その後も少し祈りの言葉を呟き、剣十字を描いてから携帯端末を取り出す。

「ウィルさん、今のって」

「略式だが聖王教会式の葬式でやるやつだ。そこらへん一応資格とってるしな……っと、クゥ、そっちのほうは終わったか?」

 携帯端末の向こう側からクゥーニャの声がなのはにも聞こえる。

『あぁ。相性が良かったからこっちはそんなに手間取らなかったが、これは』

「あぁ、解っている。魂の冒涜だ。それにこんなもん動かされちまったんじゃ動かざるをえないな」

『どうする? 私はお前の判断に身を委ねる』

「まずはこいつの回収と分析だな。そっちの破損状況はどうだ」

「ちょ、ちょっと待って! ウィルさん、回収って―――」

 携帯端末から顔を上げてウィルフレッドはなのはへ顔を向ける。

「悪いななのはちゃん、これも仕事なんだ。本当はもっと気楽に行きたいけどよ、今回ばっかしはフェミニストの俺でもちぃとキツイんだわ。俺がやらなくてもそのうち聖王教会から引渡し要請が行く。いざこざが始まる前にこういうもんは片付けるのがベストだからな。"管理局少将の権限"を行使させてもらうぜ。こいつは俺達で差し押さえさせてもらう」

「……ウィルさん」

 辛そうななのはの声を無視し、携帯端末からクゥーニャの声が響く。

『こっちは四肢を切断して脳を抜いたぞ』

「こっちのとあわせて完璧なのが一体って所か? これからウチの人員を呼んでこいつの回収をさせるぞ。ついでに聖王教会の内偵を進めなきゃならんなこれは。うわ、嫌だ。超面倒じゃねぇか。クゥーニャ、全部お前に任せるから適当にやっちゃってくれ」

『私も面倒だ。ヴェロッサに丸投げしろ』

「お、そりゃあいい。とりあえず先に帰ってろ。俺はここで回収部隊を待っている」

『了解した。カリムには適当に死に掛けたと伝えておく』

「待て―――!!」

 ウィルフレッドが携帯端末へと向けて叫ぶがそこに反応はない。クゥーニャは既に聖王教会へと向けて去り、そして端末の電源を切ったのだろう。教会に帰ってからが面倒だと思いつつ、ウィルフレッドは回収部隊の派遣申請を端末で行う。それを終えると携帯端末を戻し、なのはに視線を向ける。

「あれ、なのはちゃん合流しなくていいのか?」

 まるで何事もなかったかのように聞いてくるウィルフレッドの姿にしばしなのはは沈黙し、

「ウィルさんは……いえ、そうだね。ウィルさんも自分のお仕事をしてるだけもんね」

 その事に肩を揺らすウィルフレッド。

「高給で休みが多いのはいいがよ、結構自由が少なかったり汚れ役ばっかりで神殿騎士団ってのも結構疲れるんだよな、これ。俺もなのはちゃんみたいに砲撃バカスカ打ち込んで笑うような仕事につきたいよ」

「私は砲撃馬鹿じゃありません! 適正の問題で砲撃系統が多いだけなんです!」

「おぉ、生まれる前から砲撃ジャンキーが決定していたのか。そりゃあスゲェ。なのはさーん! ちょっと砲撃適正分けてくださいよー」

「もう、ウィルさんは……!」

 ククク、と笑いを零しながらウィルフレッドがポケットから一枚の紙を取り出し、それに口を近づけると口から味のなくなったコーヒーガムを出し、包んでポケットに戻す。また別のポケットからコーヒーガムを取り出すと一枚抜いてから箱をなのはへ向ける。

「ま、頑張れやエースオブエース」

「ウィルさんも負けないように頑張って」

 なのはがコーヒーガムを受け取り、それを口に入れる。それを数回噛むと顔を歪める。

「うみゃぁああああ!? ま、マズイの! な、なにこれ」

 その様子を見ていたウィルフレッドが悪戯を成功させた子供の様な顔をし、笑い声を上げる。そしてなのはが自分の発した奇声に気づき顔を思いっきり赤くする。

「ハハハハハ! クソマズイガムだろ? タバコを我慢する為に買ったんだけど予想以上にマズいからこの苦痛を味わう仲間が欲しかったんだよ。ハハハハハ、クゾマジィ……!」

 顔を真っ赤にするなのはと笑い声を上げるウィルフレッド。何事かと思ってフェイトが到着するまでの数十秒間、その状況は続いた。
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