陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-18

 保健室の扉に背を向けて立つ。どうせほかに保健室に入る人間はいないのだ。扉に背を預けてもいいだろう。それ位の手抜きは許されるはずだ。両手の腕を組んで、深紅のフードを深くかぶる。こうやって現界するのは嫌いじゃない。いや、むしろ好きだ。つつましく姿を消しているのはあくまでセイバーとしての自分に徹しているから。マスターがいなければこんなもんだ、と自分に言い訳し、短い休憩を取る。保健室の中はセラフの中でもかなり安全な場所だ。あの健康管理AIの桜は上級AIとしてもかなり優秀だ―――保健室にいる間は危険がないと思っていい。

 だからこうやって保健室の外でAIのささやかな幸せな時間を作ってあげられる。

 我ながら、

「面倒見よすぎ」


 まあ、これだけで自分は満たされる。

 ―――もう一度会いたい。アレは真実ではない。自分がそんな女々しい存在であるわけがないだろう。だが、まあ、それでいい。本来の理由を言えば今のマスターでは混乱するばかりだ。今のアレには余裕がなさすぎる。こういう平和な時間で心を整理したりすることが必要だ。故に自分自身の事は後回しに、今はなるべくマスターの事を中心に問題を片付けようと判断する。何が間違って騎士として召喚されてしまった。

 大方魔術師か狂戦士として召喚される方が可能性が高かったのに、十中八九狂戦士だと踏んでいた。なのに箱を開けてみればこの始末。

「ムーンセルめ、やってくれたな」

 確かに召喚されるように契約をしたが、こんな事をするとは……いや、これも救世主なりのシナリオか? いや、アレはそこまで計算する様な男ではない。だとすれば確実に召喚される様なクラスを用意した、ということなのだろうか。

 考えれば考える程思考するべき内容は増える。非常に面倒だ。

「タバコの一本でも吸いたい所だ」

「S.E.R.A.P.Hは禁煙ですよ」

「そこだよなぁ……」

 声の主を確認する必要はないが、礼儀として背中を離し、声の主に視線を向ける。ブロンズレッドの制服姿の金髪の少年は西欧財閥の若き当主、レオナルド・B・ハーウェイだ。彼のサーヴァントであるセイバー、ガウェインが後ろで控えている。真名を隠す気もないのは明らかな自信の表れであり、絶対勝利できるという確信から来ている。その自信も大方間違ってはいない。ガウェインと言えば昼の間であればほぼ無敵存在だ。

「それを過信するのも良くないがな……っと、何用だ、西欧財閥の若君」

 目の前の主従は確実に此方に興味を持って接近してきたのだと解っている。いや、正確には自分ではなく、マスターである岸波白野に対しての興味だ。岸波白野という存在の在り方に対して無意識ながら理解しているのだろうか。それを自覚している様子はないが、凡人を理解し、そして導くという点を無意識ながらやれるこの男は確実に王の資質を持っている。いや、王として完成を受けているのだろう。

「いえ、岸波さんのサーヴァントが一人で黄昏ているのを見つけまして、いったい何をしているのかと思いまして。あまり岸波さんがサーヴァントを遠くへ行かせるような人物にも見えませんでしたので、純粋な興味を」

 さて、これにはどう答えたものか。少しだけ悩む。

 我がマスターがAIと語り合いを楽しんでいるというべきか。それ自体悪い話ではないが、レオではその意味を理解できないだろう。なぜなら彼は君臨者であり、欧州圏の出身だからだ。AIを純粋に道具として見、判断している。だが言葉を捻って話してもつまらない。レオは純粋だが思慮深い。

「うーむ、お前と話す時は言葉を選ばなくてはならんからな、非常に面倒だ」

「僕の相手はそんなに面倒ですか?」

 ガウェインに視線を送る。ガウェインは黙っているし、視線で何も語ってくれない。故にそれをゴーサインだと受け取る。

「あぁ、非常に面倒だ。何せお前は生まれた瞬間から完膚なきまでに完成されている! 一から十までが全て揃って生まれているのだ! 恵まれすぎていて実に面白みがない! 時代を担う若き王、実に結構。だがそれには一切の面白みもない。完成とは即ち終わりであり打ち止めである。つまりそれ以上が存在しない未来無き存在でもある。お前が自身を完全な王として認識しているのであれば非常に残念だな、お前に未来はない。確実に決勝戦で敗北するハメになる。なぜならお前は完璧すぎる故に一番学ぶべき事を完全に捨てているからな!」

 と、そこで一旦息を吐き、

「ふぅ、すっきりした。どっかの批評家みたいな物言いだが後悔はない」

 言いたかったことを一気に言うことに成功してこの上なくすっきりする。レオは笑みを浮かべたまま固まっているし、ガウェインも口を開くことなく黙っている。

「まあ、なんだ、若き王よ。その道の先輩から言葉だ。ガウェインは王の在り方というのを知っているからな、自分で全てを完結せずにもっと積極的なコミュニケーションを取るといい。何故王は滅ぶのか。完璧な王とは何ぞ。永遠の王とは何か。真に最優を名乗るサーヴァントであればそういう疑問を答える事も出来よう」

 レオは驚いた様子で此方を見る。

「僕の認識が正しければ貴方は今、将来敵となる可能性の高い相手に助言を与えました、それも成長を促す様な。去る前に一つ、何故助言を与えるようなことをしてくれたのか、その理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

 それは実にシンプルな理由だ。

「俺は人間を愛している。それ以上もそれ以下もない。愛する相手に助言や苦難を与え、成長を促す事に理由はいらないだろう?」

 レオは此方に向けて頭を下げてくる。この廊下に他のマスターやNPCがいないからこそ何も起きないが、他に誰かが見ていればかなり驚いたに違いない。西欧財閥の王が、的に頭を下げた。それだけで驚愕に値する事実だ。

「ありがとうございます、”夜明けの魔王”。もう少しガウェインと話をしてみる事にします。では、岸波さんと貴方との戦いを僕は心待ちにしていますので―――」

 レオは去って行く。その背中は”どうかこんな所で消えない様に”、そう無言の言葉を語っていた。此方の正体が知られているのはいい。だが今まで散々言われた事の意趣返しに真名を把握している事を口にするとは―――中々子供らしいところもあるのだな、と感心してしまう。

 去り際にガウェインが此方を見、

「ありがとうございます。本来は私が言うべきなのですが」

「愛は見返りを求めないものさ。それ故自爆するのが運命なんだけどな」

 たった今、マスターの首を絞めている様なもんだし。

「時が来れば全力で相手をすることを約束します」

「いや、しないで。マジで。もう少し楽にやろうよ。ただでさえウチ足らないのに。特に相棒は胸が足りないし」

「では」

 ジョークの一つに反応することもなく、ガウェインはレオの後を追い、去って行く。ガウェインは忠実な王の騎士として行動している。故にガウェインは決してレオに逆らわず、進言するのみで間違いを注意しようとすることはないだろう。まさしく忠犬という言葉に相応しいありさまだ。”聖杯戦争中”はあの姿から崩れる事はありえない。だからこそ今の言葉は必要な事だった。おそらくレオはガウェインでさえAIと切り捨てていた部分がある。

 これでレオがガウェインの言葉を聞き入れ、そして足りないものを自覚すれば―――それは実に恐ろしい敵を生むことになる。だが、仕方がない。そう、仕方がない。自分はそういうサーヴァントなのだ。愛に見返りを求めてはならない。俺が人間を資する様に、レオとガウェインの存在を、あり方を愛し、そして認める。そういうものだ。

 決勝戦の難易度は元々ムリゲーだったんだ。少しぐらい上がっても問題はない。どれだけ自分が力を取り戻せているか、どれだけマスターが成長しているか、

 そしてどれだけマスターを愛しているか。

 そこが勝利の為の鍵だ。

 と、そこで保健室の扉が開く。

「セイバーセイバー」

 扉の向こう側でくいくい、と手を動かし中に入れ、とマスターがジェスチャーしてくる。相変わらずマスターのこういう動作は実に小動物染みている。そのうち誰かに掴まって食われかねない。容姿からすればクラスで三番目、といった評価だが、人形染みた雰囲気にあの行動力は万人を引き付ける魅力を持っている。そこらへんの美しい少女よりも実に美しく感じる。

 いや、真に美しいのは魂の輝きであり―――。

「セイバーこっちおいで」

「はいはい」

 マスターの催促に従い、扉を後ろで締めながら保健室の中に入る。折角気を利かせて二人きりにしているのに、何の用であろうか。と、テーブルの上には湯呑が三つ出ている。桜と岸波の前に一つずつ、そして空席の前に一つ。

「セイバーさん、どうぞそこにお座りください」

「うん、やっぱり仲間外れは良くないし、セイバーも一緒にお茶を飲もうよ。桜のお茶、美味しいよ?」

「なんでそこで自分が誇らしげな顔をするんですか」

「ふぅ……」

 何やら一人だけ真剣になっていたのがバカらしくなる。溜息を零しながら椅子に座る。桜の淹れた茶は絶品と言うが、

「さて、俺の舌を唸らせることができるか保険医よ……!」

「セイバー凄いノリノリだね」

 仕方がないだろう、それは。何せ俺はこういう馬鹿な日常を何よりも愛しているのだ。誰よりも、何よりも、こういうくだらない時間を人が過ごすその光景を見続けたい。守り続けたい。それが俺であり俺達の願いなのだ。どんなに分岐しようが、どんなに変わり果てようがその絵買いだけは変わらない。

「俺は常にこんなノリだ」

「うん、大体わかってたけどそのドヤ顔はやめてよセイバー」

 苦笑するマスターと桜の前で道化を演じる。そう、それでいい。これぐらいの温さが丁度いい。茶も、心も、頭も、普通に生きる分であればこのぐらいの温さが丁度いいのだ。そしてその温さを記憶のない―――現実のない我が主は知らないし、経験しなかったし、得る事はない。今のコレは薄氷の上の幻想だ。誰かが、強く踏み込めばそれで壊れてしまう。

 だから、それでこそ、守る意味はある。

 ―――この生は守れなかったもので溢れているからこそ―――今度こそは―――。

「セイバー?」

 マスターの声に反応する。

「どうした?」

 いや、とマスターが言い、

「今のセイバー、なんだか凄い優しい表情浮かべてたから―――」

「―――キュンと来た?」

「馬鹿」

 だから、……今日ばかりはアリーナに入る時間を1時間遅くしてもいいと思う。




 ギルCCCエンドやったけどやっぱラスボス戦まで慢心してた慢心王は慢心王だった。

 珍しくサバ視点。CCCで株を上げなかったキャラってほぼいなかったと思うんです。とりあえず敵は更にインフレさせる為にレオとガウェインにフラグを立てて、5回戦からCCCへの分岐フラグもコツコツと。
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| 断頭の剣鬼 | 13:21 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ガウェインだけでも大変なのにレオ様覚醒とか無理ゲー

| | 2013/04/23 16:18 | URL |

レオ君覚醒したらネタキャラになるな・・・!

| おk | 2013/04/24 08:30 | URL |

 アンデルセンww すっごい、何がって脳内での音声再生に違和感が無さすぎるてヤバイッス。クオリティがw
 もうccc導入検討とか、てんぞーさん既に息抜きの範疇超えてますよ Σ(@_@;)
 自分も執筆合間に今kkkやったりしてますが、このクオリティで断頭本編にネトゲって……背中も見える気がしないorz 

| tonton | 2013/04/26 18:28 | URL | ≫ EDIT















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