陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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夜と黄昏 ―――ラン・ラン・ラン

推奨BGM:Deus Vault


 冷や汗を流しているのが解る。敵が強敵であることに対して、ではない。そもそも強敵と戦うことは慣れている。自分よりもはるかに強い相手に戦闘する事は何時もの事なのだ。ジャイアント・キリング。大物殺しを成してこそ初めて前に進む実感がある。戦闘とはそういう事だ。格上と戦ってこそ心身での成長が見込める。だから相手が強敵であることはむしろ”好ましい”のだ、自分にとっては。そうでなくてはあの大きな背中に追いつけることは永遠にない。

 ―――追いつける気はしないけど。

 だが問題はそういう事ではない。決して敵が強敵であることはない。それ以前に、目の前の少女は自分よりも弱い。何故かはっきりと、相手は自分よりは弱いと確信できる。その気になれば一瞬で首を刎ねる事も出来る。そのイメージが既に脳内で完成している。完成している、というよりはその先が見える。

 一歩まで踏み込み、接近する。相手はそれに反応し刃を向けてくる。だからその刃の腹を片手で抑えながらさ欄に踏み込み、バックハンドで握り、ゼロ距離から逃げられない斬撃を首に叩き込む。そして首を刎ね飛ばす。

 これだ。この動きが確実に現実になるものとして想像できる。鮮やか過ぎるイメージにそれが未来とも思えてしまう。だが絶対にそうはならない。なぜならそれはあくまでもイメージであり、現実ではないからだ。現在をそういう風に動かない限りは、絶対にそうはならない。そしてそれは出来ない。


 叫んでいる。

 何かが全力で叫んでいる。

 自分の体の中で吠えている。

 ”殺すな”、と。

 ”彼女に触れるな”、と。

 全力で雄たけびを上げながら脳を揺らす。彼女を正面から迎えるこの瞬間、体の内側から叫び声が彼女と対峙する輝力をそいでゆく。彼女と戦闘をし、殺してしまっては何もかもが終わってしまうと。まるで見えぬ力に展開を強引に変えられてゆく気がして―――吐き気がする。これは俺の体だ。俺の、俺だけの体だ。故に触れるな。触るな出て行け。

 俺は俺であればいい。

 強く、強くそう願い、考え込むのと同時に叫び声は消えてゆく。そうして自分の精神を落ち着ける。考える事は非常に簡単だ―――この状況をどうするか、だ。

 目の前には騎士の少女―――アリスと名乗った少女だ。金髪、目の色、顔だち、名前、それはキリトやユージオの言う”アリス”の特徴と合致する。ただシンなんとか、やらサーティーと名乗った事は知らない―――おそらく称号か何かだろうか。だとsれば―――

「―――アリス・ツーベルクか?」

 なるべく低い声で、他人の声を再現する様に声を出す。この一言に緊張する。此方が口を開いたことに相手は驚きを見せないが、険しい視線を向けてくる。

「誰だそれは」

 ……違った? いや、それにしても律儀に答えてくるとは。

 中々予想外だったが、アリス・ツーベルクではないらしい。まあ、アリスなんて名前はネトゲでまず最初に使われてしまうような名前だ。同じ名前の少女が十人ぐらいいたとしても不思議ではない。だから、まあ―――

 ―――やはり殺すか?

「ッ!」

 いや、違うだろう。何故そうも安直な考えを取るんだ最上正樹よ。お前はそういう脳筋キャラではないだろう。しかもなんだ考えればすぐに殺す殺す殺すって。そんなの絶対自分のキャラではないだろ。もっとおとなしめで、考えて、そして謎を楽しむタイプだろう。それが何故こうもすぐに殺すして消す事を手段として選ぼうとする。

 まるで自分がこの世界の住人になっているようだ。

「……ぐっ」

「……?」

 アリスは油断しているのか、もしくは慢心しているのか、それは理解できない。だが此方の動きを見ている。そして此方は―――必死に吐き気を堪えていた。信じたくない。自分が”あんなもの”に成り下がろうとしていたなんて。自分自身しか考えず、妄信的に自分だけを信じる様な屑に。

 剣を握り直す。

 ―――逃げるしかない。

 だがこの少女から逃げ切れるか。そう問われれば現時点では無理だとしか答えられない。なぜなら相手は騎士だ。そしてそれ相応の訓練を受けている。相手が自分より格下であっても、増援を呼ばれて追跡されれば厄介な事となる。

 なら無力化してからの逃亡。これが答えのはずだ。

 遭遇してからの素早い思考は数秒以内に完了している。

 動く。

「―――!」

 少女の反応は凄まじく早い。此方が動き出すのと同時に既に戦闘に思考を切り替えている。ちゃんとした戦闘訓練を受けているに違いない。それもちゃんとした剣の師を通してだ。自分とは違う。遊びで剣を握った訳ではないのだ。だが、そう、

 自分の師は魂に刻まれている。

 踏み込みと同時に刃は後ろへ引く。完全に、それこそ前に引き戻すにはどんなに早くとも一瞬は必要するほどに、その奇怪な動きにアリスは驚きを見せず、刃を振るってくる。その刃に対して接近を止めない。更に踏み込む。強く、早く、深く踏み込む。攻撃が迫ってくるという状況に対して恐れはある。痛いのは誰だって嫌だし、怖い。だが、前に進まないものに勝利はない。それは真実だ。

 だから恐怖を飲み込み前に踏み込むところで、僅かにだけだが体を横へ揺らす。

 刃は体を掠り、数ミリ横を抜ける。刃を握る事を放棄し、軽くなった右手を拳にし、それを一気にアリスの腹に叩き込む。

「ぐぁっ……!」

 鈍い音と主にアリスの声が漏れる。だが”硬い”。鎧だけではなく、声の質そのものが、だ。アリスの目は見開き、こっちを見ている。刃が振るわれる。瞬間、体を落とし、後ろへ飛ぶ。回避行動をとりながらも剣を回収する。アリスが苦悶の声を噛み殺しながら此方へと視線を向けている。

 その瞳には殺意と敵意しか映っていない。

 口が開く。

 その前に、

「所詮整合騎士と言ってもこの程度か。侵入者相手に数人がかりで戦わなきゃ賊一人倒せないのか―――あぁ、だから今まで勝てたこともないのか」

 アリスの口が閉じた。アリスが増援を呼ぶ、その判断は間違えていない。だからこそ挑発する。挑発した。これに乗っかって来いと、全力で心の中で叫ぶ。そしてアリスは再び口を開く。

「もう一度言ってみろ……!」

 かかった……!

 答えの代わりに接近を返答とする。アリスが反応する。激情に駆られた刃は素早く、強く、そして鋭い。まるで目に見えぬところから力を吸い上げている様にさえ見える。回避が不能な速さで迫る刃に自らの刃を叩きつける。

 衝撃、響く金属音。

「くっ……!」

 手がしびれる。それは相手も同じだろうが、声は漏れない。整った顔で憎悪を此方へと向けてきている。その事実に少しだけ勿体ないと思う。が、今の自分は名のない賊になっている。ならばこの結末も仕方のない話だろうと諦め、

「くぉぉ……!」

「ぬ、ぐっ!?」

 押し返す。完全に力押しのごり押しだが、剣を経て強くなった自分に少女の筋力で勝利できるわけがない。そのままアリスの剣を押し切り、一気に体との間に距離を開け―――ない。刃を押し込むようにして体当たりを繰り出す。アリスの刃は左肩の上を抜けて行き、そして右肩はアリスの胸に当たっている。

「くぉ!」

「がぁ、はぁっ……!」

 そのままアリスの体を塔に叩きつけ、挟む。アリスの肺から酸素が一気に吐き出されるのを感じる。だがこの程度で気絶する様な軟なつくりをしていないだろう。そのまま柄をアリスの喉に叩き込む。力を入れ過ぎてそのまま喉を潰してしまうと困る故、力を少し抜いて叩き込む。同時に意識を奪うための一撃を腹に繰り出す。アリスの目が大きく見開き、そして閉じ始める。

 しかし、それがいけなかった。

「―――!」

 一閃。

 崩れ落ちるアリスは一瞬で失わなかった。故に刃を討ふり、こっちの体に刃を突き刺した。貫通とは行かぬが、浅くはない傷が体にできる。反射的にアリスを蹴り飛ばし、距離を作る。蹴り飛ばされたアリスはその先で転がり、動きを止める。

「慢心……した……!」

 刃を背負い直し、腹を押さえながらつぶやく。相手がかくしてであることに知らずの内に慢心をしていた。言い訳をするつもりはないが、おかしい。

 何かが決定的におかしい。ここの街へ来てから、いや―――この世界へと来てから自分は己を失っているように思える。何故かはわからないが、”自分”というあり方が何十にも侵されている気がする。ゆっくり、ゆっくりとだが確実に水の中にインクをたらされている様な、そんな感覚だ。最初はインクを一滴たらした程度では色の変化を見せないオレンジジュースも、二滴、三滴と、少しずつ混ぜられている感覚だ。自分という中に異物が混じっているのに、それが自然すぎて異物だと認識できていない。酷く気持ち悪く感じるのは腹にできた傷だけのせいではないはずだ。

「……くっ」

 痛みで漏れそうな声を噛み殺す。―――聞こえる。

「音がしたぞ!」

「金属の……剣をぶつけ合う音だ!」

 これ以上ここに留まる事は無理だ。逃げ出そうと踵を介した瞬間、激痛が走る。腹を確認すれば、そこから血が流れ出ている事に気づく。それを片手で抑えたところで、流れ出す血は止まらない。

「ヤバイかなぁ……」

 どうしてこんな事になってしまったのだろうか。

 なんでこんな事を自分をしているのだろうか。

 そんな考えばかりが脳を駆け巡る。

 少なくとも潜入は失敗し、もう潜るチャンスはない、ちう事がここで決定してしまった。だがそれも明日からの話だ。今は生き残る事と、逃げ切る事だけを考えなくてはならない。

 もはや人目を気にしている場合ではない。

 腹を押さえたまま、全力で壁を飛び越える。着地をするのと同時に腹の傷に掌撃がいきわたり、痛みを生む。それを鳴るb稀有気にしない様にしながら、セントリアの路地裏を駆ける。

 どこへ、どこへ行くのだ。

 行き場はない。逃げ場はない。頼る事は出来ない。

 静かに唇を噛む。

 カイン達に迷惑をかける事は出来ない。かといって他に頼れる人を知っているわけではない。セントリア自体から脱出するべきか……?

 思考を巡らせば巡らせるほど頭がぐるぐるとする。

 その中で、路地裏に人影を見る。逃げ場は後ろにはない。前にしか進む道はない。ならば、

「退いてください……!」

 全力で駆け抜ける為に声をだし、警告する、既に背中の刃は見えているだろう。闇のせいで相手の姿を上手く見る事は出来ないが、それで退いてくれることを祈る。

「……」

 だが期待を裏切り人影は動かない。なら敵か、そう判断し接近から一撃で―――

「―――かっ」

 そこまで思考してから気づいた。

 既に接近されていた事実に。

「な……? あ……?」

 口から混乱の声を零しながら意識は眠気に負け、落ちてゆく。いけない。今眠ってしまえば二度と起きれなくなってしまう。それを自覚し目を開けようとして―――

「―――今は眠れ」

 昌益が首裏に走り、完全に意識を落とした。




消化不良? 物足りない?
フラグ立ては大変な作業なのです (やりきった顔
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| 断頭の剣鬼 | 14:57 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

更新お疲れ様です。
最後に出て来たのはやっぱりあの人かなぁ。

| 断章の接合者 | 2013/04/21 21:56 | URL |

更新速度が速いのはいいのですが、やはり誤字が多いですね。
読めないことはないのですが、やはり読みづらいです。

| イーヴル | 2013/04/21 23:29 | URL | ≫ EDIT

参上と共に即・土下座! Ωrz ←額を擦り付けるの図
更新お疲れ様です! 他の作品を書きつつ毎回の速さに脱帽、自分もせめて一日5千字は書けるようになりたいデス(真剣
正樹さんはいい感じで空気吸ってたのが片足が抜け出しましたね、最後に登場した人物が予想でき無い勉強不足に絶望した!

| tonton | 2013/04/22 23:37 | URL | ≫ EDIT

最後の人はだれなのか(棒)
それにしても正樹とアリスの戦い
正樹は自分より弱いと確信していたにもかかわらず蓋を開けてみれば双方痛み分けで終わっている事実。
正樹の心の声といい、まさか

| シオウ | 2013/04/23 00:33 | URL | ≫ EDIT















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