陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-13

 少しずつだが意識が覚醒してくる。何となくだが自分は今、安全な所にいるという事が解る。意識が覚醒してくれば目が開き、光を受け入れ始める。眩しさに一度目を閉じるが、ゆっくりと再び目を開き、光を受け入れる。眩しくても自分に倒れている暇はない。

 無理やりにでも体を持ち上げる。

「ッゥ……」

 体が重い。全身を何かが蝕んでいる。体内の中で命奪おうとする何かが全身を駆け巡っているのが理解できる。周りを軽く見渡せばここが保健室であることに気づく。起き上がった事に気づき、

「あ、岸波さん」


 保健室のNPC、桜が此方が起きた事に気づいて近づいてくる。此方を見るとシステムのチェックを走らせ、此方の体の中を調べている。

「これはイチイの毒ですね。自然界から抽出できる毒としては非常に強力な者です。私の権限でどこまで治療できるかは解りませんが、全力で治療させていただきます。でもダメですよ? 一つしかないからだなのですから大事にしないと」

 桜のたしなめるような声に俯く。自分だって好きでこんな状態になったわけではない。アーチャーが仕掛けてくるのは解っていたが、アリーナを二が米練らんだのは自分だ。これは―――

「悪い、完全に俺のミスだ」

 そこでセイバーが現れる。本来なら自分が完璧にマスターを護衛するはずなのに、それを成し遂げられなかった自分が悪いとセイバーは言った。申し訳ないのは此方だ。自分はマスターであり、この戦いの参加者だ。そして、決して子供ではない。自分の発言と行動には自分で責任を取る事の出来る大人だ。だからこの結果は自分だけのミスであり、自分を戒めるための傷だ。決してセイバーが悔やむ事ではない。

「……そう言ってもらえると助かる」

 セイバーは此方を安心させるためかいつも通りの笑みを浮かべる。

「あ、ただ逃げる為に武器を爆破したから二回戦中は罪姫・正義の柱使えないから」

「えっ」

 ちょ、ちょっとマテ。今セイバーは激しく不吉な事言わなかったか? 武器を爆破ってそれ、完全に致命傷ではないか。と、思い返してみれば昨日、アリーナの中でセイバーの武器がブロークン・ファンタズムの一言と共に爆発する光景が見れた。もしかしなくとも、

「逃げるためには一手足りなかったから。爆破して煙幕に使った」

「―――」

 セイバーの大胆すぎる行動に絶句した。あの凶悪なほどに反則的なセイバーの武器は間違いなくセイバーを象徴する宝具であり、同時にステータスの大幅弱体化という穴を埋めてくれていた最強の武器でもあった。首への攻撃を全て一撃必殺に変える効果はどう考えてもチートだ。逃げるためとはいえ、自らを象徴する武器を迷うことなく破壊するセイバーの判断力と精神力、何よりも迷いの無さに驚く。それにしたって武器を無くすことは致命的だ。こうやって生き延びることに成功したが、武器を無くしては戦えない……!

「言っただろ、二回戦中は使えないって。三回戦辺りになれば再生してる」

 ……宝具が再生するとは初めて聞いた。

「英霊側は誰だって知ってる事だぞ。まあ、宝具を爆破させることなんてほぼないし、あんまり知られていないだろうけど……ともあれしばらくは素手で戦う事になる。前よりも戦いは厳しいことになるだろうから、それを覚悟しておいてくれ」

 了解した。武器がなくなったのは痛いが、もう戦えないというわけではない。セイバーはかつてない程に戦意に溢れている。その様子が簡単に見て取れる。これだけの戦意を持っているのだ、セイバーは今までと変わらない活躍を約束してくれるに違いない。なら後は自分だけだ。もう気合でもなんでもいいからこの毒を何とかし―――

「あら、お客さんですか?」

 保健室の入り口が開き、知っている姿が入ってくる。黒と緑の鎧姿に白髪の老人。物々しい雰囲気と共に保健室に入ってきたのはダン・ブラックモアだった。

「……」

 いきなりの敵マスターの出現に身構えようとするが、体が毒で思う様に動かない。その代わりに素早くセイバーが横で警戒体勢に入る。構えている様子はないが、それでもその目はダン・ブラックモアの”背後”をしっかりと見つめている。

 と、そこでダン・ブラックモアが予想外の行動に出た。

「先ほどイチイの矢の元となる宝具を破却した―――これで君の体をむしばむイチイの毒も消える筈だ。非常に身勝手な言い分だが、この行動を謝罪とさせてほしい」

 ダン・ブラックモアの言葉に思わず絶句する。セイバーは警戒を解いた様子で口笛を吹いた。セイバーはダンの行動、いや、騎士道精神に純粋に驚き、そして感心しているようだった。ダンはそのまま止まることなく、背後に視線を向ける。そこに緑衣のアーチャーが出現する。

「そして、今回ばかりはお前に失望したぞアーチャー。許可なく校内で仕掛けたばかりか毒矢までを用いるとはな。この戦争は公正なルールが敷かれ、運営されている。それを破る行動は我々の、人としての誇りを貶める行為だ。これは利益や見栄のための国の戦いではないのだ。人と人の戦いだ。我々が畜生道に落ちる必要はもうないのだ、アーチャー」

 アーチャーのやったことは戦術として見れば間違いなく正しい。何よりセラフはマスターを監視せず、感知してから介入行動を行っている。ムーンセルのパワーであれば常時監視する事も難しくはないはずなのに、だ。これはつまりある程度の攻撃や妨害、暗殺行動は認められているという事だ。おそらくキャスターやアサシン向けの配慮なのだろう。だからアーチャーの行動自体は間違っていない。

 ただ、それがダンの方針とは沿わないだけだ。

「アーチャー、汝のマスターであるダン・ブラックモアが令呪を持って命じる。校舎内での敵マスターへの祈りの弓(イー・バウ)による攻撃を永久に禁ずる」

 驚く事にダンは目の前で三階しか使用できない令呪を一画使用した。しかもそれはアーチャーを強化するためではなく、宝具と敵対行動を封じるためのものだった。ダンは自分の矜持の為に自ら追い込む行動を行っている。令呪が光ってその力を行使した直後、イラついたような、そして怒るような声でアーチャーが怒鳴る。

「はあ!? 正気かよダンナ! 負けられない戦いじゃなかったのか!?」

「当然だ。これは負けられぬ戦いであり私は私の全てを使って当然の様に勝つ。その覚悟だ。だがアーチャーよ、貴君にまで私はそれを強制するつもりはない。わしの戦いと、お前の戦いは別のものだ。何をしても勝てとは絶対に言わん。わしにとって負けられぬ戦いでも貴君にとってはそうではないのだから」

「―――」

 ダンは宣言したのだ。

 アーチャーに正々堂々と戦え、と。

 その言葉にアーチャーは返す言葉がなかった。何も返す事が出来ず、口を閉ざし、そして姿を消した。反応からしてただの霊体化だろうが、会話から逃れるには十分すぎる。それを見届けたダンは此方へと視線を戻す。

「私のあずかり知らぬところとはいえ、君に無礼な事をした。君とは決戦場で正面から雌雄を決するつもりでいた。どうか先ほどの事を許してほしい」

 謝罪の言葉を残してダンは去って行く。もはやダンが振り返る事はない。おそらく彼と次に会うことになるのはアリーナ内でのことであり、そしてアリーナ内での戦闘行為をダンは禁止してない。十中八九戦闘になる。それでも学園内での戦闘がなくなったと解るだけでも全く違う。去って行くダンをただ茫然として見送る事しかできなかった自分に、セイバーの声が届く。

「おいおい、マジかよアレ。頭おかしいんじゃないの? 卑怯な不意打ちが売りのサーヴァントに正面から戦えときたもんだ! しかも宝具の名前まで解る様に言ってきた! もちろん覚えてるよな?」

 確か祈りの弓とダンは言っていた。おそらくそれがアーチャーの宝具だ。

「そう、覚えておけよ? あの男はワザと聞こえる様に宝具の名前を言ったんだ」

 情報を晒す事は愚行でしかない。だがそれでもダンが情報を晒した意味は―――謝罪に違いない。

「そうだ。そして謝罪するのと同時に、”宝具が知られた程度では負けない”という自分の意志を表示しているんだよ。凄い自信だ。ガッチガッチの武人ヤイプ。だけどああいうタイプで優秀な奴は厄介なのが多い。誇りだとか信念だとか、そういうのを持ち出してきながら自分の思想に狂信してやがる。おかげで壁をことごとくぶち破って進んでくる……こっからアーチャーとダンの足並みがそろうかもしれんね」

 不意打ちの可能性はなくなったが、それでもダンとアーチャーが足並みをそろえた状態で襲い掛かってきたら、正直恐怖しか感じない。アーチャーにしたって不意打ちだけが全てではないだろう。英霊であるのならば決闘における奥義の一つや二つを持っていてもおかしくはない。

「だが正気はある。今回の件と宝具の名前で相手の正体が俺には分かったぞ。それにアリーナでの反則行為でペナルティを受けているだろう―――相手も本来よりも大幅に弱体化しているはずだ」

 セイバーが真名を言わない辺り、自分の相棒は自分で考えろと言っているのだろう。戦うことは手伝うが、それ以外に関しては完全にに放任主義。此方の成長を願っての行動だともう思い込むことにする。

 しかし、問題は山積みだ。

 まずはアーチャーの真名だ。今の会話で情報量が一気に増えた。あとで図書館へと向かいイチイの毒と祈りの弓を使用した英雄の名を探す必要がある。これは調べればあっさりと出てくる予感がする。第二にセイバーの武器だ。武器がなくなったことでの大幅な戦力低下は疑う事は出来ない。となると代わりの武器か、それ以外の戦闘手段をセイバーに期待するしかない。此方はこれから相談しよう。

 そして最後に軟弱な自分自身だ。

 迷っている。弱い。役に立たない。

 今の所セイバーが一人の方が完全に強く、動きやすい状態となっている。それではだめだ。セイバーと対等……なんてのは不可能だって解っている。自分は凡人だ。だから対等では無理でも、せめてセイバーに最大の力を発揮させられるようになる領域には上がりたい。

 完全に足を引っ張っただけの自分が悔しい。

 そこで端末から軽快な電子音が響く。端末を引っ張り出しその更新情報を確認すれば、トリガーの生成が第二層のアリーナで確認されたことを示している。軽く体を動かせばだるさと重みが消えているのが解る。ダンの宣言通り、毒は消えているようだった。

 よし。

「セイバー」

「ん?」

「私、もっと強くなりたい」

「おう」

 だから、

「今日も、頑張ろうね」

「病み上がりだから無理するな、と一応言っておくな」

 やらなきゃいけない事も確認する事も多い。だが少しずつ、一歩ずつ前へ進めばきっと―――。




 原作の緑茶さんの毒も(笑)扱いされてるし少々テコ入れをする方針。破壊工作スキルはもうちょっと輝いてもいいと思うの。
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| 断頭の剣鬼 | 14:24 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ちょっ!?
正義の柱ブレイクとかなをやってるのセイバー!?聖遺物(嫁)ブレイクする主人公なんか新しすぎて思わず三度読み直したわw
にしても緑アーチャーのあの独特感ある喋りがたまらんねぇ
CCCで「―旦那が~」的な胸の内を打ち明けるところなんか天魔な誰かさんを彷彿とさせ―……まて、なら旦那はインドォ(此処で言うならM・C)に引き裂かれた女神ポジ? あの白髪老練なオジサマが?
……認めん! 断じて認めん、自分でいだしたが尚の事認めんよ!!

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2013/04/17 15:21 | URL | ≫ EDIT















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