陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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夜と黄昏 ―――ムーンレス・ナイト

Nacht der langen Messer


 夜の闇が街を覆い尽くす頃に起き上がる。既に大方の準備は完了している。

 服装は何時でも動けるように軽いものに、ただ素性を万が一の隠せるようん長袖と長ズボンを、そして全身を覆い隠す様なフード付のマントを。黒い剣には布を巻き、背中に背負う。布ももちろん黒い。というよりも服装全てが黒。決してキリトの真似をしているわけではなく、夜を駆けるのであれば個の恰好が一番合理的なのだ。

 息を潜めて周りの音に集中する……隣の部屋からはカインとケイの寝息が聞こえる。二人が起きている気配はない。

 ならばよし。

 迷惑はかけない。

 窓を開けてそこから一気に飛び降りる。帰ってくるために窓を開けっぱなしにする必要はあるが―――場合によってはこのままこの兄妹とはお別れになるかもしれない。ともあれ、この世界には窃盗の概念はあっても、行える者はいない。その危険性を考慮するだけ無駄なのは理解している。着地し、着地でずれたフードを深くかぶる。

 カインとケイの寝ている部屋へと視線を向けると、軽く其方へと向けて頭を下げる。


「もしかしてこれが最後になるかもしれないので、お世話になりました」

 背中に背負う、布の包みの位置を調整しつつ、夜の闇の街を歩く。

 空を見上げれば月の光がない。あるのは星空だけだ。それもそうだ。態々新月の夜を選んで決行しているのだ。まだ電気による発明が存在しないこの文明では光は炎と、そして自然光はメインだ。故に新月の夜は視界がほぼ消え、ほぼ完全な闇が広がっている。深夜であることも含め、街は恐ろしい程に暗い。

 だがそれは自分にとっては問題にならない。

 この完全な暗闇の中でも僅かな光を頼りに、この目は普通の夜とほぼ同じ明るさをこの世界で見出す。疑うべくもなく、剣を握った時から得ている謎の強化の一部だろう。取れる選択肢が増えた事には純粋に感謝しておく。自分で使えるものは自分の力だ。利用しない手立てはない。

 闇の中、誰もとおっていない道を歩く。ほとんど姿が見えないし、誰もいない。それを知っていてもなるべく濃い闇を隠れ蓑にして移動をする。もし誰かが見ていたとしたら明らかに不審な格好を疑問に思われてしまう。そう、これからやろうとしている事は言い逃れの出来ない犯罪である。禁忌目録には禁止されている行動だ。故にこの世界の住人達は間違いなく止めてくる。

 それでも確かめなくてはならない事がある。

 ―――この世界は恐ろしく狭い。

 誰も疑問に思っていない。だが狭すぎるのだ。ルーリッドからザッカリアまで、そしてザッカリアからセントリアまで。ここに来るまで数日なんて時間はいらない。それだけ誓いのだ、ここは。世界の果てにあるはずのルーリッドからこれほどまでに近い央都。

 それはまるで押し込めている様に思える。

 洞窟の中では苛立ちが先行してしまい考えなかったが、そう、”理性的すぎる”のだ。敵は、闇の国の住人は理性が出来過ぎている。聞いた話とは全く違う程統率されており、理性的であり、そして恐ろしい程に賢い。おそらくこちら側の十人よりも遥かに賢いかもしれない。それを常に戦い続けている整合騎士が知らない筈がない。となれば、公理教会が情報を何か隠し持っているのは明白だ。

 キリトとユージオが来るまではまだ時間がかかるが―――自分が追われるようになれば隠れればいいだけの話だ。

 幸い、警察的組織は整合騎士以外にはいないらしい。なら街中ん委隠れるのはそう難しくないはずだ。

「……いけないなぁ」

 何やら思考が物騒な方へ流れつつある。ここまで猪突猛進タイプだったかと一瞬考えるが、まあ、こんな状況だし少しは混乱しているのかもしれない。昔の自分だったらこんなに早く行動に移らなかったはずだ。もっと情報を集め、冷静に判断し、計画を練ったと思う。

 焦っているのだろうか。

 この平和で、別段なんともない状況に。

 このままこんな日常が続けばいい―――そんな事を思ってしまった自分自身に。

 それは許されない事だ。自分は急に居場所から引きはがされた上にこんなわけのわからない状況に投げ込まれてしまった。兄……はたぶん心配してないだろうが、自分の両親はキチガイ兄と違って極々普通の一般人だ。急に息子が行方不明となったらそれこそ倒れるだろう。まあ、今はその事を忘れて行動しないと不安で体の動きが鈍りそうだ。

 っと、セントラルカセドラルの姿が見える。

 巨大な円形の敷地の中央にそびえたつ塔。周りを囲む壁と、一般入場用の礼拝堂。場所自体への入り口には見張りもいない。禁忌目録に夜間の一般的職務の勤務は禁止されている事は既に確認している。確認しているが―――それでも不安はある。未知を相手にするとはこういうことだろうか。体を低く、可能な限り気配を殺しながら扉に近づく。隙間からはわずかにだが光が漏れている―――まだ中には誰かがいる。

 息を潜め、体を扉に寄せる。片目だけを閉じ、自分の神経を研ぎ澄ませる。そして感じる。

「……いる」

 中に誰かがいる。気配の室からして多分だが一般人だ。進化した聴覚を研ぎ澄ませ、中での会話を聞く。

「―――でさ、三丁目の蜂蜜パイがまた絶品で―――」

「―――あぁ、知ってる知ってる。俺も休みになるとどうしても―――」

 会話の内容は世間話だった。声は男の声。そこから相手が兵士なのか、昼間は働いていた門番なのか、聖職者なのか、その判断はつかない。だが彼らをここから引きはがす必要はある。

 闇の中、視線を張り巡らす。

 ―――壁を飛び越える。駄目だ。一番目立つためこの案は却下。

 ―――扉を開け、気づかれる前に奇襲し意識を断つ。駄目だ。起きた場合異常が知らされる。

 ―――気を逸らしその間に侵入。これだ。

 軽く辺りを見渡す。そこで崩れたレンガブロックを見つけた。それを手に取り、軽く扉を叩く。コンコン、と確実に扉の向こうに聞こえる音が出たのを確認するのと同時に、素早く身を引く。再び光の届かない闇の中に自分の姿を隠す。数秒後、扉が開く。

「おーい、誰かいるのかー?」

 男が一人扉を開けて、顔を外に出している。音の主を探す為に体を半分だけ外に出している。半分だけ。それが普通だ。ノック程度で二人も出てくるものか。だからこそ、

 片手に持つレンガを放り投げる。前へと向けてではなく斜め上へと向けて。重力に引かれて落ちるレンガは男の視界の前方、闇の中で地面にたたきつけられる。大きな音を立ててガシャン、と崩れるレンガの音に二人の男が反応する。

「な、なんだ?!」

 そんな事を口にしながら男が二人外へとでる。

 ―――チャンスだ。

 二人が入り口に背を向けた瞬間姿勢低く、一気に扉の中に入りこむ。既に昼間の内に扉の確認は澄ませている。入り口廊下の扉、向こう側に誰もいない事を気配で察しつつ、素早くその裏側へと身を通す。なるべく音を立てずに扉を潜り抜けるが、それでもキィ、と古い扉が音を立ててしまうのはどうしようもない。自分が立ててしまう小さな音の一つ一つに冷や汗を流しながらも、扉の向こうの中庭に進入するのと同時に、茂みの中へと転がり込む。再びそこで息を潜め、気配を殺し、聴覚を研ぎ澄ます。

「―――……」

「―――」

 声が遠い。内容は拾いにくい。が、それでも此方へとやってくる気配はない。その事に安堵しつつ数分だけこの詩紙の中に潜む。もしかして誰かが見回りをしているかもしれない。もしかして何かがここを監視しているのかもしれない。IF。その可能性を考慮するのであればなるべく慎重に動きたい。現代のカメラやセンサーはなくとも、それに匹敵するトラップや技術があるかもしれない。今の所心意を使って見せたのはキリトだけだ。だから騎士達も心意を使えたら―――いや、止めておこう。

「なんだっけ、こんな感じのゲームあったっけかなぁ……」

 まだALOが発売する前、こんな感じのスニーキングゲームが発売してた気がする。今の状況がそれに似た感じだと思うと実に愉快になってくる。こんな時でもゲームの事を思い出すとかどこまで自分はゲーマーなんだろうな、と。

 ……巡回の警備はいない。扉の向こうの男たちも動く気配はない。中庭に誰かがいる様な気配もなし。ならばあとは行動に移すだけだ。繁みをカバーにするように、体を隠す様に、茂みの裏をゆっくりと歩く。心配性なのは変わらないな、等と自嘲気味に言葉を漏らしつつ少し遠回りになるようなルートで中庭を移動する。中央に見える塔の入り口が見えてきたところで動きを止める。

 今、自分が立っている場所と塔の入り口までにはある程度の距離がある。そして同時に遮蔽物がないことにも気づく。扉を通るのであれば必然的に遮蔽物のない所を駆けるのだが―――既に人気がないことは確認済みである。なら行動に移すのみ。

「他愛ないな……」

 呟きながら体を茂みの中から出そうとしたところで、

「ッ!」

 素早く体を茂みの中へと引き戻す。次の瞬間には塔への入り口の扉が開き、その中から鎧姿が現れていた。闇の色を受けて鈍く光る白の鎧。兜が邪魔で顔は見えないが、体の大きさからしてそれが成人男性の体格とは思えないもっと華奢だ。これは―――女の体格だ。

 ……整合騎士には女性もいるのか……!

 騎士というには男ばかりのイメージだったが、鎧姿の人物が女だと見抜き、内心驚きを得る。いや、ただ単に見通しが甘かっただけだ。そこは素直に反省しよう。

 視界の中で騎士は塔から出ると、腰に下げた剣に一度触れ、そして入り口の扉を背後に動きを止める。まるで彫像のように不動になり、動きを止めたまま黙る。その様子を数分黙ったまま見続けるも、騎士の姿に変化はない。ヤバイ。

 動いてくれない……!

 目の前のアレが普通の騎士か、もしくはこの世界最強と呼ばれている整合騎士なのか、それを判断する方法はないが、問題なのは相手が塔の前に陣取っている事実だ。先ほどまでは警備がいなかったのに、今になって急に表れてしまった。こんな事であればもう少し素早い行動を心がければよかったのだろうが―――いや、素早く行動したところで中で鉢合わせするだけだろう。そうなれば状況は変わらない。いや、さらに酷くなる。

 ……今更何を悩んでる。

 元々あの鍛冶屋へ戻らないことを覚悟してここへきているのだろう。最悪のケースは情報を得られず死んでキリト達と繋がっている事がバレる事だ。この状況で最高の結果はバレずに情報を奪取して届ける事。自分としての妥協のラインは情報入手、存在はバレる、情報だけはキリトへと送る。この世界は泥棒への意識へはほぼ皆無だ。その気になれば路地裏でひたすら窃盗を繰り返して六か月を過ごすことだってできる。

 ―――殺そう。

 その選択肢が何故かあっさりと出てきた。本当に不思議ながらその選択肢を選ぶことに迷いも抵抗もない。むしろ何故初めから気づかなかったのだ、と、そう責めている自分がいる。殺して死体を隠せばいい。そうすれば増援を呼ばれる事も異常が知れ渡るのも防げる。せめて朝までは何とかなる。

 殺すだけの力が今の自分にはある……!

 背中に背負う布の包みから柄だけを露出させ、握る。スプリンターが走り出す様なフォームを取り、片手は柄を握ったまま、何時でも抜刀できるようにしておく。神速からの一撃必殺。認識させる前に絶命させる。悲鳴をあげさせない。迷う必要はない。これも自分の為、仲間の為、世界のためだ。あぁ、ならば仕方がない。

 自分でも気づかない内に頬はつり上がっている―――。

「ごめん―――さようなら」

 恐ろしい程に冷徹な声が自分の喉から浮かび上がってきた。まるで目的と願いを邪魔する相手なら殺しても構わない。そんな異常性を肯定してしまっている自分がいる。だが気づかないし、気づけない。変貌ではなく変容。少しずつの変化は蝕むようで自分自身さえ気づけぬ違いだ。

 故に、

 超高速で茂みから飛び出し―――刃を振るう―――首を狙って。

 凶刃を前に騎士はなすすべもなく―――兜が吹き飛び中を舞う。

 鮮血が溢れ出す。

 が、

 一瞬で直感が、いや、本能でもない。刃に眠った経験が叫ぶ。

 首を刎ねればこんな出血量では済まないと。

 意識に稲妻を走らせるような警告は体を無理やりにでも動かす。そうして反応する体は体を斬り割こうと迫ってきた刃を紙一重で回避する。体を横へ飛ばし、転がり、ソそうしてフードを不覚被った状態で確認する。

「貴様、何者だ―――!」

 騎士が―――金髪の鎧姿の少女が、剣を構えていた。

「我が名はアリス・シンセンス・サーティ、名を名乗れ賊……!」

 現実は何処までも無慈悲だった。




 え、終盤までアリスちゃんでないと思ったの?

 残念! ラスボス、中ボスは早めに出して主人公を絶望させよう!
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| 断頭の剣鬼 | 18:25 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

まさかのアリスが初戦
これはラスボスや中ボスというより負け確定のイベント戦っぽい
ここで正樹がアリスに対してフラグを立てたりして

| シオウ | 2013/04/14 20:37 | URL | ≫ EDIT

アリスきた!!ここからどうなるかすごく気になる!!

| ガリバー | 2013/04/14 21:59 | URL |

『――焦っているのだろうか』
いいえ、単なる戦闘脳化です。別名 脳内処理筋縮症候群、略して脳筋w
残念ですが、手遅れです。前例の処置として、ひたすら首を捧げるか、金髪で巨Newな嫁を探しましょう。
追記:場合によっては症状は悪化します。

正樹さんの前途に幸あれwww

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2013/04/16 19:07 | URL | ≫ EDIT















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