陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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EXTRA-8

 たぶん、酷い顔をしている。

 エレベーターから外に出ると体が重い。戦闘中の魔力の消費や、体を動かしたことに対する疲労ではない。今、自分の手、自分の意志で人一人の命を奪った事に対する罪悪感が体を縛る。どうしてもシンジの最期の顔を思い出してしまう。彼は最後の最後で自分がまだ8歳だと叫んでいた。聖杯戦争を真面目に受け止めていなかったのだろう。だが、それでも、

 殺したという事実には変わりはない。

 もしかして。

 たぶん。

 まだ可能性はある。


 そんな事を思い浮かべていた。本当は死なないでただ月の外へ解放されるだけって。そんな考えが甘いと解っていても存在していた。いや、甘いと理解しているのはそれがシンジが死んだからだ。シンジが悲鳴を上げながら死んだからこそ、私はその考えが全て甘かったと認識できている。

 私は人を―――。

「相棒」

 光と共にセイバーが出現する。真直ぐと迷いのない瞳で此方を見てくる。

「俺は基本的にスパルタ方針だからここで無駄な慰めとかをいれんし、”俺が殺した”なんて甘い事もいってやらない。アレは自分の指示で、俺に殺させたという事実を受け止めてほしい―――が、ここは聖杯戦争だ。こういう結果しか用意されてないんだよ、マスター。それを受け止めるしか選択肢はない。それを受け入れる事は出来なくとも、納得だけはしておくべきだ」

 セイバーは厳しいことを言っているようで、その実は私に対して意識の逃げ道を用意してくれている。つまりこれを”聖杯戦争のせいだ”と割り切るか、責任を押し付ければ罪悪感は薄れるだろうと言っているのだろう。口は厳しいし激しく物騒なサーヴァントだが、それでもキチンとこっちの事を考えてくれている……悪い人でない事はこの短い付き合いで解っている。

「大丈夫……私が、殺したから」

「そうか」

 それだけを言ってセイバーは消える。その表情は少しだけ満足げなものだった。考えれば今日は一人で戦っていたのではない、私が指示を出したが、一番疲弊しているのはセイバーではなかろうか? なにせ大幅に弱体化している状態で弱体化のないサーヴァントと戦ったのだ。戦闘中の緊張感などは考えもつかないだろう。マイルームへと帰還したらセイバーをマスターとして労うべきかもしれない。

 と、そこで音もなく表れた姿を見る。

「第一回戦突破おめでとう」

 低い声と共に現れたのは神父の姿をした運営NPC、言峰綺礼だった。その表情は胡散臭い微笑を浮かべているが、その言葉からは純粋に此方を祝福している事が窺える。祝福しているが、同時に此方を観察している。

「君は敵を殺す事によって生き延びることに成功した。これにより君が次の対戦へと、新たなる敵へと挑む挑戦権が得られた。じきに対戦相手の発表があるであろう。それまでは休むがいい」

 告げるだけ告げ、言峰は背中を向けて去って行く。個人的な感想だがあの神父だけは好きになれそうにない。なんというか、自分が今、一番苦しんでいる所を見抜き、そして抉ってくるような気がする。全体的な雰囲気も激しく苦手だ。

 と、入れ替わる様に更に人影が現れた。

「ふーん、アンタが残ってるって事は勝ったって事なんだ」

 赤い服装の少女、と遠坂凛だ。無遠慮な視線で此方を見ると、ふーん、と声を漏らす。

「てっきり消えるのは貴女の方だと思ってたんだけど……そうでもなかったようね。それともシンジが間抜けなだけだったのかしら。まぁ、いいわ。どうせこの程度で躓いているようでは先に進めるとは思えないしね。ま、次ぐらいで消えるでしょう」

 容赦のない凛の言葉に自分は何も言えない。記憶がない。マスターとしての願望もない。ただ死にたくない。それだけの気持ちで聖杯戦争で戦い、勝利してしまった。そんな自分はちゃんとした信念を持って聖杯に参加しているマスターには何も言い返す事は出来ない。

「じゃあね」

 結果を見たいだけだったのか、凛はすぐさま去って行った。

 凛も言峰もいなくなった空間、重い溜息を吐き出す。

「マイルームに帰ろう……」

 転送機能を使ってマイルームへと移動する。





 マイルームへと戻るのと同時にベッドに倒れ込む。疲れた。本当に色々と突かれた。戦いが終わって、そしてやっと気を抜けたところで今までの疲労が一気に伸し掛かってくる。エレベーターから出た頃はまだ気張っていたらしい。意外と根性があるかもしれない。

「おいおい、大丈夫か相棒?」

「大丈夫じゃない……」

「大丈夫じゃなくてもせめて着替えようぜ。ほら、体操服にモノクルとマフラーなんて恰好今時のネトゲでもやるような恰好じゃないぞ? 軽く着替えるから何かしらしてから休むなら休め」

「はーい……」

「パパは相棒の将来が心配です……」

 何時からパパになった、とツッコミを入れたくもあるが、そこまでの元気はない。セイバーの言うとおり礼装を装備したまま寝るのは快適から程遠い。安らかな眠りを得るためにもウィンドウから礼装の装備状態を確認し、礼装を剥ぎ取る。その際礼装の姿から元の服に戻るのに一瞬姿が下着姿になるが―――なんかそこまで考えるのも面倒だしリアクションはやめよう。

「本当に大丈夫か不安になってくるぞ……」

 着替え終わったところで寝よう。そう思って―――体の動きを止める。出現しているセイバーは何も言わずにこっちを見ている。ただ無言で、何をするでもなくただ見ているだけで、

「……セイバー、今日の反省会しよっか」

「グッド。生き残りたいのならできる努力は限界までしなくては駄目だ」

「はい……」

 おそらく自分から言い出すのをセイバーは待ってくれていたのだろう。ベッドに腰掛けると、近くのソファにセイバーが足を組みながら腰掛ける。ここでセイバーをよく観察してみると解るが、セイバーの体には汗一つない。純粋に凄い。自分は今でも汗を額にかいているのに、セイバーは涼しい顔をしている。

「さて、相棒よ、まず純粋に謝らせてほしい」

 反省会はそんな言葉から始まった。え、とこっちが驚きの声を漏らしている間にセイバーは勝手に話を進めていた。

「あのライダーはぶっちゃければ戦闘向きのサーヴァントじゃない。ライダーというクラス自体は強力な宝具を所持していたり多くの宝具を所持できるクラスなんだが、まあ……英霊つっても色々と話しがあるだろう。今日戦ったライダーは戦闘ではなく冒険によって英霊となった者だ。だから人間よりは圧倒的に強くとも、戦闘を持って英霊となった存在よりははるかに弱いはずだ。だから、まあ―――」

 今回の戦い、かなり苦労させた。済まない、と言ってセイバーは頭を下げてきた。そしてそれに対して焦って手を振る。違う、それは絶対に違う。悪いのはこんなへっぽこなマスターなのだ。本来のセイバーであれば圧倒できたはずなのに、自分が完全にセイバーの足を引っ張ってしまった。全面的に悪いのは此方だ。指示だって未熟なばかりだ。やった事と言えば前もって決めていたタイミングで支援したり、動きのほとんどをセイバーに任せる事だ。なんて情けない話だろう。

 自分が、この場にいるには圧倒的に弱すぎたのだ。

 だから、此方から謝る。申し訳ない、と。だって自分が完全にセイバーの足を引っ張り、今回の勝利はそのせいでのがしそうだったのだから。

「じゃあ、この話はここまでだ」

「うん。今度は私の番だよね」

 解っている。解っているのだ。記憶がどうとか言っている場合ではない事だと。聖杯戦争は最初考えていたような甘いものではない。シンジとの戦いは最初は少し、笑えるも斧だった。楽しいかもしれないとさえ思っていた。だけど、その幻想はシンジの死によって否定された。そんな生易しいものではない。負けたら死ぬというルールは比喩でもなんでもなく、真実だった。それを最初、軽く受け止めてしまった自分に問題はある。

「ごめんなさいセイバー」

 解っていても―――見つからない。脅迫的なほどに強い信念が、自分は迷っている。そしてその迷いを晴らすだけのものが存在しない。

 その光景を見て、セイバーは頷いてくれた。

「自分が未熟であることを恥じる必要はないが、見つめる必要はある。今は迷うといい、相棒よ。迷って迷って迷って、そして何時か突き抜けて答えを得る筈さ。覚悟は決まった、迷いは晴れた、そんな事を言う人間は多い。だが実際にそうなのか、と俺に問うてみれば違うって答える。ふっきれたフリをしているだけのやつってのは本当にどこにでもいる」

 そう言うセイバーの表情は懐かしむ様な姿をし、そして真剣みを帯びた言葉だった。

「と、まあ、あまり真剣に引きずり過ぎるのも体に毒だしここで一旦真剣な話は止めよう。考える事を止めないのは大事だけど考えすぎると知恵熱を起こすからな」

 その言葉で体から少し力が抜けた。しかしそんな事を言うにはセイバーって意外とバカ側の人間なのだろうか。いや、発言から見せる知性はそれを否定しているのだが、ふざけまくっている姿を見るとどうしても……。ま、まあ、いい。今は忘れよう。忘れて、本日の戦いを思い返す。

 英霊同士の本気の戦いというものはスケールが違った。一撃一撃が全て必殺。牽制に見える攻撃も当たれば確実に殺すつもりで放っている。当たり前かもしれないが、それでも確実に次元が違うと言えた。特にそう、宝具。アレだ。ライダーが宝具で艦隊を召喚した時はもうだめかもと思ってしまったが、セイバーのスキルが反則的に強くて助かった。

 ん? 宝具?

「せ、セイバー!」

 すっかり忘れていた。そう、宝具。宝具だ。あのライダー戦の時は完全に忘れていたが、全ての英霊にはその逸話に関する武具か能力が宝具となって顕現しているのだ。それは英霊の真の名を表す弱点であったり、そして最強の兵器でもある。セイバーは一度も自分の宝具を見せていないし、教えてくれてもいない。握っている剣が特殊であり、それは間違いなく宝具なのだろうとは解るが、宝具に関する説明は一つもない。その事をセイバーに指摘する。

 すると、セイバーが困ったような様子で頭を掻く。

「悪い、意図的に黙ってた」

「え?」

 意図的に黙ってた、とはどういうことだろうか。

「いや、相棒が悪いわけじゃないんだけどさ、相棒弱いし隙だらけだし、魔術師としてはたぶんへぽこの中のへっぽこだぜ。ぶっちゃけ最下層クラス」

 解ってたけど一番信頼している相手にそう言われるとかなりへこむ。と、セイバーが少し焦る。

「あぁ、へこませたいわけじゃないんだよ! ただな、宝具ってのは正体がバレちまうんだよ。使えば確実に。特に俺のは特殊で、使えば確実に正体がバレちまう。いや、知っているだけでも問題なんだ。相棒の頭ん中を覗ける程の凄腕ハッカーが敵だったらそっから俺の正体がバレちまう」

 つまり……宝具に関して黙っているのは自分の正体を隠すため?

「うむ。そういう事だ」

 ―――良かった。別にセイバーに嫌われていたとか信用されてないとか、そういう事ではなかったんだ。

「そんなに薄情に見えるかなぁ……」

 そんな事はない。それでも、今日の出来事のせいか不安はいっぱいあるのだ。怖いし、まだ何もできないけど―――私にはセイバーがいる。セイバーはこんな私を見捨てずに、私の事を考えて行動してくれている。私自身の問題とは別に、

 私はこのサーヴァントの期待を裏切れない。

 今は、今はそれでいい。迷いが晴れるまではセイバーに胸を張る事を目標に……戦う。

「ま、もうそろそろ寝た方がいいぞ相棒。明日は対戦相手の発表がある。まだ戦いは続くんだ……だからお休み―――マスター」

 セイバーにおやすみ、と言い返しながらベッドに倒れる。恐ろしく早い程に眠気が襲ってくる。

 完全に意識が落ちるまでは数秒もかからなかった。

 ただ消える瞬間、思い浮かべたのは悲鳴を上げる間桐信二の姿で、

 彼の姿を思い出し―――涙を流した。




久しぶりに書きました。アレだ。CCCクリアしました。ワカメがかっこいいワカメだった。嫁王の皇帝特権マジパネェ。とりあえず二週目キャス狐で進めながら更新してなかったあぁ、と想いだし書いてみた。たぶん続く。
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| 断頭の剣鬼 | 11:59 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

チート大好きな自分はAUO(笑)
しょっばなからチート全開かと思ったらそうでも―――すいませんウソですアレヒドいw ラスボスがが中ボスに降格したと思うくらいヒドいww
だが後悔はしていないッ!

二週目は嫁王様~安定の私様っぷりに思わず慢心王とのデュエットを創造してニヤリとしてました(笑)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2013/04/10 15:17 | URL | ≫ EDIT















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